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東京島
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東京島の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点2.99pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全66件 41~60 3/4ページ
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無人島に一人の女と三十一人の男。 「グロテスク」に匹敵するような、性を描いた壮絶な娯楽小説となるのかと思いきや、存外淡々と、観念小説あるいは思考実験のごとく話は進みます。無人島でのサバイバルとしてのリアリティには全くこだわっていないようですし、もちろんミステリー的な要素は皆無です。単行本版のほうのレビューの☆の少なさはそのあたりを反映しているのかなとも思いますが、孤島物という極めて古典的なテーマに現代的な登場人物を配して描いた純文学、という意味での面白さは充分なものです。 古くはロビンソンクルーソーに始まる孤島小説の数々、大抵の場合その面白さの本質は、過酷な自然との生死を分ける戦いにではなく、あくせく働かずとも生きていける南の楽園でいかに故郷の退屈な日常に近いそれを再現するか、というところにあると思います。リゾート小説でありグルメ小説。我々はそんな彼らに同情するのではなく寧ろ羨むのです。 この「東京島」はそういう意味で典型的な孤島小説とも言えます。登場人物たちは飢餓や熱病に脅かされることもなく、それぞれの方法論で自分たちの感情を状況に適応させていったり、適応に失敗して破綻を抱え続けたりしていきます。 物語としては寧ろ退屈です。シチュエーションから期待するような生死を分けたバイオレンスや性愛に絡む陰惨なエピソードは、全くないわけではありませんがさらりと記述されるだけで、ページの多くは、普通ではない状況下での案外普通な内面的心理描写に割かれています。 心理描写は別として物語自体に関してですが、筒井康孝の初期の短編で確か「心狸学社怪学」に収められた、全共闘の闘志達が閉鎖された東大構内で原始共産性的社会を数十年にわたって営み続ける話によく似ていると感じました。終章まで読み進めるとますます似ているどころではなくなります。 | ||||
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桐野さんの小説を読んだのはこれが初めてで、もともと彼女の小説のファンでもなんでもなく、何の思い入れもない読者です。 雑誌のはしっこに載っていた書評を読み、ひょんなことから、「かなりおもしろそうだ」と思い、手にとりました。 文章はスピード感があって平易で読みやすく、そしてかなりのアイロニーや毒があり、物語にぐいぐいと引きこまれていきました。 もともと、無人島モノが大好きで、『蝿の王』も『十五少年漂流記』も『ひかりごけ』もそれぞれに味があって好きですが、お互いに助け合う絵に描いた餅のような非現実的展開よりも、それぞれが疑心暗鬼になって狂人となり、悲惨な末路をたどる現実的展開の方が興味深く好みなので、この『東京島』はぴったりでした。 島のあらゆる部位に東京にちなんだ名前をつけたり、わざとらしく暗喩を入れて話を崇高なものにしようとしていたり、登場人物が多すぎて名前が覚えきれないところは、読むうえで少し苦痛でした。 けれど、この物語の主人公の一人ともいえる清子の、女性としての強さ、したたかさは、あまりにも醜く、目をふさぎたくなるようなものですが、同じ女性として心の奥底を揺さぶる、本能的な部分で感じる魅力があり、惹きつけられました。 無人島で、文明の中で無意識的にかぶっていた外面の皮を剥がされると、女も、男も、きっとこんな風に生物的本能に忠実になって、何が起こるかわからないようなあ、と思い、サバイバル小説を楽しむことができました。小説の魅力の大きな一つは、自分で普通の生活を営むだけでは到底体験できそうにもないことを疑似体験できることにありますが、この『東京島』は、まさにそんな小説の役割を十分に果たす、とても面白い小説でした。 | ||||
