スクイズ・プレー
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点8.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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現代文学作家として知られるポール・オースターの幻のデビュー作。1980年代のニューヨークを舞台にした正統派のハードボイルドである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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最後までわくわくしながら犯人を追える一流の探偵小説でした。 犯人というより、もっと恐ろしい存在を用意してあり、重層的で奥深い、人間の怖さが最後の最後に用意されていました。 しかし、チャンドラーを意識した言い回しが必ずしも成功しているとは言えませんでした。 翻訳のせいか、チャンドラーのようには、気障で洒落た言い回しがヒットしなかった。チャンドラーもすべてで成功したわけではありませんでしたが。 | ||||
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野球の場面が素晴らしい | ||||
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雑誌で紹介されていたので購入 評価通りおもしろかったです | ||||
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小説家ポール・オースターの処女作が推理小説の本書『スクイズ・プレー』であると、巻末の池上冬樹氏の解説で知った。 なにげなく本書に興味を持って入手した評者とってポール・オースターの他の小説を読んだことなどないから、なんの感慨もなく本書を読むことになった。 ポール・ベンジャミンの筆名で本書が書かれたのが1976年だから時代考証をしながら読者は読まなければならない作品です。 ストーリーの半ばほどで結末が判ってしまったから、ハードボイルド小説としてそんなに優れている作品とは思えなっかったのですが、著者の描く主人公の探偵マックス・クラインはじめ登場人物の性格やマックスと登場人物との会話がなかなかユニークで面白い。 マックスは、サム・スペードやフィリップ・マーロウ系なのだが、少々教養のある正義感の持ち主で、語る言葉のはしはしで皮肉と諧謔で楽しませてくれる。 大富豪のチャールズ・ライトのオフィスへ聴き取りに行ったとき鼻先であしらわれた描写と、二度目にライトに会うため豪邸を訪れた時との落差を上手くストーリーに生かしている。 ライトが命より大切にしている切手帳を、マックスがガラス棚から放り投げるところがこの小説のハイライトだろう。 ライトが手配した凸凹コンビに部屋を荒らされ、殴られたり蹴られたりして酷い目に遭ったことで、マックスが大富豪相手に仕返しをしたから、多くの読者はここを読みながら溜飲を下げるだろう。 この件の翻訳を読みながら、このジャンルの本を訳させたら他を寄せ付けない上手さを発揮する田口俊樹さんの独壇場だと思ってしまったのです。 が、翻訳のベテラン田口俊樹さんでも間違うことがあることを見つけてしまったのです。 16章の書き出しのところでライトの豪邸を訪れたマックスがその豪邸へ集う上流階級の人々のことを想像して「白いドレスの女性や、音楽の夕べや、テディ・ローズヴェㇽトの外交政策は、アメリカ経済に利するや否やと喧々諤々とやっている。」(P282) ここで喧々諤々という四文字熟語を使用していますが、「侃侃諤諤かんかんがくがく」と「喧喧囂囂けんけんごうごう」が混じり合った誤用だと思います。 正しくは、「喧喧囂囂」です。(喧喧囂囂=たくさんの人が口々に喧しく騒ぎたてるさま) 評者の好きな翻訳家の田口俊樹さんなので些末なことながら付記してしまいました。 | ||||
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現代アメリカ文学の第一人者ポール・オースターがデビュー作「ガラスの街(1985)」以前に著した、氏の「幻のデビュー作」という謳い文句に惹かれて購入した。 本書「スクイズ・プレー」はそもそも、若きオースターが極貧生活を送る中、当時読み耽っていたハードボイルド探偵小説(おそらくはダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーの作品群だろう)に着想を得て執筆された作品だ。完成にこそこぎつけたものの、出版に際し様々なトラブルがあり、ごく少数が出回ったほかはどこかの倉庫の片隅で忘れ去られていたという。