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V.



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V.の評価: 4.40/5点 レビュー 20件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.40pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全20件 1~20 1/1ページ
No.20:
(5pt)

2回目の購入です

もう一回読みたくなりました。
V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
4105372076
No.19:
(5pt)

プロフェインが大好きです

なんかこの小説を読むと元気になるんですよね。何か励まされるっていうか。ダブル主人公のプロフェインとステンシルはどちらもまともな人間ではないですが、非常に魅力のあるキャラクターです。僕はプロフェインが大好きです。このキャラは簡単にいうと「クズ」なんですけど、その「クズさ」は誰しも少しは持っているわけで、プロフェインと自分の中の「クズ」が気持ちよく響き合うんです。そんなクズなプロフェインですがたまに男を見せる時があって、それもまたこのキャラクターの魅力のうちの一つです。
こんな薄っぺらい読み方が正しいかどうかは知りませんが、とりあえずポストモダンがどうのメタフィクションがどうのといった小難しいことは考えずに気楽に読んでみると楽しめると思います。エンタメ小説としても読める作品です。ただ、本当に面白くなってくるのは再読以降です。ピンチョンの仕掛けを次々に発見することができると思います。よくわからなかったところが徐々につながってきて響き合い、今まで感じたことのない独特の快感を味わうことができます。こんな作品を作れるピンチョンは本当にすごいし、ましてやデビュー作品なんですから驚きです。
あと、内容とは関係ないですが装丁が滅茶苦茶カッコいいです。
V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
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No.18:
(4pt)

酒浸りで腹の出たNY住みのバイト男はなぜそんなにモテるのか

1950年代編の主人公ベニーは何もしなくても女が向こうから寄ってくる、しかし彼はカッコをつけているのか全部断ってしまう、女性恐怖なのか。作者はナードでそういう願望を小説内で実現したのか。また彼のつるむヒッピー風のヤンデルレン(旧訳では全病連)たちは、いつも壊滅的な乱痴気パーティーを行い時に街に繰り出しては乱暴狼藉を働く。評者はもう分別があって当たり前の年齢になっているので、ややついていけない感があったが、発表当時の評価の高さは、V.の探索パートよりむしろこちらが青春ものとして評価されたのではないかと思った。評者はむしろ異様で暴力的なエピソードが時折挟まれるV.パートの方が印象深かった。ナミビアで平然と黒人に暴虐を尽くすドイツ人、マルタに登場した悪坊主の解体シーンに伺えるサイボーグ的人体への関心(ここはすごかった)、パリでの衝撃的な結末を迎える舞踏劇の若き天才少女のエピソードなど、本作はむしろ短編小説の集積として長編化したのではなかろうか、と思える。そのくらいイメージ喚起力の強い細部が本作の魅力で、V.とは?など大真面目に考えるのは無粋である。V.性を持つ女性や土地の集合体で何の不都合もないように感じた。
V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
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No.17:
(4pt)

躍動感あふれ、かつ謎めいたエピソードの連続が楽しめる

ピンチョン作品としては、先に重力の虹を読んでしまっているので、正直エピソードや表現の衝撃度では、本作はおとなしく見えてしまった。下水道でのワニ退治などの話は、ああこの作者は何らかの下水道に関するオブセッションがあるんだろうな、と分かるし、ナミビアの話も好きなんだな、と思う(重力の虹でも下水道話や舞台としてのナミビアとドイツ軍は出てくる)。ただ、著者がまだ若い時の本なので、重力の虹と比べるとやはり躍動感がある。下水道のネズミにキリスト教を布教した神父のエピソード、マフィアをはじめとする蠱惑的な女性たち、ボッチチェリ作ヴィーナスの誕生を盗み出そうとする話など、最高に面白く読める。現時点で下巻はまだ読んでいないので、ここまでの感想であるが、有名な結末はどのような感じであるのか楽しみだ。
V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
4105372076
No.16:
(4pt)

