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Tetchy さんのレビュー一覧

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レビュー数119

全119件 61~80 4/6ページ

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No.59:
(4pt)

全然状況が解りません

カー作品の欠点が如実に現れた作品である。
それはまず建物や敷地の配置が全く解らない、つまり風景描写が非常に独り善がりで単に説明的であり、読者に伝えようという気がしない点だ。読書をするに当たってはやはり読者は作者の書かれた内容を想像して風景を思い浮かべるのだが、これが全く思い浮かばない。
解らないまま、物語を読み進めるのでこれで小説の理解は約50%程度まで落ちる。これは敷地のレイアウトを付けてくれると非常に助かるのだが・・・。
そしてやはり一番大きいのが機械的トリックを説明しているのにそれが図解されていない事。どうにかこういう風にやったんだろうなとは想像はつくが、はっきり云って十分理解しているとは到底思えない。これは正に推理小説のカタルシスであるから致命的だ。ここでほぼ90%は興趣が殺がれた。

しかし、前回『眠れるスフィンクス』はノレたのに、今回なぜノレなかったのか。やはりそれは前者がトリックよりもロジック、ミスリードの妙で読ませたのに対し、こっちはやはり足跡の無い砂浜で鈍器で殴られたような死体があるという不可能状況を設定したトリックミステリであるからだろう。こういうミステリではやはり周囲の位置関係、人員配置、登場人物のアリバイなどが重要なのに、前に述べたような欠点があれば全然物語として成立しないのである。

ただ今回もなかなかに面白い趣向が凝らしてあった。人間というものの不思議さ―特に趣味趣向の多彩さ―に後期のカーは結構魅せられていたのだと思う。
今回は現代翻訳家が訳したというだけあって期待したのだが、非常に残念だった。

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月明かりの闇 〈クラシック・セレクション〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョン・ディクスン・カー月明かりの闇 についてのレビュー
No.58:
(4pt)

旅先、出張先で缶ビール片手にどうぞ

先に読んだデミルの『ゴールド・コースト』が芳醇なワインなら、こちらはスーパーで売られている1缶100円前後の缶チューハイといった所。誰でも気軽に飲める分、味に深みがない。

ストーリーは不倫相手が嫁さんを殺し、そのアリバイ作りのために愛人である主人公が東京から飛騨高山の別荘まで嫁さんになりすまして周囲の人々に印象付けながらアリバイ工作を助けるといったもので、その道中に島田氏ならではの幻想味が適度に調合されている。
しかし、構成が単純なため、真相は簡単に解った。

ただ、謎のオートバイ乗りは、ただ道中で知り合ったからって―しかも、主人公に案外痛い目に遭わされている―、命を助けるまでの事をするかなぁ?それも他人様の別荘の窓を壊すほど。ここら辺がやはり出張中のサラリーマンが車中で読み終わる程度のライトさを意識しているのだろうな。
すなわち缶ビール(もしくは缶チューハイ)・ミステリである。まあ、たまにはこういうのもいいか。

高山殺人行1/2の女 (徳間文庫)
島田荘司高山殺人行1/2の女 についてのレビュー
No.57:
(4pt)

村瀬作品に救われました

今回は通常の『本格推理』シリーズとはちょっと違い、今まで採用された方々の2作目を纏めたもの。しかし、これがやはり苦しいものだった。
前の『本格推理⑥』の時も書いたが、一番鼻につくのが商業作家でもない人間が勝手に自分で創造した名探偵を恥ずかしげも無く堂々と登場させていること。しかもそういうのに限って内容は乏しい。魅力のない主人公をさも個性的に描いて一人悦に入っているのが行間からもろ滲み出ている。
こういうマスターベーションに付き合うのが非常につらい。もっと応募者は謙虚になるべきだ。

