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偶然の音楽



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【この小説が収録されている参考書籍】
偶然の音楽
偶然の音楽 (新潮文庫)

偶然の音楽の評価: 4.27/5点 レビュー 37件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.27pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全37件 1~20 1/2ページ
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No.37:
(5pt)

沈黙は愕きとともに

そもそも目的のない旅を続けるということそれ自体がこの小説の目的といえるかもしれない。物語はそこに偶然という出来事が次々と起きてくる。それは必然といえるかもしれないけれど実は何らかの因果で結びつけられていることかもしれない。
この物語では妻に去られたナッシュが亡き父の遺産として突然20万ドルという大金を手にする。まさしく、思いがけない出来事でもありそれこそ偶然というほかない。ナッシュは一人娘を姉に預けすべてを捨てて目的のない旅に出る。
映画「ドライヴ・マイ・カー」のように赤いサーブでアメリカ全土を走行し続け、十三か月を過ぎて彼はポッツィという天才的な博打の若者と出会う。それも偶然の出会いだった。
勝つか負けるか、ナッシュは彼の話を聞いているうちこの若者と組んでポーカーゲームの勝負に賭ける。二人はストーンとフラワーという大金持ちの兄弟を訪ね大勝負を挑む。

「ビルはミダス王です」とストーンは言った。「手に触れたものは何でも黄金に変えちまう。金儲けの才にかけちゃ空前絶後です」…略…何だかこう、神さまがわしら二人を選び出されたみたいな有様でね。わしらに大層な幸運を与えて、幸福の極みに引き上げてくだすったんです。こんなこと言うとさぞ傲慢に聞こえるでしょうが、わしなんかときどきね、自分たちが不死身になった気がすることもあるんですよ」
「ずいぶん景気がよさそうだけど」とポッツィがようやく会話に割って入った。「俺とポーカーやったときは、それほどでもなかったね」
「そうなんだ」とフラワーが言った。「まったくそうなんだ。これまでの七年、わしらが運に見放されたのは、あとにも先にもあのときだけです。ウィリーもわしもあの晩はヘマの連続で、あんたにさんざん搾りとられちまった。だからこそぜひ復讐戦をとお願いしたわけでね」(p112-113)

それこそ偶然の勝利にすべてを賭ける(運命的な生の高まりを欲したのかもしれない)が、二人はその勝負に負けた。それも偶然かも知れなかったが負けた者の常として窮地に立たされた二人は兄弟がアイルランド西部から取り寄せた15世紀の城の石で壁を建てる50日間の労働と引き換えに借金の返済を強いられることになった。
このように物語の構図はきわめて単純かもしれないが二人だけの生活、マークスの監視のもとに与えられた宿舎(トレーラー)との間を行き来する単純な労働をくり返す生活が二人に心理的な変化をもたらしていく。

仕事はのろのろと、ほとんど目に見えないほどのペースで進んでいった。調子のいい朝には、二十五個から三十個くらいの石を溝まで運んでいけたが、それが精一杯だった。(p194)

二人はいろいろな葛藤を抱えながらもこの仕事を続けるほかなかったがポッツィの苛立ちや憎悪とともにみじめな絶望もむき出しになっていった。ナッシュは夕食後の読書もやめて、ポッツィと一緒に過ごすようにし、ポッツィのことをもっと気をつけて見守ってやらねばと思うようになった。
偶然か必然か二人の興味深い対話がある。

