歴史街道殺人事件



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初公開日(参考)1995年08月
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長編小説

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歴史街道殺人事件 (徳間文庫)

1999年06月01日 歴史街道殺人事件 (徳間文庫)

伊勢から神戸にかけての約三百キロにわたる「歴史街道」は“日本版ロマンチック街道”ともいわれている。この街道にある日、点々と女性の死体がバラまかれた。一方、中年女性に失踪した娘の行方を探してほしいと頼まれた弁護士探偵・森江春策は青山高原と飛鳥にめまぐるしく続発した殺人に遭遇し、バラバラ死体事件にも取り組むことになる。やがて浮かび上がってきた前代未聞のおぞましいトリックとは。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

歴史街道殺人事件の総合評価:7.86/10点レビュー 7件。Cランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

通勤時間に読むにしては陰惨すぎる

芦辺拓氏の鮎川哲也賞受賞作『殺人喜劇の十三人』に登場した森江春策はその後シリーズキャラクターとなり、今なお書き継がれているが、本書はその2作目にあたる。
1作目では学生だった彼はその後新聞記者となったが脱サラし、司法試験を受けて弁護士資格を取り、刑事事件専門の弁護士となったが、有罪率99.9%の日本の裁判に勝つために自ら真犯人を突き止める探偵業も副業としているという設定だ。

この森江春策は芦辺作品のいわばメインキャラクターであり、現在では数々のシリーズ作品が書かれている。それは即ち数々の事件を解決してきた名探偵であるが、他の名探偵とは異なり、周囲からは頼りなく、また要領悪い弁護士のように見られ、元同僚の新聞記者来崎四郎の評によれば「冴えない学生だった森江春策はその後冴えない記者になり、そして今は冴えない弁護士となっている」とされている。私が抱いていた名探偵像からは乖離したキャラクターだ。

本書は1995年、つまり平成7年に刊行された作品だが、この題名『歴史街道殺人事件』とはなんとも古めかしく昭和のノベルス全盛期に刊行された推理小説群を彷彿させる。
本書も最初はトクマ・ノベルスの版型で刊行されたことから、恐らくはかつての島田荘司氏がそうであったように、当時新本格ブームで続々とデビューする新米作家たちに少しでも固定読者を付けようと敢えて俗っぽい『〇〇殺人事件』の名をつけ、そしてトラベルミステリ風に味付けしたものを版元が要求したように思われる。そしてあとがきではまさにそのことが書かれていた。このベタな題名が生んだ功罪についても。

本書は宝塚、天王山、奈良、伊勢でバラバラに切断された死体が発見されるショッキングな内容でこの殺人ルートを解明するミステリである。

それらを結ぶのが題名にもなっている歴史街道、本書では伊勢―飛鳥・斑鳩―奈良―京都―大阪―宝塚―神戸を結ぶルートでそれぞれ≪古代史ゾーン≫、≪奈良時代ゾーン≫、≪平安・宝町ゾーン≫、≪戦国・江戸時代ゾーン≫、≪近代ゾーン≫と区分けされており、このルートを辿ることで二千年の歴史を体感できるとされている。
この歴史街道は実際に歴史街道推進協議会によってPRされており、現在もホームページで情報が更新されている。関西に住んでいる身としては実に興味深い内容で個人的に巡ってみたいと思った次第である。

しかしこの歴史情緒溢れるルートを舞台に本書では死体がばら撒かれ、そして加えて2つの殺人事件が起こる。そしてその中心には森江の高校時代の友人、味原恭二がいて彼が最有力容疑者となる。

この味原恭二という男は本書では決して好感の持てる人物として書かれていない。主人公の森江をして「自分の興味あるものに他人を巻き込んで散々利用した後にすぐに他の物に興味が移って顧みもしない」男と評されている。森江自身も高校時代に彼に誘われて演劇グループに所属し、最後の公演に向けて準備に明け暮れていた矢先に既に演劇に興味を失った味原は受験生へと転身し、逆に森江達にまだそんなことをやっているのかと歯牙にもかけない仕打ちを受けていた。

