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ディーケンの戦い



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【この小説が収録されている参考書籍】
ディーケンの戦い (新潮文庫)

ディーケンの戦いの評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

捻りに捻って、なんだか掴みどころがありません

かつて反政府分子たちの弁護士として高名を馳せていたディーケンは、立て続けに敗訴して以来、自信喪失症に係り、故郷の南アフリカを離れ、スイスの片隅でしがない弁護士稼業を続けていた。
そんな折も折、ディーケンはルパート・アンダーバーグと名乗る人物からアラブの武器商人アジズがナミビアのレジスタンスへ供給する兵器類を阻止して欲しいと頼まれる。思いもよらない依頼にディーケンは断ろうとしたが、アンダーバーグは彼の妻を誘拐していた。妻と引換えに、こちらの条件を飲めという。
進退窮まったディーケンはアジズの許へ向かう。彼の孤独な戦いが始まった。

ストーリーを概略すると以上のような形に収まるが、本作の構成はかなり複雑である。アンダーバーグなる黒幕はナミビアへの武器供給を止めろとディーケンに命じつつ、そのレジスタンスのリーダー、エドワード・マキンバーとも通じており、更に武器商人アジズの息子を誘拐させたイスラエル過激派を率いっており、なかなか狙いが摑めない。
更にアジズは誘拐グループに報復をしようと凄腕の用兵部隊を雇う。この三者三つ巴の只中で一人、ディーケンは南仏からセネガル、そして南アフリカへと翻弄される。

また本書は、矜持を失った男が、妻を救うべく奮闘する中で次第に自分を取り戻していく、といった定石を踏まない。
かつて反政府分子たちのために次々と政府相手に勝訴を勝ち取った英雄弁護士ディーケンは、翻弄されるがまま、それこそボロ雑巾の如く、這いつくばり、愚直なまでにアンダーバーグの言葉に従い、アジズとその弁護士グリアスンの掌上で踊らされる。
ディーケンが自分の意志で行動を起こすのは全400ページ中290ページ弱の辺りで全体の3/4が終わった頃である。しかしその後もディーケンは支援側からも利用されるといった具合で終始報われない。

さらに誘拐された妻はストックホルム症候群に陥り、イスラエル過激派のリーダーと恋に落ちてしまう。むしろディーケンの許へ帰る事を拒むようになるといった次第で、ますます主人公ディーケンは救われないのだ。
この作品は読者がこの展開を楽しめるか楽しめないかに懸かっている。そして私は後者に属した。シニカルな面白さよりも爽快感を求めたが故に、悲壮感が最後残ってしまった。

実は爽快感を期待したのには訳がある。作中235ページにディーケンがバーでぼんやりとしている時に二匹のヤモリが、虫を食べようとして失敗し、虫は無事逃げおおせるといった描写がある。これをそのままストーリーの展開の直截な暗喩と思ったのだ。
逃げおおせた虫はディーケン、二匹のヤモリはそれぞれアジズとイスラエル過激派と思ったがそうではなかった。この暗喩は一体何を意味したのか。

そしてエピローグにて明かされる本書の仕掛け。最後に登場する名前は予想の範疇で特別なサプライズは感じなかった。
私はあまりにも出来すぎていて、計画の破綻がないことに逆に作り物の偽物感を抱いた。ちょっと懲りすぎたかな、フリーマントル。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S

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