■スポンサードリンク


わたしを離さないで



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
わたしを離さないで
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないでの評価: 4.10/5点 レビュー 707件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.10pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全544件 381~400 20/28ページ
No.164:
(5pt)

ただただ圧倒された

この頃なかなか見当たらない「文学」の偉大さを再認識した。
作者はこの世界を創造し、この世界に住み、その世界をえもいわれぬ表現力で紡ぎだした。
すごい人だと思う。
シビアな内容なので一度中断すると、再度取りあげるまでは気が重い。
が、読み始めるとやめられない。
上質で凛とした美しい表現力、語り口にもよるものか。
その日のうちに、読み終えてしまった。
英国の理性と品格、日本の幽玄と許容が融合された語り口は、圧倒的な魅力だ。
翻訳も素晴らしい。読みながら思わず嗚咽してしまった。
読書後、しばらくは圧倒されていた。
映画は見ていないが、見たいとは思わない。
以上
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.163:
(5pt)

異常な設定の自然な小説

映画を先に見ています。映画と比較すると登場人物たちの心理が細かく書きこまれていますがくどさは感じさせません。
 死を運命づけられているという点で登場自分たちと、我々も同じです。違いは、それがいつか明確にわかっていない点だけです。
 また、解説でも書かれているように、現代の(少なくとも近未来の)科学で十分可能なできごとが書かれているため、SFではあるのですが、至極リアルに感じられます。倫理的に鋭く対立する問題(人間とは何か?臓器移植はどのような場合に許されるのか等)がいくつも語られています。筆者の解釈はこの世界が可能になった段階で参考とされるかもしれません。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.162:
(4pt)

確実に心に何かを残す作家

キーラ・ナイトレイ主演で映画化が決定/公開されていますが、最近(日本語版ですが)になり原作を読みました。

久しぶりに見る「表現の緻密な」小説であり、静かながらも何かを心に残す類のものであります。
表現が巧みで、文字を追っていても情景が目に浮かぶかのような、そして登場する人物の考えていることが痛いほど分かる文章が特徴です。

その後、別の作家のベストセラー小説を続けて読みましたが、「わたしを離さないで」に比べてあまりの文章や描写の稚拙さに軽いショックを覚えました。
もしその前に「わたしを離さないで」を読まなければ、きっとそうは感じなかったのだと思いますが、要するにカズオ・イシグロはそういった類の作家であります。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.161:
(4pt)

涼しげな世界かと思いきや

(内容ネタバレレビューです)
特別な生徒たちに対する大人の不可解な発言や学校での風変わりな授業・・・それらが卒業後に少しずつ理解できる話の構成.
近未来のガン治療とそのための犠牲について、孤児である子どもの心理、夢を見続けるか現実を知るべきか・・・いくつかのトピックスが含まれているように感じます.作者の感情は抑えられ冷静な描写だなと思いきや、所々盛り上がります.
最初は、自分とはまったく違う世界での物語で、SF気分で読んでいました.けど、所々に生徒の心情に共感してしまっている自分に気づいたりして・・・最後にはのめり込んでいました.
決して読みやすい本ではありませんでしたが、読んでよかったです.
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.160:
(5pt)

カズオイシグロ節の集大成

カズオイシグロさんのファンですべての作品を読んでいます。
この作家の作品に特徴的な「裏側で大きな悲劇が進行している中で主人公が
流れに逆らわず静かに生きていく」様子が淡々と進んでいきます。

登場人物一人一人の機微やそれに伴う細やかな洞察などが
曼陀羅のように組み上げられ圧巻です。

物語の舞台がファンタジーの世界なので「日の名残り」を超えていないと評価されて
いるかもしれませんが、作者の独特の世界観を強烈に表現した氏の代表作だと思います。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.159:
(5pt)

重い主題

心理的な描写と物語の構成がすばらしい。
キャッシー・Hが思い出を語る。しかし、何かの事実を隠して物語は進む。どこに連れられて行くのであろう。それを推理しながら読み進む。少しずつ様子がみえてくる頃に読者はへールシャムの誰かに共感しているに違いない。
誰もが知っている様に、かつての何気ない小さな出来事や会話などのいくつかが、その後の人間関係に影響する。頁を繰るたびにキャッシー・Hの語りから過去の出来事が線でつながる。この物語を読み終えた時に遠い道のりを歩ききった心地よい満足感が得られた。そして、「将来が決まっている」ことについて希望でも絶望でもない何かが書き加えられた。


わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.158:
(5pt)

