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Tetchy さんのレビュー一覧

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レビュー数902

全902件 801~820 41/46ページ

※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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No.102:
(8pt)

これぞ泡坂風時代小説だ!

いやぁ、やっぱり泡坂妻夫はこういった江戸物、とりわけ職人物を書かせると上手いわ。『鬼女の鱗』の時は自分にとって初の時代物だった事、間に盆休みが入った事が期待外れの要因だったが、この『びいどろの筆』は市井の人々の生活の匂いが立ち上ってくるかのようだ。
あと、特徴的なのは夢裡庵が主人公でない所。各エピソードの主役は各々異なるが、その誰もがまた、人間臭くて実にいい。
びいどろの筆―夢裡庵先生捕物帳 (徳間文庫)
泡坂妻夫びいどろの筆 についてのレビュー
No.101:
(7pt)

不要な登場人物が多すぎるのでは?

よく出来た小説だと思う。何一つ過不足無く終末へと向かうし、文章も格調高い。しかし、目くらましのために容疑者を増やしすぎたのではなかろうか?
以前に比べると登場人物の特性がそのために希薄になってしまっている。未だにどんな人物だったのか区別がつかない人物が3~4人いる。
また、読書とは関係ない部分、つまり私事に於いて想い煩う事があり、時折、文字を追うだけになってしまったことも付け加えておこう。
ある殺意 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
P・D・ジェイムズある殺意 についてのレビュー
No.100:
(7pt)

登場人物に魅力がない。

プロットはいい、というより水準レヴェルである。ただ、登場人物が今一つ抜き出てなかった。各々の描き分けられ方は確かに上手く成されているが、どうもステレオタイプに留まっている感がある。
やはり結局小説を生かすのはあくまでその中の登場人物であり、たった一人の個性的な人物が脇役であっても、そこにいれば、忘れ得ぬ一編となるのだ。
絵に描いた悪魔 (角川文庫)
ルース・レンデル絵に描いた悪魔 についてのレビュー
No.99: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

なぜか印象に残る短編集。

文庫の裏表紙の紹介文から多大な期待をしてしまった「奇跡の男」から始まったこの短編集は、全体的な印象から云えば、別段心に残るような意外な真相、プロットは無いものの、何故か気になってしまう。それは各々の短編に出てくる人物たちがやたらと存在感をアピールしているから。純文学の香気漂う「狐の香典」、「密会の岩」の糀屋五兵衛と安里に代表される飄々とした物腰は何とも堪らない。また他の作品から懐かしい顔が出ていたのも嬉しかった。
奇跡の男 (光文社文庫)
泡坂妻夫奇跡の男 についてのレビュー
No.98: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

横溝風?

まず題名からして横溝正史へのオマージュという感じだし、ジェイムズ・ペインの地下室は明らかに乱歩のエログロ趣味を意識したもの。この作品を以ってして島田は本格の巨匠として名を残すことに挑戦したのか?
そうだとすればこの一作が未来永劫読み継がれていく名作だとは思わないが、面白かったのは事実。
しかしメインのトリックが大掛かりであればあるほど、陳腐な印象を受けるのが現代の本格である。その一点のみで10点をつけられないのがどうにも勿体無い。
暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)
島田荘司暗闇坂の人喰いの木 についてのレビュー
No.97:
(7pt)

中学生にお勧めします。

これ、多分、私が中学生の頃に読んだら、かなり面白かったのではないだろうか?
連続活劇とも云うべき場面転換の巧みさは、ここ最近読んだリュパン物の中では随一。原題を『アルセーヌ・リュパン』のみで打ち出していることからも、モーリス・ルブランの本作に対する自信の程が窺える。
ただ、やっぱり物語の構成は他の傑作及び凡作と変わらないのが惜しい。

▼以下、ネタバレ感想
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ルパンの冒険 (偕成社文庫―アルセーヌ・ルパン・シリーズ)
モーリス・ルブランルパンの冒険 についてのレビュー
No.96:
(7pt)

腑に落ちない部分がたくさんあります。

最初の2編「ルビーは火」及び「生きていた化石」は不可能趣味に溢れていたのだが、それ以降はなんか大味だったなぁ…。
夜勤中で疲れててうつらうつらしながら読んだため、頭に入んなかった部分もあるのだが…。


▼以下、ネタバレ感想
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妖盗S79号 (文春文庫)
泡坂妻夫妖盗S79号 についてのレビュー
No.95:
(7pt)

