メグレと若い女の死
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十年ほど前にポケミス版で読んで以来の再読。 今回の方が断然楽しめたのは、平岡敦さんの訳のこなれ具合もあるだろうが、こちらもだいぶ年を経たせいか。 霧雨煙る深々夜、ヴァンティミユ広場で見つかった若い女性の死体。粗末な借り物のドレスをまとい、持ち物もなくなっているというところから、メグレ警視の捜査が始まる。そしてメグレと並ぶ捜査側のもう一人の主役が第二地区警察のロニョン。常に無愛想で司法警察局への卑屈な態度に満ちた、もの悲しい雰囲気の男だが、確かに腕利きであり、ともすればメグレ達に先行する形で、独り、ひたすら足を使う地道な鑑取り捜査を展開する。彼らが縦横に駆け巡るパリの雰囲気が鮮明で、Googleマップでも参照しながら読み進めると、興趣が倍増します。 この作品を読んでいる間、マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーのマルティン・ベックシリーズ第一作『ロゼアンナ』(1965)がしきりと思い出された。 乏しい物証、思うように集まらない情報、なかなか明らかにならない身元、ある時から一気に情報が集まり始めるなどがオーバーラップの要因だが、最も顕著な共通項は、主人公が被害者の生前の姿を浮かび上がらせるための行動と思索の姿だろう。死者ではなく生きた人間として、彼女が生前どんな姿で、どこで暮らし、どのような仕事をしていたのか?交友関係は?金銭面は?・・・ この作品において犯人捜査はかなり後景に退き、被害者ルイーズ・ラボワーヌという人物を、メグレが把握していく過程に物語の大半が費やされる。 メグレやロニョンの捜査で得られたその姿は、あまりに哀切でやるせない。 その果てにたどり着く犯人が多少唐突な感じがあるのは、シムノンの眼目が犯人や犯行の詳細云々ではなく、完全に被害者を描くことにあるからだろう。もちろん、細やかな伏線は随所にちりばめられているので、唐突ではあるが不自然ではない。 メグレ物の中でも佳作の一つとして名が上がることの多い作品だが、それも納得。 これは大都会で何とか幸せを掴もうと模索し続け、遂に叶わなかったルイーズの物語だ。 こうなるとジェラール・ドパルデュー主演で昨年公開された映画の方も早く観なければ。 | ||||
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殺された女性の素性がわかり始める物悲しさ。切ない推理小説です。 | ||||
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読み始めた最初のうちはさほどでもなかったんですが、捜査が進むに連れて、次第に引き込まれていきました。派手さはないけれど、「いぶし銀の」とでも形容したい、味のあるミステリ作品でした。 まず印象に残ったのは、メグレの捜査によって、あたかも霧が晴れていくような感じで、〈殺された若い女〉の姿が徐々に浮かび上がってくるところでした。 巻末の「解説」で中条省平氏が、《シムノン=メグレの感情移入の対象は、多くの場合、自分の正体を消そうとする犯罪者(生者)なのですが、ときには、もう消えてしまった被害者(死者)となるケースもあるのです。》p.249 と述べておられる、その後者に該当します。すなわち、死者となった〈若い女〉の過去を追い、彼女の心理を理解することが、事件の解決につながるという、これはそういうミステリです。 もうひとつ、このミステリの味わいを深めているのが、メグレと競うように、ひとり、どこまでも事件を追いかけてゆく〈不愛想な刑事・ロニョン〉の存在です。 《夜どおし、そして明け方まで、せっせと歩きまわるロニョンの姿を、メグレは思い浮かべずにはおれなかった。重い荷物を抱えながら、なにがあっても前に進み続ける働きアリのような姿を。》p.107 と記される〈不愛想な刑事〉に、「こりゃ、ほおってはおけないぞ」と、次第に焦燥感を募らせていくメグレの様子も見ごたえがありました。 あと、時おり描写される、メグレとメグレ夫人のやり取り、その様子に、ふたりの愛情と信頼感を垣間見るようで、ほっとする気持ちになりました。 | ||||
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