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薬指の標本
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薬指の標本の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.31pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全70件 1~20 1/4ページ
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著書の感性が鋭い。言語も豊か。 | ||||
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LIBERTY(生まれながらの自由) の概念が入ってきた明治日本より、自由を追求し、それが得られたら幸福になると期待し、信じていた幻想が崩れ、さらに就職氷河期が追い打ちをかけた2006年。 人と人とを結ぶ象徴的な「薬指」を失い、さまよう主人公が「自由でなんかいたくない」「私を標本にして」と言う。 小川洋子さん、天才です。 | ||||
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人は誰しも他の人には言えないことやトラウマがある、 そんなことをテーマにした二つのお話でした。 一つ目の話は「標本」を作り「もの」を保管する仕事 もう一つは「カタリコベヤ」でを必要な人に提供し、「語る」場を提供するお仕事。 自分だったらあれを標本にしよっかなぁ、あれを語ろうかなぁと、考えつつ。 でも依存しすぎは禁物な模様物語に出てくる小道具「ワックス」が二つの話で共通していたりして あれはどういう意味があるんだろうと 読んだ後も余韻に浸れる大人の作品でした。 | ||||
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誰もが迷い込みそうな日常と非日常のあわいを描いた短編が2作収められています。 | ||||
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文庫本を持っていましたが、単行本が欲しくて探していました。 中古なので、購入をためらっていましたがとても綺麗な状態で満足です。 毒が含まれた美しい文体。小川洋子作品の中で最高の物語です。 | ||||
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タイトルの本では標本に魅せられた弟子丸氏と仕事で薬指を消失した女性とのやり取りの中で、無機質な感情が細やかな描写を通して伝わってきます。終わり方も読者の想像力を掻き立てる形で、これぞ文学といった印象を受けました。六角形の小部屋も哲学的な心理描写が好みでした。 | ||||
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大変良かったです | ||||
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〇 2篇とも、小川洋子作品特有の「小さな発見」と「風変わりな仕事」と「少しの毒」を備えている。どちらも、人がひとりでは処理しきれないこころの負担を切り離し閉じ込める物語であるという点でも表通している。 〇 文章表現は、日常的な言葉を連ねては、素直な構造の短文を積み重ねていくといういつもの手法だ。ふっと差し込む光とか、ラジオから聞こえてくるシャンソンとか、遠くに見えた木の葉のきらめきとか、そんな細々とした印象を書き込むことで、文章の温かさ、柔らかさ、やさしさを表現している。 〇 「薬指の標本」 これは少女が男に恋をした物語と読める。しかしそんな簡単なものではないような気もする。誰でも持て余す過去を持っていて、それをいかに処理するかに苦しんでいる。それを切り離し葬り去る手段として標本室という場所を考えてみるのは馬鹿げたことではない。むしろ人の真実に迫る手掛かりかもしれない。 〇 こうして作者は標本室を手掛かりにして、現実世界の裏側に潜り込んで自由に歩き回り、飛び回ってみた。そうしたらこんな作品になりました、ということなのではないだろうか。 〇 「六角形の小部屋」 こちらはもっとわかりやすい。人は心の負担になっていることを抱えており、それを吐き出すことで楽になることができる。そのような言葉を吸い込んでくれるブラックホールが本当は必要なのだ、ということなのだろう。もちろん背中が痛むのは心に負った傷が痛んでいるのである。 〇 そのようなブラックホールとして語り小部屋が着想され、小部屋屋さん親子が創造された。あとはお客さんだ。すこしわがままでそれを自覚もしている若い女性が客として造型され、痛みの原因にもなる恋人が作られたというわけだろう。 〇 この作品には、他の作品に見られるほどの毒が仕組まれていないように思う。それがこの作品のとっつきやすさになっている。 | ||||