タイトル『ジャッキー・ブラウン』で映画化

2回続けてのレナード。
前の『タッチ』と違い、こちらはレナード得意の、そして私の求めるクライム・ノヴェル。
が、しかしちょいと物足りない。
レナードにしては主人公の「貌(かお)」が見えなかった。悪役のオーディルの方が存在感があった。いや主人公はマックスでも良かったのだが、パートナーであるウィンストンが魅力的な設定にも拘らず、ストーリーの原動力に何ら寄与していなかったのが余りにも惜しい。
前に読んだ『ゲット・ショーティー』のチリ・パーマーが出色のキャラだっただけについつい較べてしまうのだ。
ラム・パンチ (角川文庫)
エルモア・レナードラム・パンチ についてのレビュー
No.94: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)
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二人称叙述ミステリの佳作

実に興味深い設定だった。作者自身が探偵役となって物語の主人公を演じるシリーズの根底を揺るがすようなお話だった。
清原奈津美は正しく法月綸太郎である。彼は自分の存在意義を一度は否定し、虚構の中で踊る道化師までに貶めし、だがそこから見事復活してみせた。
しかしそれでもなお、彼は本格探偵小説の明日を見出してはいないだろう。
そう、この中で何度も作者が云っている「物語は終わらない」ように、このジレンマもまた終わらないのだ。
二の悲劇 新装版(の3-5) (祥伝社文庫 の 3-5)
法月綸太郎二の悲劇 についてのレビュー
No.93: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

シリアス路線で密室がそぐわない。

“意外な犯人”というものにどうやら私は免疫が出来てしまったらしい。というよりも誰が犯人でもおかしくないなと思っていると、衝撃の結末も自分の中ではトーン・ダウンしてしまう。
あと、全体的に何だかアンバランスだ。やはり第二の殺人は密室殺人にする必要性はなかったのではないか?
叙述を緊迫したムードで、いわばロス・マク風悲劇を語っているのに、時代錯誤な密室殺人はどうしても宙に浮いてしまうのだ。
カタルシスまではもう少し届かなかった。
一の悲劇 新装版(祥伝社文庫 の3-4)
法月綸太郎一の悲劇 についてのレビュー
No.92:
(7pt)

受賞作にしては物足りない

もっとストーリーに起伏があるのかと思っていたが期待していたほどではなかった。アーサー・ジョンソンが己の基盤から逸脱し、途轍もない恐怖を纏うのかと思えば、そうでもなく、終始劣等感を抱いた小心者だった。結末も読者を突き放すように唐突に終わり、カタルシスを得ることがなかった。
そう、題名の“わが目の悪魔”が誰の心にも巣食っているというのは判るのだが、それが暴走しなかったのが物足りなさの根源か。
わが目の悪魔 (角川文庫 赤 541-3)
ルース・レンデルわが目の悪魔 についてのレビュー
No.91:
(8pt)

冒頭の2編は傑作!

収録作品7作品中4作品はトリックもしくはプロットが解ってしまった。後半の沢田穂波とのコンビのビブリオ・ミステリ4作品は最初のエネルギーを持続させるには少々物足りないし(「緑の扉は危険」はこちらの期待が大きかったせいか、巷間で云われているほど、素晴らしいとは思わなかった)、「黒衣の家」はその呆気無さに唖然とした。
が、しかし「死刑囚パズル」と「カニバリズム小論」がその不備を補って余りある光彩を放ってくれた。これぞ法月綸太郎の真骨頂であろう。よって8点!
法月綸太郎の冒険 (講談社文庫)
法月綸太郎法月綸太郎の冒険 についてのレビュー
No.90:
(7pt)

あのシーンは本書から

評価は少しサーヴィスした。ラストの湖から遺跡が登場するシーンが胸を打った。これは恐らく宮崎駿があの名作『カリオストロの城』のラストシーンで採用したのではないかと推測される。
そう、このシーンを読んだ時、映画のあの場面が目に浮かんだから。好きな映画のモデルになっていることが解り、思わずニヤリとしてしまいました。

緑の目の令嬢 (創元推理文庫 107-10 アルセーヌ・リュパン・シリーズ)
モーリス・ルブラン緑の目の令嬢 についてのレビュー
No.89:
(8pt)

なんとも愛すべきレギュラーメンバーたち!