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余り評判の芳しくない1作。 この第1章を雑誌で読んだときには、こんな時空を生み出せる著者の すごさに驚きました。 この第一章亜が素晴らしいだけに、編集者の要請に応えて、 続きを書かざるを得なかったではないでしょうか。 章ごとで少し濃度の違いがあるのは否めません。 しかし、 32人が流れ着いた太平洋の孤島に女一人。 どう女は生きるのか。 女はこう生きる、それが美しくもある。 女の強さ、怖さ、 それが、間違いなく魅力である。 幻想としての女性ではなく、 女の本質を深く知りたい人には、 危険を恐れず読むべきである。 桐野夏生の重要な作品であることは疑いようがない。 | ||||
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女一人と複数人の男の無人島サバイバルですが、やはり桐野さん特有のダークで一線を越える時の心理描写やエグイ表現に満ちていてぐいぐい引き込まれます。読後感は良くないですが、桐野さんの他の作品にも言えることなので、これが持ち味でしょう。ところで唐突にロックの話がでてくるので桐野さんの音楽の趣味がわかります。古めが好きですね。 | ||||
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東京島って何?と手にとった本です。 こりゃ、おもしろいです。内容も、どんどんと小説の中にひきこまれていきます。 まるで、自分がサバイバル生活にはいってしまった気分。 もし、自分が東京島にいったら、どんな風に生きていくの?って考えてしまいました。 ネタバレするので内容はひかえますが、さすが桐野夏生さん、筆力があります。 あっというまに読み終えてしまいました。 自分が職業とか現在のポジションとか関係無しに丸裸になったときに何ができるの? 何をするの?ということを考えてしまう本です。 | ||||
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桐野夏生の「東京島」です。単行本発表時から気にはなっていましたが、文庫化されたので購入にいたりました。あっという間に物語の世界に入れます。サクサク読めますので、映画化されるのも理解できます。無人島に漂着した人々がその島を東京に見立てて生活を始める。ただそこには女性は一人きりであった。 その状況から巻き起こることは人間の弱さや意地汚さ、といった負の感情が島全体を覆いつくしていくことである。そこにはサバイバルの要素はなく、ただただお互いがお互いを警戒しあっている状況のみが広がっていく。いやな状況が広がる世界なのである。極限状況に追い込まれたときの人間の弱さがこれでもか、と描かれている。読むといやなのである。でも物語の世界に引き込まれる。これが筆力というものなのであろう。人間の生理的にいやな部分、つまり「闇」の部分を描かせたら最高の作者が描いた、闇の一遍です。 無人島への漂流生活で明るいサバイバルをお求めの方は、須川邦彦「無人島に生きる十六人」をオススメします。ノンフィクションであり、本書とは全く違う、明るい漂流者、サバイバル生活が描かれています。 | ||||
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途中まで、なんだこれ?と思って読みました。こんなのハードカバーで買ってしまって…と後悔しかけたのですが、後半に入ってからの展開と揶揄と暗喩が最高です。 文章や描写は荒いし、いろんな面で取捨選択が激しいのもたしかですから、受け付けない人はだめだろうな、と思いますし、登場人物が少し多すぎる感じもします。あまり計画的に書かれたとも思えません。 しかし、日本という国や日本人を比喩で見事に描ききったと思いますし、最後の章のふたつの視点はスパイスが効いていて、最後まで読んで本当によかったと思いました。 平成の『吉里吉里人』とは呼べないかもしれないが、大胆なアレンジは必要でしょうが、映画や舞台にする価値があると思います。 | ||||
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この物語の大きな見どころは、次の二点にあると思う。 ・無人島に流れついた32人の中で、女は清子ただ一人であったということ ・脱出が絶望的な無人島での生活の中で、 何人もの人が様々な形で正気を失っていったこと 島の男たちに翻弄され、時には自分も彼らを利用し、 結局は島に弄ばれたような運命を辿っていく清子。 しかし食べるものにも不自由している島での生活の中で、 何故だか清子は太っていく。 その事実が彼女を悲劇のヒロインから遠ざけ、ユーモラスな印象すら与える。 重くなりがちなテーマでありながらも、全体的に軽快な印象を受ける。 これは秀作である。 | ||||