ただよくわからないわけではない。

重力の虹ほどわからなかったわけではないが、やっぱりよくわからなかった。
でも、重力の虹の時もそうだったが、ただよくわからないわけではないから、ピンチョンにひかれてしまう。
そのわかるところ、とは要するに歴史的事実や人間性に対する懐疑である。それらは衝撃的である。
ピンチョンの作品を読むと、たくさんのことを教えてくれる、しかもそれはいわゆる学校で先生が教えてくれるようなやり方ではなく、世界のありのままをごちゃまぜにして、突然どっきりみたいに思いきりぶつけられるような感じである。重力の虹はそれがすさまじかった。V.はそこまでではない。でも二十五歳の若者が書いたデビュー作なのだから、十分すごい。
V.とは何か……ぼくが思うに、下巻の後半に出てくる『私は二十世紀』で始まる詩にヒントがあるのではないか。『私』(V.)はいろんな場所にいろんな形で現れる、それをステンシルがパラノイア的につなげていく。V.の見出し方、つなげ方はその人次第。そう考えると、上巻に出てくる空電はまさにV.的だ。受信者は空電という自然現象の中になんらかの意味を読み取ろうとする。そう考えると、V.とはこの世界そのものの象徴なのではないか。
このように、ピンチョン作品には解釈の楽しみがある。作者の広げた網の範囲が広いから、その中で読者は自由に泳ぐことができる。
V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
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No.15:
(4pt)

ヨーヨーの動き

主人公の1人"木偶の坊"はしばしば自分の動きをヨーヨーにたとえる。他人の糸に操られ自分の意思と無関係に、重力に従ったりや逆らったりの往復運動を繰り返している。このイメージは他の作品にしばしば現れる。作者らしい卓越した表現だと思う。
V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
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No.14:
(4pt)

マルタ島爆撃とニューヨーク下水道

マルタ島はイギリス領として第二次世界大戦中に猛烈な空爆を長期間受けた。空襲下で生き、死んでいく人たちの描写が凄い。加えて、マルタ島の神父がニューヨークの地下下水道で鼠相手に布教活動する形で上巻と繋がる。こうした奇妙きてれつなネタを駆使しつつ、アメリカとヨーロッパを縦横無尽に往き来するのは、ピンチョン作品の醍醐味だと思う。
V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
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No.13:
(5pt)

小説の中での最高傑作

ひどすぎるレビューがついているので、書かせて頂きます。 まず、これを若き小説家がデビュー作に書き上げた、というのがスゴい。 重力の虹が一番有名でしょうが、読み通せた人間は少ないでしょう。 私は、「競売」と「v」を勧めます。 最高の文学、と感じます。
V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
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No.12:
(5pt)

旧体制からの離脱をその国ならではの表現で

話自体は悪ふざけと言葉遊びで、多分、超現代語訳ができる人がいればもっと笑えるんだろうなあ、と思います。主人公が入れ替わり、場面も移り変わりながら、その場になじめない主人公が自分の未来や「V.」のなぞを追っていく話です。その中で、マルキシズムやカソリック、マキャベリズムが完膚無きまで悪ふざけの相手をさせられています。その時代に、一生懸命だった人が読んだら、相当頭にくるんだろうなあ。ワニの話ではないけれど、文字通り「アンダーグラウンド」の魅力満載です。
V. 1 新装版Amazon書評・レビュー:V. 1 新装版より
4336024464
No.11:
(4pt)