たった350ページ強の厚さなのに各々のキャラクター性を鮮やかに造詣し、しかもストーリーを見事に着地させる。
プロットはしっかり練られていたが、軽妙さのためか、さほど驚きは感じられなかった。これは恐らく私の姿勢が悪いのだろう。
でも最終的な感想としては、実に愉しい読書だったなあ、ということ。回を重ねる毎に、ジョン・ロウ、ギデオン・オリヴァー、そしてその妻ジュリーが素晴らしくて、実際に友達になりたいな、とまで思ってしまいました。
楽園の骨 (ミステリアス・プレス文庫)
アーロン・エルキンズ楽園の骨 についてのレビュー
No.88:
(8pt)

キャロル作品の個人的ベスト

今まで読んできたキャロルの小説の中では『死者の書』に次いでベスト。
つまりは、魔法とか呪いとか、非現実な要素が無かったことが一番の特徴で、故に登場人物がその個性だけで描かれていたことが良かった。挿話がふんだんに盛り込まれ、それらはそれなりに興味深いのだがあと一歩、足りないものがある。それはリーダビリティーの要因である知的好奇心の喚起ではなかろうか?
どうも読んでて、さて次はどうなるって気持ちにならないんだなぁ。
沈黙のあと (創元推理文庫)
ジョナサン・キャロル沈黙のあと についてのレビュー
No.87:
(7pt)

記憶に残る短編集

この本を読むのは2回目だが、「舞踏病」以外の他の3編は内容を憶えていた。実はよく考えるとこれは凄い事で、これは如何にこの短編集が自身にとって印象深かった事を須らく証明していることになる、のだが、「今」読み終わった感想としては、いささか荒唐無稽に過ぎる内容だなと認めざるを得なかった。
しかし、「ある騎士の物語」のセンチメンタリズムは今なお健在だった事、「近況報告」の難解さは久方振りの頭脳労働を楽しめた事を付記しておこう。これは偽らざる感想なのだから。
御手洗潔のダンス (講談社文庫)
島田荘司御手洗潔のダンス についてのレビュー
No.86:
(7pt)

ミステリをまだそれほど読んでいない人たちに

これはミステリを読み始めた頃に読んでいたら傑作だったかもしれない。
怪盗紳士ルパン (ハヤカワ文庫 HM)
モーリス・ルブラン怪盗紳士ルパン についてのレビュー
No.85:
(7pt)

爽やかシミタツ!

秩父の山奥の集落を舞台にした田園小説の意匠を纏ったハードボイルド小説か。田園小説とは英国文学が本場なのだが、本書は日本の田舎を舞台にした、故郷小説ともいうべき農耕文化がそこここに挟まれ、日本人の魂の根源を感じさせられる。
北方領土、海男の厳しい戦いを描いたシミタツがこんな老成した境地にまで達したのかと思うと感慨深いものがある。
悪徳不動産業者との戦いが軸なのだが終始爽やかで、派手ではないが美味しい緑茶を飲んだような爽快感がある。
帰りなん、いざ (新潮文庫)
志水辰夫帰りなん、いざ についてのレビュー
No.84:
(7pt)

これがシミタツのベストではない!

シミタツ作品で一番エントリー数多いなぁ・・・。シミタツ読者としてはこれを読んでシミタツを解ったように思って欲しくはないのだが。
『このミス』1位の宣伝文句は単に購買意欲をそそっているだけで変な先入観をもたらしているだけ。非常に邪魔だ。
主人公に都合の良すぎる展開や身勝手すぎる登場人物たちという声が多く、それについては同意する。私の中でも本書はシミタツ作品10本の指に入っても上位ではない。もっと面白い作品があるのでこれに懲りず、もっと手を出して欲しい。
しかし文庫の表紙の絵は、不倫の香りがするなぁ・・・。
行きずりの街 (新潮文庫)
志水辰夫行きずりの街 についてのレビュー
No.83:
(7pt)

けっこう好きなんだけどなぁ

前作『あっちが上海』に続くスラップスティック・エスピオナージュ小説。CIAやらFBIやらモサドやらが出てきて相変わらずドタバタ劇が繰り広げられる。
表紙に書かれた奇妙な動物は中身を見てからのお愉しみということで。
この後、志水氏は『そっちは黄海』という作品を書いて三部作にしようとしたらしいが、やめたらしい。理由は・・・ほとんど売れなかったからだと!
こっちは渤海 (集英社文庫)
志水辰夫こっちは渤海 についてのレビュー