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ロシア・ハウス
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【この小説が収録されている参考書籍】
ロシア・ハウスの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.22pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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ロシアで行われたブック・フェアで、ロシアの内部情報を書いた原稿を持つ人物が現れ・・・というお話。 これが出た際は、ベルリンの壁が無くなったり、民主化が行われた時期だったと記憶しますが、国際謀略小説を好きな読者や評論家の人から、今後そういうタイプの小説が書きにくくなるのではないか、という危惧を表明されましたが、この小説みたいに、新時代を告げるタイプの謀略小説が出てきて、結局は続いた感があります。 更に、21世紀に入ってからも、何回かクーデターの起こる国があったり、戦争も何回かあったりと、武力や暴力で人を制圧する事が人間の営為に根差した行為かもしれない、という事もあったので、当分謀略小説は書かれ続け、それがとりもなおさず、人類の不幸だとも思いました。 嘗てのル・カレの作品よりも読みやすく、意外な感じもしましたが、これも巨匠としての懐の広さだと思えば納得できます。 この後の作品では、東西を超えて、更に色々な所を舞台にした謀略小説を書く事になりますが、そういう作品の端緒になったかもしれない重要な作品。是非ご一読を。 蛇足ですが、今(2022年中盤)にル・カレが存命だったら現代をどう書いたでしょうか。気になります。 | ||||
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満足しています。 | ||||
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読みおえたらまたたします。 | ||||
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ル・カレのいつものスタイルで、官僚制とスパイたちの心理の細かすぎるディテールが面白い。素人をスパイに仕立て上げるプロセスも同じく詳細で、敵地ロシアでの諜報活動の実際がこれでもかという詳細で記述されている。 まあ、面白いのはスパイたちが僥倖ともいえるチャンスに、疑いつつも、作戦を遂行する際のディテールであって、決してあっと驚く陰謀やらサスペンスは期待してはならない。 結末もあっさりと、かつ曖昧なままに残されており、まったくカタルシスがないどころか、モヤモヤ感が大きい。 政治哲学として、脅威はないことがわかってしまっては脅威でなくなるというアイロニーは、脅威の存在を前提にしているスパイたちの存在意義と同じなのかも。「情報部員たちは、国家の問題を守るために命がけで仕事しているといっているけど、情報組織そのものが国家の問題なのよ」(意訳)、という登場人物のセリフが胸に響く。 ※下巻のレビューコメントにあるように、下巻の訳者あとがきは、スマイリー三部作(特に「スマイリーと仲間たち」を読んでない方は決して読まないように!重大なネタバレが書かれています(編集者はなんでこんなことを許したんだかなあ?)。 | ||||
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20世紀前半最大の哲学者 ルートヴィッヒ・ヴィトゲンシュタイン (1889-1951)は 「推理小説」が好きでした。 米国人の弟子ノーマン・マルコム (1911-1990)は第二次世界大戦中 「ストリート&スミス」社発行の 推理小説雑誌を米国から英国の ヴィトゲンシュタインのもとに 小包で送っていました。戦時中、英国では そうした雑誌が入手できなかったからです。 ヴィトゲンシュタインは推理雑誌を 「心のビタミン」と呼んで たいそう愛読していました。 このエピソードは ・マルコム著(藤本隆志訳) 『回想のヴィトゲンシュタイン』 (法政大学出版局 新装版1974) ならば pp.59-61 に ・マルコム著(板坂元訳) 『ウィトゲンシュタイン』 (平凡社 文庫版1998)ならば pp.32-34 に掲載されています。 