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機龍警察 自爆条項
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【この小説が収録されている参考書籍】
機龍警察 自爆条項の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.59pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全44件 41~44 3/3ページ
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二作目はライザ・ラードナーが主役と言っても良いですが、ミリタリー調(本当は警察なんですが)の本作としては、鈴石緑とのリンクもあり、感傷的な小説の雰囲気があります。 ライザが何故M629を愛銃としているのかも、結末に関わり面白いです。 この小説の面白さは、登場人物の魅力でしょうね。 まさに頭脳戦の刑事ドラマです。 特捜部長の戦略的な頭のキレ。 姿警部の缶コーヒー好きなオトボケ。 日本人に劣らない浪花節のオズノフ警部。 その一方、どうしたんですか! この作品、致命的な失敗していますよ。 龍機兵(ドラグーン)と言う設定ですが、アームスーツやパワードスーツと呼ばれるものですね。 過去アニメや映画で使い尽くされ、新鮮味がない。 唯一、背骨から龍機兵に繋がり超高度なコントロールが可能になるなどありますが、読者の発想範囲内です。 例えばエヴァンゲリオンとか。 とにかく、この龍機兵という発想は文字じゃ表現しきれない。 映像専用です。 最悪なのは戦闘シーン。 何をやっているのか、さっぱりわからないです。 龍機兵の防御ステイタスと銃火器の攻撃力が不明。 M2重機関銃はわかりますが、ショットガンのスパスで機甲兵装が倒せるとか、これじゃまるで人間同士の戦いみたい。 龍機兵に機甲兵装、必要ないです! それともうひとつ、難しい漢字が多過ぎます。 読みのわからない中国人の名前も同様。 ストレスだし読むテンポも下がります。 伊藤計劃著なら頑張って辞書も引きますが(笑) と、読んだ後は、この小説、アニメや映画の原作に良いかなと。 少なくとも、この登場人物は俳優だったら誰にする、などと考えながら読むと面白いかも。 さすが脚本家出身の作家と納得しました。 | ||||
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時間軸は現在と過去、空間軸は、東京と中近東、アイルランドとスケールが一気に広がって壮大な物語に放り込まれる。 だが、一瞬たりとも退屈させられないのは、洗練された読みやすさのためか、一つ一つの物語の密度と丁寧さのためか。文章のシャープさ、気持ちよさもさらに熟していた。 ライザの過去を描いた第二章は、もう小説を読んでいるというより映画を観ている感覚に近い。 なぜ若いアイルランドの女性がテロリストになったか、なれたかを、「200の羊より一匹の豹」とイスラムで言う素質の描写や、この世の地獄とも思えるテロリスト訓練場面などから描いてゆく様は秀逸。その場の湿度や匂いまでしてきそうな情景が連動された。 後の章を読み進めるなかでもその時の情感がじんわり想起され、効いてきた。異国を旅した旅情を思い出すようにふいに。 第四章もライザの過去。早く次を読み進めたいのに、自分の速さではそれに追いつかない焦燥感を久々に味わえた。 後半はエンターテイメントの連続。 捜査をチェスの局面に見立てて推理する沖津の思考の場面はなぜこんなにワクワクするのか。 そして物語の核心へ・・・ 新たなキャラクターも物語の絶妙なスパイスになっている。 曽我部は個人的には岸部一徳を思い浮かべながら読んでいた。 この人が2重にも3重にも罠の仕組まれた沼に、情報という餌を放り込んで、上級官僚達をコントロールしようとするしたたかさ、粘着性、腹黒さ!?は、ほんとおもしろくて楽しんだ部分。 | ||||
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二巻目はヒロインである元テロリストのライザを中心にした物語だ。物語がやっと動きだした、というより、前作が大まかな登場人物の紹介でしかない。一巻目を読んで、二巻目がただ凡庸な政治ドラマやアクションを展開してお茶を濁すようであれば二巻目のレビューはたぶん書かなかった。 今作で展開されるのは、国際的な陰謀の中で展開されるライザの物語。 ライザの過去がしつこく綴られる。ほんと、しつこい程に。正直冗長だし、第二章など過去回想に過去回想が重なり、読んでいて時系列が混乱した。またクライマックスの襲撃シーンも敵味方が入り乱れて少々混乱する。もう少し整理すればいいのに。 タイトル「自爆条項」が意味する非情な内容も明らかにされる。 それに何の躊躇もなく同意するライザの救いようのない内面が示される。 しかしすべての不満はラストのシーンで報われる。 不思議な読後感だった。ライザと緑が和解する訳でもないし、ライザが本当に救われることなど有り得ないとわかっているのに。だがそれでも、読んだ後爽やかな気分になった。 細かい所を云えばキリがない。だがライザにしっかり感情移入出来るようであれば、確実に感動するだろう。三巻を熱望しています。 | ||||
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前作と変わらぬ引き締まった文体ながら、今度は自在に流れるように綴られて、物語の進行と読み手の想像をたやすくしている。 人、組織、モノがリアルに描き込まれて、実在の世の中のように複雑な物語空間が動き出す。しかもそこに特有の緊張感が張り詰めている。 新刊案内には「活劇」とあるが、活劇の枠を越えて一般性を持つ。格が違う。 犯罪によって止まる時間。止まった時間に張り付いて徐々に遠のいていく死者達の像。生きる者の孤独(32頁)。 「憎悪の相似がそこにある。己の罪が無限に連なって見える世界。永遠に抜け出せぬ罪の連鎖だ。」(76頁)。罪の暗闇へのまなざし。 中でも第二章は、極限の葛藤と懊悩を見事に言語化していて、素晴らしいと思う。 一人一人が心の底にしまい、背負う憎悪と罪。それを矜持に転ずる力動。力が絡み、もつれ、破壊し、世界を動かす。 自由とは何か。 本当の裏切り者とは何か。 作品世界が大きく動きはじめたと感じる。連作が発展することに期待したい。 月村了衛『機龍警察 自爆条項』 早川書房 二0一一年九月二十五日 初版発行 | ||||
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