SFではなく純文学の傑作

名作だと思う。
 語り手はキャシーという三十一歳の女性である。介護人を十一年以上勤めているというが、介護人というその仕事の実態がはっきりしないまま、物語はキャシーが十二、三歳の頃の過去にさかのぼる。ヘールシャムという土地での思い出が作品の前半を占め、トミーという男友だちとルースという女友だちが主な登場人物である。
 それだけなら別に何ということはない。よくある三角関係の物語、そう言い切ってしまえないこともない。だが作品が過去形で語られていることや、時折出てくる「提供」や「展示館」などといった謎のキーワードが読者を落ち着かせない。何かが隠されている、読者にも、若い頃のキャシーたちにも。読み進めていくうちにその輪郭はおぼろげながら見えてくるが、おどろおどろしい現実を著者は最後まで直接提示することはしない。戦慄すべき社会は背景に退き、淡い郷愁の物語――さしたる大事件が起こるわけでもない追憶の日々――がさん然と光り輝く。表題はキャシーがテープでよく聴いていた曲のタイトル「ネヴァー・レット・ミー・ゴー」であるが、この演出も読者のノスタルジーを駆り立ててやまない。
 イギリス作家カズオ・イシグロの作品は初めて読んだが、どことなく日本的な哀感を嗅ぎ取ってしまうのはやはり日本生まれという先入観があるからだろうか。現代の日本人作家が忘れてしまった何かを持っているような気がする。最後の二ページは圧巻であり、涙が出そうになった。特に女性におすすめしたい一冊である。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.157:
(4pt)

ほんのちょっと拍子抜けした

本屋で、著者の作品が並んでいる棚から最初に本書を選んだとき、語り
口調の文体にちょっと引いてしまい、他のにしようかとも思った。
でも、これを選んで正解だった。
いろいろな出来事が、今現在のこととして語られたり、布石であったり、
思い出であったり、頻繁に時間が交錯しながらぞろぞろと出てくる。
人が自分の来し方を語るときは、おそらくそうなるのだろうが、全くの
創作でどのように書いたのだろう。書いていって自然にそうなったのか。
あらかじめ時間軸に沿って書いた後で入れ替えていったのか、興味がある。
終わりの方まで来て、最初の方のエピソードに言及され「何だったかな」
と最初の方のページをめくろうとしたが、細かく追求しなくてもいいや、
と思い直した。自分事として置き換えてみれば、思い出ってそれほど
くっきり蘇らなくても、それはそれで十分に味わい深いから。
主人公の個人的な思い出という色合いが強いのに壮大なようでもあり、
あり得ないのに身近に感じられたり。一体どんな結末なのだろうと思い
最後にたどり着くと、少しばかり拍子抜けしてしまったのは事実。




わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.156:
(4pt)

世界そのままに

ほとんどの書評は、「残酷な」とか「衝撃的」といったコメントがのせられている.しかし、これは我々自身の物語、ではないだろうか.我々は誰でもヘールシャムのような体験を経て、ゆがんだ形で世界を認識することを始める。その目的は1つが世界に貢献するために、もう1つが子どもたちによりよき人生を、というその時代の理想だ。(私は大学を卒業して教えるたちばに回ってそのことに気がついた)結局のところ、僕らは身体全体そのものを何か社会にやくだてるために育てられている、といってもいい.それはサラリーマンでなくとも、ユニクロの社長であっても、堀えもんであっても、合衆国大統領であっても同じだ。社会という装置のために仕事をしている。そんな僕らの意味探しをあてはめたにすぎないのではなかろうか.私たちにできることは、世界の在り方を知り、世界の在り方を変化させる、そのやり方について学ぶことだろう.
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.155:
(4pt)

我々はドナーか、レシピエントか

31歳の女性キャシー・Hが来し方を振り返る。彼女はヘイルシャ
ムという全寮制・共学の学校にも似た施設で育った。授業の合
間や、就寝時の友達とのたわいもないおしゃべり。普通の小中
学生の女の子にあるようなおだやかな日々が流れる。でもそこ
は普通の学校ではなかった。生徒達の生活は施設内に限られて
いて、敷地の外に一歩も出ることはない。そこでは教師はガー
ディアンと呼ばれ、生徒に会いに来る肉親など誰もおらず、ま
た彼らに一通の手紙が来ることもない。キャシーのファミリー
ネームは「H」ただ一文字。他の誰もがそうだった。彼らには家
族などそもそもなかった。全員クローン人間だったからだ。彼
らは、臓器提供者として育てられていたのだ。おぞましくさえ
思える施設ヘイルシャム、しかしそこはそれでも例外的に人間
的であろうとした施設だったのだ。

