喪服の似合う少女



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    初公開日(参考)2024年08月
    分類

    長編小説

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    喪服の似合う少女 (ハヤカワ・ミステリ)

    2024年08月05日 喪服の似合う少女 (ハヤカワ・ミステリ)

    女性私立探偵・劉雅弦の元へやってきた女学生・葛令儀。彼女は劉に、友人の岑樹萱を見つけてほしいと依頼する。劉は調査を始めるが、岑樹萱を深く知っている者は、一人もいなかった。さらに劉は調査の中で死体を見つけ、殺人容疑で警察に逮捕されてしまう……(「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

    喪服の似合う少女の総合評価:7.75/10点レビュー 4件。Cランク


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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (7pt)

    喪服の似合う少女の感想


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    氣學師
    S90TRJAH
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    No.3:
    (5pt)

    ちょうど読みたかったんです、ハードボイルド。

    中国人ミステリ作家が描くハードボイルド私立探偵小説。しかも傑作。いま、読み終わったばかりで、余韻に酩酊してます。
    舞台は1930年代の中国で、架空の都市。その時代なので当然、中華人民共和国ではなく中華民国の時代、だからこそ、私立探偵が成立している。
    扉には「ロス・マクドナルドに捧げる」とある。
    主人公は女性の私立探偵で、名前は劉雅弦。呼び名はリュウで、ロスマクの読者ならすぐにリュウ・アーチャーのもじりだということは判る。でもこのもじりで心配になるのも当然だ。だいたいこういうことをやる小説は成功しない。
    物語が始まるとすぐに依頼人が登場し、人探しを依頼する。これも常道だ。女探偵リュウは饒舌で気が利きすぎたセリフを連発する。ロスマクよりもチャンドラーに寄っており、しかもイキッてる感じ。さらに心配が増す・・・。
    ところが、事件が転がり始めると探偵の個性はやや静まり、物語としてのハードボイルド構造がギアを上げ始める。さらに女性登場人物たちによるシスターフッド風味や百合風味がそこに重なり、混沌とした中華民国のレトロな描写も深みを帯びていく。
    このあたりで、読者であるぼくの心配は薄れ、ワクワクが高まる。
    後半、ロスマク的トリックが仕掛けられ、それが見事なひねり技へと昇華するのを見届け、「やった!」と拳を握る。
    そして、ラストシーンを読み終えたあと、余韻として立ち上がってくるのは、リュウという名の私立探偵の姿ではなく、タイトルの「喪服の似合う少女」だ。これぞ、ロスマク的幕切れ。お見事です。
    陸さんにはお願いしたい。このシリーズをぜひ続けてください。
    喪服の似合う少女 (ハヤカワ・ミステリ)Amazon書評・レビュー:喪服の似合う少女 (ハヤカワ・ミステリ)より
    415002006X
    No.2:
    (5pt)

    陸秋槎の「新代表作」の惹句に偽りなし。歴史私立探偵小説の傑作

    『喪服の似合う少女』は傑作だと断言できる。あの衝撃的な『元年春之祭』以来、本格ミステリの実験性を突き詰めてやがてSF小説に転じた中国人作家の陸秋槎が、次に執筆に選んだのは中華民国時代を舞台にした私立探偵小説だったというのは一周回って意外だったが、一読してさらに驚いた。あえてハードボイルドの巨匠のロス・マクドナルドにリスペクトをとることで、陸秋槎特有のジャンル小説への批評性を持つ作風を維持しつつ、短い紙幅でまとめあげた本作は、技巧と文章、そして小説としての完成度において過去作を遥かに凌駕している。帯文のとおり陸秋槎の新代表作であろう。

    舞台はいかにも1930年代中国的な都市都市化が進みつつある省城なる街(具体的な地名は明かされない)で、私立探偵の劉が名家のお嬢様から依頼された失踪人を探す、というシンプルかつこれまたいかにもなセッティングで始まる。もちろんロス・マクドナルドが中期以降に確立した私立探偵小説のスタイルを意図的に模しているのだ。そもそも劉(りゅう)という名前からしてロス・マクドナルドの探偵リュウ・アーチャーのもじりであるが、劉の性別は原典と違ってまだ若い女性である。彼女は失踪した女学生を追うが、女学生の居場所もパーソナリティも序盤では杳として掴みきれない。次第に失踪人探しは(もちろんミステリなので真相は伏せるが)ある事件と悲劇へと転じていく。奇異さが排された人物たちの造型は、陸の初期作の強烈なキャラクター小説的な方向性(これはこれで良かったが)と打って変わって洗練されたものになっているし、確かな説得力を持って物語の中で動いていく。抑制された筆致のストーリーも中盤からツイストが入り交じっていき、精緻な展開の積み重ねとサプライズを兼ね備えている。