買いです、たぶん・・・。

手元にあるのは、この国書刊行会の新装版なのですが、最初に読んだのは高校生のころ「ゴシック叢書」の一冊として刊行されたものだったので、それを含めるとおそらく今回で四回目の読み返しだと思います。毎回新たな発見があって、などと見栄を張って言うのが癪なほど、毎回「読めてる感」が希薄なので、自分なりにすこしでも楽しめるように、ピンチョンを読み返すときには、「必ず新しい趣向を講じて読む」と決めています。
 今回は、新潮の「コンプリート・ワークス」刊行のおかげで参考文献がいままでにないほど手元にあるので、そういったものをうまく活用できるよう、まず本文全ページをA4でコピーして、知っていることや参考文献によって気付いたこと、その他雑多な様々なことをすべて色分けして書き込んでみました。そして、上巻を読み終わったところで、ベニーを軸にした物語とステンシルを軸にした物語を分割して綴じて、それぞれを一つの時間軸に沿って読んでみたのですが、そうすると、意外にわかりやすいストーリーなんですね。それがここまで謎解きのような様相を呈してしまっているのは、もちろんその二つの時間軸を綯い交ぜにしてしまっているためなのですが、それに加えて地滑りのようにたびたび差し挟まれる各エピソードのためであることに、今回改めて気付かされたように思います。また、お得意の二項対立であったり、当時流行であったサイバネティクス(もちろん、本書で初めて知りました)を取り入れてあったり、くだらないギャグであったりで細部がしっかり固められていることも見逃すことのできない魅力ではあります。しかし、こうして分解して逆に考えてしまったのは、それでもやはり元の構成のまま、何度も読み返しながらすこしずつでも自分なりに咀嚼して楽しむのが正しい楽しみ方ではないかということでした。というわけで、こういった読み方で全体を通して一体自分になにが見えてきたのかは、下巻読了後にレヴューさせていただこうと思います(そんな大そうなこともないと思いますが)。最後にひとつ僭越なことを書かせていただくと、原文を読んでないので訳文に限ったことかもしれませんが、ピンチョンという作家は必ずしも豊潤な文章を書く作家ではない(内容やスタイルが文体に帰結するということもあるとは思いますが)ということも、今回久しぶりに本書を読みながらずっと頭を離れなかったのですが、この点については、原文を読める方に意見を伺ってみたいものです。
V. 1 新装版Amazon書評・レビュー:V. 1 新装版より
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No.10:
(5pt)

読者を突き放しているわけではない

トマス・ピンチョン本人、本の内容については上巻を含めて多くのレビュアーが
書いているので、私はこの難解と言われる本の『読み方』について書く。

『競売No.49』のレビューにも書いたが、私はあまり読書経験がないので、
内心ビビりながらこの本に挑んだ。
しかし、章ごとに登場人物と出来事の簡単なメモを取りながら
焦らずゆっくり読み進めて行けば(独特の文体も味わいながら)
話の内容は十分追えるし、大まかなテーマもある程度掴めるので、
最後に「おぉっ!分からない点も多かったが、やっぱ素晴らしい小説だった」ぐらいの
感想は持てるはず。そして解説まで読んだ後、すぐ再読してみたくなるはずだ。

一番しんどいのは、やはり語り手が変わり情報が上書きされていく、上巻第3章。
ここ以上に複雑な章はないので、帯に書いてある
主要登場人物の簡単なデータを参考に、頑張って話を追っていこう。
「複雑で難解」と言われるピンチョンだが、ひとつひとつのエピソードは
文句なしに面白いし、山を乗り越えたあとは読者に
ご褒美を用意してくれているのかと感じる場面もところどころあった。
実際、第3章のラストは全体の中でも特に印象的なシーンが待っているし、
下巻中盤ではさながら「今までのおさらい、復習」のような場面もある。
下巻250P13行目からの部分なのだが、これまでの複雑さからはあまりに予想外の流れで
シリアスな部分なのだが、ニヤニヤしながら読んでしまった。
もちろん、最高のご褒美はラスト2章であることは言うまでもない。

普段あまり本を読まないような人にはとても薦めることのできない質・量なのだが、
そんな人はそもそもこの商品をクリックしてはいないだろう。
「そこそこ小説を読んできたし、ここらでひとつ大作を読んでみるか」
という人は是非。星5つ!