 そこでは、絵や詩作や陶芸などの創作活動が特に奨励され、
秀作は定期的にやってくる謎の女性によって召し上げられ、い
ずこかへ持ち去られるのだった。小さな謎は深まり、その解決
は結末まで持ち越される。

物語は、主人公とその仲のよい女友達ルースと男友達トミーを
中心として展開していく。友情、誤解、裏切り、和解、そして
・・・。臓器提供者として、若くして死んでいく運命を知りな
がら、そのことをことさら苦にするでもなく、彼らは成長しや
がて施設を卒業していく。多分16歳ぐらいで。

逃亡することもなく、自殺することもなく、人をあやめること
もなく、反乱を起こすこともない。ただただ彼らは自らの運命
に従順である。彼らを監視し管理するシステムがどうなってい
るのか、またレシピエントや医者の視点からは、作者はほとん
どなにも語らない。ただ、急激にクローン技術が進歩し、成熟
した議論が尽くされないまま現実が先行して、もはや後戻りで
きない地点にまで来てしまったことが示される。

2年ほど「コテッジ」で過ごした彼らは、やがて臓器提供者の看
護人を経て、自分自身が臓器提供者となっていく。1回、2回、
と臓器を提供する度に彼らは痛みに苦しみ、衰えて行く。4回を
生き延びるものは希だ。1回を乗り越えられないものもいる、ルー
スのように。彼らは死ぬのではない。ドナーとしての使命を
completeしたのだ。

12年間という例外的に長く看護人を務めた主人公は、ヘイルシャ
ム以来の親しい友人を全て失ったいま、自らも友人達と同じ道
をたどろうとしていることを示唆して物語は終わる。

大きな展開を期待した人は、当てが外れるかも知れないが、カ
ズオ・イシグロはかつて女子寮にいたのではないかと思わせる
ほど、描写がこまやかでうならせる。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.154:
(4pt)

キャシー・Hの回想録

正直に言うと、私のような小娘には評価が難しい作品だと思いました。まさか、物語がずっと回想形式で進んでいくとは……。“です、ます”調が少し鼻についたも事実です。原文だと印象が変わるのでしょうけど、そこは海外小説の難点だと思います。ですが、各国で評価されるのも分かるような気がします。ノーフォークに旅したときの、微妙でいて絶妙な距離感の二人が印象に強く残りました。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.153:
(4pt)

すばらしい自制

鼻の奥がつーんとして、涙が自然と溢れてきて、特に後半はよく泣いた。すばらしい小説だった。
物語の内容について触れれば触れるほどネタバレしてしまうので、やめておくとして(とはいえネタバレしてても感動できるよい小説だと思うけど)
それ以外に触れてみようと思います。

ずっと文章が同じテンポなんですよね、とても抑制されてて、緻密に描かれていて、物語がいかに展開しようとも、
文章のテンポは乱れない。じっと抑制しているんです。どういうと、いいのかな、あるドラマがあるとする。大事なシーンは登場人物のアップにしがちだけども、
これはずっとひいているというか、そのように抑制され、ある意味さめているのです。だから、いいんです。ぼくたちに入り込む余地をくれるというか、その冷めているけど、
幻想的なイギリスの曇った空の下の草原のような、そんな雰囲気がずっとある。あと、そのSF的設定にふみこんでいきそうだけど、踏み込まない。あくまでも3人の美しい思い出の中で留まっている。あえて、抑える、あえて、留まる。その作者の自制心がすごいなと思いました。

と、よく考えてみると、主人公が「自制の人」なんですよね、だから、文体もプロットも「自制」されていたのかな、なんて思ったりもします。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.152:
(5pt)

淡々とした語りにひかれます。

イギリスのとある場所での「学校」で共に育ったキャシー、ルース、トミーという3人について、私(キャシー)が語る物語。

3人を含むこの「学校」の生徒は普通の人間ではない(つまりクローン人間)。彼らは臓器移植のための臓器を提供するために「作られた」。この「学校」の生徒は毎年何らかの創作活動を行い、その中で優れた作品は「マダム」と呼ばれる女性校長(?)が買い取ってどこかへ持って行かれる。(作品の行方については、すべての秘密と共に最後に明かされる。)
やがて3人は「学校」を卒業し、Cottageと呼ばれる寮でこれまでの卒業生(veterans)と共同生活を送りながら、donationをする。キャシーはdonorにはならずに彼らの世話をするcarerとなるわけだが、donor達は臓器を提供することでやがてcompleteして(死んで)しまう。
この「学校」がどのようなものか、また、彼らが何者かという秘密については生徒達には明かされていない。その秘密をキャシーとトミーはつきとめる(ルースはすでにcompleteしていた)。そして、トミーは四度目のdonationの後にcompleteする。
すでに「学校」は閉鎖され、誰もその存在を知ることもない。「学校」も彼らの存在もすべては闇の中に消え去ってしまう。
キャシーはかつて「学校」があった場所を訪れ、トミーの幻影を見る。そして彼女は何の感慨もなくそこを去っていく。

