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罪に願いを



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【この小説が収録されている参考書籍】
罪に願いを (集英社文庫)

罪に願いをの評価: 9.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点9.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

これは傑作! 予備情報なしで読んでもらいたい

デビュー小説ながらエドガー賞最優秀新人賞のフィアナリストになったという傑作ノワール。ラストベルト地帯の小さな町で平和に暮らしていた3人の語り手が欲望、使命感、絶望感などをきっかけに許されざる罪を犯してしまう切ない犯罪物語である。
基幹産業が斜陽化し、衰退の一途をたどる人口五千人ほどのスモールタウン。幸せな夫婦生活を送りながらも子供がいないことに一抹の寂しさを抱えるネイサンは釣りの帰りに森の中の小屋が燃えているとの通報で現場に駆けつけた。ボランティア消防団員でもあるネイサンは火災現場に最初に到着し、重度の火傷を負った男を助け出し、大金が入ったゴミ袋を見つけた。この金で運命を変えられると直感したネイサンはゴミ袋を屋根裏に隠してしまった。火傷した男が運ばれた病院に勤めるキャリーは口蓋裂の傷跡のために何事にも消極的で、病院勤務にもうんざりしていた。男が運ばれた翌日、末期がんに苦しむ16歳のガブリエラが緊急入院して来たのだが、新興宗教の牧師である父親は医学を信用せず、治療を拒否する。苦しむガブリエラに同情し親身になって接してくれるキャリーに心を許したガブリエラは「最後の望みで、海が見たい」と伝えた。片道4時間を越えるドライブにガブリエラが耐えられるのか、さらに保護者の承諾なしに連れ出せば誘拐とみなされる危険もありキャリーは迷う。若い時、麻薬常用者だったアンディはケイトとの結婚を機に薬を断ち、やがて生まれた愛娘のアンジーと三人で貧しいながらも幸せな日々を送っていたのだが、ある日、仕事から帰りアンジーとケイトが死んでいるのを見つけてしまう。生まれつきダウン症だったアンジーの心臓が力尽き、希望を絶たれたケイトが跡を追ったのだった。全てを失い自暴自棄になったアンディは薬の過剰摂取で自殺を試みるが失敗。酒で意識を朦朧とさせ町をふらついていた時、小児性愛者のおぞましい写真を発見したのだが、写真の中にダウン症児を被害者にしたものがあり、アンディは「この犯人を地獄への道連れにしてやる」と決意した…。
三人三様の希望や後悔、迷いや判断が複雑に関わり合うストーリーは波乱万丈、息つく暇を与えずスピーディに進行する。三人が順番に視点人物になる構成も効果的でページを捲る手が止まらない。三人が迎えるクライマックスも深い味わいを残す。380ページほどと手頃なボリューム、登場人物は少なく、関係もわかりやすいので予備知識なしで読める。
アメリカのスモールタウンの行き詰まりを見事に表現した、まさに今風のノワールとしてどなたにも強くオススメしたい。

iisan
927253Y1

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