偶然の音楽
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そもそも目的のない旅を続けるということそれ自体がこの小説の目的といえるかもしれない。物語はそこに偶然という出来事が次々と起きてくる。それは必然といえるかもしれないけれど実は何らかの因果で結びつけられていることかもしれない。 この物語では妻に去られたナッシュが亡き父の遺産として突然20万ドルという大金を手にする。まさしく、思いがけない出来事でもありそれこそ偶然というほかない。ナッシュは一人娘を姉に預けすべてを捨てて目的のない旅に出る。 映画「ドライヴ・マイ・カー」のように赤いサーブでアメリカ全土を走行し続け、十三か月を過ぎて彼はポッツィという天才的な博打の若者と出会う。それも偶然の出会いだった。 勝つか負けるか、ナッシュは彼の話を聞いているうちこの若者と組んでポーカーゲームの勝負に賭ける。二人はストーンとフラワーという大金持ちの兄弟を訪ね大勝負を挑む。 「ビルはミダス王です」とストーンは言った。「手に触れたものは何でも黄金に変えちまう。金儲けの才にかけちゃ空前絶後です」…略…何だかこう、神さまがわしら二人を選び出されたみたいな有様でね。わしらに大層な幸運を与えて、幸福の極みに引き上げてくだすったんです。こんなこと言うとさぞ傲慢に聞こえるでしょうが、わしなんかときどきね、自分たちが不死身になった気がすることもあるんですよ」 「ずいぶん景気がよさそうだけど」とポッツィがようやく会話に割って入った。「俺とポーカーやったときは、それほどでもなかったね」 「そうなんだ」とフラワーが言った。「まったくそうなんだ。これまでの七年、わしらが運に見放されたのは、あとにも先にもあのときだけです。ウィリーもわしもあの晩はヘマの連続で、あんたにさんざん搾りとられちまった。だからこそぜひ復讐戦をとお願いしたわけでね」(p112-113) それこそ偶然の勝利にすべてを賭ける(運命的な生の高まりを欲したのかもしれない)が、二人はその勝負に負けた。それも偶然かも知れなかったが負けた者の常として窮地に立たされた二人は兄弟がアイルランド西部から取り寄せた15世紀の城の石で壁を建てる50日間の労働と引き換えに借金の返済を強いられることになった。 このように物語の構図はきわめて単純かもしれないが二人だけの生活、マークスの監視のもとに与えられた宿舎(トレーラー)との間を行き来する単純な労働をくり返す生活が二人に心理的な変化をもたらしていく。 仕事はのろのろと、ほとんど目に見えないほどのペースで進んでいった。調子のいい朝には、二十五個から三十個くらいの石を溝まで運んでいけたが、それが精一杯だった。(p194) 二人はいろいろな葛藤を抱えながらもこの仕事を続けるほかなかったがポッツィの苛立ちや憎悪とともにみじめな絶望もむき出しになっていった。ナッシュは夕食後の読書もやめて、ポッツィと一緒に過ごすようにし、ポッツィのことをもっと気をつけて見守ってやらねばと思うようになった。 偶然か必然か二人の興味深い対話がある。 「まあな。でもあのときはそうじゃないと思うね。いったんツキが回ってきたら、それをとめられるものなんてありゃしない。世界の何もかもが、いっぺんにあるべき場所に収まるみたいに思えるのさ。自分がこう、自分の体の外に出たみたいになって、あとはもう夜通し、自分が次々奇跡を起こすのを見物しているんだ。もう自分とは関係ないというくらいでさ。コントロールしようったってできるもんじゃない。とにかく考えすぎたりしないかぎり、間違いひとつ犯しようがないのさ」(p203) 「俺には簡単な話に思えるがな。夜のあいだ、かなりのところまで、俺たちは勝ちそうに思えた。ところが、何かがおかしくなって、結局勝てなかった」(p204) 「同じことを別の言い方で言っているだけさ。お前はつまり、何か隠された目的ってものを信じたがっている。この世で起きることにはちゃんと理由があるはずだって信じ込もうとしている。神、運、調和、何て呼ぼうとおんなじさ。そんなのは事実を避けるための寝言さ。物事の真の目をそらす手段なだけさ」(p206) 「俺が狂っているとしたら、俺たち二人仲間ってことだぜ。少なくともお前もこれ以上一人で苦しまずに済む。それって感謝していいことじゃないか?俺はとことんお前と一緒だぜ、ジャック。一歩一歩、旅路の果てまで一緒さ」(p209) やがて彼らは千個目の石を据えた。 最後の石がついにセメントで固定されると、ポッツィは一歩うしろに下がって、ナッシュに言った。「よう、見ろよ、俺たちやったじゃないか」。(p218) こうして壁の完成が近づくにつれ物語は徐々に狂おしさとともに高揚感に充ちた出来事が起きてくる。女を呼び寄せた大パーティー、ポッツィの脱走と死、壁の完成、ナッシュの生き方とささやかな祝いごと、そして最後はサーブのハンドルを握ったナッシュが猛スピードで車を走らせる。物語は圧縮した生の緊張が高まっていくように閃光的に死を予感させる。 偶然の音楽とはどういうことだったのか、それは何を意味しているのか。読後の沈黙は愕きとともに哲学的で大きな問いを発しているように思われる。 | ||||
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「哀悼の意を表します」ポールオースターの小説の魅力は穏やかな退屈さがありストーリーより現象(気分)がふぁ〜んとしていて、適度な緊張感があり、いつのまにかその世界が去っていってしまう。彼もこの世を去ってしまいましたが、ふぁ〜んという感じだったのではないかと思います。本作品は二つの題名が一つの作品とは知らず、読み進めているうちに気づきました。しかし別々に作られたものを一つに変更したのでは?とも感じられました。純文とエンタメがミックスされているためか、小説を書いて伝える難しさが感じられます。本作品を読み終わると、この世には希望も自由もかなえられず、何も約束されず、夢を見るのはは意味がなく、カネと時間と死に怯え、スリルが感じられれば幸いなのであろうか。というリアルさを突きつけられたようで、私はしばらく悶々としていました。 | ||||
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①商品のカバーの肩が切れていて捲れ気味ではした。 ②商品のカバーの上部一辺捲れ気味でした。 | ||||
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チャンスの音楽 と理解してます。そのように考えるとかなり面白い話です。 チャンスなのに、ちっともチャンスにならない?あべこべ?みたいな感じです。しかし、このようなギャンブル否定、勧善懲悪に近い、地道な生き方礼賛につながる、そんな社会を描いた本書はアメリカ文学と思えないぐらいで。とても素晴らしいです。高度情報化社会、個人情報管理社会が高度人工知能の後にくるはずですがそんな社会は、このような過去の言動との一致を迫られるような社会になるのではないか?とも理解しました。 | ||||
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古本ですがきれいで何の問題もなかったです。 忙しくてなかなか読めない日々なのが悔しい。 | ||||
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