    本作を語るにあたって、そもそもどうしてロス・マクドナルドの、それも中期以降のスタイルを採用したのかという著者の技巧に考えを及ばせるべきだろう。「事件を追うカメラとしての探偵」「家庭問題と失踪者」「〝巡礼式〟とも称される関係者へのインタビュー的な聞き込み」「ともすると本格ミステリのごとき意外性のある結末」等、作風を確立した中期以降のロス・マクドナルドの作品はこうした定型の力が強い。各作品で題材や要素の違いはあれども、ミステリとしてのベースとなる型のパターンは決め打ちであるのが特徴なのだ。こうした内外のハードボイルドに強い影響を与えたトラディショナルなスタイルをリスペクトして模すからこそ、『喪服の似合う少女』は話が進むにつれて段々と深いところでロス・マクドナルド的ハードボイルドとの「差」をにじみ出してくる。それはつまりは本作は「まぎれもなく民国期の中国の歴史小説である」という肝だ。

    本作における民国期中国は急速な西洋化から生じる問題を持ち、成り上がりと貧しい労働者が入り混じる国として描かれるが、この作中から数年後には、日中全面戦争と第二次国共内戦という長く過酷な大戦乱を経て、国家体制そのものが激変してしまうことが歴史的に決定づけられている。海外作品を上映する映画館が複数も建つ作中の省城の欧米的華やかな面は、これからわずかな時間を経て形を大きく変えるであろう(なお省城の映画館でかかるのは「ドイツ表現主義映画の影響を受けた、おそらくハリウッド黄金期のサイレント」であり、本作の時代性を象徴している)。巻末解説によれは描写から作中年代は1934年だと推察されているから、既に第一次上海事変は発生しているし、本作から3年後には日中戦争勃発が控えているのだ。読者はそのような大変動の直前の物語として現代から本作を読む。そういう意味では政変が近づくワイマール共和国期ベルリンを舞台に不穏な雰囲気に満ちたフォルカー・クッチャーの傑作ミステリ群に本作は近いといえる。
    『喪服の似合う少女』はそうした何かが大きく崩れてしまう予感と危うさが常に静かに流れ(恰好をつけた探偵として振る舞う劉でさえ情報通の遣り手婆からの誘いを逃げ道として考えている節までもある)、そのムードが、勃興した資本家一家の悲劇的な事件の展開と共鳴していく。真相は伏せるが、綿密に描かれた省城の世界に比べてそれまである意味浮世離れしていた「米国」的事件の本体は、終盤のミステリ的展開によって民国期中国当時の時代性(布石の置き方が実にさりげなく見事だ!)と絡んで、独自の作風を提示してみせるのだ。