「わたしを離さないで(Never let me go)」というのは、文中では、キャシーの好きな歌の題名として出てくる。彼女はこの歌を子どもが産めない女性が赤ん坊のことを思って歌ったものと考えていた。(本当は恋の歌ではないかと思うのだが。)キャシーは自分がクローン(クローンは生殖ができない)であることを知っていたのかいないのか定かではないが、この歌に強く惹かれる。

クローン人間、臓器移植というとてもセンシティブなことがらをテーマにしたこの物語は、淡々と話を展開させるイシグロのスタイルもあってか、異常な世界が日常のように流れていく。最初から最後まで淡々と流れ、まるで彼らの生命がそうであるように何ら特別な感慨もなく物語も終わる(complete)。何とも形容しがたい読後感だけが残る。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.151:
(4pt)

名作か迷作か?

カズオイシグロは初めてです。帯のキーラナイトレイと背表紙の「提供者」の不思議な響きに惹かれて購入しました。
作者が描きたかったのはいったい?青春期の少年少女の心情なのか?残酷な真実なのか?残酷な真実は必要なのか?
最初の頃から違和感を感じますが、静かな展開であり、真実に立ち向かう結末に向かうとは(最初から)思えませんでした。
いくつものメッセージを感じますが、どれを強く訴えたいわけではない。静かで悲しい物語でした。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.150:
(5pt)

これからの読者の方に〜小説と映画

◆小説◆【筋】臓器を提供(DORNATION)する宿命を負うクローン人間の幼少から生を全うする迄を描出。【構成】全3部23章。主人公キャシーH(介護人:CARER)の回想形式。1部はHAILSHAM寄宿学校での幼年から16歳迄(英国の義務教育期間に相当)。2部はCOTTAGEと呼ぶ農場屋敷での共同生活。提供者(DORNARS)として出る準備。3部は約10年後の臓器提供と終焉【主な登場者】キャシーH,ルース♀,トミー♂(ヘイルシャム同級生3人),謎のマダム,エミリとルーシー2人の先生(文中GUARDIANS:保護官),コテージの先輩クローン、クリシー♀とロドニー♂(恋人同士)【特異性】小説が「読者の生、存在の話」に変容していく。感情移入でなく、読み進むうち「自己の幼年からの足跡や現在」が本編と交錯する。気づくと、自分や関わる人々こそある種クローンに外ならない事実に直面、「必ず消えて失くなること」に戦慄し、NEVER LET ME GOと叫びたくなる。【表現】英国INDIPENDENTスクールがベースのヘイルシャムでの生徒の会話、視線、細かい仕草や女子の性格描写が非常に巧み。英国らしい景観、場面ごとの空間、質感、色彩の捉え方が心にくい。土屋政雄の翻訳が絶妙【伏線、展開】6章の音楽テープ、Norfolkというある地域、15章(CROMERは実在の街)、終章、エピローグ。果たして「救い」はあるのか?【感想】近親者を亡くしこの本を選びました。「わたしを離さないで」という声がずっとこだましています。声の主は私かもしれません。◆映画◆小説の特性上、映画化は困難。単に表面的なクローンの悲劇に終始。唖然。伏線のテープや出来事も酷い脚色。ラストに首題説明のテロップが流れた。英国風景、空気や美しい子役の映像、音楽はまあまあ。星ひとつ。読む前に観るべからず!
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.149:
(5pt)

記憶

たまたまNHKの特集を見て、自分の中でのいくつかの発見がリンクし合っていて、これは今の自分には読むしかないと思わされる部分があった。
映画化されるというのは知っていたが、作家のことを何も知らなかった。こんな作家がイギリスにいたのか〜と今更ながら大きな発見をした感じ。

文章がとにかく鮮明な記憶を辿っているようで、事細かな描写が自分の幼い時代の過去の記憶の残り方そのまんまというか、匂いが同じ感じがして奇妙な感じさえした。

「発達、前進ということが大人になることと思われがちだが、大人になるというのは過去と折り合いをつけられることだ。」インタビューで聞いたこの「過去の記憶に折り合いをつける」という一言にはっとした。つけられないで悩み苦しみ、思い出したくないことほど鮮明に思い出してしまう、暗い記憶から何年経っても抜け出せずにいる自分に助け舟を出してもらったように思えた。

人と人との係わり合いも、わずかな一瞬の空気ではっきりとしたものを感じ取れることがある。説明の仕様もないし証拠も無いけど確かな感覚。こういうものをうまくきれいに文章で表現できる力はすごいなぁと羨ましくもなった。読むべくして出会えた本のように感じた。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.148:
(5pt)

ピンと来る

私は村上春樹は響かない
カズオ・イシグロは響く
表紙の絵、
最初見たときは何これ?