※追記
私は1日平均だいたい2~3時間、3週間で読了。やはり時間はかかる。
本当に簡単でいいので章ごとにメモは取っておこう。
以前の章を振り返るとき、メモがあるだけでずいぶんと思い出しやすくなるものです。
V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
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No.9:
(5pt)

熱力学的歴史観で描く20世紀版「戦争と平和」

自由連想で過去へと遡って情報が無制限に増殖して行く独特の叙述スタイルとそれに起因する膨大な情報量により非常に読みにくい作品だが、キャラクターや60年代の風俗描写、詰め込まれたギャグや学術論議などのディテールの面白さで退屈させない。全体的なテーマは、「歴史とは非生命的なエントロピーとこれに抵抗する生命との闘争である」という歴史観によって、20世紀の戦争史と戦後の混沌とした時代状況を描きなおすことにあると思われる。この点、やはり独特の歴史哲学観からナポレオン戦争を語りなおそうとしたトルストイ「戦争と平和」とも共通し、いわばその熱力学知識を加味した20世紀バージョンともみうる。短編「エントロピー」と類似の、パーティを繰り返しながら混沌へと向かって行くようにみえる人々の中でヒッピー的放浪生活を続ける青年の恋愛と自分探しを軸とする1960年代パートと、父の死にかかわる「V」のイニシャルで表される謎の存在(女?)を追う青年の視点を中心にして次第に明らかにされる、マルタ島ヴァレッタを主軸とする19世紀末から終戦までの戦争と諜報に彩られた伝奇的改変歴史物語とが交互に語られる。コミカルに淡々と進行する現代パートと、幻想と現実が揺らぎながらミステリアスに語られる過去パートの対比が作品世界に深みをもたらしている。謎の女Vの催眠術義眼、神経への電極差込、主人公のバイト先で開発されているロボットなど、当時流行のサイバネティックスを採り入れたSFネタも満載で、Vの背後の形而上世界をめぐる議論などとあいまってSFとして楽しむことも十分に可能だが、この作品に限っては分類など無意味だろう。
過去パートのVの謎、様々な登場人物の相互関係などにはエピローグでいちおうの説明が与えられるし、現代パートの主人公の人生にも結末でいちおうの区切りがつき、物語としてはちゃんとまとまっているのだが、なお余剰な部分を残している。生命のVへの敗北を予感させる帆船沈没のエンディングが何とも悲痛な読後感を残す。
V. 1 新装版Amazon書評・レビュー:V. 1 新装版より
4336024464
No.8:
(4pt)

様々な都市伝説のよせあつめ?

「白いワニ」のところを読んで江口寿史のマンガを思い出しました。締切に追われた漫画家が白いワニに襲われる幻覚を見るというアレ。(ワニは日光のあたらない環境では生存できないと思いますが。こういう爬虫類一般にたいするデタラメな思い込みはサミュエル・L・ジャクソン主演の「スネーク・フライト」と大差なかったりしますが)「ビルのへりを歩いて落下する男」はスティーブン・キングのホラー小説にそんなのがありましたし、「自動車とセックスする男」ってのもどっかでみたような。こうしてみるといろいろなフォークロアの出典になっているような気もするのですがどうでしょう?さらにまた原典があるのでしょうか?どなたか学識ある方のご教示を仰ぎたく存じます。
ピンチョンの本、レビューなどでは★の数は多いけれど、要約すれば「つまんない」と言われることが多いようです。無理して読まなくてもいいのでは?しかしばかみたいな話が串団子的に続いていくのをただへらへら読んでれば、それなりに面白いような気もします。串団子いっいっこ食っていって突然「ぶつっ」って終わるという。エントロピーだの情報だのよくわからないことなどもいろいろ言われていますが、そういうのを理解する努力を放棄したとしても面白いと思いますよ。たぶん。長すぎるのが難点ですが。
V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
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No.7:
(5pt)

ピンチョン≒ソラリス説

ピンチョンという作家の作品はソラリスの海のようなものである。
才能が余りにも巨大すぎてその輪郭さえつかめないので、凡人は「何かすごいものを読んでしまった」
という朦朧たる印象以外何も与えられないまま宙吊りにされ、取り残される。
「とてつもなく巨大な何かが世界規模で蠢いている」ということだけはわかる。
しかしそれが全体として何なのかほとんど全くわからない。
だから誰もピンチョンの足元にも寄れない。近づくことさえできないのである。

