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木曜の男
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木曜の男の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全35件 1~20 1/2ページ
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書庫整理のため再読. 創元「推理」文庫の一冊ではあるが,推理小説というよりサスペンス小説. 逆説が物語の基盤となっているという点では,『新ナポレオン奇譚』の系譜に連なるといえるかも. ▼ 以下,特に興味深かった箇所; ・「われわれは教育がないものが一番危険な犯罪者だという,上品ぶった英国人の考え方を否定します. 我々はローマの皇帝たちや,人を毒殺するのが得意だったルネッサンス時代の偉大な君主たちのことを忘れていなくて,最も危険な犯罪者は教育がある人間であることを主張します. そして今日最も危険な犯罪者は,法というものをいっさい無視する現代の哲学者だと言います. それに比べれば,強盗や重婚者は本質的には極めて道徳的な人たちなので,私はそういう人たちがかわいそうでたまらないんです. そういう人たちは,人間というものの根本的な概念は認めているんで,ただその求め方が間違っているに過ぎません. 泥棒は財産というものを尊重していて,ただそれを完全に尊重するために,自分のものにしたいだけなんです. しかし哲学者は財産の観念そのものを嫌って,私有財産などというものをいっさい無くしたがっているんです. 重婚者は結婚というものを尊重しています. でなければ,重婚するためのきわめて儀礼的で,そして宗教的でさえある手続きをとるはずがありません. しかし哲学者は,結婚を結婚というものとして軽蔑しています. 人殺しは,人間の命を尊重しています. ただ,自分自身の命をもっと充実させたくて,人殺しには自分ほどの価値がないと思える他人の命を犠牲にするだけなんです. ところが,哲学者は他人のだけでなくて,自分の命まで軽蔑します」(p.56-57) ・「貧乏な人間は反抗はしたことはあるが,無政府主義者だったことは一度もないんだ. 誰よりも貧乏な人間は,秩序というものに関心を持っている. 貧乏な人間は本当に国のことを思わずにはいられないので,金持ちはそんなことはない. いつだってヨットでニューギニアまで逃げていける. 貧乏なものは時には悪政に反対したことがあるが,金持ちは政治そのものに反対なんだ. 貴族がやったいくつもの戦争でも分かる通り,貴族は昔から無政府主義者だったんだ」(p.162) 本書に登場するロジックは,多かれ少なかれだいたいこんな感じ. ▼ ありきたりの小説に満足できなくなった人向け. | ||||
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ブラウン神父ものを読んでいるので、チャスタトンの少し変わった作風は、昔から感じていたところである。 さて、本書についてであるが、諧謔と逆説をふんだんに盛り込んだ、サスペンスファンタジーという感じの作品である。 物語の出だしは情景描写が細かすぎて、読みながら適当なイメージを浮かべながら何とか読み進めていくと、中盤から少しサスペンスを感じさせる展開に。 後半からファンタジー映画さながらの活劇風な流れになって、クライマックスの展開を期待させるが、最後の落ちはやや想像できる範囲だったので、少し残念。 物語全体として、作者が主張したかった事があったと思うが、小生にはいささか読解力不足。優れた作品なんだろうなぁ、と感じたが、小生の評価は並。 | ||||
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ミステリー小説好きなので一気読みできる作品です。 緊張感とサスペンスならではのワクワク感が味わえます。 ただしラストが韓国ドラマみたいな感じの終わり方に納得がいきませんでした。 | ||||
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思索が坂道を転がっていくような話で、笑える箇所も多い。一時の妄想のようだったラストも閑静な雰囲気で読後感がある。 | ||||
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なぜ、この小説が思想小説なのか、その場合、思想とは何か、そこにふれられた感想はないようだ。秩序と反秩序との錯綜した戦いを、詩人と無政府主義に対比させて描いている。ミルトンの「失楽園」とダンテの「神曲」の思想をチェスタトンがおのれのものとして描いた奇抜でいて深遠な小説。言うまでもなく旧訳創世記の第一章の創造の七日間を六人の刑事と謎の怪物である日曜で七人に割り当てているので、必読である。秩序と反秩序の関係は人類の永遠の課題だから、物語に深みがあるが、単なるうわべだけで読んだら、矛盾だらけのドタバタの稚拙な小説であろう。出来れば南條訳も参照したい。思想小説であればこそ別訳も読みたい。主人公サイムはSAME、同じという意味、南條訳では相変わらずと訳している箇所がある。これも一つの参考になる。 | ||||