これらは邦訳書名こそ異なりますが 原文はいっしょで Norman Malcolm, "Ludwig Wittgenstein,A Memoir" with a Biological Sketch by Georg Henrik von Wright, 1958 ,Oxford University Press,Londonです。 ちなみにヴィトゲンシュタインは 英国陸軍の准将(旅団長) デスモンド・ヤング(1892-1966)による 『ロンメル将軍』(原著1950 ) (邦訳 早川書房 1978)も読んで感銘し マルコムにその本を贈りました。 「その書き方が完全にまともである」 と絶賛しています。 しかしながら邦訳では 藤本訳でも板坂訳でも "Brigadier Young" という表記について 「ヤング准将」と訳すべきところを 「ブリガディア・ヤング」と あたかも氏名のように訳しています。 おそらくBrigadier(准将)という 単語をご存知なかったのでしょう。 旅団(Brigade)(ブリゲード) を指揮するのが階級としては 准将(Brigadier)(ブリガディヤ) であり本来職名としての 旅団長も意味することが多いです。 同様のことは 「連隊」を指揮する「連隊長」の階級である 「大佐」つまり「カーネル」(Colonel) についても言えます。 本来は職名「連隊長」を意味する「カーネル」が 階級名「大佐」として各国で定着しています。 それは「連隊」という軍隊の単位が 特に西洋の歴史で果たしてきた役割と 関係しています。ファストフードで有名な 「カーネル・サンダース」の「カーネル」です。 ちなみに「准将」という階級は 旧日本軍にも現在の自衛隊にも 第二次世界大戦中のドイツ国防軍にも 存在しません。主として米国・英国で 用いられている階級です。米国なら 通常は One Star General と 呼ばれることが多いでしょう。 さてヴィトゲンシュタインも好きだった 推理小説ですが、本書は 広い意味の推理小説であり 細かく言うとスパイ小説 (エスピオナージュ)です。 より正確には諜報小説ないし 情報機関小説と呼んだほうが いいのかもしれません。 しかし推理小説と警察小説が 厳密には分けられないのと同じように 大きいくくりで推理小説と 呼んでもいいのではないかと思います。 日本の出版業界なら「ミステリー」 という広い分野に含まれることでしょう。 著者の ジョン・ル・カレ氏(1931-)は 『寒い国から帰ってきたスパイ』 (原著 1963年9月)で 世界的に有名になりました。 「ジョージ・スマイリー」を主人公とした 『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』 などの連作には固定したファンがついています。 私もひと通り読んだのですが 残念ながらすべて忘れてしまいました。 そもそも原文のせいなのか 邦訳文のせいなのかは不明ですが 内省的な文体が苦手で まったく入って行けませんでした。 むしろ同じ英国の作家で ・フレデリック・フォーサイス氏 (1938-)あるいは ・ブライアン・フリーマントル氏 (1936-) の作品をよく読みました。 余談ですが 司馬遼太郎(1923-1996)は ベルギーの作家 ジョルジュ・シムノン(1903-1989)による 「メグレ警視(←警部)」ものを愛読し 目をつぶってもその風景が浮かんでくるまで になったと随筆に書いていました。 ただし本人は推理小説を書くのは苦手で 勧められて一作だけ書いたものの 満足できる出来ではなかったとも述べています (私は読んだことがありません)。 本書の「ロシア・ハウス」とは 英国情報部のロシア担当セクションのことです。 舞台はペレストロイカ後の旧ソ連 (原著の出版は1989年)です。 モスクワで開催された 英国主催のオーディオ・フェアに ひとりの女性が登場するところから 物語が始まります。 めずらしく「情景が目に浮かぶ」ような 導入でしたのでついつい読みました。 しかし後半は退屈で ストーリーは忘れてしまいました。 やはりル・カレは苦手です (あくまで個人の感想です)。 | ||||
