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(短編小説)
本日、サービスデー
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本日、サービスデーの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.82pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全13件 1~13 1/1ページ
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本作は中編である表題作に短編四作を収録したものであるため、 各作品ごとにレビューする。 『本日、サービスデー』 鶴ヶ崎雄一郎は小さな商社の文房具を扱う部門の課長で、毎朝朝食も摂らずに 少し無理して購入した家を出て、途中の立ち食い蕎麦屋で蕎麦をすすり、 会社まで片道二時間半かけて通勤する日々を送っていた。 それだけではなく、会社では競合にお得意先を奪われそうになったり、 年下の上司である岡島によって早期退職勧告を受けたり、家では家族に ぞんざいに扱われ、気が滅入ったときにレンタル落ちのビデオテープの 古い映画を観ながら呑む発泡酒も一本に制限される始末だった。 ところがある日の朝。家族全員に見送られただけでなく、妻から五千円を 持たされ、電車の座席に座ることができ、しかもその両隣が美女で、 毎朝行く立ち食い蕎麦屋の店員も愛想良く接客するという幸運が連続する。 すると、鶴ヶ崎の目の前に自らを悪魔と名乗るビッチ系ファッションに 身を纏った女が現れ、『すべての人類には生涯にただ一日だけサービスデーが訪れ、 今日一日は鶴ヶ崎の番であり、人生で唯一幸運に恵まれる日である』と 告げられるとともに、神はサービスデーの存在やいつがサービスデーなのかを 告げることはないため、悪魔である自分が鶴ヶ崎に告げに来たのだという。 一方、悪魔の女と入れ替わりに二級天使ガブリエルと名乗る背広の男が現れ、 サービスデーがあることを知られてしまったことを詫びるとともに、 この幸運を変なことに行使しないよう一日中ついて回らせて欲しいと 依頼してくる――が前半のあらすじ。 九州へ向かう岡島を乗せた飛行機が墜落するという描写を通じ、 一見すると理不尽に見えることの裏にはそこに行き着くまでに何らかの 理由が存在するという教訓を描きたかったのだろうかと推察すると同時に、 本作執筆時においてこのエンディングはハッピーエンドだったのかも 知れないが、レビュー日現在において環境が変わり、必ずしもそうでは なくなっていることに時の流れの儚さを覚える。 『東京しあわせクラブ』 元家電量販店の店員で、現在は新人ながらもいくつかの締め切りを抱える 作家となった主人公は、担当編集者から銀座のバーに勤める飛鳥という 女の子が主人公に会いたがっているという話を聞き、編集者とともに店を訪れる。 飛鳥と顔を合わせた主人公は、彼女から、以前主人公が文芸誌にエッセイで書いた、 強盗殺人事件の犠牲者となったスーパーの女性店員にとって最後の客となった 主人公が今でも保管している当時のレシートを譲って欲しいと依頼されるが、 珍奇な依頼の理由を質した主人公は、飛鳥から定期的に開催される 『東京しあわせクラブ』で披露したいからだと聞き、譲ることはできないが、 その集まりに同席することを条件にレシートを貸し出すことを承諾する。 後日、主人公と飛鳥こと佐藤英子は公民館で行われた『東京しあわせクラブ』の 会合に顔を出すが、そこで行われていたのは、子どもの虐待が行われた家の 表札や自殺した主婦が死の直前まで履いていたサンダル、太宰治が玉川上水に 入水自殺する際に使われていた紐、中堅女優の首つり写真といった、事件や 犯罪の痕跡を語る小道具を披露しあい、自分自身にそのような不幸が起きて いない幸福をかみしめることだった――が序盤のあらすじ。 他人の不幸を見て自分でなくて良かったと安堵するさまは、気持ちは 分からなくもないが、それを差し引いても悪趣味であり、また、 他の参加者たちがこれらの物品をどうやって手に入れたのかを考えると ある意味ホラーだったりする。 