■スポンサードリンク
二都物語
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
二都物語の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.78pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全55件 21~40 2/3ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
人の悲しみや憎しみを非常に多彩に表現した作品だと思いました。どの登場人物も非常に濃く、それぞれが抱く感情に共感できました。この物語は、フランス革命期のパリとロンドンを舞台にしており、その騒乱の時代に生きる人々の悲しみ、苦しみ、憎しみ、そして、そんな苦境の中でも生きる希望をそれぞれの登場人物は見出しているんだと感じました。 当時の人々に比べれば、現代に生きている我々は幸せなのかもしれませんが、それでもぎりぎりの境地の中で「生きるんだ」と懇願する姿勢に、何より共感させられました。 まだ僕が二十歳という未熟さ故に、そのような感情を強く抱くのかもしれませんが、それでも、この作品に対して感じるものは「強い生への執着心」でした。 勇気をもらいました。 ちなみに、僕はローリーさんのような、誠実な紳士を目指したいです。笑 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
写真とは違う古い版が送られてきてガッカリでした。はっきり言って違う商品です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
フランス革命の時の世の中の様子が知りたくてこの本を読みました。ディケンズ特有のスリラーめいた描写の中に物語が展開します。貴族政治の惨さと革命の怖さが身に沁みました。 かなり隠喩が多いので慣れるまで読むのに苦労すると思いますが、翻訳が悪いわけではありません。他の新しい訳も出ているので、自分に合ったものを選べばいいでしょう。僕は、光文社古典文庫と最初の数ページを読み比べて新潮文庫の方を選びました。説明的なわかりやすさが良いか、少し考えないといけないけれど小説的な味わいが良いかというところでしょうか。 翻訳のまずさを指摘したレビューがありますのでコメントすると、「片脚をうしろに引いてお辞儀をした」とあるのは、本文にカッコ書きで示されているように当時の若いレディーの作法がわかるように訳したもの、「どうしてそこまで」とあるのは、その前に「驚かないで」と言っているので重複を避けたもの、「そっと立たせると」の主語が書かれていないのは、書かなくてもわかるからで、赤ん坊はグズっていたがそっと抱きかかえると静かに眠り始めたというのと同じです。 ところどころ入っている挿絵の人物の表情がユーモラスで救われます。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ルーシーは、情け深いという設定なら、カートンの行動に対しての想いはどうなんだろう。自分の家族だけ、で寝覚めが悪くないだろうか?読み込みが足らないんだろうか? | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
内容の素晴らしさについてはまったく文句ありません。先に青空文庫版(https://www.amazon.co.jp/dp/B009M8VIAW/ref=cm_cr_ryp_prd_ttl_sol_3)を読み始めて翻訳の古さに挫折、こちらを手に取りましたが、旧訳で意味のわからなかった部分がカーテンを取っ払われたようにするするわかり、読書をとても楽しめました。 しかし! 新潮社の担当者さんは猛省してもらいたいです。何かというと、青空文庫版にはあった章単位の「論理目次」が本電子書籍にはなく、ユーザビリティが著しく下がっているからです。これだけの大長編を、論理目次なしで読みこなすのは不可能です。 第二巻を例にとりますと、 【青空文庫】 第二巻 黄金の糸 第一章 五年後 第二章 観物 第三章 当外れ 第四章 祝い 第五章 財 第六章 何百の人々 (…以下略) と構成されており、登場人物やある設定がわからなくなったときに、前や後ろの章に簡単に戻ることができます。 【新潮社版】※新潮社版は上記の「巻」を「部」と表記している。 第二部 金の糸 以上! これでは移動できません。 内容は満点、制作で減点して2点とさせていただきました。新潮社さん、今からでもいいのでアップデートしてください。 ※青空文庫版の丁寧な目次のキャプチャを添付します。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
