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手紙
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手紙の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.16pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全538件 181~200 10/27ページ
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兄の気持ちもわかるし、弟の気持ちもわかる。この手紙によって対比された心境が鮮やかですが ストーリーは非情なまでの現実を読むものに突き付け(少々やり過ぎという感じはしますが) 良く出来た構成ではあると思います。 途中読むことが辛くなりますがこれも作者の意図するところでしょう。 救いようのないやるせなさがなんとも言えませんが、世間はこんなにも冷たいものかという 情けない感情にもなります。 終章の「違うよ兄貴、あの手紙があったから・・・」ということが闇のなかでのひとつの救い のように思いますが重いテーマです。 | ||||
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決して悪い作品ではない。 重いテーマだけに、読みながら色々なことを考えさせられもした。 登場人物やエピソードの現実味が少々薄いかなと思うものの、テーマが重い分、わかりやすさを優先させたと考えれば許容範囲だと思う。 でも、あの刑務所へ慰問コンサートに行くってラストはどうなんだろうか。 作者としては幾ばくかの救いがある終わり方にしたかったのかもしれないけれど、とってつけた感しかなかった。 作者自身、このテーマと真正面から向き合えていないのかなとも思った。 あくまでもエンターテイメント作品。 そう思えば悪くないラストなのかもしれないけど……、やっぱり納得できない。 | ||||
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差別・逆差別を問うている以上に、自分の感情に忠実に突っ走って大罪を犯し、贖罪と信じた自分の感情のままにさらに大事な人を傷つける。けして悪人でも愚鈍でもない兄を憎み疎ましくさえ思わせてしまう哀しさと、兄を心にかけながらも振り回されて傷つき苦しむ弟の葛藤が苦しい作品だった。 自分の心のままに罪を悔いたり、許しを問うたり、家族の絆を求めたりしてしまう兄の善良さやひたむきさは、読者が彼を憎みきれない分よけいに切ない。それを受け止めきれず、世間の逆風のなかで立ちすくむ弟の孤独や絶望がよりいっそう理不尽なものに思われてなんともやりきれない想いのまま読み終わった。それでも、弟の決断により、すべての人が、なんらかの形で過去から自由になったのではないかと思えるのは救いだっただろうか。 それにしても、日本には本当にこんなに悪意に満ちた人ばかりなのかというのが率直な感想でもある。アメリカでは身内に犯罪歴のある映画スターや自身が服役経験者のミュージシャンも少なからずいるが、世間の見方は「そんな逆境の中よくがんばって成功したね」とか、褒められたことでなくても「こいつそんな過去があったのに成功したんだなあ」といったもので、犯罪者の家族を弾劾し、贖罪を強要し、さらに世間から追放しようとするような底意地の悪さはあまり見かけない。 妊婦やお年寄り、ベビーカーや車椅子の人の苦境に、とっさに手を差し伸べられない、つまり本能的に人を助けたいというやさしさを持たない者の集まりは、こういった弱者をさらに痛めつけるような行動に出たり、あるいは平野社長のいうように「当たり前のこと」として容認してしまうものなのだろうか。 | ||||
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兄、剛志の文章能力の成長さが、かなしみを増す。時が経つにつれ、ひらがな混じりな頭の悪そうな文章が賢く、より家族との思い出また家族への愛情の深さが、表現豊かになっていきます。弟、直貴の世間の風当たりは過剰な描写じゃないかとも思いましたが、この作品は弱肉強食のように恋は盲目のように、切ない。ラストシーンは、個人的に原作は静かに考えさせられることになりましたが映画は考える間もなく丸坊主の玉山鉄二の芝居に泣かされました。みなさんに、この作品を見て、差別ではなく『愛』を感じてほしいです。 | ||||