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今回も現実にはあり得ない2つの職業が描かれていますが、何となく実は本当にあるのではと思わせる雰囲気を感じるのですね。『薬指の標本』標本室は人々の願いを叶える善意の施設ではあるのですが、ヒロインは生きながらにして弟子丸氏の標本にされてしまうのでしょうか?さり気ないサイコホラーとも読めますね。『六角形の小部屋』私の町にも何時か「語り小部屋」が来るのでしょうか?でもある日突然に消えてしまったら語り小部屋ロスで相当に悩み苦しむでしょうね。 | ||||
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1994年、小川洋子氏の作品です。 表題作『薬指の標本』と『六角形の小部屋』の中編2編が収録されています。 やはり、『薬指の標本』は面白い。 清涼飲料水の工場で働いていた”わたし”は、 ある夏、機械に指を挟まれ、左手の薬指の先を失う。 工場を退職し、新たに見つけた職は標本室の事務。 この標本室では、技師・弟子丸氏が、様々な人が持ち込む思い出の品を標本にしている。 ある日、”わたし”は、弟子丸氏に黒井靴を送られるのだが・・・ 裏表紙には「恋愛の痛み」という言葉があるが、そんなもんじゃないと思う。 むしろ、布施英利氏の解説に近い読み方をしました。 薬指を失うことで、意識の中で、失った薬指の存在が大きくなる。 「ない」は「ある」に転化し、「ない」は磁石のように「ある」を引き寄せる。 そうならないように、人々は標本にする・・・標本的救済。 また、「ない」に引き込まれ宙ぶらりんになっていく”わたし”が、 帰属、所属、といったものを求めているようにも感じる。 アノミー小説とでも言いましょうか。 ズルズルと引き込まれていくところに、 谷崎潤一郎、カズオ・イシグロ、あるいは遠藤周作『沈黙』を思い浮かべました。 また、退廃的で美しい様は、太宰治、没落するロシア貴族、 PORTISHEAD(映画版『薬指の標本』ではBeth Ortonが音楽を担当)などを。 『六角形の小部屋』は、『薬指の標本』と似たところがある。 標本が墓、慰霊碑、仏壇等なら、『六角形の小部屋』は教会の告白のよう。 『薬指の標本』の”わたし”が、カタリコベヤを知っていたら、どうするだろう?、なんて考えてみたくなる。 恍惚感を誘う喪失ストーリー2編。 どちらも長すぎず短すぎず、端正な文章で綴られてあります。 磁石に引き寄せられるように、小説の世界へ引き込まれる。 いや、そんななまやさしいことじゃなく、 もっと根本的で、徹底的な意味において、絡め取られていく・・・ | ||||
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他の方のレビューにもあるように、女流作家ならではの淫靡で危うい世界観ですね。安っぽく薄っぺらくならないのは、この作家の高い文学性でしょう。まとわり付くような湿度や生々しい体温が感じられないので、読後も登場人物の内情だけが残ります。同じ作家の別な作品にまた興味が持てました。 | ||||
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全体を通して、ふんわりと、あたたかい雰囲気がただよっているが、 突然、背筋がゾッとなるような場面が当たり前のように入り込んでくる。 なんとも不思議な感覚の本だった。 | ||||
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小川洋子さんは、曖昧な解釈で良いですよ。 という、語りべのような作家だといつも思います。 批判も肯定も曖昧な表現が多いので、自由に頭を、傾げ乍ら、熟考して読める気がします。 薬指の一部を、炭酸ソーダ工場の作業中、事故でなくした主人公の話。 弟子丸という、標本を作る仕事の会社⁉の、事務員に転職する主人公。 勿論、事故がトラウマで仕事が出来なくなってしまったから。 私事です。 三日前位、何年振りかに 火傷 をしました。 簡易沸騰ケトルの、沸騰蒸気をもろに、右手の薬指と小指にあててしまい。 冷水で感覚が無くなるまで冷やしたものの、痛みが酷く、薬が見当たらない。 昼間は、一人なので、途方に暮れ、たまたま来ていた主人に薬を塗って貰いました。 