しかし、今回こういった趣向を凝らすことで実力者と単なる本格好き素人との格差が歴然と目の当たりにできたのは非常にいいことだ。現在作家として活躍している柄刀一氏、故北森鴻氏、村瀬継弥氏とその他の応募者の出来が全く違う。
他の方々の作品が単なる推理ゲームの域を脱していないのに対し、この3名の作品は小説になっており、語り口に淀みがない。新本格が現れた時によく酷評された中でのキーワードに「人間が描けてない」という表現がある。しかしこの言葉は真に本格を目指すものにとってはロジックとトリックの完璧なるハーモニーを目指しており、半ば登場人物はそれらを有機的に機能させる駒でしかないと考える者もいるからで非難よりも寧ろほめ言葉として受取ることにもなる。

今回これら素人の作品を読んで、この何ともいえない不快感というか、物足りなさをもっと適切な言葉で云い表せないかと考えていた。その結果、到達したのが「小説になっていない」である。
物語である限り、そこには何かしら人の心に残る物が必要なのだ。それが確かに世界が壊れるような快感をもたらす一大トリックでも構わないし、ロジックでも構わない。
しかしそのトリック、ロジックを一層引き立てるのはやはりそこに至るまでの名探偵役の試行錯誤であり、苦労なのだ。
これが私の云う所の物語なのだ。

今回のアンソロジーでは村瀬氏の「鎧武者の呪い」が最も物語として優れていた。あの、誰もが何だったのだろうと思う、野原に立てられた朽果てた兜のような物が刺さっている棒切れの正体がこんなにも納得のいく形で、しかもある種のノスタルジーを残して解明される、このカタルシスはやはり何物にも変えがたい。これはやはり村瀬氏が小説を、物語を書いているからに他ならないのだ。

今回4ツ星なのはこの村瀬氏の作品による所が大きい。これが無かったらまたも1ツ星だったろう。
頑張れ、本格。頑張れ、ミステリ。
孤島の殺人鬼―本格推理マガジン (光文社文庫)
鮎川哲也孤島の殺人鬼 本格推理マガジン についてのレビュー
No.56:
(4pt)

江戸川乱歩は十分理解できていたのだろうか?

事件は相変わらずシンプルで、偶々葬式の時に掘り起こした墓の中から身元不明の死体が発見される。死体は顔を潰され、両手首は切断されて、ない。
さてこれは一体誰だろうか?どうやって殺されたのか?一体犯人はどうしてこのような事をしたのか?
これだけである。

この犯人の背景を探る旅がこの物語では私にとっては特に面白かった。ことはフランスまでも波及し、被害者の波乱万丈な人生を物語る。
あと日本人は全然馴染みのない転座鳴鐘術、これが非常に読書に苦痛を強いるものであった。浅羽莢子氏の訳は読者にどうにか理解させようと苦心しているのでこの原因にはならない。元々が難解すぎるのだ。これがセイヤーズ作品の特色上、どうしてもトリックに大きく絡むことは間違いなく、案の定であった。江戸川乱歩はよくもまあこれを人生ベスト10級の作品だと太鼓判を押したものである。




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ナイン・テイラーズ (創元推理文庫)
No.55:
(4pt)

虎のイメージはちょっと違う

これは小説というよりも小説の体裁を借りた島田流都市論と云った方が正鵠を射ているだろう。まあ、内容としては都市論に留まらず、日本人の特質から根幹を成す行政論も展開しており、江戸の鎖国から連なる日本人の閉鎖性など、日本人の欠点をこれでもかこれでもかという所まで徹底的にバッシングしている。云わば“島田荘司の青年の主張”であり、内容としては密度が濃い。しかし、それがために同じ事の反復が目立つのもあり、いささかくどくなっている。つまり、小説にスピード感がなく、流れとしては非常に悪く、ノレなかった。

話としては、ある寺が虎を飼っており、主人公はその虎に魅せられ、世話をするようになる。ある日、大きくなった虎は檻から抜け出し、東京の街を疾走する。東京の街は当然ながらパニックになり、主人公は虎を守るべく虎と共に東京の街を疾走する。これだけである。
このトパーズという虎に島田氏は象徴性を持たし、主人公の理想はその虎に集約される。主人公はかつて若き日に研鑚し、勝ち得た肉体、躍動感が社会人となって蝕まれ、朽ち落ちていく毎日に絶望を抱いている。そのかつての姿を彼は虎の中に見、その姿が永遠である(と彼は信じている)ことに羨望を抱く。従ってこの虎はあくまでも幻想的である。そこが私のイメージとどうしても重ならなかった。
主人公の虎に抱くしなやかさ、躍動感、強靭さ、敏捷性はどうも私にはチーターのそれとしかイメージできない。虎はガタイが大きく、短足である。そこがどうも東京の街を疾走するイメージと重ならないのだ。