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主人公はスクールボーイ閣下風、結末はナイトマネジャー風、というか未確定という意味では作者の精神的師の一人でもあるグレアム・グリーンのヒューマンファクター風。 「風」なんていう感想が出てくることからも想像できると思うが、下巻解説で佐伯彰一先生仰る通り、確かにル・カレ作品としては中途半端感否めない。だが、その分、彼の作品にしては割と読み進め易いともいえる。 しかし、佐伯先生が本作の欠点として挙げられている「主人公が渡された『原稿』の意味合いがよく分からない」というご指摘には多少異論がある。核抑止力セオリーにおける「相互確証破壊」の前提の危うさを示す例として私はその辺は面白く読んだ。まあ、佐伯先生、文学の方なので、その方面にはご関心がなかったのだろう。 冷戦終結直前のゴルバチョフ時代、一応国際政治を学んでいた大学生として私は2週間、ソ連を旅した。ちょうど同じころ、ル・カレも作家交流か何かでソ連を訪問し、その時の経験からインスパイアされてこの小説を書いたようだ。 ソ連国内の自由旅行はできなかった時代だが、私は「スパイ」の影はほとんど感じなかった(逆に言えばお気楽な大学生でも多少は感じるものはあった)ものの、まあ、ゴルは登場していても、情報の世界では、この小説にあるよう、変化の中で混乱や戸惑いを内包しながらも、いまだ命懸けのバトルが展開されていたのだろう。 その後、「変容する冷戦」を前提に卒論を書いて大学を卒業しだが、社会人になった直後にベルリンの壁が崩れて驚いた覚えがある。当時の国際政治学者の誰も、あすこまで急に冷戦終結、ソ連崩壊が起こるとは思っていなかったはずだ。 そんな思い出や回想に浸りながら読んだので、私には割と面白く読めましたが、最初の方で書いたように、ル・カレ小説を純粋に文学として楽しみたい、という方には、佐伯先生仰る通り、ル・カレの様々な意味での「迷い」が見えて物足りないかも知れない。 でも、今や「冷戦時代」を知らない世代も多くなった。そんな中で、「あの時代」とその終末期の雰囲気を感じ取ったり思い出したりしていただくため、「寒い国から…」やスマイリー三部作と共に抑えておいていただきたい作品だと、個人的には思っている。 | ||||
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スパイというのは、この様な形で協力させられ、要請させるのですね。 | ||||
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この作品も2度目の読書となる。ルカレの作品は奥が深くて、2度読むことでその深さがよくかみ締めることが出来る。 この作品では、グラスノチ時代のロシアで、一人のロシア女性を通じて、ロシアの科学者からの情報が英国にもたらされると言う ことでストーリーが始まる。その情報の受け手が英国人編集者のスコット・ブレア。酒飲みで、何度か離婚を繰り返している。 憎めない男だが、信頼性には欠ける。ルカレの作品では、何人かこのスコットに似た人物が登場する。このスコットをロシアに送り こむことで、情報の確度を確かめたいアメリカ。英国のロシア・ハウスチーフのネッド(彼はルカレの作品では何度か登場する)が いい味を出している。このもたらされた情報ではロシアの兵器は全てがらくたであるということになり、これは、特に今まで 軍拡路線で進んできた米国には必ずしもいい情報ではない。そして、結末は?だが、この作品の結末は極めて示唆的 ではあるが、はっきりとしない。ロシアの情報をもたらした科学者が殺されたと知ったスコットは、これから1年失踪する。 だが、彼は失踪前に唯一信頼できる情報局のネッドに手紙を送っている。ネッドはその後、解任され、どのような手紙を 貰ったのか謎のままだ。そして、1年後ポルトガルに現れるスコット。彼が示唆するのは、彼が愛したロシア人女性カーチャと その家族がやがて、ポルトガルの港に元気な姿で現れるということのみ。そして、ここで作品は終わるのだ。彼は、情報と 引き換えにカーチャたちの自由を得たのだろう。だがどうやって?ネッドが知っているのだろう。これはスパイ小説をベースに した、恋愛小説なのだ。純愛小説なのだ。ルカレの作品は全て恋愛小説だと言っても過言ではあるまい。50の半ばを 過ぎた男のプラトニックな愛なのだ。なんとも深く、また、素晴らしい作品だ。 | ||||
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