しかし、つもり積もった何かが折れて、その後寝込んでしまいました。 今も、薬指は、水泡が破れ、赤みと痛みが残って治療しています。 本は、出会いがあるのよ。 母親の言葉。 まさに、このような小説と人生との出会いが多い私の人生な気がします。 身体の何かを失う。傷つける。 そうすると、身体や、心のバランスが必ず損なわれてしまう。多分。 彼女は、様々な標本を依頼する人達に誠実に対応し、その主である、弟子丸氏に惹かれていく。 淡々と、奇妙な展開になり、主人公は、ついに… …次の 六角形の部屋。 背中を痛め、いやいや、ジムに通う医療事務の女性。 何故か、ひっかかる、地味すぎる中年女性との出会い。 過去の失恋を引きずる日々の苦しみが背中を痛める。 六角形の部屋で、ありふれた、しかし、個人がそうなってしまったら、悲しく辛いであろう、出来事をただただ語る人々を見つけ主人公も、ついに六角形の部屋のとりこに… カウンセリングで、おざなりな治療と、脱け出せない薬を飲むより、暖かなみまもりを受けつつ、小部屋で、叫ぶなりした方がいいかもしれないですね… ただ、何でも のめり込む のは、いけない。 それが、生きる為に必要な知恵と判断ではなかろうか。 のめり込みやすい、誘惑に満ちたこの世の中で上手く生きれる事を読者に問う小説の様な気がしました。 | ||||
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二作品ともに共通して感じたことは「好奇心」が物語を左右しているというあたりだと思います。 しかしながらこれら作品はこれしきでは表せない奇妙な魅力があります。 そこは好奇心ゆえの物語で終わっていないことではないでしょうか。 「薬指の標本」は「標本室」で働くにつれ、標本技術士の弟子丸氏に次第に惹かれ、彼が作る標本に惹かれ、そしておそらくは自身が標本になることでいつまでも彼に愛されることを選択するという流れになっています。 主人公の女性はある事故で薬指のほんの先端を失ってしまいます。その後、ふとしたきっかけで住んでいた街を離れて「標本室」とめぐり合い、「標本室」で働くにつれそこの住人や弟子丸氏、扱っている標本に興味を持ち始めていくのですが、物語の要所要所で好奇心ゆえの行動が描かれており、不思議なことにそれらは全て弟子丸氏への愛情へとつながっていくように感じます。 ストーリーとしては決して明るい話ではないのですが、血でピンク色に染まったサイダーや、火事で焼けてしまった残骸から摘んだきのこを標本にして欲しいと持ち込んだ女の子、弟子丸氏からプレゼントされた靴を褒めしかし危険だと警告した老人、端々に登場する一見関係ないエピソードやアイテムがラストを演出していたと気づいた時の爽快感は、何とも不思議な読後感でした。 余談ですが私もとある事故で親指の先端を失いましたが、とてもじゃないがピンク色に染まるサイダーを見つめたり、他人事のように失った先端に思いを馳せるなんて余裕はありませんでした(笑)物語としてはキレイですが感情移入できなかったのはそのせいなのかしら。 もうひとつの「六角形の小部屋」は半分以上が好奇心丸出しの描写で話が進み、謎の小部屋「カタリコベヤ」を自身が使いつつも最後までそれが何故人を惹きつけるのか理解できないまま終わっています。 カタリコベヤが空くのを待っている人や、管理者に根掘り葉掘りシステムのことを聞いたりする描写がかなり細かく描かれており、その辺り主人公が取る常識的な行動に親近感を覚えたり、カタリコベヤは懺悔室みたいなものなのかな?とか、こういうシステムってあるんじゃないのかな?とか「もしかしたら」みたいなリアリティを感じます。 ところが、カタリコベヤに集まった人たちの「余計な質問はするな」といった表情、ラストの「知らないのはあなただけよ。もうそのことは口にしてはいけませんよ」と言わんばかりのリアクション。そういった表現が急に冷水を浴びせかけられたかのような、しかし妙に納得がいった、という感想を抱くわけであります。しみじみ反芻してみると、怖さとしてはこっちの方が後からじわじわくる感じですね。 | ||||
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女性だからこそ表現できる艶めかしい淫靡感と、儚くも淡いストーリーが見事に調和した作品でした。 『薬指の標本』と『六角形の小部屋』どちらも非現実的な物語ながら、どちらの『私』も抱いている感情は痛いほどに現実的。 美しい文章から溢れ出る状況描写は鮮明で、映画を見ているよう。 読んでいる最中に低温でじっくりと、それでいて確実に心に焼き付けられるような感覚が印象的でした。 今回初めて小川洋子氏の作品に触れました。他作品も是非手に取ってみたいと思います。 | ||||