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南洋の島アナタハンに漂着した30人の男とそこにいた一人の女性。彼らがその女性を巡って殺し合いを始めた特異な事件は、「アナタハン島事件」として、女性達が米軍に救出された後、国内でスキャンダラスに取り上げられ映画化もされた実話である。 小説「東京島」は事件にインスパイされた桐野夏生が、例によって巧妙な換骨奪胎で、「トウキョウ島」と言う架空の島を舞台に、現代日本の寓話に仕立て上げた野心作である。 日本人漂着者20数人が暮らす「トウキョウ」と、中国人の漂着者が暮らす「ホンコン」。「トウキョウ」の人々は、気のあった仲間同士で「オダイバ」「ブクロ」「シブヤ」などの集落に別れ暮らしている。正体不明の廃棄物が置いてあるため、「トーカイムラ」として恐れられているエリアもある。 「ホンコン」の人々が、生きることにタフで貪欲であるのに対し、「トウキョウ」の人々は、脆弱で無人島の自然に太刀打ちできず少しづつ破綻していく。その様子を、現代日本と現代中国の縮小された戯画としてみることはたやすい。 しかし決して読者を安心させてくれない桐野夏生は、そういった図式的な構図をどんどん破壊しながらストーリーを縦横無尽に展開していく。う〜ん、相変わらずサディステイックだぜ(笑) 桐野自身が描きたかったのは、やはり彼女の永遠のテーマである「女性のタフネス」であったと思う。 男たちが無人島の生活の中で、時に壊れ、時に安易な社会秩序作りに走る中、主人公の清子だけは現実を受け止め、自分が生き残ることだけを考えて予測のできない行動をとり続ける。 それは女性が本来持つ生命力を、極限状況の中で描き出してみたいと言う、作家の根源的な思いなのだろう。 最近の彼女の作品の中では、飛びぬけた名作とはいえないが、相変わらずのお手並みでした。 | ||||
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本がきれいな状態で、新品同様です。購入してよかったです。対応も早かったですよ | ||||
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ミロシリーズやグロテスク、OUT好きな人には「なんじゃこりゃ?」かもしれません。が、これも桐野ワールド全開の作品だと思います。混沌とアナーキー、亀の甲羅を背負ってるワタナベやらカーネルクリスピーやら毛流族となって原始生活を受け入れるやら…読んでいない人には「?」でしょうが、この荒唐無稽なシチュエーション化で現れてくるアイテムやらエピソードこそ、桐野さんにしか描けない世界です。この方は元々緻密なプロットを組み立てて書くタイプではないし、その筆の勢いで書き進め、最後にある意味放り出す感覚は、私的にはクセになっています(笑)。あと桐野作品で感情移入できる登場人物を探す読み方はしない方がいいです。作者自身、そういう読まれ方は望んでいないと思いますので。とにかくこういう世界観の小説を書ける人(特に女流作家)は皆無だと思うので、この感性で書き進んでほしいですね。 | ||||
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足掛け4年に渡り、「新潮」に掲載された作品。 4年という期間の割には、ボリュームは少ないと感じる。 第1章を読む限りでは、桐野ワールドの新展開かと今後の展開に大いに期待させるが、 最終的にはやや唐突な感じで終わるのが残念。 実は途中で行き詰まり、ネタ切れしたのでは?と勘ぐりたくなる。 本人としても、納得のいく結末ではなかったのではないか。 桐野作品として、「OUT」以降の一連のダークサイドな内容を期待すると肩透かしに合うが、 別の作者の作品として読めば、ここのレヴューでこき下ろされるほど悪くは無い。 だが、本作の主題、何を描きたかったのかは非常に不可解。 人間に潜む闇を描くのに長けた作者にしては、やや箸休め的な作品という気がする。 シチュエーションの唐突感は、個人的には村上龍に通じるものを感じた。 | ||||
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すごく読みやすく、物語の中へ引き込まれてしまい。 一日で全部、読みきってしまいました。 | ||||
