はなればなれに
- ノワール (113)
※以下のグループに登録されています。
【この小説が収録されている参考書籍】 |
■報告関係 ※気になる点がありましたらお知らせください。 |
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点8.00pt |
■スポンサードリンク
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ゴダール監督の長編映画「はなればなれに」の原作となった、1958年の作品。若く軽薄な三人が軽いノリで立てた現金窃盗計画が思わぬ結果を招いてしまう、サスペンスフルなクライムノベルである。 | ||||
| ||||
|
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
20年ぐらい前ですかね、当時職場で一緒に働いていた派遣社員の女性、パソコンの壁紙を男女三人がダンスしているモノクロ写真にしていました。 「これって何の写真ですか?」と尋ねるとこんな答えが。「ゴダール監督の『はなればなれに』のスチールなんです」 ゴダール作品だって? 聞いたことない題名だぞ。好奇心に駆られた私は後日DVDを購入、鑑賞してみると、ヌーベルバーグのとっつきにくいイメージとは裏腹な、青春ラブコメとフィルムノワールをハイブリッドさせたようなポップでキュートな映画でいっぺんで好きになりました。主演女優はゴダールのパートナーでもあったアンナ・カリーナ。 で、この映画の原作が今回紹介するアメリカの女性ミステリ作家ドロレス・ヒッチェンズのノワール小説です。原題は「Fool's Gold」。ゴダールの映画はフランスはパリ(?)が舞台ですが、こちらはロサンジェルス。情景描写はチャンドラーの雰囲気がほんの少しだけあります。若い男女三人組が老婆の隠し財産を狙ってギャングの真似事をする、というプロットは映画と同じですが、原作のテイストはあくまでもシリアス。キャラクター造形良く、皮肉なラストも決まっている。私みたいに映画版に愛着のある人は肩透かしを食らうかもしれないものの、ジェイムズ・ケインあたりから続くアメリカ産犯罪小説だと割り切って読めばなかなかの秀作だと思いました。 ちなみに映画版の原題「Bande à part」は、「パルプ・フィクション」で知られるクエンティン・タランティーノ監督の映画製作会社の名前に採用されています。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
三角関係と犯罪しか残らない印象だが、やはり形だけ借りた的な、緻密で乾いた奇禍を描く作品。恋愛要素より偶発要素が多く好感。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ヌーベルヴァーグ、アメリカンニューシネマの白黒映画で見た既視感が残る小説です。いわゆる「悪漢小説」でモラルを持ち合わせていないソシオパスの主人公、彼に断れない相棒、完全に巻き込まれる同級生の女性。 さらに彼らを取り巻く父母、叔父、養母、犯罪仲間、怪しいカネを持つ富豪など人物造形とキャラクターの濃さがまさに「映画的」です。 いきあたりばったりの犯罪なので当然、不幸というか当たり前の結末を迎えるのですが、情景も白黒映画的な「夜」「暗闇」の描写が際立っています。 この作者のほかの作品を続けて読みたい気がしています。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ぼく自身が生まれた1950年代後半の作品。トリュフォーが愛し、彼に勧められてゴダールが映画化したという肝入りの映画の、しかも映画より面白いとの噂の原作が登場。このところ古い未訳作品に取り組む翻訳者の皆さんに感謝する機会が実に多い。本書はトリュフォーやゴダールの逸話がなければぼくらが読む機会は決して与えられなかったろう。ノワールな名監督たちに感謝。そして何よりもその名すら知らないでいたことに罪悪感さえ覚えてしまう原作の女流作家ドロレス・ヒッチェンズの異才ぶりに拍手を送りたい。 映画版が青年たちの人生の脱線とアイロニーを、(観てはいないのだがゴダール作品なのできっと)歌うようにリズミカルにリリカルに描いたものだろう。本書のカバーにスチールが三点ほどあるので想像してしまう。しかし解説者によれば、映画は若者たちの青春の側から描かれているが、原作は若者たちと絡む大人たちの描写も多くを占めていることに驚いたということである。 さて映画を観ていないぼくのような読者にとってこの作品はどう見えるか。ずばり優れたノワールであり、犯罪小説なのである。若い男二人と女一人という、典型的な犯罪トリオが軸となる。『明日に向かって撃て』みたいに。『俺たちに明日はない』みたいに。彼らの犯罪計画を中心に、独創的かつ典型的な人物たちを周辺に何人も配置。それぞれの運命や行動をアイロニックに絡み合わせることで、ストーリーを思わぬ方向に捻じ曲げ、激突させ、運命の悪戯をさらに呼び込んでゆく。登場人物たちは、誰もかれも、思いもかけぬ方向に転回させられてしまう。