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東野圭吾さんによる小説。今回はミステリー物ではなく社会派的なテーマに取り組んでいる。 加害者側から見た事件をめぐる葛藤、苦しみ、差別。 普段、凶悪な犯罪があった場合に私達はほぼ完全に被害者側からの視点しか持ち得ないと思う。 加害者もしくはその家族、関係者などはどのような苦悩を持つかを考えるきっかけになる。 進学、結婚、就職後、さまざまな課程で主人公である武島直貴は理不尽な扱いを受ける。 (朝美との恋愛、結婚については加害者の親族でなかったとしても厳しい感じはあったが) 直貴は早期からの理解者だった白石由紀子と結ばれる。そして娘も生まれてもなお 差別は家族を襲う。家族を守るため最終的に兄剛志とは絶縁を決意することになるのだが・・ 本書はこれでもかと世間の現実、私達がいかにレッテル貼りするか、差別してしまうものかを 突きつける。人間社会とは法律の範囲内だけで回るものではないことを実感する。 本書後半に登場する平野社長の差別は当然であるという発言は大胆ではあるが納得感もある。 本書の山場であると言って良いと思う。 罰を受けるのは自分だけではないことを認識しなきゃならんのだ。 会社にとって重要なのはその人物の人間性ではなく社会性なんだ。今の君は大きなものを 失った状態だ。しかし社会的な死からは生還できる。その方法は一つしかない。 こつこつと少しずつ社会性を取り戻していくことだ。他の人間との繋がりの糸を、 一本ずつ増やしていくしかない。 なぜ殺人は駄目なのか、なぜ自殺はいけないのかを明示している箇所は明快で感動する。 | ||||
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友達に進められて読んだんですが、 残念です。。 あくまで私の感想ですが。 なんか、テーマだけで話題をもっていった感じ。 途中、直貴の音楽の才能の部分は突然すぎるし、入ってすぐデビューの話て、、なんでやねん('Д` ; 由実子の過去ももっとえらいもんかと思ったら、意外とよくある話やし。 いくら惚れてたとはいえ、そんなんで、そこまで直貴の方もつかいな(;'Д`A 最後の方、社長出てくるん突然すぎやしw しかも二回もいるんかな、、。 しかも、差別について。 あるのが当たり前なのに、何を今更新発見!みたいにいうてるんやろか。。 重すぎるテーマだからこそ、あえてフィクション的な部分があるんやろうか? 読んでいても辛いだけだし、特に何が発見があったわけじゃなかったかな。 作者が何を伝えたかったのかよくわからへんかった。 一部、話のもってき方がうまいなーと思って先が気になったところもあったけど、期待はずれで終わりました、、。 由実子が関西弁なんもよぅわからんなぁ^^; | ||||
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犯罪を犯すということは自分と相手だけはなく、家族をも巻き込んだ一家心中であるということ、それほど罪を犯すことは重い。 そんなわかっているつもりでも、あまり深く考えていない当然のことをそれをこの話で痛感させられました。 この話は確かに物語で、フィクションなのだが、ただどこまでも殺人犯の弟を現実的に描き切っており、『フィクションでないフィクション』といった印象を受けました。 兄が殺人を犯したということで、人生をずっと『殺人鬼の弟』として差別的に、色眼鏡で見られ続ける弟。 しかし、それは「差別」ではなく「区別」。 誰もかかわるなら犯罪者の弟よりそうでないほうを選ぶ、当然のことだ。 そんな言葉を劇中で弟は与えられます。 現実はどこまでも非情。 けれど弟はそれでも懸命に生きていく。 そして最後に、憎んだこともあった兄と再会……。 とても考えさせらえる内容の一冊でした。 ぜひお手に取ってみてください。 | ||||
