欲望の大地、果てなき罪
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第二次世界大戦後のフランス、ベトナムを舞台に繰り広げられる壮大な家族ドラマである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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読み終えるのに少し時間を要しました。 ピエール・ルメートルの著作を読むのは、「邪悪なる大蛇」(2024/7月)以来になります。 この作品とはいっさい関連はありませんが、2025/6/1、ヨーロッパチャンピオンズリーグにおいてパリのサンジェルマンが初優勝しました。大勢のサポーターたちがシャンゼリゼ通りに集合し、一部が暴徒化したとの報道がありました。丁度、本書下巻の69%あたり、コミュニスト、フェミニストの各種団体(デモ隊)がシャンゼリゼ通り一帯で警官隊と一戦交えるシーンを読んでいたところだったので、これはシンクロ二シティなのかどうか考えたりもしました。この国(日本)にはないフランスという国の持つ或る種のダイナミズムに触れたような気がします。逆に何の騒乱も起きない国家については、いずれ語りたい。 本書はルメートル・サーガ「栄光の時代」シリーズの第一作目にあたります。 時代は1948年から、ベイルートで石鹸工場を営むペルティエ夫妻とその四人の子供達による群像物語。ジェフリー・アーチャーによる<クリフトン年代記>を想起したりもしましたが、明らかに本作の方がより人間的であり、魔性に満ち溢れています。それはフランスという国が抱える<魔性>なのかどうか。アーチャーによるページ・ターナーには、例えば本書同様インドシナを描いた「静かなアメリカ人」(グレアム・グリーン)のごときヒューマン・ファクターが欠落しています。 家族の成長に合わせてベイルートからサイゴン、パリへと目まぐるしく舞台が変展していくわけですが、そこには長男のジャン、その妻・ジェヌヴィエーヴ、次男のフランソワ、三男・エティエンヌ、長女・エレーヌのそれぞれに与えられた特異なキャラクタリゼーションが悪魔的に切磋琢磨しつつ家族の結束を固めているように思えます。そこにルメートルらしさが横溢しています。 劇場で殺害された女優、マリ・ランプソン事件は、いかに進展していくのか? 本書のメイン・ストリームを成すルメートルの「インドシナ戦争」を描き切れたのかどうか? 「ピアストル不正送金」に纏わる外国為替事件の背景にはいかなる陰謀が隠されていたのか? それらの興味深い大きなファクターについてが、ペルティエ家族の一人一人の眼差しを通して詳述されています。(下巻は、深く静かに語られていますので、『少し長いな』とすら感じました(笑))。 鍵は、長男ジャンの行末が握っているような気がしますが、フランソワもエレーヌもまたこのままその後の時代を生き抜くのか予断を許しません。いずれにしても第二作、第三作へとサーガは続きます。深く静かに、楽しみにしています。 ◻︎「欲望の大地、果てなき罪(上・下) "LE GRAND MONDE"」(ピエール・ルメートル 早川書房) 2025/6/01。 | ||||
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