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水の墓碑銘
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水の墓碑銘の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.62pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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読んでいて半分くらいまでに、本のカバーに書いてある粗筋(プロット)の殺人までたどりついてしまう。さて、そこから先がパトリシア・ハイスミスの真骨頂。主人公ヴィクが妻や、彼女をとりまく男たちに対する心の声(心理描写)に磨きがかかっていく。ただ、最後の方の話の運びが性急というか不自然に思えた。いつまでも、このおかしな夫婦のかけひきを描き続けるわけにもいかず、ああいうことになったのかな?そもそも、ヴィクとメリンダの奇妙な夫婦関係が、どうも読んでいて腑に落ちないところがある。パトリシア・ハイスミスらしい奇妙な人たちともいえるのだが、まだ若いころの作品だからか、もうひとつ説得力が感じられないように思った。近年公開されたハイスミスの日記を読んだ訳者のあとがきによると、ここで描かれている夫婦は、ハイスミスとその愛人(女性)との関係がもとになっているとのこと。ただ、本を読んだ限りは、それほど深い人間関係は描き切れていないように思う。いろいろ文句をつけるようなことを書いてしまったが、パトリシア・ハイスミスのファンであれば、たいへん興味深く面白い読み物であることは変わりない。何があっても平常心を保とうとするヴィクのキャラは、出来の悪いリプリーといったところか。ヴィクの殺人を執拗に疑ってかかる町民ドン・ウィルソンは、「死者と踊るリプリー(Ripley Under Water)」に出てきたリプリーに執拗に嫌がらせを仕掛けてくるプリッチャード夫妻を思い出させる。ちなみに本書の原題は、Deep Water。あとヴィクが、かたつむりを飼っていて、交尾の様子を観察する様が、ねっとりと描かれているのも見逃せない(読み逃せない)。 | ||||
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ネタバレになるので書きません。 でも良い小説でした。 | ||||
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読者をいつの間にか主人公に仕立て、同じ空間同じ時間を共有している様な、錯覚に陥れるのが優れた作家だとすれば、見事にはまってしまった。キャロルとは全く違う、歪んだ夫婦生活が破綻していく様を、イライラするほど克明に描いてゆく。そして気がつくと、私はヴィクになっていた。 | ||||
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『パワー・オブ・ザ・ドッグ』『クライ・マッチョ』『気狂いピエロ』。この半年間、自分の読んだものだけでも、古い作品が映画化を機に、次々と翻訳され出版されてきた。 さらには本書である。映画では『底知れぬ愛の闇』との邦題で改訳復活を遂げた。それ も『フラッシュダンス』『危険な情事』など1980年代のスクリーンを席捲したエイドリアン・ライン監督に、今をときめくベン・アフレック主演起用で! これを書いている現在、僕は諸事情により未だ映画は観ていないが、読了した今は必ずチェックしようと思う。 さて、本書! それにしても、殺人に至るまでの描写が濃厚なスープのようである。こんな夫婦生活があるのかと驚くくらいゆとりのあるセレブ生活なのに、奔放極まりない妻により与えられる苦痛を心のなかで誤魔化そうとする仮面の夫。夫婦の間に可愛らしい女の娘がいるのに、母であるよりも女としての魅力を振りまくことにすべてを費やす優しさなどこれっぽちも感じさせない妻。ぎりぎりと歯噛みする割に何もできない夫の中で、不気味な不燃物が溜まってゆく。 そんな不和と不満が日に日に堆積する日常のなか、殺人の機会はいきなり訪れる。狙われるのは妻の相手の若い男。さあ、今なら殺せる。誰も見ていない。もう訪れることがないかもしれないそんな千載一遇の好機が、夜のプールに訪れる。 ただ一度のチャンス。そして沈む死体。夫の殺人と信じて疑わない妻。そんな緊張感で後半は迎えられる。正直、前半は退屈な思いでスタート、徐々にネジが巻かれ、沸点に達し、遂に殺人。後半は、その後の夫婦の対立構造という緊張感に、いきなりリーダビリティのスイッチが入る展開となる。 最期まで手に汗握るスリル&サスペンスの展開はなるほど映画の題材にも十分なりそうだし、なんと言ってもミステリーを作り出す展開のお手本となりそうな古典作品でもある。クライム小説の古典。ノワールの古典。