池 央耿氏の光文社古典文庫版が出たからこそ分かるのですが、文章の上手い下手で言うと、こちらの新訳は下手な翻訳調の部類。 やはり翻訳者に日本語のセンスが無いと読む快楽が著しく削がれます。 光文社版と読み比べて、自分に合うリズムの方で読まれる事をお勧めします。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
フランスの暴政を嫌って渡英した亡命貴族のチャールズ・ダーネイ、人生に絶望した放蕩無頼の弁護士シドニー・カートン 二人の青年はともに、無実の罪で長年バスティーユに投獄されていたマネット医師の娘ルーシーに思いを寄せる 折しも、パリでは革命の炎が燃え上がろうとしていた 時代の荒波に翻弄される三人の運命やいかに? 覚えにくい外国人の名前、地名、固有名詞には苦しめられますねぇ それはさておき、面白かったです! 皆川博子さんの小説世界と重なる部分多し などと言ったらディケンズファンのお叱りを受けるかもしれませんが 皆川さんを読んでいたから「二都物語」の小説世界にも容易に入り込めたと思います ロンドンの悪名高き監獄や精神病院が出てきたときには『懐かしい』と思ったくらいです 19世紀、ヴィクトリア朝最盛期、産業革命で発展を遂げたロンドンに暮らす語り手が約70年前のフランス革命前後を振り返る構成をとっています フランス革命という歴史的な動乱を背景に描かれるロンドンとパリという二都に暮らし、行き来する人々の人間ドラマ 序盤は登場人物の紹介、中盤で盛り上がり、終盤はミステリー要素にワクワクしながらラストへ一直線 “愛する人のために自らを犠牲にする”あの人の行為は感動ものです いや、ホント面白かったです 敷居が高いと思われがちな古典文学ですが、本作は超一級エンタティメントとしてお薦めです | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
自分は、先に英語版の二都物語の三分の一ほど読んでいて引きこまれたので 早く先を読みたくて(日本語のほうが当然、読む速度は速いし楽なはずなので) 家にあった、旧い訳本を少し読んでみました。 でも、なんか英語版で感じたスピード感とか文章のリズムが減速した気がして また英語に戻ったりしていました。 で、加賀山氏版に出会い、すごく読みやすい翻訳だと思いました。 どうせ何時間も消費するなら、いい訳本で読んだ方が貴重な時間が有意義なので 家にあるからといって(古典名作って、たいてい家に既に転がってたりしませんか)昔の訳本で済ませないことをおすすめします。 (新潮のまわしものじゃないです) といっても、家にあったのと加賀山氏版しか読んでないので、ほかにもいい訳本あるとは思いますが。 どんな新訳がでても重箱の隅をつつくようにして批判するレビューが出てくるものですが、 そういう場合は英語版を直接よまれると良いと思います。 韻をふんだような文章や、大仰なまでの比喩とか、逆に簡潔なきびきびした名文がいっぱいあります。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
フランス革命前後のロンドンとパリを舞台に、ある悲しみから始まる家族愛と復讐を描くロマン長編。 一級品の歴史ミステリーでもある。 バスティーユ牢獄に18年間幽閉されたのち、とあるパリの民家に保護されたマネット医師。もはや年月を忘れたかのように"靴づくり"に精を出す魂の抜け殻だ。 そんな彼を救い出すのは堅実な銀行家であり、一家の終生の友人となるローリー氏だ。 同行し、初めて見る父を優しく抱きかかえる娘ルーシーの仕草はあまりにも可憐だ。 いわれなきスパイ容疑で裁かれるチャールズ・ダーネイ氏。後にルーシーの夫となる彼は、以降、何度も死地をくぐり抜けることになる。 スチャラカな弁護士シドニー・カートン氏は、ルーシーへの本物の愛を保ちつつ、終盤のキーパーソンとなる。 フランス革命の足音は、幸せなロンドンの一家を突然に襲うのだ。 パリで酒屋を営むドファルジュ氏は、マネット医師のかつての家僕であり、牢獄から解放されたかつての主人をかくまっていたのだが……。 