『あおぞら怪談』 語り手の大学時代、バイト先のお茶屋でともに働いていた日下部という男が 住む墨東の旧赤線地帯にある娼館を改装したアパートに、自らを『るり子』と 名乗る女性の右手首から先の幽霊が居着いており、日下部の留守中にるり子が 家事全般を担ったり、日下部が彼女のために買ってきたオロナインH軟膏が いつの間にか使われていたりと、いつの間にか日下部とるり子は奇妙な同居生活を 送っていた。良好な関係を築いているとはいえ、このままでは日下部が生涯に わたり呪われた一生を送るのではないかと懸念した語り手は、同じ大学で 女子大生霊能力者としてメディアに登場していた白瀬薫に相談を持ちかける のだが――が本章のあらすじ。 タイトルのとおり、『怪談』ではあるものの、ストーリーの種類としては コメディに近い。 『気合入門』 団地に住む少年を主人公とし、真夏であるにもかかわらずエアコンではなく 扇風機が使われている描写があることからおそらく舞台となっているのは次々と 団地が建設された高度経済成長期で、アメリカザリガニを意味するマッカチンを 特別な存在として描いていることから、まだこの頃は外来種である アメリカザリガニよりも在来種であるニホンザリガニのほうが多かったという ことを窺い知ることができる。 また、時代背景ならではの理不尽と、理不尽ゆえに早く大きくなりたいという 少年の姿が巧みに描かれている。 『蒼い岸辺にて』 気がつけばすべてが青みかかった世界にいた早織は、船頭によって自身が 自殺したことを知らされるとともに、もし自分が死ななかったらどうなって いたかを知った彼女は――というストーリー。 ご都合主義的な話とも取れるが、自殺をするというのはある意味において 当たるかも知れない宝くじを買うことを放棄するようなものだということを 思い出させてくれる。 | ||||
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何回も読み返しました。友人にも紹介済み | ||||
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かたみ歌や花まんまとは違った、 朱川湊人ワールドを楽しめます。 「本日サービスデー」は一生に1度だけ 何でも願いがかなう1日を、 しがないサラリーマンが 知ってしまうドタバタ劇から、 ある種の品物を集めている、 描写が怖かった「東京しあわせクラブ」。 手だけの幽霊、るりこさん。 のかなりいい話、「あおぞら怪談」 弟くんが兄貴の釣ったザリガニよりも 多く釣ろうとして、マッカチンを 釣ったのに…。の最後があまりにもかわいそうな 「気合入門」 自殺したわいいけど…あらら?の 未来の卵がとても切ない 「青い岸辺にて」 と5作の話が入っています。 どれも読みやすく朱川湊人さんの 違う作品の形が読めますよ。 | ||||
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今までの朱川作品とは一味違う,短編5編。 「本日サービスデー」軽い題名と、軽いタッチで描かれた本作は 特に今までとは印象が異なるが、しかし十分楽しめる。著者の 筆致力の巧みさを再確認させられた作品でもある。 まず題名がいい。神に与えられた特別な1日をさらっと「サービスデー」 で済ましてしまうところ。スーパーじゃないんだから、とつい思って しまう。 しかし内容は奥深い。簡単に何でも叶えられるかというと、そうでもなく、 いろいろと制約があったりする。セクシーな魔女や真面目なサラリーマン風の 「二級」天使が出てきたり、一見ドタバタかと思いきや、壮大な感動モノである。 「東京しあわせクラブ」これは賛否別れるだろう。なぜなら読後感が悪いから。 でもミステリタッチなのは珍しい。これも著者の新しい面を見せられた感じだ。 「気合入門」超短編のこの作品だけ異色だ。他の作品が人の生き死にを扱っている のに対し、この作品は少年目線で描かれた夏休みのある1日。 初めから最後まで活き活きとした文体だ。 小学4年の「兄貴を倒す」と決めた1年の弟がしたのは、ザリガニを兄貴より多く釣る こと。その日そこで得たものは。教訓めいた話である。 | ||||
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「本日サービスデー」は、これって本当に朱川作品か?と思わせるもので、星新一テイストを感じさせます。主人公のキャラ設定はよりしっかりしており、構成も流石で楽しめました。おそらく試験的な作品なのでしょう。朱川氏の引き出しの多さが垣間見れます。先日、自分以外の262名がコースを誤り、最終走者の1名が優勝したという小学生マラソン大会のニュースが流れました。それってその子の「サービスデー」だったのでは?と自分の娘と見つめ合ってニヤニヤ。自分たちのサービスデーは過ぎた?いやまだこれから? | ||||
