■スポンサードリンク
木曜の男
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
木曜の男の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全27件 21~27 2/2ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ブラウン神父シリーズでおなじみ、また思想家としても有名なチェスタトンの、なんともまあ不思議な長編小説です。外形的には無政府主義組織の爆弾テロの企みをめぐる一種の冒険譚、ですが、とてもそれだけでは語り尽くせません。まずは御用とお急ぎでない方はご一読あれ! とにかくいろいろな読み方ができます。冒頭からの、あれよあれよという展開(しかも最後に唖然とすることうけあい)を普通に楽しんでも良いでしょう。著者ならではの、ユーモアと逆説に満ち満ちた会話(男ばっかりの登場人物がやたらと飲み食いしながらしゃべるしゃべる!)や文章、そして思想を味わうのも一興。あるいは同時代的な文学状況のなかで、カフカやジョイスなんかと並べてみることもできるかもしれない。さらにはちょうど百年前の、世界戦争も社会主義国も知らないが、しかしすでに爆弾テロを知っている欧州、について考えるのもあり。などなど。 おまけ的に最近出た南條竹則訳と、古典といってよい(?)この吉田健一訳のそれぞれの特長(徴)をそれぞれのページに載せてみました。原文と比較対照したわけではないし、さらっと一読しただけなので不完全で一方的な印象ですが。 文字が小さい。のでページ数は少なくコンパクト。ほとんど50年前の出版ですが、会話に若干違和感があることを除くと思ったほど読みにくくはないと思います。個人的に強調したいのは、随所に現れるチェスタトンならではの警句や思想をそのものとして楽しむならこちらかと。例えば「彼は人間だったから、大きな力を前にして恐怖を感じる範囲では卑怯だったが、それを是認するほど卑怯ではなかった。」(P.80)。南條訳はもう少し口語調で自然な感じで(P.110)、ことによると原文のニュアンスにはより近いかもしれませんが、私は吉田訳のちょっと生硬な感じの方が合っていると思います。そうそう、中島河太郎の解説、というものに郷愁を感じる世代の方はやっぱりこっちでしょう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
何度も邦訳されていますが、ただの探偵小説ではない本作は2008年で原作からちょうど100年(帯でも解説でも触れていませんが)。タイトルにもこだわったよい出来になっています。 探偵(といっても警察組織の一員)が無政府主義者の組織(いまだったらテロ組織)に潜入。爆弾テロを防ごうとしますが、実はその組織とは・・・というすばらしい展開です。秘密をさぐって答えを導くのではなく、おおげさにいえば「探偵とは何か」が哲学的に問われています。正統的な文学=哲学小説。 しかも文章がうまい。100年前のイギリスの「大衆」の無気味さとか、人物たちのかけひきとか、キリスト教とか。私小説的かつ寓話的。すごい小説です。 ちなみに、邦訳がでたばかりのS・ジジェク『ロベスピエール/毛沢東』(河出文庫)でも引用されていて、思想史の文脈でも興味深い作品です。光文社さんの古典新訳シリーズの題材の選び方はおもしろいですね。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ブラウン神父物で有名なチェスタトンの数少ない長編。ブラウン神父物の機知・ユーモアとは別の不条理文学者としての本領を見せた作品。 全体の構成は怪しげな組織を舞台にした追跡型サスペンス仕立てだが、本題は現実認識の危うさである。物語の過程で主人公はハッキリとした自我を持たない。周囲の状況が把握できないのだ。そして、結末に到って状況は冒頭へと戻る構成。読む方は、物語が現実に起こったものなのか、主人公の妄想なのかも分からない。深い余韻を残す作品である。 チェスタトンの思想を反映した長編としての代表的傑作。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ある詩人が真っ暗な部屋にいるうさんくさいおっさんの命をうけて無政府主義団体に潜入するお話。その詩人はまんまとその団体の幹部の一人「木曜」に就任してしまうのだが、その前任者の「木曜」(話に出てきたときには既に死亡)の葬儀シーンがある意味抱腹もの。他の幹部たちの正体が次々と明るみに出る展開は掛け値なしに面白い。ラスボスの「日曜」の正体が明らかになる前後で話はグダグダになるが、そのグダグダさもラストの伏線になっているから食えない小説だ。最後にのけぞってしまうのは、物語の真相が最初の1ページに堂々と書いてあることだ。親友のベントリーに捧げられた小説らしいが、そいつが書いた「トレント最後の事件」をはるかに上回るすごさを味わってほしい。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
無政府主義中央会議の議員として「木曜」に選ばれた主人公が体験する奇妙な出来事を描いた物語です。まず、タイトルが秀逸。読者の興味を惹きつけます。 最初私はこれを推理小説だと思って読み始めましたが、最期まで読んでみると一種の思想小説と言った方が適当のようです。 前半部はスリラー調で緊張感がありますが、中盤の入り口あたりで話の筋は予想できるでしょう。ただ展開は予想できたのですが「一体この話をどうまとめるのだろう?」という疑問を持ちながら読み進めたところ、後半の3章で思いも寄らぬ展開になり唖然となりました。 本作はブラウン神父シリーズでチェスタトンが好きな人には戸惑う内容になっていると思います。 当時の文脈の中に身を置いていない私たちにはより難解になっていますが、チェスタトンがどう世界を解釈していたかを知る貴重な一冊ですので一読の価値はあるでしょう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
厳密に言えば、推理小説ではありません。一種の思想小説なのですが、ジャンルわけすることができない唯一無二の作品です。現実の世界から遊離した、知的建造物とでもいうような雰囲気を持った作品です。 これを読んでいてしきりに思い出されたのが笠井潔氏の一連の矢吹駆シリーズでした。木曜の男が日曜の男に絶望的な問いかけをします。"あなたは一度でも苦しんだことがあるのか?"と。答えはもちろん返ってくることはなく、底知れぬ暗黒の世界が読後に広がりました。 この作品から14年後、チェスタトンはカトリックに改宗しているのですが、神を受け入れた彼は心の平安を得ることができたのでしょうか。 この作品が書かれたのは1908年-明治時代の終わりです。彼はヨーロッパの衰退を見ることなく逝ったわけですが、できればもっと長生きして第二次大戦後のヨーロッパについても健筆を振るっていただきたかったですね。 少し読みにくい文章ですが、一読の価値ありです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
何とも言えない不思議さ、ストーリーの先の読めなさ。次はどうなるの?とハラハラしながら引き込まれるスリル。ウィットに富む文章と哲学的で詩的なキャラクター達とオリジナリティー溢れる逆説的設定。この物語に形容詞を付けるのは難しい。とにかく読んでみて欲しい。ただ一つ言えるのは、チェスタトンは本当に天才だということ。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!