(短編小説)
本日、サービスデー
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本作は中編である表題作に短編四作を収録したものであるため、 各作品ごとにレビューする。 『本日、サービスデー』 鶴ヶ崎雄一郎は小さな商社の文房具を扱う部門の課長で、毎朝朝食も摂らずに 少し無理して購入した家を出て、途中の立ち食い蕎麦屋で蕎麦をすすり、 会社まで片道二時間半かけて通勤する日々を送っていた。 それだけではなく、会社では競合にお得意先を奪われそうになったり、 年下の上司である岡島によって早期退職勧告を受けたり、家では家族に ぞんざいに扱われ、気が滅入ったときにレンタル落ちのビデオテープの 古い映画を観ながら呑む発泡酒も一本に制限される始末だった。 ところがある日の朝。家族全員に見送られただけでなく、妻から五千円を 持たされ、電車の座席に座ることができ、しかもその両隣が美女で、 毎朝行く立ち食い蕎麦屋の店員も愛想良く接客するという幸運が連続する。 すると、鶴ヶ崎の目の前に自らを悪魔と名乗るビッチ系ファッションに 身を纏った女が現れ、『すべての人類には生涯にただ一日だけサービスデーが訪れ、 今日一日は鶴ヶ崎の番であり、人生で唯一幸運に恵まれる日である』と 告げられるとともに、神はサービスデーの存在やいつがサービスデーなのかを 告げることはないため、悪魔である自分が鶴ヶ崎に告げに来たのだという。 一方、悪魔の女と入れ替わりに二級天使ガブリエルと名乗る背広の男が現れ、 サービスデーがあることを知られてしまったことを詫びるとともに、 この幸運を変なことに行使しないよう一日中ついて回らせて欲しいと 依頼してくる――が前半のあらすじ。 九州へ向かう岡島を乗せた飛行機が墜落するという描写を通じ、 一見すると理不尽に見えることの裏にはそこに行き着くまでに何らかの 理由が存在するという教訓を描きたかったのだろうかと推察すると同時に、 本作執筆時においてこのエンディングはハッピーエンドだったのかも 知れないが、レビュー日現在において環境が変わり、必ずしもそうでは なくなっていることに時の流れの儚さを覚える。 『東京しあわせクラブ』 元家電量販店の店員で、現在は新人ながらもいくつかの締め切りを抱える 作家となった主人公は、担当編集者から銀座のバーに勤める飛鳥という 女の子が主人公に会いたがっているという話を聞き、編集者とともに店を訪れる。 飛鳥と顔を合わせた主人公は、彼女から、以前主人公が文芸誌にエッセイで書いた、 強盗殺人事件の犠牲者となったスーパーの女性店員にとって最後の客となった 主人公が今でも保管している当時のレシートを譲って欲しいと依頼されるが、 珍奇な依頼の理由を質した主人公は、飛鳥から定期的に開催される 『東京しあわせクラブ』で披露したいからだと聞き、譲ることはできないが、 その集まりに同席することを条件にレシートを貸し出すことを承諾する。 後日、主人公と飛鳥こと佐藤英子は公民館で行われた『東京しあわせクラブ』の 会合に顔を出すが、そこで行われていたのは、子どもの虐待が行われた家の 表札や自殺した主婦が死の直前まで履いていたサンダル、太宰治が玉川上水に 入水自殺する際に使われていた紐、中堅女優の首つり写真といった、事件や 犯罪の痕跡を語る小道具を披露しあい、自分自身にそのような不幸が起きて いない幸福をかみしめることだった――が序盤のあらすじ。 他人の不幸を見て自分でなくて良かったと安堵するさまは、気持ちは 分からなくもないが、それを差し引いても悪趣味であり、また、 他の参加者たちがこれらの物品をどうやって手に入れたのかを考えると ある意味ホラーだったりする。 『あおぞら怪談』 語り手の大学時代、バイト先のお茶屋でともに働いていた日下部という男が 住む墨東の旧赤線地帯にある娼館を改装したアパートに、自らを『るり子』と 名乗る女性の右手首から先の幽霊が居着いており、日下部の留守中にるり子が 家事全般を担ったり、日下部が彼女のために買ってきたオロナインH軟膏が いつの間にか使われていたりと、いつの間にか日下部とるり子は奇妙な同居生活を 送っていた。良好な関係を築いているとはいえ、このままでは日下部が生涯に わたり呪われた一生を送るのではないかと懸念した語り手は、同じ大学で 女子大生霊能力者としてメディアに登場していた白瀬薫に相談を持ちかける のだが――が本章のあらすじ。 タイトルのとおり、『怪談』ではあるものの、ストーリーの種類としては コメディに近い。 