「幻のデビュー作」というのはそういうわけだ。 彼のエッセイ集「トゥルー・ストーリーズ」にこんな記述がある。 「……ある夜、ベッドに横になって不眠症と闘っている最中、新しいアイデアが浮かんだ。アイデアというほどでもない、ちょっとした思いつき、漠たる考えである。その年、私は探偵小説をさんざん読んでいた。大半はアメリカのハードボイルドで、それらがストレスや絶えざる不安を癒してくれたことはむろん、それに加えてこうしたジャンルに属す何人かの書き手に私は敬意を抱くようになっていた。このジャンル最良の作家たちは、何の気取りも衒いもない書き手であり、アメリカ社会についていわゆる純文学作家たちよりよほど実のあることを言っているばかりか、文章自体も純文学の連中より気がきいていて歯切れがいいように思えた。」 以降はネタバレになりうるので割愛するが、見ての通り「スクイズ・プレー」は紛れもなく、優れたハードボイルド探偵小説の書き手たちへの憧れを原動力として書かれている(もっとも、困窮に喘ぐオースターがちょっとした金を稼ぐために書かれた側面も大きい。そのあたりについては「トゥルー・ストーリー」をぜひ)。ハードボイルド探偵小説という既に確立されたジャンルにおいて、何よりも重要視されるのは「型に嵌っている」ことだ。物語は心理描写を極力排した乾いた文章で綴られる。語り手は都会で細々と探偵家業を営む男、依頼を持ち掛けるのは別世界に暮らすセレブ、そして美しく謎めいた魔性の女(ファム・ファタール)。これらありきたりな要素は、優れたハードボイルド探偵小説において「様式美」に昇華される。血が流れ、人が斃れ、語り手は痛い目に遭う。しかし彼は自らの規律に従い歩みを止めず、遂には哀しき真相に辿り着く。「スクイズ・プレー」はこういったハードボイルドの勘所をきっちり押さえた作品である。 さすがオースター、というべきなのだろう。文章は既に洗練の域にあり、新人作家らしい粗さやストーリーの破綻は見られない。本書のタイトル「スクイズ・プレー(Squeeze Play)」に代表される言葉遊びのセンスは燦然と輝きを放っている。先達の手法の模倣に専心するあまり、傑出した作品だけが持ち合わせる瑞々しいまでの自然な躍動感が失われているのは残念ではあるが、本格的な雰囲気を湛えた読み応えのある見事な佳作を生み出している。いわゆるハードボイルド探偵小説を読みたい、というなら本書は決して期待を裏切らないだろう。ガワだけを拾って書き散らされ、生まれる前から生命を失った小説たちとは明らかに隔絶した、血の通う文章がここにはある。 しかしながら、本書にはポール・オースター最大の特徴とでもいうべき資質、すなわち「脱構築」の要素が何一つとして存在しない。オースターの作品、特に最初期の「ガラスの街」「幽霊たち」「鍵のかかった部屋」、いわゆる「ニューヨーク三部作」の読者にはそれがよくわかるはずだ。これら三作はミステリ小説の手法をもって書かれてはいるが、謎は謎を呼ぶだけで解決には至らず、むしろより大きな謎となっていつまでも残り続ける。似た小説を読んだことがあると感じていたはずなのに、いつの間にか予想だにしない地点に辿り着く。ミステリという枠組みが与えてくれる既視感からの新鮮な脱出。オースターは既成の枠組みから飛び出すことで産声を上げた作家なのだ。一方「スクイズ・プレー」は優れた小説だが、すべてはハードボイルド探偵小説の枠の中で完結する。謎は明かされ、物語は閉じられる。読み手に与えられるのは真逆の、経験済みの良質な読後感だ。本書を読み終えた人はこう思うに違いない。「ポール・オースターにはこんなものも書けたのか」と。それこそがオースターが本書にペンネーム「ポール・ベンジャミン」を用いたままにした理由に違いない。 「スクイズ・プレー」は良く書かれた小説だ。しかしこの作品が日の目を見たのは、それがポール・オースターによって書かれた作品だからだろう。少なくとも、出版社側が「ポール・オースターによって書かれた作品」という付加価値に目をつけ、ある程度の売れ行きを期待したうえで再版に至ったというのは的外れな推論ではない。仮にこれが一作限りの無名の新人による作品だったなら、ほぼすべての人に知られることなく、この世から消失していたはずだ。何かの賞を得たわけでもない無名の作家による、何かの賞を得たわけでもない無名の作品の再版など、およそ多くの人が手に取るものではない。だからこそ「ポール・ベンジャミン」のペンネームは意味をもつ。この名は当時用いたからそのままにしておかれたのではない。他でもないポール・オースター自身の意志に基づき、「ポール・オースター」というブランドに釣られた、私のような読者への抵抗としてそこにある。「ポール・オースター」には決して書けない作品を書き上げた、不遇の作家「ポール・ベンジャミン」への餞として。 | ||||
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