それは大人になってからも続き、劇団≪ストゥーパ・コメッツ≫に所属するといつの間にか牛耳るようになり、そして有名した後は興味が尽きたのかデザイン企画会社に転身し、現在に至っている。そしてその資金は彼の恋人でバラバラ殺人事件の被害者である川越理奈の父親から出資してもらっているのだ。まさに他人の土俵で相撲を取っては後を濁してばかりいる男だ。

従って彼の周りにいた人物も次第に去っていき、その肉親や知り合いは味原に対して嫌悪もしくは憎悪に似た感情を抱いている。
共同事業者の稲荷克利と新規コンピューターソフトを一緒に作ろうと巻き込んだ新進気鋭のゲームクリエイター白崎潤が森江の捜査の過程で殺人事件の犠牲者となっていく。

本書にはいくつか物理的なトリックが登場するが令和の今では懐かしさを感じさせる。

しかしこの犯行の内容が意外にも凄惨だったことに驚いた。

いやはや読んでててこの件は何とも背筋が寒くなる思いがした。上に書いたように本書はサラリーマンが通勤中に読むようなノベルスで刊行された推理小説だが、この犯行内容は通勤中に読むにはショッキングすぎるではないか。

しかし事件の真相から立ち上るのは味原恭二、白崎潤、稲荷克利、本庄静夫という4人の男の中心にこの事件の最初の被害者川越理奈という女性がいたことだ。そして彼女は非の打ちどころのない、知り合えば魅了されてしまうほどの魅力を備えた女性だったということだ。

歴史街道を軸に1人の女性に魅せられた男たちと1人の男性の才能に魅せられた1人の女性の物語であったのだ。

しかしその周囲の男性を翻弄する女性の心を射止め、なおかつ1人の女性が心酔する才能を持つ男を引き込んだのが全く好感の持てない味原と云う男なのは人間関係の綾というか人の心の不可解さを感じさせる。そしてそういう人が実際に自分たちの周りにいるのだからまいってしまう。

ところで本書では事件解決の直前にあの阪神淡路大震災が発生する。しかしこの震災が事件に何か影響を及ぼすわけでもなく、単純にその時期にこの事件が起きたということだけのことで描写されるのだ。正直この件は必要だったのかと首を傾げざるを得ない。

本書には他にも死体をより集めて作られた絶世の美女を贈られた貴族、紀長谷雄のエピソードなども盛り込まれ、歴史街道で起きた殺人事件を彩る。その他にも様々な伏線が散りばめられ、それらが確実に事件の真相に結びつき、実に細やかな作りになっている。

多分刊行直後に読めば当時まだ20代だった私には単なる通勤時の時間つぶしに読むキヨスクミステリとして片付けていたであろうが年齢を重ね、史跡や歴史遺産に興味を抱いた今ならば歴史街道と云う魅力的なコンテンツがあることを知っただけでも本書を読んだ価値を感じてしまう。
日本の二千年の歴史を感じるこの街道にいつか必ず足を運んでみることにしよう。
ただその時は本書の陰惨な事件を忘れた状態で、だが。

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No.6:
(2pt)