しかし、そんな瑕疵を抜きにしても、今回の作品はどうもつらい。主張が強すぎて、あまりに島田氏の考えに傾いており、ニュートラルではないからだ。
すまん、島田氏。今回、私はいい読者ではなかった。


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都市のトパーズ2007 (講談社文庫)
島田荘司都市のトパーズ についてのレビュー
No.54:
(4pt)

火曜の夜とか土曜の夜とか

典型的なノベルス・ミステリで火曜サスペンス劇場もしくは土曜ワイド劇場、金曜エンタテインメントの2時間ドラマの題材に使われる類いの作品である。
列車「白鳥」をテーマにした旅情ミステリで、時刻表も掲載されているため、鮎川哲也・西村京太郎ばりの複雑な時刻表トリックの作品かと思っていたが、さにあらず、時刻表が事件の解明の要素になりこそすれ、それを犯人がアリバイ作りのトリックとしていないために非常にシンプルで解りやすい内容になっていたのは救いだ。

しかし、やはりこういうのは出張の際の軽い読物を意識して作られたのだろうか、キャラクターも非常に類型的で、どの女優・男優が演じてもイメージを損なうことは内容になっている。つまり明日になれば名前さえも忘れるような主人公達であったという事。
たまにはこんな軽いのもいいか。
「白鳥」の殺人 (光文社文庫)
折原一「白鳥」の殺人 についてのレビュー
No.53:
(4pt)

予想通りの展開でした。

今度のクーンツは人間が野獣に変身するというモチーフを用いたSFホラー物。しかし、内容は意外に浅かった。

人物設定はいつものようにタフな主人公―FBI捜査官というベタな設定―に強い意志を持った女性―お決まりのように美人である―。それに加わるのが生命力豊かな少女と片手のみが動くという半身麻痺のヴェトナム退役軍人―この2人は設定としてはいいのだが、なぜか色付かない―で、彼らが力を合わせ、野獣の町となりゆくムーンライト・コーヴを救う話だが、物語があまりにも当たり前の方向に進んでいくのが面白くなく、しかもこれだけ当たり前に進むのに、680ページもの分量が必要なのか疑問。
ローマンという転換者の中にヒーローを設けたのは設定としては良かったが、なぜか魅力が無い。恐らく死ぬ間際まで負け犬根性が残っていたからだろう。もう少し工夫が欲しかったな。

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ミッドナイト (文春文庫)
ディーン・R・クーンツミッドナイト についてのレビュー
No.52:
(4pt)

雲に巻かれました

セイヤーズの長編の特徴は(まだ特徴を語るほど読んでいないがまあ現時点での気づいた点という事で)発端の事件自体はシンプルなのだが、その事件の周辺に関わる些事や各関係者の行動についてそれぞれどういう意味があったのかを解明する事で実はこんな事件だったのだという予想以上に混迷した姿を見せる所にあると思う。
実際『誰の死体?』は発端がシンプルすぎてどう発展していくのか不安だったのがあの名場面を含め、感嘆させられたストーリーだった。



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雲なす証言 (創元推理文庫)
ドロシー・L・セイヤーズ雲なす証言 についてのレビュー
No.51:
(4pt)

天藤作品にしては普通めかな

前作の時にも述べたが、天藤真氏は短編になるとミステリというより小噺のような体裁を取るようだ。「共謀者」、「目撃者」、「重ねて四つ」、「三匹の虻」などがまさにそれ。
「目撃者」は完璧犯罪がある落とし穴から崩れ去るというプロットなのだが、最後の犯人の台詞はやはり小噺だろう。

