月長石
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この作品は、奇しくも日本のエポックイヤー(1868年)の初めからチャールズ・ディケンズの発行していた「オール・ザ・イヤー・ラウンド」誌に連載され、夏には三巻900ページの本として出版された。日本人にとっては、往時を想い、世界のどの国人よりも感じるところがある、「最古にして最上のミステリ」と言えるだろう。そして人生の指南書でもある。 イングランド北部ヨークシャーの荒蕪地の分かれ道で、フランクリン・ブレークがエズラ・ジェニングスが去っていくのをただ見送っていたら、「その顔は太陽のごとく明るく、しかもいつでも見られるという太陽に勝る大きな長所を持つ」素敵なレイチェルに、犯罪者と思われたまま、エズラ・ジェニングスのような「生ける屍」の運命に陥っていたかもしれない。彼を呼び止め、雲が切れて光輝く草叢に座り、全てを打ち明けた時、ダイヤの紛失と、レイチェルの緘黙の原因が、悪名にまみれ、人々に疎まれている医師助手、エズラ・ジェニングスによって明らかにされ、フランクリン・ブレークはレイチェル・ヴェリンダーとの結婚という最高の人生を手に入れる。それは、エズラ・ジェニングスの恥多き人生の救済でもあった。 深々とした夜に読むにふさわしい名作である。 | ||||
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プレゼント用に手頃のサイズだった。 | ||||
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再読であるが40年近く前のことで内容はほぼ全て忘れていた。ただ前回は老執事ベタレッジの手記に愛着を覚えたような気がするが今回は前半300頁は冗長で興味の持続に苦労した。後半からは徐々に緊迫感が増してきて驚愕の展開が次々と起こり最後はどうなることかとハラハラしながら読み続けることができた。 前半は、月長石の消失、感化院出身の女中ロザンナを巡る騒動、令嬢レイチェルの結婚問題等が並行して進んでいくが書き手のとぼけぶりも影響してか今一つピンボケの感があった。ただ世慣れた老執事ベタレッジが我を忘れる場面(p261)にはそのストレートな表現に思わず感涙してしまった。狂信的なカトリック教徒のクラック嬢の寄稿も読者の嘲笑を誘うように描かれているが、周りから白眼視される中でも挫けずに信念を貫こうとする姿は健気ながら哀れであり考えさせられた。特に銀行家エーブルホワイト氏が登場する場面(p423-440)は劇的なクライマックスの一つになっており盲目的な信仰者との断絶が見事に表現されている。 後半のブラッフ弁護士の寄稿(p441)からは再度月長石の問題に戻り謎解きも本格化し前半の伏線も次々と回収されていく。ただ純愛ロマンスが根柢にあり人間心理が理想化され過ぎていてわざとらしいという感もある。トリックはやはり拍子抜けと言わざるを得ずその証明のための実験も綿密に展開されてはいるがそもそもの根拠が薄弱であり結果も出来すぎといえよう。物語としては十分面白いが謎解きミステリとしては古典とはいえやはり1930年代以降の傑作群には及ばないか。 探偵側としても前半の捜査は手ぬるいと言わざるを得ない。レイチェルの証言拒否があったとしてももっと徹底的に取り調べれば解決は容易だったようにも思われる。ただ本作はパズルを解くというよりも人間心理をベースにした濃密な物語を味わうというものであろうからそういう意味では十分に成功している。真相への道筋も行ったり来たりの多重解決のような感があり謎解きとしては十分な充実感があった。ただ純愛ロマンスも結局はゲームの仕掛けに過ぎなかったという安直な感じは否めなく、人間心理の深みや奥行きという点では同じ作者の「白衣の女」や「ノー・ネーム」の方に軍配を上げたい。 以下、登場人物一覧に無い人物を補足しておく。 アデレイド(故人):ジュリアの長姉、フランクリンの母、ブレーク氏の妻 カロライン:ジュリアの次姉、ゴドフリーの母、エーブルホワイト氏の妻 ジョン・ヴェリンダー卿(故人):ジュリアの夫、レイチェルの父 セリナ・ゴビイ(故人):老執事ベタレッジの妻 ブレーク氏:高名で莫大な財産家、フランクリンの父、アデレイドの夫 ナンシー:ヴェリンダー家の女中 アーサー・ハーンカスル(名前のみ):ジョン・ハーンカスル大佐の兄 サミュエル:側付きの召使、給仕 エーブルホワイト氏:フリジングホールの銀行家、ゴドフリーの父、カロラインの夫 ゴドフリーの二人の妹 フリジングホールの牧師 スレッドゴール夫人:ヴェリンダー家の客人 料理番の女:ヴェリンダー家の使用人 奥さま付きの女中:ヴェリンダー家の使用人 一番女中:ヴェリンダー家の使用人 ヨーランド夫妻:コブズホールの漁師夫妻、ルーシーの両親 ベグビー:園丁頭 モートビー:フリジングホールの呉服商 ジョイス:フリジングホールの警官、シーグレイヴ警察署長の部下 ジェイムズ:ヴェリンダー家の御者 ダッフィ:ヴェリンダー家の庭の草刈りを手伝う少年 ジェフコ氏:ブレーク氏(父)の従者 スモーレー:スキップ・アンド・スモーレー法律事務所の弁護士(?) マカン夫人:インド人が住んでいた宿屋のおかみ タミイ・ブライト:コブズホールで網をつくろっていた少年 園丁のおかみさん:ヴェリンダー家の使用人 グーズベリー(オクタヴィアス・ガイ):ブラッフ弁護士の事務所の走り使いの少年 ブラッフ弁護士の事務所の主席書記 | ||||
