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邪悪なる大蛇



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邪悪なる大蛇

邪悪なる大蛇の評価: 9.00/10点 レビュー 1件。 Aランク
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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

冷酷非情とブラックユーモア。ルメートルの原点がここに

ルメートルの12作目の長編で本人の弁によると「最後の犯罪小説」だという。一人暮らしの裕福な老婦人が実は腕利きの殺し屋なのだが認知症が現れはじめ、依頼された任務以上の残酷な殺害を繰り返すようになり、ついには衝撃的な事態を招くというノワール・サスペンスである。
医師だった夫の遺産で優雅に暮らす63歳のマティルド。その正体は冷血な対ナチスのレジスタンス兵士で、戦後はレジスタンス時代の「司令官」アンリを窓口に殺し屋稼業を楽しむプロフェッショナルだった。だが、自覚のないまま認知症が進行し、次第に短気で非情な一面が現れるようになった。時々、物忘れがあることには気付くのだが、それもすぐに忘れてしまう。しかし、マティルドの行動が荒っぽくなりもはやコントロールできなくなったことに気付いたアンリは組織のルールに従って、マティルドを排除する苦悩の決断をする。レジスタンス時代からお互いに淡い恋心を抱いてきた二人は過酷な運命に導かれ、ついに破滅的なラストに突き進んでいった・・・。
殺し屋が主役のノワールでありながら、全編に認知症が引き起こすブラック・ユーモアが散りばめられ、さらに読者を驚かす冷酷非情な展開が繰り広げられ、最初から最後まで目が離せない。本人の序文によると「1985年に書いたまま出版社に送りもしなかった小説」でほとんど書き直していないという。作家の全ては処女作にあることの典型的な証というべきか。ルメートルの世界がここに見事に現れている。
作品誕生の経緯など関係なく、面白いノワール・ミステリーとして多くのミステリーファンにオススメしたい。

iisan
927253Y1

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