「まあな。でもあのときはそうじゃないと思うね。いったんツキが回ってきたら、それをとめられるものなんてありゃしない。世界の何もかもが、いっぺんにあるべき場所に収まるみたいに思えるのさ。自分がこう、自分の体の外に出たみたいになって、あとはもう夜通し、自分が次々奇跡を起こすのを見物しているんだ。もう自分とは関係ないというくらいでさ。コントロールしようったってできるもんじゃない。とにかく考えすぎたりしないかぎり、間違いひとつ犯しようがないのさ」(p203)
「俺には簡単な話に思えるがな。夜のあいだ、かなりのところまで、俺たちは勝ちそうに思えた。ところが、何かがおかしくなって、結局勝てなかった」(p204)
「同じことを別の言い方で言っているだけさ。お前はつまり、何か隠された目的ってものを信じたがっている。この世で起きることにはちゃんと理由があるはずだって信じ込もうとしている。神、運、調和、何て呼ぼうとおんなじさ。そんなのは事実を避けるための寝言さ。物事の真の目をそらす手段なだけさ」(p206)
「俺が狂っているとしたら、俺たち二人仲間ってことだぜ。少なくともお前もこれ以上一人で苦しまずに済む。それって感謝していいことじゃないか?俺はとことんお前と一緒だぜ、ジャック。一歩一歩、旅路の果てまで一緒さ」(p209)

やがて彼らは千個目の石を据えた。

最後の石がついにセメントで固定されると、ポッツィは一歩うしろに下がって、ナッシュに言った。「よう、見ろよ、俺たちやったじゃないか」。(p218)

こうして壁の完成が近づくにつれ物語は徐々に狂おしさとともに高揚感に充ちた出来事が起きてくる。女を呼び寄せた大パーティー、ポッツィの脱走と死、壁の完成、ナッシュの生き方とささやかな祝いごと、そして最後はサーブのハンドルを握ったナッシュが猛スピードで車を走らせる。物語は圧縮した生の緊張が高まっていくように閃光的に死を予感させる。
偶然の音楽とはどういうことだったのか、それは何を意味しているのか。読後の沈黙は愕きとともに哲学的で大きな問いを発しているように思われる。
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4102451064
No.36:
(4pt)

偶然の音楽という題名の謎に悶々と。

「哀悼の意を表します」ポールオースターの小説の魅力は穏やかな退屈さがありストーリーより現象(気分)がふぁ〜んとしていて、適度な緊張感があり、いつのまにかその世界が去っていってしまう。彼もこの世を去ってしまいましたが、ふぁ〜んという感じだったのではないかと思います。本作品は二つの題名が一つの作品とは知らず、読み進めているうちに気づきました。しかし別々に作られたものを一つに変更したのでは?とも感じられました。純文とエンタメがミックスされているためか、小説を書いて伝える難しさが感じられます。本作品を読み終わると、この世には希望も自由もかなえられず、何も約束されず、夢を見るのはは意味がなく、カネと時間と死に怯え、スリルが感じられれば幸いなのであろうか。というリアルさを突きつけられたようで、私はしばらく悶々としていました。
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No.35:
(1pt)

不良

①商品のカバーの肩が切れていて捲れ気味ではした。
②商品のカバーの上部一辺捲れ気味でした。
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4102451064
No.34:
(5pt)

最高!

チャンスの音楽
と理解してます。そのように考えるとかなり面白い話です。
チャンスなのに、ちっともチャンスにならない?あべこべ?みたいな感じです。しかし、このようなギャンブル否定、勧善懲悪に近い、地道な生き方礼賛につながる、そんな社会を描いた本書はアメリカ文学と思えないぐらいで。とても素晴らしいです。高度情報化社会、個人情報管理社会が高度人工知能の後にくるはずですがそんな社会は、このような過去の言動との一致を迫られるような社会になるのではないか?とも理解しました。
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No.33:
(5pt)

久しぶりに読む傑作

古本ですがきれいで何の問題もなかったです。
忙しくてなかなか読めない日々なのが悔しい。
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No.32:
(5pt)

ジョジョの奇妙な冒険

ジョジョの奇妙な冒険のダービーザギャンブラーの章を彷彿させる本です。オースター全部読んでないけど、自分的にオースターの本の中で三本の指に入ります。
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No.31:
(3pt)

アメリカ版「世にも奇妙な物語」?