表題作は天藤の長編作品の特色である複数の主人公が事件解決のチームを形成し、事を成す形を採っており、ページ数も結構ある。前回にもあったジュヴナイル・ミステリ「白い火のゆくえ」がまたもやこの短編集の中では秀作だった。誤植切手を巡る大人・子供入り混じっての迷走や最後の意外な犯人―しかも後味が結構ビターで少年少女には大人への洗礼になるかも―と内容も豊富。

ただそれでも全般を通して「これは!!」というものには出逢えなかった。次作に期待。
星を拾う男たち―天藤真推理小説全集〈13〉 (創元推理文庫)
天藤真星を拾う男たち についてのレビュー
No.50:
(4pt)

トリックはスゴイけど…

トリックはすごかったけど内容はいまいちだな~。
主人公に魅力がないのもねぇ・・・。
からくり人形は五度笑う (講談社文庫)
司凍季からくり人形は五度(たび)笑う についてのレビュー
No.49:
(4pt)

短編というより小噺?

近代ミステリの祖としても名高いドイルだが、何故かこのようなホームズ以外のアンソロジーには秀作が少ない。海洋奇談編と名付けられた本書は、その名の通り海や航海に纏わる話(小噺?)が集められている。ホームズ譚では見られなかった海洋物を6編とは云え、物していたとは不思議な感じがし、昔は1つのジャンルを成していたのだろうと推測する。

さて個々の作品についての詳細については措いておくとして、全般的には小粒な印象。『恐怖の谷』、『緋色の研究』などの長編にエピソードとして添えられる冒険譚のようなものは『ジェ・ハバカク・ジェフスンの遺書』ぐらいなもので、最後の『あの四角い小箱』なぞはしょうもないオチの小噺でこれが棹尾を飾るとは何とも情けない。
文章も現在ではかなり読みにくく、日本語の体を成してないとも思える。我慢を強いられる読書だった。
ドイル傑作集 2(海洋奇談編) (新潮文庫 ト 3-12)
No.48:
(4pt)

最後のフィラメントの輝き

正式なシャーロック・ホームズシリーズとしては本書が最後になるだろうと思うのだが、それを意識せずとも晩年のホームズの活躍が多く散りばめられてシリーズの締め括りを暗示した内容であった。
しかもあまり云いたくはないのだが、明らかにドイルはネタ切れの感があり、前に発表された短編群とアイデアが似たようなものが多い。
代表的な例を挙げれば「三人ガリデブ」がそうだろう。これはほとんどまんま「赤毛連盟」である。
しかし、カーを髣髴させる機械的なトリックが印象深い「ソア橋」が入っているのも本書であるから、苦心していたとはいえ、ヴァラエティに富んだ短編集であることは間違いない。
特に最後に「覆面の下宿人」のような話を持ってくる辺り、心憎い演出ではないか。
シャーロック・ホームズの事件簿 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)
No.47:
(4pt)

天藤作品にしては珍しい凡作

未婚の母と若い学者のカップルが男の結婚話からついカッとなり、押し倒した時に箪笥に頭をぶつけ、死んでしまうといったお昼のサスペンスのようなシチュエーションから始まり、女性の所属する陰妻グループの面々が架空の犯人をでっちあげた所、なんとその証言そっくりの人物が現れてしまうという、天藤ならではのユニークな設定であるが、読後はなんだか消化不足というのが印象だ。

事件は3つの面から語られる。
まずは陰妻グループの視点。
それから架空の犯人そっくりの男の、真相を探る会社仲間たちの視点。
最後に殺された学者の婚約者と同僚の視点。

通常ならばこれが色々と絡まりあい、丁々発止の駆け引きなどが予想されるのだが、期待していたほどではなく、意外とあっさりと真相へと収束するのである。
そして最後はなんとも煮え切らない結末。作者が途中で何となく持て余したような感じがする。数々の作品があればこのような凡作もあるわけで、天藤には次回に期待。
死の内幕―天藤真推理小説全集〈3〉 (創元推理文庫)
天藤真死の内幕 についてのレビュー
No.46:
(4pt)

大人になってしまった自分を痛感しました。

本書はモリアーティ教授との闘いでライヘンバッハの滝から落ちたホームズがかの有名なエピソードを基に復活する短編集で少年の頃にワクワクして読んだ「踊る人形」も含まれている。しかし「踊る人形」は今読んでみるとポーの「黄金虫」の亜流だとしか読めなかった。