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昭和の香り、ホラー系、なんて枕詞の朱川さんの短編集です。 一つ一つが結構塩コショウが効いていて、楽しめます。 あっさりしているという感じもありますが、それぞれがよく 練りこまれていて、読みやすく、分かりやすく、やっぱり上手い。 昔夢中になった星新一さんのショートショートの趣もありますが、 何と言っても、世にも奇妙な物語って感じでしょうね。 実際かたみ歌の一つは使われていましたし、この作品のいずれもが、 すぐにでも映像化されておかしくない完成度。 もうちょっと濃密な作品を期待されていた方にはちょっとあっさり していると思われるかもしれませんが、作者の懐の深さと思えば、 結構感服つかまつるという感じ。 80点。昭和の香りとかホラーとか、そういった枠を超えて。 読みやすい一冊です。 | ||||
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朱川さんの著作は数年前は結構熱心に読んでいたが、いつの間にか間隔が空いて、2年ぶりぐらいに手にした。本書は5つの作品が収録された短編集だ。氏の短編集は一冊が一つのテーマに沿って進行する場合もあるが本書は各々が完全に独立している。 表題作の「本日、サービスデー」は少しふざけた題名だが、誰でも一生に一日だけどんな願いでも叶う「サービスデー」を神様が用意してくれるという設定で、たまたま自分のサービスデーを知ってしまった、くたびれた中年男性がどのように行動するかが描かれており、ほろりと優しい気持ちにさせてくれる良い作品であった。 その次の、「東京しあわせクラブ」は最初は心温まる話かと思ったが、途中から急展開して最後は少し背筋が寒くなるような氏のお得意のモダンホラー。残りの3作はいずれも軽いが、読了感はさわやかであった。 久しぶりに朱川ワールドに浸ったが、やっぱり面白くてあっという間に読み終わってしまった。 | ||||
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5編の短編集。『本日はサービスデー』は見てくれもパッとしない43歳の鶴ケ崎、気がつけば毎日3時間近くかけての会社勤め、子供達とのふれあいも無くただ今日は昨日の続き。何も無い毎日。が、あろう事か後輩上司からリストラ勧告を受け・・・。となると暗くなりがちですが、何故かそこにお色気むんむんの女悪魔とサラリーマン風の男の天使、どうみても逆だろっていう二人が出てきて「本日はあなたの一生に一度のサービスデーです。どんな願い事でも叶う!一日だけの世界の王様。」と言う。真っ先に思いついたのが・・・。さてあなたなら何を願いますか? 『蒼い岸辺にて』はあの世とやらに行く時渡る三途の川が舞台。寿命前の死、つまり自殺した沙織は魂が体から離れるのに時間がかかる。その間、周りの人々の人生に沙織が消えたことで支障をきたさないようにこれから掴むはずだった彼女の未来を渡し守が三途の川に捨てていく。起こるはずだった未来の出来事を見せられ捨ててきた世界に里心がつく。が、帰りたい!と思った時は既に船の上・・・。寿命まで生きてみなけりゃ分かりません。人生最後で帳尻が合うようになっているとか? | ||||
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直木賞作家である著者の最新作は 『幸運を呼ぶ』小説と銘打った短編集。 トイレの鏡から出てきた エナメルボディコン姿の美女から 今日は、一生に一度だけどんな願いもかなう「サービスデー」 ―と告げられた、しがないサラリーマンの「一日」を追う表題作『本日、サービスデー』 殺人事件の被害者が人生で最後に打ったレシート 子どもを虐待死させた家の表札 飛び降り自殺したアイドルの脳漿の一部 某公務員に貢がせた外人ホステスが着ていたスパンコールのビキニ など、話題となった事件に関する様々な「もの」を持ちあい、品評する 奇妙な人々と著者と思しき男性が出会う『東京しあわせクラブ』 自殺した女性が、自分の体から魂が抜けきるまでに経験する奇妙な出来事(『蒼い岸辺にて』) など、全5作を収めます。 