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夢落ち | ||||
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期待通りの商品でした。 | ||||
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"だが、おまえたちは人間だった。秘めたる誉れを忘れなかった――全宇宙がおまえたちからそれをもぎ取ろうとする拷問機械に変わっても。””神は死んだ”のニーチェ没後から8年して発刊された本書は、推理作家として探偵小説の古典と見なされる作品を手がけた著者だけあって、緊張した展開から始まり一転、世界の豊かさ、素晴らしさを【再発見】する流れになるのが秀逸。 そして個人的には、19世紀のイギリスにおいて科学技術の発展と共にキリスト教の価値観が揺さぶられ(著者曰く)"印象派の様な"退廃的な文化が生まれる混乱の中で【それでも】と世界を見つめ直そうとする前向きな視線を冒頭の親友へのメッセージに感じ、何だか著者も救われたのだろうなと勝手に安堵したり。 19世紀のイギリスの混乱した様子を感じたい誰か。探偵小説的で、それでいて多層な作品構成に興味のある誰か、あるいは木曜日のお共にオススメ。 | ||||
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ヨーロッパ無政府主義中央会議へ乗り込む詩人サイムの奇怪なミステリである。日曜、月曜、--、土曜といった不思議な名前を持つ会議のメンバーとの対決でサスペンスが盛り上がるが後半からはメンバーの個性も薄まり強引な展開のためかあまり興味を持続できなかった。 随所に哲学的な表現があるが、これらは恐らく何かのパロディや比喩なのであろうが知識不足のためか楽しむことはできなかった。このような表現上の飾りを除くと実質的な内容はどれほどのものなのであろうか。強いて挙げれば最終章「告発者」で主人公サイムが「からだじゅう震えながら立ち上がっ」て叫ぶセリフ(p231)にありそうである。つまり世の中の急進的な改革を目指す無政府主義への哲学的な反論といったものと思われるが、もしそうだとすれば内容的には表面的なものにとどまっておりインテリ層の単なる弁解にしか聞こえなかった。もしかしたらそれらも含めて人間の矮小さを茶化しているかもしれないが、そうであればもう少し気のきいた風刺や喜劇的な要素が欲しいところである。 | ||||
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Gilbert Keith Chestertonの『The Man Who Ws Thursday』(1908年)の翻訳。 これまで多数の翻訳がある本書だが、英題に忠実な訳題となっているのがまず特徴か。本文もきわめて正確かつ読みやすく訳されており、またこれが肝心なところなのだが、ユーモアの部分もきちんと楽しく訳されている。 訳者によるチェスタートンについての紹介、年譜が非常に行き届いたもので、役に立つ。 信頼できる一冊だろう。 | ||||
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イギリスの文筆家チェスタトン(1874-1936)の長編小説。1908年、作家34歳のときの作品です。 序からは、チェスタトンが青年期に陥った精神的危機の様相が窺われる。この作品自体が、そうした嘗ての青年的苦悶に対して、文学を通して決着をつけようとして書かれたのかもしれません。そのためか、扱われている主題も思想だとか信仰だとかひどく勿体ぶった観念的・思弁的・宇宙論的なものとなっています。また、物語の筋道も整理されているというよりは混沌とした印象で、その結末も漠然としているように感じました。作家にとってのその主題の切実さが、読み手である私の側にはうまく伝わってこなかった、というのが率直な感想です。そうしたことも含めた全てが青年的と云うならば、確かに青年的な作品であると云えるかもしれません。 ともかく、ただのミステリではない、いろんな相貌を目まぐるしく見せてくる物語です。 「この全世界の秘密を教えてやろうか? それはね、僕らは世界の裏側しか知らないっていうことなんだ」 | ||||