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透明で美しい描写を、ここまで突き詰められるひとはめったにいない。 小説嫌いだった私に、小説の楽しさを教えてくれた作品である。 標題の「薬指の標本」は特に際立った良作である。 本来なら薄気味悪いストーリーが、著者の限りないまでの透明な描写により、一種の幻想的な美しさを秘めたものとして昇華されている。 小説嫌いにもぜひ読んで欲しい一冊としてお勧めしたい。 | ||||
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映画版も見ましたが、小川洋子さんの小説はなんとなく不吉なところも多いのに端整で美しいですね。 話しの内容も一昔前ぐらいのレトロな感じがとても良く、私の感性に今まで一番しっくりくる小説家です。 映画よりこちらのほうがあっさりしていますが、一緒に収めれている六角形の小部屋という小説も静かで好きです。 | ||||
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2作品ともすごいですね。「薬指の標本」は、怪しくて湿度が高い作品。大人向けで雰囲気あってなかなか良いですね。靴の魅力。彼女を掠め取ろうとする靴に身を委ねる、「自由になんてなりたくないんです。この靴をはいたまま、標本室で、彼に封じこめられていたいんです。」低い温度の描写ですが、熱いですね。秘密の標本室で何が行われているのか。古びた女子アパートの使われていない浴室・・。何だか、「ホテルアイリス」の世界を予期させるような。 「六角形の小部屋」も小川ワールド爆発、みたいな作品です。もう、三次元の世界を超えて、未知との遭遇みたいなブラックホール感というか、時空の揺らぎを感じました。出てくる舞台が田舎のコンビナートの廃社宅。ごく普通の人々が、ほんの少しの時空の揺らぎを感じる雰囲気です。スポーツクラブの更衣室のシーンは、私が好きなマーガレット・ドラブル女史の「Seven Sisters」のロンドンのジムを思い出しました。たぶん小川先生の作品とは全く関係ないと思いますが。 | ||||
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多くは語りませんが、この物語は噛み砕いて、骨の髄までしゃぶらないと比喩等が理解できません。 故に、読書歴の浅い方々を分別するため、いい意味で「最悪」としました。 そしてこの物語は、ある話が見え隠れしています。もちろん主観ですが、文面にも書かれてあることです。 それを理解した途端、この作品の恐ろしさに気がつくと思います。 美しくも奇妙な、傑作です。標本にしておきたいくらいです。 | ||||
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ひんやりと冷たくて肌触りのよい良質なセンシュアリティ。「薬指の標本」に感じたこの感覚は小川洋子の上品で不思議な感性と過不足ない筆致の賜物であると思う。 サイダー工場での事故で薬指の先を失ったある若い女性。ある標本技術士の求人を見て吸い寄せられるように受付係に就職する。そこには焼跡に残った三つのキノコ、楽譜に書かれた音、文鳥の骨など、人々が喪失した思いを閉じ込めておくかのような注文品を持ち込む。まるでクラフトエヴィング商會との共著「注文の多い注文書」のような世界である。 しかし、ここはそんな安全な場所ではなかった。ある日その標本技術士が、彼女の足に完璧にフィットする黒い靴をプレゼントする。そして今後一切その靴以外ははかないように命じる。その後における男と女の情景は小川洋子の真骨頂。読むべしである。 その靴を今脱がないと危ないよと諭してくれる靴磨きのおじさんもいたが、彼女は靴を脱がない。 「自由になんてなりたくないんです。このまま彼に封じ込められていたいんです。」 指を失う事故の際にサイダーが血に染まって桃色に変色していく情景、三つのキノコの標本がゆらゆら揺れる様、顔の火傷の標本を頼まれた技術士がその頬の焼跡をなぞる指、段々と身体の一部と化す黒い靴。いろいろなものに心の奥底をそっとなぞられるような快感がある。 そして最後に標本となるものは。。。ぞくっとする余韻を残して物語は終わる。ここまでひんやりと上質に、倒錯した愛と性を描写することは並大抵の技ではない。書けそうで書けない見事な筆捌きに小川洋子の本領を見た思いがした。 もう一編の「六角形の小部屋」も現実と非現実の間を揺蕩うような良質な佳作ではあるが、「薬指の標本」に比べてやや現実的である。 | ||||
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