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この本のタイトルは原題が“The Moonstone”で日本語訳が“月長石”。……“moonstone”の訳は“月長石”でいいんだけど、ムーンストーンは、6月の誕生石で、ダイヤモンドではない。この話の中で、“moonstone”と呼ばれているのは、黄色いダイヤモンドです。……だから、日本語に訳すところで、間違ったんじゃないかと思います。……今だったら普通に、“ムーンストーン”で良かったんじゃないかと思います。 (以下ネタバレ) ありえない大きさの“ムーンストーン”を、インドのカリフからイギリスの大佐が奪い、それを大佐の姪が相続し、その日の夜に紛失。その時から、姪の運命は狂ってしまう。……あれこれすったもんだがあって、色恋沙汰もあって、少しずつ謎が解けていく。……はっきりいって、文章が、まだるっこしくて、わざと分かりにくくしてるような感じがする。……人に分かるようにってことを、全っゼン考えてないよねって言いたくなる。 例えば、……“そして、そもそもある種のもの(ダイヤモンドも含めて)が存在すると見なすある種の権利(純粋に哲学的根拠に基づいて)があるものかどうか怪しむことによる、ある種の実際的活動に対する私の次の努力の目撃者となるべき、その一日の幕をひらいた。”(597ページ最後から5行目から) ‥意味分かんねーよ。……こういう文章が延々と続くので、もういい加減に嫌になるのを、修行のつもりで読んでいくと、最後の200ページくらいから、話が加速度的に進んで、一気に結末まで引きずってってくれます。……結局、悪いやつはいるものだってことかな。……最後に、インド人の手に、ダイヤが取り戻されるのは、ちょっと感動的です。……因みに、冒頭で、件のダイヤモンドが、“月の象徴たる『4本の手の神』の額に象嵌されてあったという”と書かれていますが、インドの“月の神”といえば、“チャンドラ"です。そして、ダイヤモンドが、最後に”月の神“の額に戻される訳です。 ……巧妙なトリックとか、犯行の手口やアリバイが緻密に計算されてるというのでなく、単に物語としてのおもしろさがあり、そんなことだったのかという驚きが最後に待っているので、T·S·エリオットが“最初の、最大にして最良の推理小説"と評したのもうなずけます。 | ||||
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まだミステリを読み始めたばかりだった頃、書店の創元推理文庫の棚に行くと、その中に黄色い背表紙のひときわ分厚い本があって、手に取ってはみるものの、こんな長大でしかも古そうな小説を読む人などいるのかしらと思ったものだが、エッセイ集「深夜の散歩」(講談社版)の中で丸谷才一が「長い長い物語について」として、このコリンズ「月長石」を激賞しているのを見て、いつかは読もうと心に決めた本書を、ついに読むことができた。 ストーリーなどは他の方のレビューで紹介されているので触れないが、ミステリというよりも、19世紀の英国上流階級一家で起こった宝石盗難事件にまつわる人間模様を描いた探偵小説要素満載の「物語」としてじっくりと味わう、という読み方がよいだろう。自分も、750ページ以上ある本書を少しずつ半月以上かけてなるべくゆっくりと読んだわけが、500ページを越えたあたりからは我慢できずに一気呵成に読み切ってしまった。 最近は旧いミステリの新訳版の刊行が盛んで、読者としてはありがたいのだが、本作は150年以上前の古典である。翻訳も60年近く前のもので文体の古さは否めないのだが、読みにくさは全くない。たびたび変わる語り手の個性もうまく日本語で表現できている。本書に関しては新訳などせずこのままの訳で再版していって欲しい。(なお、時代にそぐわない不適切な表現を再版時に修正したと思われる部分がある。そこだけ活字が異なるのですぐわかる) | ||||
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