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以前に映画を見たこともあって、ストーリーが分かっているからと小説は遠慮していました。でも、時間制約のある映画よりも小説のほうが掘り下げられていることが多いと感じ、読んでみました。 映画には設定のいくつかに違いのあることを知ることが出来ましたが、主旨についてブレていないことや感動の点では両者に大きな差がなかったように思いました。 映画・小説の両者ともに、弟の直貴のキャラクターには個人的に好感を持てませんでしたが、一方で由美子という女性に魅力を抱いたのは私だけではないでしょう。ストーリーを展開していく上で、効果を高めるための作者の意図的な設定だとうかがえますが、由美子のような女性に仕上げてしまうと現実味がなさすぎるようにも思います。 ところで、犯罪者とそれに関わる人達に対する差別については、日本の国民性と庶民の歴史的な背景を考えざるを得ないように思いました。本小説のように犯罪者を抱えるような立場になったとき、まさに地獄のような苦しみがあるからこそ、犯罪の抑止として脈々と戒めることわざや道徳の説法があるのだと気付きました。そして、このことは日本人が治安秩序を保つ術でもあり、世界が日本人に対する治安秩序の高さの評価につながる要因だと思うのです。 しかし、被害者側はさらなる苦しみがあるのも事実です。裁判などでは被害者側に対する不利益さも改善されているとは思えませんし、プライバシーに対するマスコミの姿勢は、どちら側にも好奇の目を向けさせるものとしか思えません。マスコミはまさにこの小説の意図とする「差別」の究極の立場にあたる存在と言えるでしょう。 これまでに自分と自分に関わる親族を含めて、被害者・加害者、自殺者のいずれの側の立場にもならずにすんできましたが、まさに感謝の一言に尽きます。明日はどうなるかは神様しか分かりませんが・・・。 タイトルの「手紙」。現在ではほとんどメールで事足りますが、メールも手紙も文が持つ重さとそれを発する背景に思いを巡らす必要があるのだと、改めて考えさせられました。 陳腐とお感じの方もおられますが、年をとると涙腺が緩むのでしょうか、兄の剛志が最後に遺族の緒方氏に宛てた手紙や刑務所への慰問で弟が見る兄の合掌の姿には、映画でも小説でも落涙してしまいました。 | ||||
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読む前に映画を見たのは失敗だった。映像でこびりついた登場人物や場面、設定等を、読みながら無意識的になぞってしまうからだ。 小説の分水嶺になる、平野社長の2度の登場とそこで深まるターニングポイントが、映画では略されていてテイストが違う。直貴のバンド音楽を映画で表現するのは困難なので、お笑いに置き換えているが、小説のしかけで重要な曲「イマジン」が映画では捨象されている。ラストも似て非なるもの。先に小説を読むことをお勧めする。それにしても、初めて東野氏の著作を読もうと思ったきっかけは、この映画ではあったのだが。 東野氏の文章は読みやすい。それは推敲され尽くされていて、時に後から付け足されたものも散見するが、構わずテンポよく読み進められるので、ボリュウムは気にならない。東野氏が登場人物にどれだけ憑依して描き切っているかが、リアリティ感につながっている。 犯罪の動機を推理小説に導入したのは松本清張氏だが、東野氏は犯罪が何をもたらすかを人間の網の目において知らしめた。一方で現実に起きる不可解な事件については、なぜ起きたのか、が問い続けられる。「手紙」の動機は分かりやすいが、分かりやすさ故に真の動機は看過される。ラスコーリニコフではないと言えばそれまでだが、東野氏の想像力で踏み込んでほしい。 | ||||
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この人の作品を読むのはこれが初めて。 直木賞候補にもなりロングセラー、映画化もされ多くのユーザーの評価もかなり高いので期待して読んだのだが、残念な結果となった。 文章が軽いからこれだけ多くの人に読まれているのかもしれないが、ストーリーを追うだけで要所要所の深みとか趣きといったものが無い。 わざとらしい人物描写や風景描写も好きではないが、あまりにも淡々としていてつまらない。テレビドラマ化や映画化を狙った大衆受けするストーリーということなのだろうか。 特に、設定上仕方が無いのかもしれないが兄からの手紙文が稚拙。いくらなんでもこんな手紙の書き方、出し方は無いだろう、というもの。読んでていらいらするのは主人公と同じか。 またストーリー展開も「差別」をテーマとしているからか、各章ごと同じような展開で意外性とか心を動かされるようなことがない。いたずらに長くなっているような気がする。 細かく言えば切りが無いが、兄が盗みに入った理由やその描写も軽い感じだし、そもそも天津甘栗が被害者の家の机の上に置いてなかったらこの物語は成立しなかった。 天津甘栗の思い出は良しとしても、犯行のきっかけになるくらい重要なものなのかはなはだ疑問。陳腐さを感じる。 そういう風にさらっと描写されているところが人気作家の条件なのだろうか。 | ||||