革命の狂気は天地を逆返し、かつての関係をも覆してしまった。 幾重にも張られた伏線が回収される様はさすがだが、人の首が、命が、数字に置き換えられることの狂気には戦慄が走る。 そして「編みもの」に勤しむドファルジュ夫人の恐ろしさよ。 本書の終盤は一気に読ませてくれる。 一家のパリ脱出の緊張と「編み物の終わる」シーンの凄味には、声も出ない。 最終章のシドニー・カートンの"手記"は、だめだ、涙で視界がうるんで読むことができなかった。 650ページの長編を読了し終えた今、とても充実感を得ることができた。 復活する人生に祝福あれ、捧げる美しき人生に永き幸あれ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
日本語の小説として、ぎくしゃくを感じ、忍耐なしに読めない。 その原因は、原文の大仰な文飾か、それとも翻訳の不備か。 おそらくその両方であろうと思う。 ひっかかりを感じる点を、たとえば4章から拾う。 curtseyedを「ひざまずき、片足をうしろに引いてお辞儀をした」と訳す。 この動作になにか特殊な意味が込められているのかと思う。 しかし、たんに膝を屈めて礼をしただけである。 How you start!を「どうしてそこまで!」と訳す。 「何が」そこまでなのかといぶかしく感じる。 たんに「そんなにびっくりなさって」というだけの意味である。 when he had very gently raised herを「そっと立たせると」と訳す。 しかし、それに接続する前部分の主語は彼女なので、いったい彼女が 何を立たせたのかと悩む。「彼が」という主語を省略しているのである。 そんなこんなで、あちこちにつまづきの石があり、物語に没頭できない。 たしかに意味は置き換えてある。しかし、日本語の流れになっていない。 英文和訳のような翻訳、とでも言うべきか。 青空文庫で読める佐々木訳の方がいいくらい。 おそらく編集部のミスキャストでしょう。 他社から新訳が出ることを期待します。 (実力あるが埋もれている新人を発掘して自由にやらせるか、あるいは逆に、 大御所を選んで古典の雰囲気と学術的脚注をたっぷりもりこんでいただくか、 思い切ってどちらかに振ったほうがよいのではないでしょうか) | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ですが、まだ読んでないと思っていたのに、さすがの世界的ベストセラーで、どこでどう知ったのか自分でもわかりませんが、途中まで読んだら後のあらすじが見えて(多分思い出して)しまったのが残念でした。 でも、よかった。楽しめました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
待望、だったのは私だけかもしれませんが、 『二都物語』の新訳です。 新潮文庫の『二都物語』は、 昭和42年に中野好夫訳が出て以来、再販をくり返してきました。 ごく最近(平成24年)も改版し、活字が大きくなったばかりだったので、 まさか新訳が出るとは思っていませんでした。 中野訳は、もともと昭和36年に、 世界文学全集6(河出書房新社)の一つとして訳出されたものですが、 それから53年たった今読むには、 文章のリズムが途切れがちで、多少苦しいところがありました。 他の訳はないかなと思い、 ・柳田泉訳(新潮社、昭和3年) ・佐々木直次郎訳(岩波文庫、昭和11・12年) ・本田彰訳(角川文庫、昭和41年) ・松本恵子訳(旺文社文庫、昭和49年) ・田辺洋子訳(あぽろん社、平成22年) を手に入れてみましたが、 これぞ決定版!といえるものはありませんでした。 恐らくディケンズの書いた文章自体、 相当難渋なのであろうと半分あきらめていたところで、 加賀山卓朗氏による新訳、 心待ちにして手に入れ、読んでみました。 石塚裕子訳の『デイヴィッド・コパフィールド』ほどではありませんが、 これまでの訳に比べれば、 圧倒的に読みやすい翻訳に仕上がっていると思います。 イギリス独特の古い言い回しは、 どのように訳してもわかりにくいところがあるのですが、 文章のリズムを壊さないぎりぎりの範囲ですべてを訳してくれていると思いました。 多少の堅さはありましたが、 ほぼ現代の小説を読む感覚で、 どんどん読み進めることができました。 初めて、この小説の構造がわかった気がしました。 