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(短編集)

さよなら神様



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【この小説が収録されている参考書籍】
さよなら神様
さよなら神様 (文春文庫 ま)

さよなら神様の評価: 4.09/5点 レビュー 47件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.09pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全47件 41~47 3/3ページ
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No.7:
(4pt)

神様ゲームの続編短編集

もともと子供向けミステリーランドの一冊として出ながら、その不条理な展開に子供も大人にも衝撃を与えた問題作の神様ゲームの続編で短編集である。
近年の貴族探偵やメルカトルシリーズの短編でおなじみのこれまた特異な探偵の物語における役割が異色で、本作は冒頭でいきなり神様により犯人が問答無用で指摘され、これが絶対の正解となる。
その後、事件の概要が判明し、登場人物達は冒頭で指摘された犯人を犯人と判定すべく推理するという麻耶氏らしい変則探偵ものである。
冒頭で犯人が分かるが、倒叙推理ということではない。
探偵の存在意義を問い続ける麻耶氏らしい試みが活かされた作品である。
短編なので、論理的推理ミステリーとしてはやや薄味という感じはする。
さよなら神様Amazon書評・レビュー:さよなら神様より
4163901043
No.6:
(5pt)

Goodbye God.

さすがは麻耶さん、おもわず唸ってしまいます。簡潔な書き方ながら、この読後感は何なんでしょう。この小説の感じ方って、人それぞれ違うような気がします(大体の小説はそうだろうけど)。私はミステリーの枠には納まりきらないものを感じました。日本だけではもったいないので、ぜひ海外に出版されることを望みます。
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4163901043
No.5:
(2pt)

設定は面白いのですが、読後に残るもやもやが・・・・・・

倒叙モノとはまた違った、神様設定。
犯人が一行目で託宣され、登場人物たちがそれに翻弄される。
小学5年生たちが、みんなすさまじく高度な比喩を使っているのがおもしろい。
大人でもこんな会話しないよと思いつつ、表現の巧みさに魅了されました。
第4話が主人公の見せ方のターニングポイントになっていますが、
これは予想がついて、あまり衝撃はなく。
また、丸山くんのお母さんや美旗先生が最終話で絡むかと思いきや、
まったく触れずに終了。
だれが犯人かを当てる話でなく、推理に翻弄される少年たちの群像劇と
とらえればよいのかもしれませんが、伏線の回収を期待しすぎたせいか、
かなりの肩すかし、かつモヤモヤが残りました。
ラストはまあ、あの終わり方、アリだとは思いますが、、、
いったい登場人物たち、どんな顔しているのか、
容易には想像できません。
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4163901043
No.4:
(4pt)

頭の切れるブサイクに美女が惚れるか?

答えは恐らくNOだろう。
事実、顔がよくて頭がそこそこ切れる男は結構いるし、つまり、頭が切れようが推理オタクのブサイクはモテる事ができない。
そういう意味で今作は作者の願望が多分に入っている作品と言える。

女の人はちゃーんと友達と恋人の線引きはしてんだよなぁ。
だから今作で出てくるシチュエーションはあり得ない。と僕は思ったが、皆さんどうだろう?
ともあれ設定が面白く、ある程度語りに引き込まれたんで星四つ。
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No.3:
(5pt)

鈴木はいるよ。で、あなたはどう行動する?

正直、読み始めてしばらくはイマイチかな、と思っていました。
鈴木の「犯人は〇〇だよ」から始まり、その人物が犯人である可能性を推理する、という話の作りは、論理的に正しい推理であるにしても、は2時間サスペンスと同じストーリー構造じゃないかと、思ったのです。

ごめんなさい。とんでもない、勘違いでした。

前半は、神=必ず「正しく」犯人を指摘する鈴木の存在と、彼が「嘘をつかない」というルールがどういうものかを、登場人物に理解させるための布石だったのです。登場人物に、です。読者に、ではありません。
後半の作品では主人公の身近な人物が被害者となり、犯人は、主人公が「鈴木の口から事件の犯人を告げられている」ことを前提に、主人公=探偵役を欺くための行動をとります。
この錯綜した状況を成り立たせてしまう力技には、ただ感服させられるばかりです。
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No.2:
(5pt)

おかえり神様

神様探偵こと、鈴木太郎が帰ってきました。前作とは別の小学校が舞台で、時系列的に続編といっていいと思います(前作を読んでなくても問題はなく前作のネタバレもありません)。

前作同様、鈴木太郎のちょっとブラックな神様節が炸裂しています。いやむしろ前作以上かもしれません。個人的には今作のほうがミステリ的にも面白いと感じました。

麻耶雄嵩に関しては「続編が駄作」という心配は無用のようです。
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4163901043
No.1:
(5pt)

麻耶雄嵩と医学と恋愛の関係について。

今までにミステリを読んでいて「ここにワイヤーを擦ったような痕があるのは犯人がトリックを使ったからだ」あるいは「そう見せかけるために犯人が仕組んだんだ」という論理が展開されて、「いや、なんかの拍子にたまたま付いた痕なんじゃないの?」と思ったことはないだろうか。本作は推理の妥当性をそこまで突っ込むことでミステリという概念の脆弱性を浮き彫りしつつも、鈴木の絶対性で以ってミステリとして成り立たせた、奇蹟とも言うべきバランスの上に成り立っている。