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この作品では、尽くに服役中の兄から受ける仕打ちともいえる様な、それがまた人それぞれの持つ価値観の違いから もつれて、複雑化させて主人公である人間を苦境に立たせます。 これも人生、儚くもあり、こんなにも残酷なものでもあるのかと?自分と重ね合わせてみてもマッチする部分が一つとして見つからない歯がゆさも豊かに描かれています。 自分なら?ここでなら? そんな苦渋の決断ばかりに、ここぞのタイミングで主人公に訪れてくる陰湿さは、見ていて悲しくもなってくるものですwwwこの作品は東野作品の中でもナンバー5に入る人気作なようです。私にはそれほどではありませんでしたが(笑) 手紙 (文春文庫) | ||||
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この作品では、尽くに服役中の兄から受ける仕打ちともいえる様な、それがまた人それぞれの持つ価値観の違いから もつれて、複雑化させて主人公である人間を苦境に立たせます。 これも人生、儚くもあり、こんなにも残酷なものでもあるのかと?自分と重ね合わせてみてもマッチする部分が一つとして見つからない歯がゆさも豊かに描かれています。 自分なら?ここでなら? そんな苦渋の決断ばかりに、ここぞのタイミングで主人公に訪れてくる陰湿さは、見ていて悲しくもなってくるものですwwwこの作品は東野作品の中でもナンバー5に入る人気作なようです。私にはそれほどではありませんでしたが(笑) 手紙 (文春文庫) | ||||
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兄の強盗殺人の罪で弟は「犯罪者の弟」というレッテルを貼られてしまう。 読んでいて実際にありそうな話だと思いました。 犯罪者やそれに近い人がいたら自分ならどうするか想像してみたけどやっぱり差別してしまうと思う。 この本を読んで差別や殺人の重さについて改めて考えさせられました。 オススメできる本だと思います。 | ||||
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本書『手紙』の主題はズバリ、“殺人犯の家族”。 だが、彼らが単に社会の差別や偏見と闘う姿を描いた物語では、まったくない。それを乗り越えてやがて幸せをつかむまでの涙、涙、のお話でも、もちろんない。 この小説が感動的だとするならば、ひとつの選択にたどり着きながらも、グラグラと揺れている人間がそこにいるから、である。その意味でラストの10行はグッと一気に込み上げるものがあったが、全編を通して概ね作者のタッチは冷静さを欠くことなく、読者もそのストイシズムにときどき深い溜め息をつきつつグイグイと牽引されていくことになる。 そんななか、主人公・直貴の人生の節目節目でひょっこり姿を現す由実子という女性の天使性には、ホッと心が安らぐ。またもうひとり、新星電機という会社の社長、平野の存在も稀有だ。その仙人っぽいたたずまい、そして言葉に、直貴も読者も一条の光を求めるようにすがらずにはいられない。 あるいは『罪と罰』クラスのヘヴィー級のタイトルでさえ似合いそうな本書であるが、そう大上段には構えず、サラリと『手紙』としたところにも、この作者らしさというか美質がよく出ていると思う。 | ||||
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「弟」のために犯罪を犯した「兄」。 その犯罪は、けっして許されることではありません。 でも、兄の思いが とても胸に響き 読むのが辛くなりました。 弟は、兄が犯罪を犯した為 差別をうけます。 兄の思いも分かるけど、差別を受ける苦しみ とても苦しくて辛かったと思います。 犯罪について とても考えさせられました。 最後の方は、涙が止まりませんでした。 とても胸が痛かったです。 読む価値があると思います!。 | ||||
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イジメが陰湿すぎる。 世間はそんなに性格悪い人ばかりだろうか? | ||||
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東野圭吾さんは今やミステリーの大家ですが,本書はミステリーではなく犯罪者の家族という問題を真正面から扱ったものです. 主人公は犯罪者の弟ですが,彼のもとに兄からの手紙が届きます.そして,そのたびに彼の人生は軌道修正を余儀なくされます.とても考えさせられるテーマで,主人公に思い入れをしてしまいますが,ラストはちょっと心情が読みにくい気がします. | ||||
