幻影の書
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「あの本読みまし」で紹介され読みました。柴田元幸氏の丁寧な訳は素晴らしかった。 | ||||
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にずっと浸ってしまいます。 | ||||
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主人公デイヴィッドは結婚十年目にして、妻ヘレンとわが子二人を飛行機事故で亡くす。 職場を放棄し、知人との関りを断ち、己一人の生活に閉じこもる中で出会う一篇の映画。 その映画の主演俳優ヘクターに一片の可能性を見出し、デイヴィッドがヘクターに関する書物を出版することで物語は始まる。ある時期を境にヘクターが映画界から身を隠し、生死すら不明なまま数十年が経過していること、そのヘクターの近況を知らせる手紙が突如デイヴィッドのもとを訪れ・・・。 デイヴィッドからヘレンへ、ヘクターから、ノーラから、フリーダから、マーティンから、アルマから。幾重にも重なる贖罪の連鎖の中で、いつしかデイヴィッドの心境にも変化が訪れ・・・。 ノルウェイの森に代表されるような人格形成期の鋭利で純粋な青春期の喪失に比べ、人格が完成した後の壮年期の喪失は鈍く、それ故に徐々に人生を蝕む種類のものなのかもしれません。また、自己が確立しているが故の救済の困難さというものはあるのではないかとも思います。ただ、それであってもそうしたものはありうるのではないかと考えさせてくれる、素晴らしい一冊でした。 ポールオースターの作品は幻影の書が初読のため、本書が同氏の最高傑作であるかどうかの判断はつきかねますが・・・。抜群に面白いです。類まれなストーリーテリングというのも頷ける傑作。 | ||||
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世界中に多くのファンを持つアメリカ文学界の異才オースターが2002年に発表し本国で最高傑作と絶賛された注目の話題作です。本書は著者が愛する映画の世界をモチーフに書かれたとあって細部にこだわりが見られる誠に気迫のこもった力作になっていると思います。主人公デイヴィッド・ジンマーは愛する妻と子供二人の家族を飛行機事故で失い傷心の日々を送っていたが、偶然ある喜劇映画を見たことで笑い心を奪われ魅力の虜となって、絶望から脱却し再び生きる意味を見出す。彼は謎の失踪を遂げた伝説の映画監督へクター・マンの作品を探して世界を駆け抜け一冊の本を執筆する。やがてへクターの妻と名乗る女性から一通の手紙が届き、それを契機に彼の運命は大きく変転する事となる。 私が読んで心に残った3つの部分を紹介しますと、最初がデイヴィッドとアルマが出逢って言い争い殺し合いの一歩手前まで行く程ぶつかり合うシーンの強烈な迫力と優しく労わり合う愛に昇華する過程の美しさ、次に二転三転して全く予想のつかないヘクターの波乱万丈の人生模様の面白さ、最後にへクターの未発表の映画フィルム「マーティン・フロストの内なる生」の哲学的なストーリーの謎がとても興味深かったです。本書には初期のニューヨーク3部作に見られた曖昧な迷宮性といった物は失くなり、物語性がより具体的で明確になった著者の作風の変化を感じます。しかし、これは著者の芸風で変えようがないのかも知れませんが、残念ながら登場人物達が必ず悲劇に終わる運命に見舞われるストーリーからは真の感動が生まれないと思います。情熱で理性を忘れて愛し合う時もあるのに終局は冷静に永遠の別れを選択したり、劇中劇では恋人同士の幸せさえも困惑の対象にしか感じ得ない、いわば不幸せが必然なのだという運命論には到底肯けません。私はこの悲劇性から脱却した時にこそ著者の真の最高傑作が生まれるのではないかと考えております。 | ||||
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全く心が重くなる一冊。人生が重く感じられる物語。飛行機事故で妻子を亡くし、人生のどん底に喘ぐ主人公のデビット・ジンマーは、ふとした事で無名の喜劇俳優であるヘクター・マンの声無き演技に魅せられ、彼の映画に関する唯一無二となる本を書く。それから11年後、ある一通の手紙を機に、彼の若くしての失踪とその謎に満ちた"音なき"生涯にのめり込んでしまう。 ストーリーテラーとしてのオースターの手腕は実に見事で、柴田氏が言うように、この一冊はその次元をさらに高めてる。ハリウッドやSEX産業と言った通俗的な素材もこの作品のメインテーマである自己省察に鮮やかな彩りを与えてる。『ミスター・ノーバディ』や『マーチン・フロストの内なる生』といったヘクターが生み出す作品は、彼の内なる物語として自分の人生と折り重なる。特に後者は、実際に映画化された程に熟成度が高い。 ヘクターの謎に満ちた生涯の中には、彼と遭遇し、彼に惹かれる女性たちの物語が彼の人生に織り込まれ、彼の悲観で悲運な生涯に羨ましい程の贅沢な限りの彩りを添える。彼の自己否定と謎に満ちた生涯を伝記化しようとするアルマ。それを何とか阻止しようとする妻のフリーダとのミステリアスな確執は後半の大きな見所だろう。 ヘクターの最初の婚約者である若き女優のドローレンスと彼の同棲相手であるブリジットとの三角関係は、最悪の結末を迎え、ドローレンスはブリジットを銃殺してしまう。彼は敢えてブリジット殺害の共犯者となり、失踪する。その後、ブリジットの妹であるノーラと出会い、無謀にも彼は彼女に惹かれ、彼女は皮肉にも彼を求愛してしまう。 ヘクターはその後も逃亡を続け、資産家の令嬢である妻のフリーダと共に、広大な農場に移り住む。フリーダの要求に折れ、破棄を前提として、彼は14本の映画を創りながら余生を過ごす。アルマが描いた伝記によって、ヘクターの謎が生涯が次第に明らかになる。彼に折り重なった物語が次々と剥ぎ取られていくは様は、実にミステリアスで感動的でもある。彼は様々な女性の寵愛から自分を逸らそうとするが、ブリジット殺害の十字架を背負い続けるには、愛は重荷なのだ。 そのアルマもまた、ヘクターに翻弄された女性の一人。フリーダが絶命寸前のヘクターを窒息死させると、アルマもフリーダを突き飛ばして死に至らしめ、彼女も死を選択する。彼を寵愛した女たちが次々と、その愛を折り重ねるかの如く死んでいくシーンは実に美しい。 アルマが描き上げる筈だった『ヘクター自伝』は、フリーダの愛に阻まれ焼かれてしまうが、デビットとヘクターの接点を見いだし、デビットを絶望の淵から救い出した。アルマを愛したデビットは彼女の意志を受け継ぎ、この『幻影の書』を完成させる。全く華麗過ぎるそして悲し過ぎるヘクターマンの生涯である。 | ||||
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