スロー・ラーナー
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20年前以上に住んでいた街の図書館にあったハード・カバーの本(志村正雄 訳)は、そのシュールなイラストと白っぽい表紙と共に頭の中で積読していたのですが、タイトルを『スロー・ランナー』と誤って記憶していたようです。その間に『重力の虹』や『ヴァインランド』を読み、解説等で作品歴は目にしたはずなのに、それは勘違いされたまま埃をかぶり隅に追いやられたのです。 最近、本屋さんでたまたま『スロー・ラーナー』という表題を目にしたとき、瞬時に間違いに気づきました。そして、手にした単行本のタイトルSlow Learner=「頭のとろい奴」とは、他ならぬ僕自身のことなんだとはたと思ったのです。 本書は2年前に刊行された新訳(佐藤良明)です。作者のトマス・ピンチョンは謎の作家(公式の場に現れない)にして寡作(時には10数年のブランク)、しかし待ちあぐねた作品はいづれも長篇(どちらかといえば超長篇)で期待に違わぬ良質なもの(彼の先鋭的な読者は失敗作という基準を放棄している)、ゆえに本書はピンチョンの学生時代(1959年代後半)の習作が読めるということで貴重なものとなっています。 処女作にはその後の作品で開花する要素のすべてが胚胎してると言われますが、解説によればピンチョンにとってこれらの小品は本番前のリハーサルのようなものだったそうで、事実、本書の最初に掲げられる「イントロダクション」(作者自身による言い訳)には、これらは徒弟による試し書きで、今読むのは当人にプライドにとってたいへん辛いことだ、と書かれています。「学習遅滞者」というタイトル自体が自虐的です。だからといって本書に収められた5つの短篇がダメで残念な作品ばかりというわけではありません。 「スモール・レイン」や「ロウ・ランド」は当時流行の実存主義的な香りのする文学志向の作品です。「エントロピー」は長篇を除けば、ピンチョンにとって最も有名な作品。訳者によれば、アメリカの名高き文芸誌に掲載(1960年春)され、後の年間ベスト・ストーリーの一遍にも選ばれたそうだ。この熱力学の概念は本短篇では効率のメタファーで、使える物がどんどん減っていくさなかに、役立たずの仕事ばかり積み上がっていくというような意味。ピンチョンの作品のを読むのに別に物理学や化学、情報工学、量子力学といった知識は必要ない。それらは他の多くのオタク的サブ・カルチャーへの言及と同じような扱いでよろしいかと思います。あくまでも記号として分っているつもりで読み進めばよろしい。 「アンダー・ザ・ローズ」はある国のさほど遠くない過去における出来事、スパイやエージェントがうごめく歴史の表舞台、錯綜する思惑、ゆえにことはシナリオ通りにいかず、しかし豊饒な物語の中、猥雑で過剰な語り口が行き当たりばったりに陰謀史観を吐き出してしまう。「シークレット・インテグレーション」はピンチョンにしてはビックリするくらい真面で正統な作品。凝っているのは題名くらいか。これは雇われ職人が注文に応じて作ったものらしい。雇い主は『サタデー・ナイト・イブニング』、他の四篇の媒体とは違って由緒ある歴史と大衆的な人気を誇る雑誌だそうだ。これを通俗と片づけるほど僕はシニカルにはなれません。素直に楽しめるし泣けました。イマジナリー・フレンドを中心とした少年たちの、ささやかな反抗のためのはかなき紐帯。僕にとってはスティーヴン・キングの「THE BODY(死体)」(映画スタンド・バイ・ミーの原作)に匹敵する思春期小説です。 | ||||
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お話は面白いのかもしれないけれど、訳がちょっと・・・。原文が難解なのかもしれませんが、文章じたいが変な部分もあり、途中でやめてしまいました。 | ||||
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「緩い学び手」とはまるでわたしのことではないかと、本書を読む前に笑ってしまったが、読んでしまってから、これは作者の自嘲の言葉と分かった。彼はこの本の中で若き日の短編を6本並べて、自らが書き下した序文で、それらに不平たらたらいちゃもんをつけているのである。 そうと知ればなおのこと、これらの若書きは読むに堪えない未熟な作品と思えてくる。いったいに小説は、その内容か文章のいずれかが多少とも面白ければ、それなりに楽しく読みとおせるが、「スロー・ラーナー」の場合は、そのどれをとっても面白くもおかしくもないから、これは典型的な駄書であり、普通なら到底読むに堪えない小説としてマントルピースに投げ入れられて焼却処分されることになるはずだ。 それがそうならないのは、ひとえに彼の文学が後におお化けしたからであって、後世の偉大さの源泉をさかのぼって発掘するという鬱屈した趣味を持たない一般的な読者にとっては、この種の本に目を晒す楽しみなぞひとかけらもない。私はいわば眼の苦行を強いられたわけだが、それにしてもこれほどくだらないテキストをいくらアルバイトとはいえ、いかにも意味ありげかつ権威主義的に翻訳した奴の顔を見てみたいもんである。 堕ちよ堕ちよダンダラ星堕ちよ 茫洋 | ||||
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ピンチョンにしてはびっくりするぐらい読みやすい短篇もあるし、 相変わらず読みにくい短篇もあるが、すべてにおいて天才の片鱗あり。 何より、すばらしいのがピンチョン自身によるイントロダクション。 そこにはピンチョンの文学論が展開されていて(しかも、とてもわかりやすーく) これだけ読むためだけにでも買う価値があるってもの。 20年前に書いたそれぞれの短編を振り返って反省しているのである。 文学的に過ちを犯しているとか、当時○○に影響を受けて書いたとか、△△みたいのが書きたかったとか、なんとか。 タイトルの『Slow Leaner』にはまさにこういう意味がこもっていて、「学習の遅いやつ」っていう。 天才ピンチョンでも、いろいろ試行錯誤してたんだとしみじみ感じる、まさに、メイキング・オブ・ピンチョン、ピンチョンの作り方。 ただ、短いからという理由でピンチョンの入門としてこれから始めるのはちょっと違うかも。 これだけ読んで「ふーん、ピンチョンってこんなもんなんだ」と判断して、ピンチョン山脈に入らぬまま、 入口で引き返してしまうおそれあり。やっぱり、長篇にこそピンチョンの魅力ありだと。 でも、何冊かピンチョンを読んだことある人は、これ、とても楽しめると思います。 | ||||
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新装版が出ていたので、何年ぶりかで再読。 長編ほど読みづらくはないけど、やはりピンチョンはピンチョン、読むのに苦労する。それは自分の実力不足ということもあるのだろう、この作者は読者を選ぶ。 収録されている作品は、「エントロピー」を始め、何回か読んだことがあるはずなんだけど、どれもかなり古い作品だが、改めて読むと新鮮だ。 それと、ピンチョン自身による序文は面白い。あまり触れることがなかったピンチョンの初期の創作活動を知ることができる。 | ||||
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