最初にバラバラ遺体や連続殺人がありそこからは盛りあがりもなく終わった

他の作品では遺体をバラバラにした理由をしっかり描写しますが、なぜバラバラ殺人にしたのかにこれといった理由がありません。作者がこのトリックを使いたいが為に理由なくバラバラにしたものだと感じました
人に見られるリスクを背負い、バラバラにする時間を取ったりせずにナイフで刺して放置すればいいのにと思いました。(恨みがあったり時間アリバイを取ったという面もありますがリスクが高いし実際に顔を見られていて証拠にもなった。被害者との関係を知っている人は誰もいない)
最初に立て続けに殺人がありインパクトがあったのですがそこからは二転三転とする出来事もなく終わりました。メイントリックは衝撃的でした
中盤からは地味な聞き込みのみで今までの推理が逆転するほどの新しい情報というものはありません。
私が好む探偵ものと違い警察が介入しすぎたり地味に足を使い聞き込みしたりオチが弱かったりとにかく地味さが目立ちます
殺人喜劇につづき森江シリーズ2作目を読んだのですがこの作者の作品は推理するだけ時間の無駄で本格推理物を好む人にはお勧めできません
歴史街道殺人事件 (トクマ・ノベルズ)Amazon書評・レビュー:歴史街道殺人事件 (トクマ・ノベルズ)より
4198502471
No.5:
(5pt)

タイトルで思いっきり損している徳間ノベルスからの作品

芦辺氏の90年代前半の長編4作目であり、れっきとした森江春策シリーズものだが、タイトルが読み捨てトラベル通俗ミステリーみたいでかなり損をしている作品。
徳間ノベルスというレーベル自体がマイナーため、芦辺初期作品ではかなりマイナーな位置づけとなっているが、これが非常に面白いので侮れない。
この時期の新本格系では珍しいバラバラ死体が絡んだアリバイをトリックの中心にした意欲作。芦辺作品としては徳間ノベルスというレーベルを意識したのか、ややファン以外には退屈ないつものマニアックな引用やお遊びはなく、それが返って作品を引き締めており、コンパクトにかっちりとよく纏まった作品に仕上がっている。
歴史街道殺人事件 (トクマ・ノベルズ)Amazon書評・レビュー:歴史街道殺人事件 (トクマ・ノベルズ)より
4198502471
No.4:
(5pt)

芦辺拓ファン必読の書

トラベルミステリーと歴史ミステリーを混ぜた作品に見えて本格的な要素もある作者が欲張った構想を作品に仕上げた物だろう。是非ご一読を願う次第である
歴史街道殺人事件 (トクマ・ノベルズ)Amazon書評・レビュー:歴史街道殺人事件 (トクマ・ノベルズ)より
4198502471
No.3:
(4pt)

なるほどね

 1995年に出た単行本の文庫化。かなり加筆修正されているらしい。
 森江春策シリーズの第二弾。
 タイトルからするとトラベル・ミステリかと間違えてしまう人がいるかも知れないが、内容は本格ミステリである。しかも、なかなか大きなトリックが仕掛けられており、満足できる一冊であった。
 ただ、ミステリ、トリックとしては優れているのだが、他の芦辺作品に見られるような叙情性、ロマンチックな要素は少なめ。薄目の本なので、削られてしまったのか。そういう意味では、やや期待はずれであった。
歴史街道殺人事件 (トクマ・ノベルズ)Amazon書評・レビュー:歴史街道殺人事件 (トクマ・ノベルズ)より
4198502471
No.2:
(4pt)

悪魔的トリック

新本格の推理小説好きの間ではカリスマ的な人気のある本書。
文庫、ノベルスといずれも徳間から出版されているがいずれも廃盤である。
その人気の理由は悪魔的ともいえるトリックにあるのだろう。
小説としては文章も稚拙で謎の出し方と料理の仕方もお世辞にも上手いとはいえないが
とにかくトリックのインパクトは強烈。
簡単に解説すると推理小説のテーマの一つである「バラバラ殺人」に
全く新しい解釈を与えたのが本書だ。
書き手が違えば『占星術殺人事件』を凌駕する評価を得る作品になっていただろう。
余談だが、この悪魔的なグロテスクなトリックゆえに本書が廃本になっているかの
ような噂もささやかれ、好事家達の間では高値で取引されている一冊である。
未読の方には一度は手にとってみられる事をぜひお奨めしたい。
歴史街道殺人事件 (トクマ・ノベルズ)Amazon書評・レビュー:歴史街道殺人事件 (トクマ・ノベルズ)より
4198502471



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