もとよりこの小説について私のようなアホが何か言及することなどできるわけがないのだが
敢えて言うと、なにか一種のシンクロニシティ的でサイキックなアンダーグラウンドネットワーク
のようなものがあり(不気味としか言いようのない地底生物さえ登場する。
私見では古今の小説の中に出てきた最も不気味な存在である)、世界中に拡がるその結節点で
わけのわからない迂遠な仕方で様々な関連事象らしきことが生起する小説である。
不可知論的で(つまり全体として何か起こっているのかわからない)
量子力学的な非局所的グローバル情報ネットワークを
なにか不気味な怪物として描いた小説としか言えないのだ。

しかもこの作品「V」は文句なしにピンチョンの最高傑作なのだ。
なんと執筆当時26歳である。何でこんな人間がいるのだ。
V. 1 新装版Amazon書評・レビュー:V. 1 新装版より
4336024464
No.6:
(3pt)

天才か鬼才か、はたまた単なるクレージー文学小僧か?

天才か鬼才か、はたまた単なるクレージー文学小僧か? いずれにせよ弱冠27歳の青年がこのような驚天動地の世界文学を捏造するとはたいしたたまげた。次から次へと果てしなく繰り出される意味ありげでじつはなにも意味がない挿話の数々を目で追うだけでも疲れたよ。

そのうちもっとも面白かったのはマルタ島の対イスラム防衛線のエピソードで、陥落寸前に追い込まれたラ・ヴァレットと騎士団を救ったのは、魔女マラで彼女はスルタンを眠らせてその首をはね、騎士団長の夢に現れて平穏を意味する「シャローム」と挨拶をするのだが、このヘブライ語が聖ヨハネの首をはねたサロメの語源にもなったとか。しかしピンチョンがいうことだから嘘か本当かは分からない。

題名の'Xについては、これは謎の女性の名前なのか、地名なのか、それがこの物語とどうかかわっているのかもてんで分からなかった。連想ゲームが得意な超インテリの翻訳者が歴史を陰で動かしている存在などと解説しているようだが、さあどうだろうか。ともかく'Xの一字だけでここまで引っ張る著者の空想の膂力には驚嘆のほかはない。
V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
4105372084
No.5:
(3pt)

自分でも訳の分からんホラを吹く

おそらくは最初にプロットの組織図を前後左右、上下にB2の鉛筆で方眼紙に摸写するのだ。

時代はいつ? 1955年、あるいは1922年その他その他。

場所はどこ? ヴージニアの軍港ノーフォーク、NYのタイムズスクエアの地下5メートル、アレクサンドリアからカイロの砂漠、フィレンツエのウフィッツ美術館、南西アフリカ保護領のヴァルムバード地区、その他その他なんでもこい。

登場人物は? 探究者ハーバード・ステンシル、木偶の坊ベニー・プロフェイン、その他その他なんでもよし。

そこでなにが起こるの? マンハッタンの地下水道のワニ退治、ボッティチェリの「ヴィーナス誕生」の盗難、1904年事件の真相の究明、SМの快楽ごっこと暗号解読、その他その他なんでもあり。

で、'Xってなに? 地名? 人物? 暗号? さっぱり分からん。いつものように謎は謎を呼んで、複雑怪奇な下巻へと続く……。

ピンチョンときたらたいしたもんだ自分でも訳の分からんホラを吹く 茫洋
V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
4105372076
No.4:
(5pt)

ピンチョンを理解するという事

この本を読んでいる人はどれだけ「V」を理解しているのだろうか・・・・?あるいは理解する事自体が筋違いな小説なのだろうか・・・?〜小説を沢山読んできた強引な線引きなのだが、純文学には二種類がある。ます一種類目は「こういうテーマで書いてます」という事象がおこっている事を読者として冷静に-ある意味客観的に-見ていられるもので、これが99.9%を占めていると思う。そして後者が『読むこと自体がテーマを体験させる』タイプのものだ。前者でいうと村上春樹の「TVピープル」という短編は現実認識が打ち壊されてゆく事が主人公に体験させられていて、読者である私達はその現象を冷静に読んでいる(見ていると言ってもいい)。だが、おそらくピンチョンは前者と後者の折衷で大幅に後者にウエイトをかけた創り方をしているのではないか?〜いつ逸脱するかわからない進行、唐突に挿入される挿話。おそらくこれを解釈しようとするからピンチョンは難解なのではないか。この作品を解釈しようとせずこのわけのわからなさに身を任せること。ピンチョンを理解するとはたぶん、そういう事なんだろう。
V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
4105372076
No.3:
(4pt)