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偽善者が、みずからの偽善がバレないように、その偽善を徹頭徹尾演じつづけるならば、その偽善は、善と見わけがつかなくなる、そんな逆説を、「偽善のすすめ」というエッセーでかつて説いていた有名なフランス文学者がいました。 それと同じように、アナキストが、みずからがアナキストだとバレないようにするためには、人前でつねにアナキストであることを公言し、アナキストを演じることだ、とそんな逆説を地で行く登場人物がまずあらわれます。 そのあと、ひっきりなしにこうした真と偽が相互に入れかわるような逆説的ドンデンがえしでもって物語が進行してゆきます。このあたりがこの小説でいちばんおもしろいところだといえます。 そしてあえて推しはかれば、かくなる真と偽が反転可能な、所詮相対的なものでしかない世界に生きる人間にとって、では、けっして偽にウラがえることのない、真に真なるもの、そういう絶対的なものはあるのかというのがこの小説の発する窮極の問いなのかもしれません。 ところで、じつはこのチェスタトンの小説(1908年)が書かれる少し前の1890年代、ヨーロッパ、とりわけフランスでアナキストたちによる爆弾テロが頻発しました。開催中のフランス議会に爆弾が投げこまれたり、フランスの大統領(サディ・カルノ)も刺殺されたりしました。 この小説はしたがって、けっして荒唐無稽な話ではなく、こうした世情不安が現実としてあった時代を背景に書かれています。 ただそれにしても、現在では、テロリストが、みずからがテロリストだとバレないようにするために、人前でつねにテロリストであることを公言し、テロリストふうを演じれば、ただちに不審人物として拘束されるでしょうね。 | ||||
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これは推理小説でも幻想小説でもない。 しいて言うならリアリズム小説。 なにがリアリズムかというと「その世界」の 特有の論理や文法、明晰さの質感といったものを ハイヴィジョンのように表現しえているところ。 視覚だけの話ではないでけど… これはチェスタトン、吉田健一どちらの力量による ところが大きいのかはわかないですが。 最初の方でサイムとグレゴリーが取り交わす秘密厳守の 約束のくだりあたりでその奇妙で不自然な質感を感じ始 めると思います。 同型の物語はあまたあるやもしれぬが、その世界を とってつけたような紋切型の幻想性や不合理性に たよることなく、その世界の論理や明晰性といった クリアな質感を忠実表現しえた(ように思える)。 そういう作品はあっただろうか? 文章をただおう快感に浸れる本。 | ||||
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日曜日から土曜日まで、七曜を名乗る男たちが集う秘密結社の一員になった、詩人の男。その男の正体は警官であった。彼は、無政府主義者の集団・七曜の秘密結社の内情を調査するために、木曜日の男となって、侵入するが…… かなり昔の小説なので、冒険譚といいつつも、大した話ではない。映画化しても、ほとんど映えないだろう。気球にのっている男を追いかけるとか、なんと間延びした光景だろうか。 ただ、この小説としての面白さは、日曜日の男の存在である。なんとも不可思議、その正体は一体誰なのか。そのがミステリ?的な要素もあるし、物語を引っ張る部分でもある。 | ||||
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ミステリなのか、ファンタジーなのか、冒険活劇なのか、それとも宗教寓話なのか、あまり馴染みのない一風変わった作風だけれど、 部分的には、そういればこういうのどこかで見た記憶があるなあと懐かしい感じもした。 この小説が世に問われたのは1908年。 ちょうどその10年後から一世を風靡したスラップスティック・コメディとか、ルイ・フイヤードの連続犯罪活劇に通じるアナーキーな楽しさがある。 あるいはそれをリメイクしたフランジュの幻想的なポエジーとか、映画『地下鉄のザジ』小説『日々の泡』あたりのジャッジーでマジカルな表現。 ほかには宮崎駿の『カリオストロの城』やフレンチ・アニメ『ベルヴィル・ランデブー』などのハチャメチャな追跡劇を思い起こすところもあった。 シャガールの絵を思い起こさせる表現主義的な舞台の書割から始まり、何気ない日常風景のなかでも常に奇妙に歪められたパースペクティブの連続で万華鏡のなかでも覗き込んでいるような気にさせる。 少ないタッチでまざまざと幻灯じみた影絵の雰囲気を浮かび上げさせる、絵画的というか視覚的に喚起力のある文体。 最初期のサイレント映画に影響を受けたような場面も少なくない。 無人の草原の真っ只中にある駅から黒集りの暴徒に追われて逃げ回るところなんかまるでゾンビ映画のようだ。 ロシア人形のように幾重にも正体が包み隠された間諜たちと心理的駆け引きを繰り返しているうちに、敵と味方の区別がつかなってくるところなんて実に痛快。 惜しむらくは第三幕でテンポが落ちて若干説明的になり過ぎてしまったところか。 個人的な好みとしては観念的な遊戯に走るよりも感覚的なスペクタクルに徹して欲しかった。 | ||||
