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(短編集)

バースデイ



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バースデイの評価: 6.50/10点 レビュー 2件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.50pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(7pt)

『ループ』の不満を若干解消

『リング』、『らせん』、そして『ループ』で登場した高野舞、山村貞子、杉浦礼子という3人の女性の物語を描いた連作短編集。内容的にはこれら3作で語られなかったエピソードを補完するような内容となっている。

まず冒頭の「空に浮かぶ棺」は呪いのビデオテープを見ることで、山村貞子を懐胎してしまい、不遇の死を遂げた高野舞の物語。それも内容は山村貞子再誕の“あの時”の話。
続く「レモンハート」は特に『リング』において浅川と新聞社時代の同僚吉野が探った山村貞子の劇団員時代の若き日の物語。語り手を遠山というかつての劇団員の仲間であり、また貞子の恋人でもあった男に設定し、彼を吉野が訪ね、その時の話を聞くという構成になっている。
最後の「ハッピー・バースデイ」は『ループ』の主人公二見馨の子供を宿すことになった杉浦礼子の、『ループ』以後の話。ループプロジェクトの研究員の天野から馨がどのような運命を辿り、そして現在彼がどこにいるのかを聞かされつつ、お腹に宿った新たな生命を生み出すまでの話となっている。

これらの短編は連作短編となっており、各短編の時間の流れも正にこの順番どおりとなっている。そして無論の事、それらの作品世界は本編3部作を踏襲しており、「空に浮かぶ棺」、「レモンハート」を包含するような形で「ハッピー・バースデイ」が存在する。
正直、最初の2編を読んだ時は改めて短編として描くようなエピソードだったのかという疑問が残った。ここに書かれた内容は確かに『リング』、『らせん』では明確に書かれていなかったが、特別に短編として書き出すほどの目新しさを感じなかった。

「レモンハート」も劇団員時代に貞子の周囲で起きた怪異譚を描いているが、この遠山という人物が貞子の呪縛に絡め取られ、死んでいく話もあえて必要だったのかと疑問が残る。確かに劇場の音効室に隠された神棚とそこにあった干からびた臍の緒、そしていずこともなく音響カセットに入り込む赤子の声と貞子の官能的な愛の囁きと、ホラー要素ど真ん中の作品なのだが、どうも心の底から怖く感じない。逆に当たり前のモチーフを用いて、印象が浅くなってしまった。これは逆に『ループ』を読んでしまった後だけに、貞子という存在が希薄になってしまった事によるからかもしれない。

しかし、最後の「ハッピー・バースデイ」では、この報われなさが救われた。先にも書いたように『ループ』の後日譚である本作は、どうにか消化不良だった『ループ』に最後のピースがカチッと収まった、そういう風に感じさせてくれる作品だった。
馨の子供を孕んだ礼子がその子を産むまでの話なのだが、それを仮想空間「ループ」に入った馨のその後、リングウィルスのその後、そして増殖した山村貞子という個体のその後がきちんと語られ、そして最後に新しい生命の誕生と、実に清々しい気分にさせてくれる好編だ。出産をテーマにした本作は主夫作家鈴木氏の小説テーマのど真ん中なのだが、今回はそれがいい方に働いた。それは自分も三度我が子の出産に立ち会ったという経験から来る、作者への共感によるところが大きいのかもしれないが。

いまだに『ループ』という作品の内容については納得は行かないものの、この短編を読むことで、欲求不満が若干解消されたのは確か。逆にこの1編がなかったら、この短編集は単なるリングファンの手によるファンジンぐらいの価値しかなかっただろう。
最後に馨が生まれたてのわが子に投げかける言葉。それはそのまま私が生まれた子供らに向けて投げかけた言葉に等しい。あのときの思いを思い出させてくれた。それだけでこの1編だけは他人がけなそうが私にとっては良作になっている。

Tetchy
WHOKS60S
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

バースデイの感想

「ループ」の続編ということですが、短編が3編の構成になっています。
貞子の若かりし頃の話、復活までの話、ループの後日談的な話ですが、
蛇足感もありつつも、まぁ、続きが読めて良かったかな的な気持ちです。

syuu
WGN7AOIC

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