逃走男、宝くじで大富豪となった男たち、ポーカー勝負、壁作り・・
不思議なストーリーで、冒頭にタモリでも出てきて導入を語り出しそうな雰囲気の小説。

だが、話に引き込まれるまでに時間がかかってしまった。
ポーカー勝負に至るまでの話が長いかな、、
全体的にもやや冗長な気がした。
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No.30:
(4pt)

まぁ読んでみてください、一人ひとり色々感じさせる本になっていると思います

意外と考えさせるいい内容の本だったと思います。
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No.29:
(5pt)

あー 投げ出したい!

ストレスで病んでる時は読まない方がいいかも。最後のシーンが秀逸。
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No.28:
(5pt)

突然のエンディングときいて

残りの30ページを押さえている左手の親指は
あとがきがあるのを予想して少ないと感触しているのか。

多くの人が「突然の収束」と表現しているのは「驚きの表現」で
有耶無耶にボカシたわけでも投げっぱなしたエンディングでもない。
後に別エンディングの映画がつくられたということが力技に思える。
娼婦の手がかりも偶然の友の死も曖昧になってしまった。
けど、賢明なら答えはよみとれたじゃないか。

運命や道理などを念頭に置いた性格(なはず)の作者が
それらを交えながらそれらと裏腹なストーリーで表現する。

ありふれた平凡だと思いこんでた心に棘が刺さって
死に絶えていた自分が覚醒させられる。

いままでで読んだ作品で一番かもしれない
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4102451064
No.27:
(5pt)

誰にでも起こってしまう可能性がありそう

確か前回はナッシュと同じ年齢のときに読んだ記憶があります。
もうだいぶ前のことです。
そのときも面白いと思ったのですが、今回も同じように面白く読みました。
誰にでもこういう人生になる可能性を秘めているのではないでしょうか。
昔ジュビロにいた奥選手の人生をちらっと思い出しました。
こつこつと何かを積み上げるような時期って必要ですね。
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4102451064
No.26:
(4pt)

もう一つのエンディングが見たかった

この一冊はオースターにしては異色に見える。物語を内側内側に折り重ねるではなく、外へ外へと拡げていく。内側へ向かう筈の思考が外側へ展開されるのだ。1つ1つ思考を積み重ね、思考の壁を創り上げ、それが神秘的な障壁となり、彼自身を強く外側へ開放する原動力となる。少し抽象的な言い方になったが、ストーリーとしては、実に爽快でミステリアスで恐ろしいほどにさっぱりと単直化されてる。単純に面白いという点では、彼の作品中トップクラスであろう。
 大まかな流れとしては、妻に逃げられ自暴自棄になりかけた主人公ジム・ナッシュに、亡き父の遺産が転がり込み、車と音楽に心中する自己開放の旅に出かける。途中でポッツィーという若き哀れなラウンダーズと出会い、文無しの彼と心中し、大勝負を打つも大負けを食らう。1万ドルの借金を返済する為に、700mに渡る壁を作らされる羽目に。逃亡を図るポッツィーは殺され、ナッシュは復讐を誓う。一気に読み干せるほどのシンプルな作りだが、これほど思い込みの激しい情の篭った作品は、オースターにしては珍しく思える。
 この物語の見所は、ポーカー賭博のスリリングさと絶妙な駆け引き、それにただ単に壁を築くという単調な重労働の空虚さにある。この2つの相反する対象的な行為の中で、様々なカードが繰り出され、いろんな駆け引きが折り重なる。ナッシュの燻し銀的な復讐劇を期待したせいか、淡白であっさりとしたエンディングには多少の物足りなさを感じた。何とも煮え切らない微妙な感傷を抱かせる所がまたまた憎い。
 ポッツィーはもう一人の若きナッシュであり、ナッシュはポッツィーにとって絶対の守護神なのだ。ポッツィーが死んだ時点で、ナッシュの物語も終わった。ポッツィーを生かしとけば、大半の読者が期待するような、複雑多岐に導くドラマチックな結末になるかも知れないが、それではナッシュの影が薄くなる。これはポッツィーではなくジム・ナッシュの物語なのだ。全く、オースターの思考の軽快さと快活さを見せつけられた気がした。
 でももう一つのエンディングも見たいものだ。そう思った人は、この作品を映画化した『The Music of Chance』のDVDで確認しよう。
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4102451064
No.25:
(3pt)

