蛇影の館
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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奇想の物語による特殊設定ミステリ。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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☑超常存在”蛇”。人の記憶と体を乗っ取って生きています。 ☑乗っ取り先を変えるための館で起きる惨劇。犯人は蛇なのか、人間なのか。 ☑ガチガチのパズルの中で美しいロジックと揺らぎ。ミステリだからこその青春もの。 | ||||
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特殊設定が現代ミステリを席巻しています。能力モノのような漫画的面白さがあり若い読者に受け入れられたこともありますが、最大の長所はトリックとロジックが無限に拡張される点にあり、魅力的な謎と論理的解決を動かぬニ柱としてそれ以外の無茶を完全に許容したのです。「十角館の殺人(1987)」後30年、「屍人荘の殺人(2017)」の大ヒット。特殊設定の普及によって新本格ミステリは無限の拡張性を得たといってもよく、近年読みきれないほどの傑作群が生まれています。新本格ミステリは大衆文学の主流になったといってもいいでしょう。 ただし特殊設定モノは前提となるルールの把握に成功すれば存分に物語にのめり込める一方で、一度ルールをつかみ損ねるとあっちこっちページをめくり返し論理展開を追いづらくなるリスクがあります。 本作はミステリ好き垂涎の館の図と登場人物表(最初)、タイムテーブル(p206)が用意されています。 とはいえ本作独自のルールは小出しにされており、一度出たルールがどこにあるか確認するために私は少なくない付箋を使いました。 そこで単行本をこれから読む人へ薦めたいのが、ルール把握に詰まったら232ページ"のみ"を開けてしまうことです(電子書籍の場合のページ数は分かりません)。 ここに作中ルールが整理列挙されています。また上手いことに、そのページのみを読む分にはネタバレにもならないのです。ルールを小出しにしてサスペンスを煽っていく作風ではないため、文庫化の際には最初のページに載せてもいいかもしれません。 付け加えておくと、 ・蛇が接続を断つことと人間から出ることは別物であること。すなわち憑依している人間を任意に殺して、死体に潜伏することも可能。 ・蛇が人間から出るには口あるいは肛門から出るしかなくその際に出血すること。 この辺りもルールに加えても良いでしょう。ここは本作独自の「肉体の密室」トリックを考察する際に極めて重要な部分です(もちろんメイントリックではありませんのでネタバレではないです)。 さてこれらのルールを受け入れてしまえば、本作は特殊設定パズラーの傑作といえます。全くの盲点にあったシンプルなトリックによって全ての説明がついてしまう謎。もちろん多重解決の面白さ、青春小説の側面もあり、存分に物語を楽しめました。本格ミステリベスト10にランクインすることは確実ではないでしょうか。過剰なエログロなどもなく、老若男女に薦められる傑作です。 余談ですが、蛇牢ゲームは深く考えず流し読み、「財団」はなんかすごい舞台装置程度の認識でよいと思います。 | ||||
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