どの作品も、日常と紙一重のファンタジーにのせて 人の心の諸相を真正面から描き出す、筆者らしい作品なのですが、 デビュー作「フクロウ男」や『白い部屋で〜』の系譜に属する 人間の醜さをこれでもかと見せ付ける作品は、今回はおやすみ。 見事に、帯にあるとおり、「幸福を呼ぶ」短編集に仕上がっています ・・・・・・・まぁ、それはそれでよいし 後味が悪くなく読めたほうがありがたいのですが なんというか、拍子抜けの感が否めないのも事実。 ぜひ筆者には、ひたすら嫌悪感をもよおし 一生心に残るような悪夢を、また見せていただきたいものです☆ なにはともあれ、読みやすさでは抜群の本作☆☆ これまで著者の作品を読んだことがない方には、とてもおススメです☆ | ||||
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日常生活の中で不思議な体験をする5つの短編集で、どれも読みやすかった。個人的には、表題作の「本日、サービスデー」と「蒼い岸辺にて」がおもしろかった。 「本日、サービスデー」は、早期退職を通達されたサラリーマンが一生に一度自分の望みが何でも叶うサービスデーの存在を知ってをどう過ごすかを描いた話で、自分だったらどうするだろうと考えながら楽しんで読むことができた。おもしろい発想だったので、この話だけで何人かのサービスデーの過ごし方を描いてほしかった。 「蒼い岸辺にて」は、自殺した女性が三途の川を渡る前に自分の未来に起きたであろう出来事を振り返る話。その中に出てくる「人間の悩みは運動会の障害物競走でのハシゴくぐりで、ちょっと肩が引っかかってアタフタしているようなもの。抜けてしまえば何であんなにアタフタしていたのか自分でもおかしくなるくらい。きっとお前も早まらなかったら、いつかそう思ったはずだ。生きるも自由、死ぬも自由。だったら今度は生きる自由を選んだら絶対に面白い」というセリフにはとても共感できた。 | ||||
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収められている5作品に共通するのが「生きる希望」 神様からの一生に一度のサービスデーをひょんなことから知ることになった「本日サービスデー」は、ありがちな設定なものでありながら、ラストで味方を得たような力強さを読者に与える。 その人の人生の時間は、その人にこそ意味のあるものだけに、他者との共感は難しい。 そこに敢えて切り込み、短編で応援歌とも言える作品を繋げたこの本。 奮起する気持ちが必要な時、そっと応援されているような力を読者に与える本に思う。 | ||||
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5編からなる短編集。 「東京しあわせクラブ」「あおぞら怪談」「青い岸辺にて」の3編は、 いつもの朱川作品に近いように思いました。 「気合入門」はエッセイに近い感じでしょうか。 少しテイストが違うかなと思いました。 そして表題作ですが、これはなんともしっくりこない感じの作品でした。 ちょっと軽いというか、悪く言うと薄っぺらく感じてしまいました。 せめて巻末に持ってきたらよかったのでは、と思いました。 最初がこの作品だと、なんだかふわふわした一冊になってしまったように思います。 この本は、朱川作品をはじめて読む人にはあまり薦めたくないです。 なぜなら、朱川先生はもっと面白いお話を書く方だからです。 わたしは次回作に期待します。 | ||||
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文章には作家、作家の独特な性格が出るものですが、この本は 変なクセがなく、読みやすく、楽しく読めました。奥田英朗、 垣根涼介、荻原浩なんかと似たような文章タッチに感じました。 本日、サービスデーは「誰にでもこんな日があったらさぞ 楽しいだろうな」と思いながら、物語にドンドン引き込まれて 行きました。面白い! 東京しあわせクラブ、あおぞら怪談などは見ようによっては かなり危ないシチュエーションでシリアスネタだが流石、 ほのぼのとユーモアを感じさせる上手い仕上りにしている。 この人の本は、一種の清涼剤として読むにはとてもよさそう に感じました。 | ||||
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