赤いサーブでアメリカ大陸1.3万キロの旅

タイトルが読後でもピンとこない。旅行記ではなく、家族、友人との交流、奇妙な体験談みたい。ポーカーゲームが主人公ナッシュの人生を象徴しているようだ。奇妙な「偶然の出逢い」でギャンブル屋の小柄なポッツイに最後の掛けを挑み失敗、愛車を取られ最後の終末に突っ込むエンディング。時代の隔世で現実感が無い分を楽しめる。
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4102451064
No.24:
(5pt)

神秘の障壁

小説を読み、音楽を聞いてみたいという気持ちになりました。
主人公のナッシュが弾く「Les Baricades Misterieuses」というF.クープランの曲は、大のお気に入りになりました。
めぐり合わせの音楽です。

ハードカバーの装丁が好きです。
たまに読み直します。

ポーカーでナッシュが席を立ち、帰ってきたときにポッツィのシーンが印象的です。
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No.23:
(4pt)

破滅なのか解放なのか。

このところポール・オースターにはまり、何冊も買い込み週末の休みの楽しみにとってある。なぜ週末かと言えば、僕にとってレベルが低くつまらない純文学を読む週末ほどストレスになるものはないからだ。まず、本書は完成度が高い。主人公が天才ポーカープレイヤーと知り合いになり、相続した金を預けて大金持ちとの勝負に出るが敗れ、壁を作らされ、その上労働対価の生活費までぼられるあたりの作り方は見事なものだ。文章も肩から力が抜け、洗練された文体で二人の会話を上手く描き、面白い。だが、本書は様々なモチーフによって人生の閉塞状況をあぶり出す。そしてラストは破滅へ向かう主人公の暴走で幕を閉じる。著者の中核をなしている自己と孤独と閉塞感といったテーマはそこからの解放を強く願い、最近の作になるほど希望を失わない方向へと思想が変化しているが、本作執筆あたりでは破滅願望が強かったのだろうか。とにかく一読して決して損はない一冊だ。
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4102451064
No.22:
(4pt)

旅行に出かけたくなるような小説

時には欲望の赴くままに行動して、先行きの無い人生に直面し夢想に耽るのもいいのではないだろうか?この小説はムーンパレスと並び、読者にそんな感慨を与えてくれる。先がわからないから面白い、いやたとえ先に絶望が待ち受けていようともそれはそれでいい。何故ならまさしくその不安な状態こそが、我々に生きている実感を感じさせるのだから。
作中にちりばめられた数々の偶然、中でも賭博者ポッツィとの出会いと突然の別れには深く考えさせられました。主人公ナッシュの中でポッツィはまさに「呼吸する偶然」であり、ナッシュの外で独自に存在しているにも関わらず、同時に彼の一部でもある。ナッシュが自発的にポッツィに逃亡を進めたのに、彼が去った後どうしようもない喪失感にとらわれたのはナッシュ自身の偶然を奪われたように感じたのではあるまいか?
『死にたくないからただ生きるのか。それとも、生きていると実感したいから死を呼び寄せるのか』。読後、こんな哲学的な問いを思い浮かべてしまいました。
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4102451064
No.21:
(5pt)

自由だけど奴隷な現代人のために

すべてを辞めてしまいたくなったことはないだろうか。すべてを捨ててしまいたくなったことはないだろうか。現代社会を生きる私たちにとって、すべてを辞めてしまいたい、自分という主体を消失させてしまいたいという抑え難い欲望と、それでも社会と何らかの形で付き合っていかなければならないというジレンマは永遠のテーマである。

 ポール・オースターの作品はリアリズムと虚構的な位相とが入り混じった部分に魅力がある。本作が描く主人公は、元消防士で家族には捨てられ、職を捨て、父の遺産をひたすらアメリカの荒野を走りまくることによって食い潰す。