まさに予想もつかない劇的小説であるのだ。 これを50代の女性が書いた? 優れたストーリーテリング。展開の妙。視点のスイッチが切り替わる絶妙なタイミング。古さを感じさせない欲望。エゴの強烈さ。怖くなるような暴力。闇の中に暮らす者ども、闇の中に飛び込もうとする若者たち。狙われる老婦人の気位と知性。暴力。運命。 さまざまな物語要素を駆使して、捻じ曲げ、思いもよらぬ結末へと疾走する犯罪の物語。戦後ノワール史に刻まれて不思議じゃない作品は、本物の掘り出し物だった。危険に震える若い魂たちの脱出への扉は果たしてどうやって開いてゆくのか? 最後まで手に汗握るアクションと迷走がぶつかり合う絶妙なストーリーテリングに、改めて喝采を送りたい。それとともに眠れる傑作を掘り出してきた出版社、翻訳者の活躍にも心よりエールを。 なおタイトルが、最後まで謎に感じられたのだが、映画の日本上映時のタイトルをそのまま借用したのだそうだ。原作と映画では相当異なるようなので、その辺りで心に遺留した違和感は、<これは映画を観なければ!>という好奇心に置き換えた上で胸に抱えておこうと思っている。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
一、映画『はなればなれに』について ○ゴダールの7番目の長編で、1964年にフランスで公開された。日本では、『勝手にしやがれ』から『ウィークエンド』までのゴダール長編商業映画15編のうち14編までは公開されたが、『はなればなれに』だけが長く未公開の状態が続いていた。フランスのロードショーで惨敗した等の理由があったようである。 ○2001年にようやく日本公開されたが、キネ旬のベストテンでは120位となり、ゴダール前期長編商業映画キネ旬ベストテンでは、ブービーとなった。(第一位が4位の『ウィークエンド』、第二位が5位の『気狂いピエロ』と『女と男のいる舗道』、第十三位が48位の『アルファヴィル』(7点)、第十四位が120位の『はなればなれに』(5点)、第十五位が無得点の『メイド・イン・USA』)。 二、映画『はなればなれに』の特徴。 5つあると思う。 ①a,ゴダール映画の傑作とする人々と、愚作とする人々、b,たいへん面白い映画とする人々と、ひどく退屈な映画とする人々、c,この映画のアンナ・カリーナを最高にかわいいとする人々と、この映画のカリーナは可愛くないとする人々がいて、どちらの意見もそれなりに説得力がある。 ②悲痛な部分(フィルム・ノワール)とラブ・ストーリーとコミカル(ユーモラス)な部分の入り混じった映画だが、うまくブレントされているという意見と、溶け合ってはいないが個々にすばらしいという意見と、もうメチャクチャという意見があると思う。 ③a,アンナ・カリーナ(役名オディール)と男2人で踊るマディソン・ダンス、②b,3人がルーブル美術館を9分43秒で走り抜けるシーンというストーリーと直接関係のない(間接関係はあるが)部分が強い印象を残し、かつ有名になってしまった映画。 ④映画・文学諸作品・作家へのオマージュ、挨拶等々があちこちに折り込まれ、ゴダール検定試験的性格を有する映画。検定試験の答は山田宏一『ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代』の「はなればなれに」の章に書かれている。 ⑤ゴダールの妻としてのアンナ・カリーナの最後の主演映画。 三、本書について ○『はなればなれに』の原作として書名のみ伝わっていたドロレス・ヒッチェンズのノワール小説の翻訳である。原題はもちろん『はなればなれに』ではなく、「Fools'Gold (愚か者たちの黄金)」である。 ○ドロレス・ヒッチェンズは1907年生まれの女性作家。戦前戦中戦後と活躍し、40作以上の長編を残す。デビュー以来、オルセン名義で謎解きミステリーを書いていたが、1951年以後ヒッチェンズ名義で犯罪サスペンスを書いている。既訳はオルセン名義が1編(ポケミス1731)とヒッチェンズ名義が1編(ポケミス764)。 四、映画と原作の比較 ○原作と映画を比べると、ストーリーは大筋では原作通りに作られている。登場人物も原作通りである。大きく違うのはカレン(映画ではオディール)とエディ(映画ではフランツ)のその後で、原作では道徳教訓的結末となるが、映画では、一応のハッピーエンド(?)を迎える。 ○原作はよくできた、比較的シンプルな、すっきりした青春ノワール+ちょっとラブの小説と思う。ゴダールはこの小説の強盗アクション部分は原作通り丁寧に撮っているが、ラブストーリーの部分を膨らまし、お祭り的(?)な部分を盛り込んで、ちょっと盛りだくさんの映画を作ってしまったと思う。マディソン・ダンスも、ルーブル美術館9分43秒走り抜けも原作にはない。 五、私的結論 ○『はなればなれに』の原作の本邦初訳が、定価750円+税で、読み易い活字の文庫として出版されたのは、たいへん有意義と思う。 | ||||
| ||||
|
その他、Amazon書評・レビューが 6件あります。
Amazon書評・レビューを見る
■スポンサードリンク
|
|