今までのミステリのロジックを数段階一気に飛び越えた「隻眼の少女」が発表された時、私は今後麻耶雄嵩に創作活動ができるのか?と思ってしまったが、あれが究極の論理を突き詰めた作品なら、本作は推理における現実性、妥当性を突き詰めた作品なのだ。つまり意図的に穴だらけの推理を登場人物にやらせてみるという(笑)。そうなると、Aが犯人でもいいしBが犯人でもいいし、まあどっちでも可能だよね…となるわけだ。ミステリと医学は似ているというが、従来のミステリは基本二元論で、推理や証拠が正しいか間違っているかという概念しかない。本作では「この証拠は犯人がAであることを示すかもしれないが、Bでもあり得る」に留めているのだ。そして、それは非常に現実的だが、それでは犯人は捕まらない。
ちなみに医学では犯人がAでもBでもいいのだ。医師は「FNならGPCもそこそこ高い確率で起炎菌になるけど、とりあえずseptic shock起こして緊急性が高いのはGNR、そしてPseudomonasは外しちゃいけないので、とりあえずCFPMにしとくか。嫌気性もカバーするならPIPC/TAZかMEPMでもいい。ただVCMはそれらでカバーできない一部のGPCをカバーできるが、それによるメリットよりもデメリットの方が大きい。血培とって、治療開始して、それから原因探しますか」と考えるが、殺人事件であればとりあえず治療をするわけには行かず、確定診断がつかない限りは治療(逮捕)ができないという大きな違いがある。医学なら犯人がAでもBでも治ればいいが(もちろん治療しつつ原因は検索する)、ミステリでとりあえずAとB逮捕するかというわけにはいかない。そして、確定診断は非常に、非常に難しい。
そこでその正しさを鈴木に担保させることで、「現実性を極めた不完全な推理」を「本格ミステリ」として展開できる。非常に低い可能性や確率、偶然、感度や特異度という概念を持ち込まないのは、ミステリを思考ゲームとして成り立たせるための取り決めで、同時にアキレス腱なのだ。そして、麻耶が最もその信者として強固に守ってきた、ミステリ界の鉄則だったのだ。それをあっさり、本作では越えてみせた。本当に皮肉なことだが、神様という現実にはあり得ない登場人物を出すことで、この作品は今までのどんなミステリよりも現実感があるのだ(笑)。

もちろんそれはあくまでこの短篇集共通の原則論であり、一話一話の面白さはまた別だ。詳細はネタバレになるので書くことができないが、「発言は絶対に正しいが、すべてを語るわけではない、性悪の神様」という設定を最大限活かしたまさに「前衛かつ王道」のミステリが展開されており、読んでいてゾクゾクしてくる。

さて、ここからは最後の1ページのレビューになる。本作を読んでいない人にはわからないと思うので、ネタバレにはならないかと思う。
「ロジックを突き詰めた結果、予想とはまったく異なる事実が出てくる」のが普通のミステリの面白さだが、前作神様ゲームはロジックを突き詰めたはずなのにまったく異なる事実が、事実として提示され、その前のロジックがあまりに素晴らしかったからこそ、読者は衝撃に打ちのめされたのである。そして本作でもそれをラストシーンでやっていることに気づいただろうか?
初期の頃、よく麻耶雄嵩は人間を描けないと言われたが、それは一部の叙述作品や、翼ある闇の香月、夕顔が日本語を話さない(笑)などの理由によるのであって、基本的に麻耶雄嵩はミステリ作家の中でも群を抜いて「人間を描く」ことに力を入れている作家であり(ありがちなキャラクター小説というものでは決してない)、かつドラマ部分とミステリをリンクさせることに重きを置いている作家である。
そして、麻耶雄嵩は意外と恋愛小説をよく書く。それはもう悪意に満ちた恋愛小説を。初期作品の瑠璃鳥では、不可能犯罪にまったく関係なさそうな「なぜ美袋がいままで何とも思っていなかった女性と電撃的な恋に落ちたのか」という命題が非常に密接に結びついており、また夏と冬の奏鳴曲においても閉ざされた島で起きる連続殺人の中、主人公にとって絶対たるヒロインをキュビスムの絶対性に当てはめた上で極めてロジカルに絶対を相対化させた。隻眼の少女では後期クイーン問題を恋愛関係に敷衍させ、その上でなお最後に静馬がみかげのことを信じると言う、この一見ありふれた台詞の重みがわかるだろうか。恋愛の初期段階において、脈があるかもしれないという証拠を積み重ね(後期クイーン問題的に言えば、その中に偽の証拠があるかもしれない)、行動し、最終的な犯人指摘ならぬ告白を行うという点に置いて、ミステリと恋愛小説は似ているところがある。仮になんの論理やエピソードもなく、好きになる理由もないのに男女が恋に落ちる恋愛小説があれば、読者は怒り出すだろう。そこに至るまでの積み重ねがあるからこそ、恋愛小説は成り立つのである。さて、そうした視点で本作を見ると、まさに前作神様ゲームの、綿密に積み上げられた論理を圧倒的な事実でぶち壊すという手法を、なんと本作では恋愛においてやっているのた。いったい麻耶雄嵩は今までどんなに悲惨な恋愛を送ってきたのか…!凄い、の一言しか口にできない。

長々と書いたが、言いたいことは1つ。
この作品、抜群に面白い。絶対に読んだほうがいい。
さよなら神様Amazon書評・レビュー:さよなら神様より
4163901043

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