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東野圭吾の『容疑者xの献身』『秘密』『さまよう刃』、そして今回『手紙』を読んで改めて東野圭吾は凄い作家だなと思った。自分はミーハーな読者ではないつもりなのでドラマ化や話題性といった流行で本を選択したりはしないし、どちらかと云えば作家を賞賛するよりも批判して扱き下ろす方が好きなのだが、東野圭吾の着眼点には脱帽する。 今回の『手紙』を多少強引に既存の作品に故事つけると、宮本輝『錦繍』をバックボーンに森鴎外『高瀬舟』と藤村『破戒』的要素を加えたような作品だと思う。特に東野圭吾の着眼点に惹き付けられたのは、「犯罪者の親族は一生差別されて然る可き」という観念があることだ。当たり前だが法律的に犯罪者の親族が差別待遇を受けるべきだという根拠はない(江戸時代には一族郎党が処罰された)。しかし現実には差別される。こういった話は、藤村の『破戒』を髣髴とさせた。明治時代に入ってアウトカースト(この語のせいで反映されないみたいなのでアウトカーストと表記)という法的差別は無くなったはずなのに不文律として日本国民の間に根強く差別感情が残った。『破戒』の主人公丑松はアウトカーストということを暴露されてしまうと弁明することなく生徒の前で土下座して、アウトカーストであることを匿していたことを謝罪し日本にいられなくなってしまう。この結末に僕は釈然としないものを感じていた。どうして丑松はこう抗議しなかったのか。「明治の時代となって四民平等となった時世にも拘わらず差別されなくてはいけないのだ。寧ろ悪いのは自分ではなく法律に在りもしない不当差別を呈するそちら側ではないか」と。しかし、丑松は抗議することなく謝罪してアメリカに追いやられるように去ってしまう結末は、『破戒』が初出された1906年という時代の限界なのかと感じた。しかし、それから100年経っても尚、法律にはない不文律による差別が描き出される。こういう日本社会に昔しからある後ろ暗さ、不条理さを見つけ出す着眼点が作者の凄いところだなと思った次第である。また「犯罪者の親族は一生差別されて然る可き」と諭した社長と主人公の対話は『破戒』の丑松と丑松の父親との対話を彷彿とさせた。若者丑松は自分がアウトカーストであることをカミングアウトし被差別民を弁護する猪子蓮太郎先生に憧れ、自分も先生のように正正堂堂と生きてみたいと思う。一方、一世代古い丑松の父は「決してアウトカーストであることを漏らすな」と堅く諫止する。 他作品でも、『秘密』では遺族側ではなく加害者側の遺族の事情を斟酌しようとする部分、『さまよう刃』では被害者ではなく加害者の方が懲罰よりも更生に力点を置く社会システムによって保護されてしまう問題などが、作者の着眼点がキラリと輝るところだなと思う。 | ||||
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自分が刑務所に入れば、 周囲の人間も罰を受ける事になる、 という平野社長の言葉が印象に残った。 心の中で差別はいけない事だと思っていても、 彼の言葉は正論であるが故に否定する事ができない。 どうしたってこの社会から差別はなくならないのだと、 不本意ながら認めざるを得なくなった。 暗くて重い話だけど、それだけ深みがあって 現実の厳しさを痛感させられる。 ハッピーエンドでもバッドエンドでもないのに、 何故か最後は涙が止まらなかった。 | ||||
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犯罪者とその家族と社会のかかわりについて色々考えさせられる要素は沢山あった思う。 もし自分が犯罪者自身だったら? 犯罪者の家族の立場だったら? 恋人だったら? もしくはその職場の人間だったら?雇う立場だったら? 世の中キレイ事で処理できない事が多いのは自分も身をもって経験しているので、 弟の周りの人間の接し方の微妙さには妙なリアリティを感じずにはおれなかった。 ただ、物語として評価すると、 上流社会の恋人との出会いや、その彼女の自称婚約者の嫌がせされる様子、 音楽に魅了されバンド活動に陶酔する様など少々"典型的"過ぎて新鮮みがなかった。 兄の刑務所に慰安コンサートにいくエンディングも古くさく感じてしまったので★3つ。 | ||||
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