 ポール・オースターはすべてを失った人間を描くのが本当に上手い。大の大人がすべてを放り投げて、ほとんどゼロになる。なろうとする。しかし人間は本当にゼロになりきれるのだろうか。統一した主体であることを止め、ほとんどその瞬間のみを生きるといった80年代的な言説に対する思考が本作『偶然の音楽』では描かれている。

 逃げてはとらわれ、逃げてはとらわれ、主人公はなかなか「自由」にはなれない。本作はロード・ノヴェルの形式を取り、形式的にはアメリカ的だが、その理念において実はアメリカが標榜する「自由」に疑念を示してさえいる。すべての財産も、自由意志も、家族も、すべて喪失しながらもなお、主人公は奴隷になってしまう。資本主義の奴隷に。

 本書は「自由」の問題を論じていながらも、結論としては極めて絶望的な気がする。我々は、結局のところ遍在する権力からは逃れられない。奇妙に倫理観を欠いた「神」たちによって、私たちは奴隷にされる他ないのか。この時期のオースター作品にはそのような極めてスリリングな問題提起がちりばめられている。オースターを読むなら、本作か、この作品と地続きのアイディアから描かれた『ムーン・パレス』『リヴァイアサン』がお薦め。


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4102451064
No.20:
(5pt)

理性と衝動との強烈な葛藤

物語世界の中に読者を強く引き込む力を備えた作品である。

読み終えて思ったのは、登場人物たちが、理性と衝動の狭間に立たされて、迅速な判断を下すことを迫られる場面が
実に頻繁に出てくるということ。

そしてそのことがまさに、この小説を、衝撃的な結末へと邁進させていくエネルギーの源になっている。

ヒトを襲う衝動を取り巻く、さまざまな要因(狂気、破壊、性)が、巻頭から巻末まで、ぎっしりと詰め込まれており、
それが一個の生命体となって、作品内を激しくのたくっているような感じがした。
読んでいる最中、胸が苦しくなってくるような気分を覚えた。

この小説は、読者にエネルギーの消費を要求してきます。覚悟して読んでください。
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4102451064
No.19:
(4pt)

偶然の読書

たまたま本棚にあったから手にとってみました。僕にとって、初めてのポール・オースター作品がこれです。

僕はよく「その作家との出会いの作品」でハズレを引きます。そして「きっとこの人のは、ハズレしかないんだ」という強固な偏見のもと、二度と同じ作家のものを読まなくなることしばしばです。でもこの本は、少なくとも僕にそう感じさせはしませんでした。だから僕はまたいつかどこかで、別なオースター作品を読むことになるかも知れません。

問題は「いつどこで読むか」なのですが、僕がそれに明確に答えられるような読者なら、この本に魅力を感じたりはしなかったんじゃないかなと思います。多分、たまたまどっかの本棚にあるのをまた見つけたときかな。

つまり、これはそういう小説だろうと思いました。

起承転結のそれぞれが必然性を欠きつつも、それなりの連続性を持ち続けており、そしてそのことが何やら妙なリアリティを演出しているようだと感じさせたのです。だから、よく考えれば奇妙な物語じゃないかとも思うのですが、「でもね、それが彼らの人生だったのさ」と言われれば「ふうん」と納得してしまいそうになる。そのあたり、割と絶妙なバランスです。

まあ話の筋には触れないでおこう。大抵いつも触れないんですけど、この本の場合、とりわけ意味がなさそうだから。
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4102451064
No.18:
(5pt)

衝撃的な結末

衝撃的な結末。決して予想外というわけではないけど、やはり、あの終わり方にはショックを受けた。

小川洋子が後書きを書いていたけど、たしかに、オースターの小説には閉塞感がある。主人公がそこからどう脱却しようとするかという、テーマはムーン・パレスと共通だ。なんだか、身につまされる話だ。
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4102451064

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