カセットテープ

・・・読んだ後は象徴的でした


わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.147:
(5pt)

■なぜ逃げないのか? 何から逃げるというのか?

■「使命」を背負わされた「提供者」と呼ばれる若者たち。
最初は、「なぜ逃げないのだろうか?」と、不自然に思いました。
しかし、読み進めていくうちに、これは、ささやかな思い込みの希望にすがり、
経済のために与えられた「使命」をこなし、これまでの習慣や体験や記憶にすがる
自分自身の姿だと思えるようになりました。
■人には寿命があり、自分では決められません。
尺は違いますが、これは、私も含む、私たち個人個人の物語ではないのか?
以前通った学校や、勤めた会社を「ヘールシャム」に置き換えたり、
「保護者」を、自分の親、会社、上司、先生に置き換えたら、
私たちの日々の葛藤や、記憶をめぐる多幸感、愁傷感は、
「提供者」や、語り手である「介護人」の心の動きに重なるのではないでしょうか?
■この小説を読みきるために、瀬戸内の島を選びました。
その島の名前は「豊島(てしま)」と言います。
瀬戸内アートと産業廃棄物で有名になった島ですが、少子化に伴って廃校になった
小学校の前のがらんとした広場の、錆びて朽ち果てた遊具の前で、読み終えました。
「ヘールシャム」という場所は、瀬戸内の離島にもあるでしょうし、
私たちの心の、記憶のある場所に、息づいているものだと思いました。
■私たちが、本当に凍りつくのは、この小説の設定にあるのではなく、
この物語は、限られた生を、ささやかな希望と疑念の中に、
他人、自分自身に翻弄されながらも生きていこうとする自分自身の物語だと気づいた時だと思います。
かわいそうな若者たちの寓話ではなく、私たち自身の死に際に再現されるであろう自分自身の物語。
そう考えると、この小説には、悲しみだけではなく、切ない希望も感じられます。
■では、わたしたちは、なぜ逃げないのか?
わたしたちは、何から逃げるというのか?
わたしたちは、逃げて、どうなりたいのか? なるべきなのか?
そもそも、逃げる必要はあるのか? そもそも逃げることは可能なのか?
このような問いを、選択肢を、死に際ではない今、著者に作品を通していただけたことに感謝します。
■ルースとトミーの運命、キャシーの思い、この物語自身の記憶を無駄にしないために、
彼らの記憶を、自分の中に、受け入れていきたいと思います。
もっと深く、日々の物事を感じながら、これからの人生を過ごせるような気がしています。
この作品と、その出会いに、作者に、感謝します。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.146:
(5pt)

フィクションの力を見せつける

何気ない会話、丁寧な過去そして現在の日常の描写。一見するとただのモノローグ小説のよう。が、それこそがこの小説の凄さだ。
主人公そして友人たちの置かれた状況と環境はこの世界にありえない。凄まじい悲劇だ。
それなのに、それを何気ない日常に組み込み、ぼんやりとした感傷のように仕上げてしまうカズオ・イシグロの凄さを感じる。
凄まじい悲劇の真っ只中にありながら、淡々と役割をこなし、その役割から逃げようとしない彼ら。その淡々さこそが、彼らの「普通ではない」事の証明なのか。
また、細かな感情描写。こんなに「僅かな会話がもたらす友人間の空気の変化」を全編で追い続ける小説も非常に珍しいと思う。
久しぶりに、フィクションの可能性をひしひしと感じた作品であった。
読み終わって見ると、本の装丁すらも選び抜かれたものだと感じ、隙の無い作品だと思った。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517
No.145:
(4pt)

ETVでのKAZUO ISHIGURO

長崎で幼少期を過ごした筆者。メタファーになり得るほどのIDENTEITYには小説内には過不足はあるようだが、静観は出来ないイライラ感虚無感絶望感希望的観測自己満足感を痛切に投入されてしまった瞬間、あまりスペイサイドよりは島云々のアイランド系のモルトで感慨したい欲情にかられました。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)Amazon書評・レビュー:わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)より
4151200517

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!