心理サスペンスの古典。スリラーの古典。 サスペンス映画の原作者としてあまりに有名なパトリシア・ハイスミスだが、この作家の本を手にするのは初めてであった。本書がアメリカで出版されたときはぼくは1歳。明らかに時代のすれ違いだ。訳者あとがきで、改めてハイスミスの際立った個性、スリリングな人生と情熱的な生き様を知った。この作家の人生の中に作品誕生の秘密が多く隠されていそうだ。 さらに小説の道具立てとして使われるカタツムリにぼくは興味を覚える。主人公が飼っているカタツムリはのなだが、交尾時に互いをヤリで突つき合うというバイオレンスな描写。また、それを観察して楽しむ主人公の姿が終盤でクローズアップされるシーンが印象的なのだ。今ならカタツムリの交尾はYoutubeで容易に観察できる(ぼくは確認しました)だろうが、この当時、あまりに専門的だったであろうこの描写を、主人公夫婦のメタファーとして用いているハイスミスの博学ぶりには驚かされた。映画化作品にもこのメタファーは用いられているのだろうか? | ||||
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資産家の主人公の妻が不貞で次々とボーイフレンドを家に連れてきて・・・というお話。 上記だけだと、何の話か判らないと思いますが、妻の挙動に夫がまいって、ふとした弾みに・・・という日常から非日常に転落していく感じのサスペンスでした。 普通のサスペンスだと、主人公がどんどん精神的に追い詰められていくタイプの話に収斂していきますが、そこはハイスミスだけあって、読者の予想を裏切る展開で話が進み、それが本書の面白さになっております。 ネタバレにならない程度に書きますが、この主人公の夫が特異なキャラクターで、犯罪に手を染めても全く動転したり、焦ったりしないで、普通に生活を続けるという感じで、妻も不貞を重ねても全く反省しないし、それでいて子供の面倒もきちんとやったりと、こういう情緒的で曖昧なキャラを描かせたら右に出る者のいない感じで、実際にいるかどうか知りませんが、リアリティがあり、流石ハイスミス、筆力のあった人だなぁと感心しました。 書かれてから大分経ちますが今呼んでも相当面白いサスペンス。ミステリ・ファンは是非。 | ||||
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本書の主人公ヴィクは寝盗られ男だ。妻のメリンダは7人もの男と浮気をする。周りの友人は、ヴィクを、聖人なみの忍耐心を持つ奇人とみている。 ヴィクの怒りの捌け口は、妻ではなく浮気相手に向かう。浮気相手の1人が気に食わなかったので殺したと吹聴して回る。しまいには、妻の6番目の浮気相手チャーリーを、パーティー会場のプールで2人きりになったとき、本当に殺してしまった。 皮肉なことに、妻の行状を見て見ぬふりをしてきたヴィクの、自己を欺く能力のおかげで、妻に「あなたが殺した!」と罵倒されてもひるむことなく、自分は犯人ではないと演じ切ることができた。 さて、この夫婦このあとどうなっていくのだろうか。ヴィクはいつまで自分を欺いていられるのだろうか。 本書の冒頭には、ドストエフスキー『悪霊』の登場人物のセリフが、エピグラフとして引用されている。おそらく著者は、ヴィクの気持ちを代弁するものとして引用したのではないか。 自分の性格ほど格好の隠れ蓑はない、なぜならだれ一人としてそんなものを信じていないからだ・・・。 「性格」と訳された英語はcharacter。Characterには、性格という意味とあわせて、登場人物・配役という意味があることに注意しておこう。 当時のアメリカ(本書の舞台は1950年代のニューイングランド)が、たとえ夫婦関係において「進んだ」国だったとしても、本書で描かれた夫婦関係やヴィクの「性格」は、明らかに異常である。だが、著者にとって正常か異常かは問題ではない。著者が描きたいのは、他者と交わる中で、「性格」が移ろいだり特定できなかったりする、人間の摩訶不思議(ミステリー)なのだから。 | ||||
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パトリシア・ハイスミスの作品には、殺人を犯す主人公 が多く出てきますが、社会の憎むべき敵として書かれる のではなくて、野蛮でも凶暴でもないごく普通の人間と して描かれています。この作品に出てくる主人公も普段は礼儀正しくて信頼も 厚く、それは殺人を犯しても誰からも疑われないほどで 、犯行を疑う妻は必死で夫の殺人を告発しますが誰も耳 をかしません。普通であれば、この妻の方に読む側は同 情して感情移入しますが、なぜか殺人を犯した主人公の 方に感情移入してしまい、妻に対して苛立ちを感じてし まうから不思議です。この主人公と妻の駆け引きがとても面白くて、ラストま でスラスラと読めました。 | ||||
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