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失踪症候群



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【この小説が収録されている参考書籍】
失踪症候群
失踪症候群 (双葉文庫)
失踪症候群 新装版 (双葉文庫)

失踪症候群の評価: 6.50/10点 レビュー 4件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.50pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(7pt)

ハングマン?

鮎川賞に応募した『慟哭』でデビューした貫井氏の『症候群』シリーズ第1作。
貫井氏といえば、『必殺仕事人』に代表される“必殺”シリーズの大ファンであるが、本作はその趣味を存分に活かしたシリーズと云えるだろう。ただ現代を舞台にしているので、同趣向の『ハングマン』シリーズの方が近似性が高いかもしれない。とにかく環敬吾率いる彼のチームのメンバーの召集シーンからニヤニヤしてしまった。

本作に登場する環率いるチームのメンバーは、平常時は土方をやっている倉持真栄、托鉢僧の武藤隆、そして警察の職を追われ、探偵業を営んでいる原田柾一郎である。
で、本作ではリーダーの環ではなく、メンバーの1人、原田にスポットを当て物語は進行する。原田が担当した失踪人、小沼豊の捜査と彼の家庭が抱える問題が交互に語られる。そしてこのサブストーリーとも云える原田の問題が環たちが捜査している事件と関連性が持ってくる。

この原田が抱える問題とは高校生になる娘の反抗期である。家族と一緒に過ごさなくなり、夜毎ライブハウスに友達と出入りし、帰りは夜遅く、久々に会ってみれば化粧をしている。さらには不登校が発覚するという、いわばどこにでもあるような反抗期なのだが、今や子を持つ親の身とすれば他人事とは思えず、私ならどう対処しようと頭に描きながら読んでしまった。

やがて事件は複層する失踪事からやがて若者達に蔓延しているイリーガルドラッグへと重心が移っていく。

特に注目したいのは本作に登場する犯罪の片棒を担いだ人々というのが、実は私たちとなんら変わりのない、ごく普通の人々だということだ。
彼らは現状に不満を抱きつつ、毎日を過ごし、その現状から脱出したいがために、一線を少しだけ越えてしまった人々なのだ。その一線というのが、誰しも抱く「このくらいなら大丈夫だろう」という軽い気持ちで始めた犯罪行為というのが非常に心苦しい。なぜならここに書かれている人々は自分かもしれないからだ。
こういう作品を読むと、我々の安定した暮らしというものがいかに危うい日常のバランスの上で成り立っているかが実感させられる。
失踪した彼ら・彼女らも毎日親や近所、会社の上司から与えられるプレッシャーから逃れるために自ら選んだ道であり、実際、事件の真相解明を依頼されたチームを束ねる環はこの一連の失踪事件に関しては主謀者である馬橋の改心を促しただけに留め、本質的な解決をもたらしていない。真相を解明し、後は当事者に判断を委ねるという形を取っている。

更に加えて、この馬橋という男が、昨今の大不景気で続出する首切り問題の対象となっている契約社員という立場が故にこのような犯罪に手を出したという事情も同情できるだけに切ない。

群衆の中の孤独。
東京ほどこれほどぴたりとくる街もないだろう。日本最大の人口を誇りながらも人はその群れの中でいとも簡単に掻き消えてしまう。小市民である彼らはそんな中で、限られたコミュニティにアイデンティティを見出しながらひっそりと暮らしている。
海外で暮らす今、失踪人たちの矮小さが痛切に響いた。

初の貫井作品だったが筆致は堅実で迷いがない。ただ器用すぎて派手さに欠けるとも思った。
あと失踪人捜しという物語の軸足がいつの間にかドラッグ密売グループの摘発に移っているのも、ぶれている感じさえある。
更には冒頭に述べたように作者自身がファンであるドラマシリーズを感じさせるため、物語や構成もドラマの場面が浮かぶきらいもあるが、純粋に愉しめはしたので及第点というところか。本棚に並ぶ彼の作品を次に読むのが楽しみだ。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

失踪症候群の感想

読み終わった感想としては、結構面白かったです。途中までは不満が満載で、嫌になってました。まず設定として、特殊任務チームが地味過ぎ。今野敏「ST」を見習え!って感じでした。普通に淡々と捜査しているだけで、チームのメンバーの個性や能力も良く分からんしね。原田の娘も、高3にもなって拗ねて親に反抗してグレるなよ、中2か(笑)。しかし、ゼックが出て来て、馬橋が出て来たあたりから、終盤まで一気に面白くなって行きました。ただ、元々シリーズ構想だったのか、今作ではメンバー全員の正体が見えない(特に環)。続き読んで確認だ!

なおひろ
R1UV05YV

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