小説に興味のない人には一生無縁なタイプの圧巻の大作小説

この小説に関しては1人で読んでも100通りくらいの解釈が成り立つようなので、個人的に通読した感想を述べていいでしょうか。
一言で言えば(本当は無理だけど)近代の全てを小説に落とし込んだように思えました。即ち、真面目/不真面目、善/悪、厳粛/哄笑、健全/頽廃、昼の営み/夜の営み、戦争/平和、正教/邪教、条理/不条理、愛/憎悪、機械/人間、合理/不合理、芸術/労働、等々。まだ色々ありそうですが、現時点ではこのくらいで。これらのイメージを一冊の小説に全てぶち込んだような印象を持ちました。
難解なイメージがとかく罷り通る作品ではありますが、文章自体は平明で、個々のエピソード等も視覚的に判り易く書いてあります。ただ、その個々のエピソードの順列配置が複雑で過去と現在が入り乱れ、登場人物も通常の小説に比べても多すぎるくらい多いので、そこらで戦後最大の作品と言われながら敬遠されてるのだとすれば頷ける話ではあると思う。訳者あとがき等で時系列を並び替えて順序よく読めば理解が深まるそうだけど、通読するだけでへとへとになるので、個人的にはそこまでできませんでした(すいません)。☆4つにしたのは通常の小説と比べた場合の面白さと尺度が異なるため、面白いかそうでないのか、自分でもよく判らなかったためで、大学にいってないビョーキの人間の評価なのであまり参考にしないでください。
Vに関する解釈を一席。二つの地点から一点に収束する成り立ちなので、基本的な人間の視点のメタファーに思えました。つまり文章を読む=読書ではないかと感じました(珍説)。
思えば1番最初に読んだのが高校生の時で旧訳を図書館から借りて読んでよく判らなかったですが、それから30年くらいして再読してやはりよく判らなく、全然成熟してなくて恥ずかしい。
正確な解釈を出来てないと著者や頭のいい人からせせら笑われそうで怖いですが私の感想はこんなんでした。
V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)より
4105372076
No.2:
(5pt)

★5つ分、楽しむ力を持ちたい!

謎のV.を巡る壮大な物語。と、言ってしまえば簡単だけど、ピンチョンの他作品で感じたように、やっぱりとてつもない内容だった。愛、神話、宗教、哲学、心理学、オカルト、歴史、地理、語学、時間軸、テキストの遊び、頭がコチンコチンになりそうな内容を含みつつ、でも不思議と親近感が持てるのはピンチョンくらいじゃないだろうか。混沌の神様だ。知識面で満足を得られるのもあるけれど、「物語」として深く考えさせられる場面がたくさんある。私はこの人の訳わからなさが好きで、でも訳がわかるようにもなりたい。それはかなり大変だ。まずは、★5つ分、楽しむ力を持ちたい。
V. 2 新装版Amazon書評・レビュー:V. 2 新装版より
4336024472
No.1:
(5pt)

多分何度も読まないといけない

この本を読んでる間、何度か「私はこの本の内容を本当に理解しているんだろうか」と不安になった。
度重なる記憶の錯綜。イメージの多重写し。
読むのに時間がかかるので(多分普通の人は、ですけど)、現実の自分の人生ともイメージが度々重なってきてますますわかりにくくなる。
それでも最後まで読むと、おおこうつながるのか!と感動。複雑なジグソーパズルが、最後に来ていっぺんに組み合わさるような神がかり的な結末が用意されていた。
とかいいながらどうつながったんだか詳しくは思い出せない。
本当に私は理解してたんだろうか?他とはなにか明らかに違うものをもたらしてくれる本だと思う。
M.エンデの「果てしない物語」が、現実に存在するとしたらこんな本だろう、きっと。
V. 1 新装版Amazon書評・レビュー:V. 1 新装版より
4336024464

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