フランス革命の文化大革命的な側面を、 イギリス人の立場からよくえぐり出していると思いました。 まだ1回読み終えただけなので、 少し時間を置いて、再読したいと思います。 これで完全に、ディケンズのファンになりました。 加賀山卓朗氏の新鮮な訳業に感謝です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ディケンズの『二都物語』は世界で最も読まれている小説だそうです。 この小説のどこがそれ程世界中の人々を惹きつけるのか、興味を持って読みましたが、翻訳特有の造語と思える読み方がわからないような熟語が目につきまして少し閉口しました。 それでも、それらを凌駕する魅力溢れる物語であることは十分に伝わってきました。 フランス革命は現代からみれば、共和制という人類の進歩を推し進めた偉大な事業であったと評価できます。 しかしこの大事業をやり遂げるためにどれ程の犠牲を必要としたか。 まさに地獄を一度通過しなければ、辿りつけないような場所にフランス革命はあったのでしょう。 そのような時であっても、人は神のように振る舞えることを物語は語っているのではないかと思いました。 翻訳の中野好夫さんが巻末に解説を伏しておられるのを読んで、腑に落ちる部分も多々ありましたので少し紹介しておきます。 中野さんの世代の人にとってディケンズは学生時代のテキストとして使われ、ヴィクトリア王朝の栄華を感じられ憧れた文学だそうです。 ところが、訳出するにあたって改めて文章を見て、よくもまあこの本をテキストに使ったな、と呆れてしまいます。 英語の上達には全く役に立ちそうにない、文章だというのです。 俗語、スラングの類が相当多いのでしょうね。 また構成力がディケンズは落ちると冷たく仰っています。 (ディケンズはストーリテラーとしての魅力は語られる半面、構成力はしばしば批判を受けています) それでも面白いには面白く、面白い話を追っていく感じで読めば良いのではないか、といったことが書かれています。 何となく、翻訳をするのに四苦八苦している中野さんの姿が頭をよぎりました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本書は歴史小説というよりも民衆が主導した ギロチン恐怖政治を背景にした極上のエンター テイメント小説と表現したほうがいいでしょう 理屈抜きに気軽に英国古典小説を楽しみたい そんな読者向きの長篇小説です 星3つにした理由は2つあります (1)再読だったために結末がわかっていたので スリリング感が乏しかった(これは仕方ないかも) (2)新訳なのに没個性すぎる訳文にびっくりした 古典文学に通じた翻訳者を選定すべきでした | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
最後の部分を読み終えて、気がつくと全体の輪郭がすっと浮かんでくるような錯覚を覚えました。 独特の比喩を駆使したエピソードが積み重ねられてゆきます。 読み手はそれを追いかけてゆくわけですが、途中で何度も迷路に迷い込みました。 初めてお読みになる方は、少し粗筋を頭に入れておいた方が良いかもしれません。 しかし何といっても世界で最も愛されている小説を読むのは、それだけで嬉しい気分になります。 尊いものに触れたような感触が味わえると思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
古い映画を観て感動して読みなおしました。映画は2種類あり、ハリウッド版の方が断然よく、本国イギリス版は迫力に欠けます。観てから読むか、読んでから観るか? | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
二都物語の舞台を見るために購入しましたが、読みにくくてリタイアしました。 自分の根気が足りないためです。 残念。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本作品は、1859年初版で、ウィキペディアによれば、2008年までに世界で2億冊が発行されたという、恐らく世界で最も売れている小説のひとつと言えるでしょう。 私が購入した中古本でも、平成12年で55刷となっており、その売れ行きの多さが窺えます。 このように、既に多くの読者を獲得していながらも、熟年に達するまで読むことのないまま過ごしてきたのは、19世紀の英米文学にあまり興味がなかった──というのが、率直な理由ですが、ある映画をきっかけにこの作品に興味を持ち、今回の読書となった次第です。 