『気合入門』 団地に住む少年を主人公とし、真夏であるにもかかわらずエアコンではなく 扇風機が使われている描写があることからおそらく舞台となっているのは次々と 団地が建設された高度経済成長期で、アメリカザリガニを意味するマッカチンを 特別な存在として描いていることから、まだこの頃は外来種である アメリカザリガニよりも在来種であるニホンザリガニのほうが多かったという ことを窺い知ることができる。 また、時代背景ならではの理不尽と、理不尽ゆえに早く大きくなりたいという 少年の姿が巧みに描かれている。 『蒼い岸辺にて』 気がつけばすべてが青みかかった世界にいた早織は、船頭によって自身が 自殺したことを知らされるとともに、もし自分が死ななかったらどうなって いたかを知った彼女は――というストーリー。 ご都合主義的な話とも取れるが、自殺をするというのはある意味において 当たるかも知れない宝くじを買うことを放棄するようなものだということを 思い出させてくれる。 | ||||
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何回も読み返しました。友人にも紹介済み | ||||
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朱川湊人先生の作品は大好きでたいていの作品は読んでいるのですが、これは紛れもなく彼の作品のうちでは「駄作」に入るでしょう。 「本日、サービスデー」はしがないサラリーマン風の天使とセクシーな女悪魔が登場したりとまるで赤川次郎の作品のようなノリ。この世界では全員「願い事が全て叶う日」が充てがわれている。今日がサービスデーだと知った主人公は普通に「大金を下さい」「世界平和が実現してほしい」みたいな願いを叶えようとしない。ヒネリもなく、まるでウェブ小説を読んでいるかのような出来。他の方も書いている通り、「世にも奇妙な物語」に出てきそうな話(しかし記憶に残らないような出来の奴)。 「東京しあわせクラブ」はまだキャラクター描写が優れていたが、これもオチが在り来たりな作品。悲惨な事件現場の物を見せ合うクラブの話。 「あおぞら怪談」は右手だけの幽霊と一緒に住んでいる男性の話。彼の友人である主人公は取り憑かれてしまうと心配してなんとか除霊しようとする。この話はまだ作品としては完成度が上だが、先生の作品ではもっと優れた作品集があるので、生粋の朱川ファン以外は手に取ることをお勧めしません。 | ||||
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かたみ歌や花まんまとは違った、 朱川湊人ワールドを楽しめます。 「本日サービスデー」は一生に1度だけ 何でも願いがかなう1日を、 しがないサラリーマンが 知ってしまうドタバタ劇から、 ある種の品物を集めている、 描写が怖かった「東京しあわせクラブ」。 手だけの幽霊、るりこさん。 のかなりいい話、「あおぞら怪談」 弟くんが兄貴の釣ったザリガニよりも 多く釣ろうとして、マッカチンを 釣ったのに…。の最後があまりにもかわいそうな 「気合入門」 自殺したわいいけど…あらら?の 未来の卵がとても切ない 「青い岸辺にて」 と5作の話が入っています。 どれも読みやすく朱川湊人さんの 違う作品の形が読めますよ。 | ||||
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今までの朱川作品とは一味違う,短編5編。 「本日サービスデー」軽い題名と、軽いタッチで描かれた本作は 特に今までとは印象が異なるが、しかし十分楽しめる。著者の 筆致力の巧みさを再確認させられた作品でもある。 まず題名がいい。神に与えられた特別な1日をさらっと「サービスデー」 で済ましてしまうところ。スーパーじゃないんだから、とつい思って しまう。 しかし内容は奥深い。簡単に何でも叶えられるかというと、そうでもなく、 いろいろと制約があったりする。セクシーな魔女や真面目なサラリーマン風の 「二級」天使が出てきたり、一見ドタバタかと思いきや、壮大な感動モノである。 「東京しあわせクラブ」これは賛否別れるだろう。なぜなら読後感が悪いから。 でもミステリタッチなのは珍しい。これも著者の新しい面を見せられた感じだ。 「気合入門」超短編のこの作品だけ異色だ。他の作品が人の生き死にを扱っている のに対し、この作品は少年目線で描かれた夏休みのある1日。 初めから最後まで活き活きとした文体だ。 小学4年の「兄貴を倒す」と決めた1年の弟がしたのは、ザリガニを兄貴より多く釣る こと。その日そこで得たものは。教訓めいた話である。 | ||||
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