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作者の名前も性別も知りませんでしたが、面白くて一気に読みました。 他の方のレビューを見ていると、この作品と合わない方も多いようですね。しかし、とてもリアルなストーリーにぐいぐい引き込まれていきました。ホントに現実感のある話なんですよ、魅力ある主人公がいない?ストーリーがエログロ?いやいや、普通にはありえない設定に普通の人が置かれたらどうなるかを実験したらこうなりました、というような心地良い読後感があります。いい小説でした。 しかし、空想小説やテレビドラマが好きな方には合わないかも知れませんね。年齢、経験もある程度ある方にお勧めします。 | ||||
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ノーベル賞をとって四半世紀たつ「蠅の王」はいまだに読んでないけれど、こちらは出版広告をみたらすぐに読みたくなった。 1ページ目から引き込まれて、あっという間にラストへ。 「こうきたか」と思わずうなる意外な展開の中に「カーネルクリスピーサンド」などといった固有名詞がちりばめられて、いやあ、うまいですね。この設定だったらいくらでもだらだら書けそうなところを、この程度の分量におさめたところが「ザッツ・エンタテインメント」。 でも、「OUT」「グロテスク」のような重量級の桐野ワールドをお望みの向きには、ちょいと軽いかも。 | ||||
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かなりおもしろかった、キャラクターのルックスや心理等こと詳細に描かれていて感情移入しやすかった設定環境や地形なども読んでいて容易に頭に入ってきた、著者の筆力の賜物だろうかとにかく最後まで飽きなく一気に読みすすんでしまった。 | ||||
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無人島の中で、どんな手を使っても生き抜いて脱出するという人間たちの本能むき出しの様子がしっかりと描かれていて最後まで一気に読ませる作品だった。無人島という隔離された空間の中でも、東京、ホンコンといったような人種差別や、共同生活をすることができないものがいたりと、新宿や渋谷、チョーフという街社会が生まれたりと、生活観にリアリティもあってよかった。ただ、もっとも読みごたえがあった最後の脱出劇のところが語りだけであっさり終わってしまったのが個人的には物足りなかった。 | ||||
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何はともあれよくもまあこんな話を思いついたものだと,それだけでも充分価値のある本. 正当化されているものをおちょくりまくり,今のエセインテリを笑い飛ばし,ことごとく惨めな状態に突き落とし,痛快軽快に書き進んでいくその筆致のテンポの良さも見事,昔一世を風靡した筒井康隆のあの世界を彷彿とさせる.桐野ワールドのさらなる発展に期待 | ||||
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面白かったです。 清子とワタナベの二人が出色。 清子の身勝手さとたくましさ、 ワタナベの進化(?)が 基本的にゆるくて笑ってしまうサヴァイバルもの。 生死に直面したときに緊張感でなく、 あきらめに支配される登場人物の弱さがはがゆい。 日本人の心のありようってこれで正解か?と、大きく疑問を感じます。 後半の島内の社会が形成されていく過程を読み進めるうちに、 読者に人間性とは何か、生きる意味とは何かを考えさせます。 この時点で桐野夏生の勝ちかな〜。 桐野夏生の日本人を見つめる視線の確かさがすごい。 死に直面しても家具作りをしてしまう、 ゆるい日本人を描き出す感性はそこらの作家にはできません。 エンターテイメント小説として、 今年一番の完成度だと思います。 読んで損はありません。 | ||||
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いかにも神話的な構成です。土地があり、人々がいて、そこにリーダーや宗教が生まれていく。対立者との拮抗、異能力を持っている人間の登場、抑えどころを抑えてるなあという印象です。トウキョウとホンコンとの対比・男との女の対比・文明と原始との対比など、そのようなものもよく描けていると思いました。ラストの対比も鮮やかです。もう少し壊れた構成になるのかなあと、半ば期待、半ば心配しながら、読んだのですが、きれいな作品だと感じました。 | ||||
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