とても興味深かったのは、上・下巻の背表紙にストーリー紹介されているのですが、結末まで要約して書かれていることです。 こんなことは、新刊本では考えられないことですが、これだけ売れているのだから、結末を隠そうにも、読んでいない人でも何らかの形で、ラストを知ってしまっているという現状を踏まえてのことでしょう。 さて、作品の評価なのですが、これについては、巻末解説が面白く読めました。 本作品の翻訳者が解説しているのですが、通常、苦労して翻訳したなら、その作品を褒める傾向があると思われるところ、「傑作とはいわないまでも、けっこう面白い」と、賞賛しているわけではないのです。 これにはちょっと安心しました。 私も、面白さは認めるが、★5つとまではいかないかな、という印象を持っていたためです。 そして、本作品が有名になった理由として、フランス革命を取り上げていること、また、作品の書かれた時期が、ちょうどこの革命の歴史的興味や、意義づけが盛り上がってきた頃であったことを挙げていますが、この点についても同感です。 日本を含め、現代の民主国家が成立した発端がフランス革命であることは周知のことで、それゆえに外国のお話でも、身近に感じることができます。 また、この革命で没落した「貴族」が主人公のひとりで、数奇な運命に翻弄されるとくれば、結末は知っていても、興味を持って読める確率は高いと思います。 このようなわけで、読むきっかけは人それぞれでしょうが、これからも読み継がれていく作品であることは間違いなく、感動までいかなくとても、それなりに楽しみながら読める小説だということは言えると思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
いろいろな意味で、上質の大衆小説といえると思います。もともとは分冊販売で、読者の反応を見ながら書き進めていったそうで、章ごとに山場を作っていて場面展開が早く、サスペンス・タッチの味付けも充分ある。まさにページターナーです。状況描写がリアルで、200年ほど前のロンドンとパリの様子が、映像を見ているかのように具体的なイメージとして浮かび上がってくる。 しかし、それだけにプロットが強引でご都合主義的なところがあり、その不自然さは否めません。最もつらいのは、人物描写がステレオタイプであること。心理描写が弱いのは、書かれたのは1859年であることを考えれば仕方ないかもしれませんが、ヒロインのルーシーは地上の天使のごとく、非の打ち所がない完璧な女性として描かれているし、チャールズもまた、品行方正、清く正しい青年になっています。身代わりとなって死んでいくシドニーに共感を覚えたいのですが、なぜ彼が酒に溺れる厭世家になってしまったのか、その背景が説明されていないので物足りない。ルーシーへの思慕、チャールズへの友情という、シドニーの心情が全く描かれていないので、彼の言動が唐突すぎて理解するのが難しいです。他の登場人物も善悪の割り振りが明確で、最後までそれが覆されることはありません。エンタメ小説として気楽に読むのが良いかと思いました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
『二都物語』下巻ではフランス革命が勃発する。フランス革命については研究が進んでおり、最近は革命指導者の駆け引きが注目される傾向にある。これに対して本書は民衆暴動中心という古典的なフランス革命観である。これが逆に新鮮である。無名の民衆が歴史の主人公という視点は現代日本にも求められる。 アンシャンレジームのフランス農民が悲惨な状況にあったことは言うまでもないが、その農民支配には年貢の徴収が厳しいという封建的支配だけでなく、経済的取引上の搾取も含まれていた。領主を告発する農民の少年の告発には「おれたちの穀物は、あいつ(注:領主)の粉ひき場でひかなければならない」という台詞もある(下巻304頁)。領主は粉ひき場の使用料を徴収することで農民を経済的に搾取していた。 これは現在日本の貧困ビジネスのゼロゼロ物件業者に重なる。ゼロゼロ物件業者は賃貸住宅の鍵を勝手に交換し、賃借人から鍵交換料を徴収する。第三身分の貴族階級への怒りはゼロゼロ物件業者など貧困ビジネスへの怒りと置き換えると身近になる。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!