    探偵の劉はワイズクラック(いわゆるハードボイルド風の皮肉な言い回し)を多用するが、時として中国の故事引用や漢詩としてそれを表現する。さらには、銃器のコルトは「柯爾特」、米国人作家のドライサーは「徳莱塞」といったように、中国の国外由来の語句は初出ではいずれもまず当時の漢語表記で叙述する。様々な西洋風のスタイルを模しつつそれを中国文化的に表現するこの女性探偵は、どこまでも米国的な探偵そのものにはなりきらず、諦観と他者への距離を持ち、女性としての過去と複雑さを内包している。一見寡黙な優しさを持つが抑圧気味のマチズモを引きずるリュウ・アーチャーとの類似と対比だ。本作のこうした描写はハードボイルドジャンルへのアイロニーと捉えることができ、アメリカ西海岸で50’s的な家庭の事件に挑む男性探偵を描いたロス・マクドナルド作品と本作との類似、そしてそれらと本作と妙趣ある「隔たり」を印象付ける。こうして本作は、不安定な国家体制で西洋的近代化を歴史的に模倣しきれなかった民国期中国を舞台とし、いかにも米国的な定型ハードボイルドのスタイルと展開を採用して中国の物語を描くことで、中国と外国の模しきれない違いを様々な形で(しかもその違いをあえて大きく誇張することなく巧みに抑制して)浮かび上がらせる。この時代性と技法のシンクロから生じる異化効果によって唯一無二の「民国期中国の歴史小説かつ私立探偵小説」を現出させるのが『喪服の似合う少女』の眼目であり美点なのだ。はっきり言って他のレビューにあるような米国的な古き〝良き「私立探偵小説」〟なるもののエモーショナルさが再現されてるかどうかばかりを期待するような読み方はまったくもって一面的でしかなく、この小説の豊かさを捉えられていない。著者あとがきによれば「私立探偵」は歴史的に中国ではこの民国期の時代以外は職業として認められていないという。だからこそ、その時代の歴史的興趣を私立探偵小説として切り出してみせたのは、『元年春之祭』以来、作中のシチュエーションとジャンル小説の噛み合いにこだわりを打ち出してきた陸の技巧の頂点といえるだろう。

    本作は型が定まった私立探偵小説のスタイルをあえて採用することで、ハードボイルドの巨匠の単なる換骨奪胎に留まらず、激変の予感が静かに底流する一つの時代を切り抜くことに成功した、稀有な歴史探偵小説と言えよう。この短いページ数(2段組とはいえ新書300ページにも満たない)で精緻かつストイックに仕上げられた達成は見事である。しかし、この魅力的な作品が本作一作で終わってしまうのはとても惜しい。欲を言えば上述のクッチャーの作品のように時代が大事変へと段々と近づいてより緊迫感が高まっていくような劉雅弦シリーズ続篇を期待したい。
    喪服の似合う少女 (ハヤカワ・ミステリ)Amazon書評・レビュー:喪服の似合う少女 (ハヤカワ・ミステリ)より
    415002006X
    No.1:
    (2pt)

    「あげるものはもうなんにもないのだよ」

    予備知識なく読み始めましたが、いきなりロス・マクドナルドへの献辞があって驚きました。中華人民共和国の作家による「私立探偵小説」。時代は、1934年前後。舞台は、上海と対比して描写されるような街、「省城」。
     女性私立探偵、劉雅弦の事務所に一人の少女、葛令儀が訪ねてきます。そして、劉は失踪した旧友の捜索を依頼されることになります。地元の富豪、退廃的な映画館、金目当ての縁談、暴漢に襲われる主人公・劉。
     そして、その事件はそう、かつてロス・マクドナルドが一作、一作、機を織るようにして注視し続けた「家庭の悲劇」へと収斂していくことになります。勿論、そのストーリーを詳述するつもりはありません。
     しかし、ロス・マクドナルドの「運命」から「ブルー・ハンマー」までの道筋を手を変え、品を変え、その人探しのロジックも含めていかにその時代、舞台に合わせて再構築しようとしたところで、少なくとも私の心が震えるようなことはなかったと言っておきたいと思います。
     何故か?一言で言ってしまうと、<換骨奪胎>できていないから。必要以上に鬱陶しい<ペダントリー>に加えて"アクチュアリティ"を放棄することによって、ロス・マクドナルドのストーリー・テリングに近づけることはできたとしても、その<米国西海岸>にわだかまるような、飽く迄"アクチュアルな"、生きることへの悲しみが一切伝わってこなかったことに起因していると思います。
     この「私立探偵小説」はウエルメイドな<古典>をなぞったという意味合いからは秀作と呼べる<結構>を数多く持っていると言えますが、それは良き「私立探偵小説」を望むものからすると「そこではないんだ」という思いが残りました。
     赤瓦屋根が点在する遥かサンタバーバラに想いを寄せつつ、ロス・マクドナルドの著作を愛するものにとって、「あげるものはもうなんにもないのだよ」。
      ◻︎「喪服の似合う少女 "Mourning Becomes Eurydice"」(陸秋槎 早川書房) 2024/9/02。
    喪服の似合う少女 (ハヤカワ・ミステリ)Amazon書評・レビュー:喪服の似合う少女 (ハヤカワ・ミステリ)より
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