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この本の主人公は詩人だが、「世界を破壊してしまいたい」という欲求を実行に移し始めた団体があることを教えられ、警察に入りその暗黒の団体「無政府主義者の団体」に潜入捜査をする。意外な展開があって徐々に仲間を獲得していくがその一方で「敵」もその強力さをいやというほど見せつけてくる。だがそのたびに人類のまともさと「神の栄光」を信じることで彼らは苦難を乗り越えそしてついに、という筋で、僕としては二つほど言いたいことがあるが、なぜ日本人が読むべきと感じたかは一応この筋からだけでもなんとなく読み取っていただけると思う。 僕も自分がやっているブログに「俺も世界を壊したいんだ」などと書き込まれて腹を立てたことがある。みんなそんなにこの世界を壊したいのか?臨済は言ってたぜ。お前らこの世界を離れてどこへ行くんだと。 言いたいこと二つとは、こういう絶望感はニヒリズムではあっても必ずしもアナーキズムではないということだ。まともな宗教ほど思想的にはパンクだし、現にこの小説が面白いのも時としてきわめてパンクな思想を表現するからである。ニヒリズムの実践がアナーキズムであるという図式に最後まで従ったがために、反対する人類の立場がカトリックと同一化されてしまい、結果この小説は見かけ上の宗教的な土着根性といったものを差っ引いて評価してやる必要がある。 もうひとつ、ラストで庭を剪定している「女の子特有の無意識に厳粛な表情」って何さ?ここでもカトリシズムへの甘えが出てしまったようにも思えるが。 | ||||
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推理小説家だと思っていたのだが、篠田一士によればどうもそうばかりではないらしいと知り読んでみた。スパイ小説ばりの心理戦が繰り広げられるスリリングさ、寓意に満ちた設定、そして何よりも豊富なセンスオブワンダー。あっという間に読んでしまった。読書の楽しみを堪能できる傑作。 | ||||
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詩人サイムと無政府主義者グレゴリーとの議論が楽しい本書はなかなかユニークな作品です。 詩人が喜ぶのは混乱だけだ。そうじゃないと言うなら、この世で一番詩的なものは地下鉄道だってことになる。 というグレゴリーに対し 君はつまらん死や散文を読むがいい。僕は時刻表を読みながら誇りの涙を流したいね。 と答えるサイム。 そして自分のペースに持ち込みグレゴリーが狙う無政府主義者の次期役員の地位 木曜日 にまんまとなりすますサイム。 実はサイムが潜入捜査のためにグレゴリーに近ずいた警察官であることが早い段階からわかるのですが、その展開の仕方がうまいです。 本書半ばくらいまでは知的な会話で物語が展開しますが、後半に入ってから、突如まるで筒井康隆のようなドタバタ喜劇に転じます。 そして一気に哲学的な終幕へ。 ラストをどのように解釈するか、何度か読み返す必要があるかもしれません。 それでも、前半部分の知的な展開が 楽しいので個人的にはOKな作品です。 | ||||
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訳者が巻末の解説に書いているように、この本にはさまざまな心象風景や、脳裏を通過した思想、懐疑、偏見、切実な希求、霊感、啓示がちりばめられている。筋書きは奇想天外、探偵小説にして黙示録、副題のごとく一つの悪夢である。 昔大学の恩師が、無から有を生み出す芸術家は尊く、決められた線路の上をダイヤ通りに運転する運転士を蔑むようにいっていたことを思い出した。しかしこの本では、混沌の中でなら汽車はどこにだっていける、しかし人間は魔術師であってヴィクトリアといえばヴィクトリアに着くんだと誇りの涙を流すと。そう、着かない可能性は千もあるのに、ちゃんと着くことに意味があるんだ。 | ||||
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副題には「A Nightmare 一つの悪夢」とあるが、これはミスだったんじゃないか。これでネタバレしてしまった、すべては悪夢だったっていうこと。というより、むしろ完全なスラップ・スティック、ドタバタ喜劇と言ったほうがいいかもしれない。 「ブラウン神父」シリーズもので有名なチェスタトンだが、この手のミステリーの初期の名作ではあるのだろう。いまだに新訳が出てくるっていうところを見ると・・・・・・・ | ||||
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