ここまでくるとホームズ物も当初の斬新さが薄れ、凡百のミステリと変わらなくなってきているように感じた。「犯人は二人」のように義侠心からホームズとワトスンが窃盗を働くユニークな一編があるものの、やはり全体としては小粒。ネタも途中で解る物も多かった。
こんな冷めた感慨しか持たない自らを鑑み、大人になるというのはいかに残酷かを痛感した。
シャーロック・ホームズの帰還 (河出文庫)
No.45:
(4pt)

思い出は美しいままにしておくべきだった。

初めて読んだのは確か小学4年生の時だったように思う。当時の教室に学級文庫が置かれており、その中の『呪いの魔犬』というのが同書の児童版だった。その記憶は曖昧ながらも当時胸をワクワクさせながら読んだ憶えがある。また魔犬の火を吹くトリックの正体が燐だったのもいまだに覚えていた。

が、やはり大人になった現在では本作を愉しめるほど純粋では最早なく、内容的に陳腐な印象を受けたのは否めない。ただ、私が推理小説に再び没頭することのきっかけとなった島田荘司氏のミステリに対する姿勢~冒頭の幻想的な謎を結末で論理的に解明する~の原点であるとの認識を新たにし、この作品の影響を多大に受けていることが判り、興味深かった。
ただ古典に関してはどうしても没入できない。やはり現代とは違う特殊な文体故か。次はこうありたくないものだ。

バスカヴィル家の犬 (創元推理文庫)
No.44:
(4pt)

コンピュータが主人公だからって…。

人工知能を持ち、自我に目覚めたコンピューターが己の計画から失敗までの顚末を語るという、一風変わった一人称で進められた本書はコンピューターが主人公ということもあって非常に理屈っぽく辟易した。余りにコンピューターの感情をデフォルメしたような悪ノリは食傷気味である。
また監禁物という事で今まで読んだクーンツの作品の中で最も登場人物の少ない作品だった。スーザンの顔が見えてこなかったのは致命的だったな。
デモン・シード 完全版 (創元SF文庫)
ディーン・R・クーンツデモン・シード についてのレビュー
No.43:
(4pt)

泡坂ミステリにしては実にオーソドックス

トリッキーな、または大胆な発想で読者を悦ばせることが多い泡坂作品の中ではオーソドックスなタイプ。味付としては人気俳優を登場人物に配し、その特色豊かな芸能界をスパイスとしている。

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花嫁のさけび (河出文庫 あ)
泡坂妻夫花嫁のさけび についてのレビュー
No.42:
(4pt)

作者が飽きているのが見え見えです。

『シャーロック・ホームズの冒険』が初の短編集ということもあるせいか、「まだらの紐」、「赤毛連盟」といった名作群を設えているのに対し、ここではその流れで冒頭に収められている「白銀号事件」がそのエッセンスを受け継ぐのみであって残りは特に可もなく不可もない。これはドイルがシャーロック・ホームズシリーズに嫌気がさしていた証左であろう。
そしてもはや本格物ではない「最後の事件」でホームズを葬り去ろうとしたのだが…。内容はともかく、本作はそんな作者の苦悩が窺われて興味深い。
シャーロック・ホームズの思い出 (河出文庫)
No.41: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

ホームズのトンデモ推理に思わず苦笑。

酸いも甘いも嗅ぎ分けた大人になった現在、ホームズ譚を読むと論理の飛躍性に苦笑を禁じえない。瞬時の観察でもうそれが唯一無二の絶対心理だとの賜る推理はもう穴だらけで必然性が全く感じられず、全て偶然性に寄りかかっている感じが強い。
が、ともあれストーリーの構築としては先の『緋色の研究』もそうだったが、過去の遠大なるエピソードを真相に絡ませるのは○。
ただこうしてみるとホームズと御手洗が非常にダブって見えるよなぁ。
四つの署名 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)
アーサー・コナン・ドイル四つの署名 についてのレビュー
No.40:
(4pt)

もはや悟りの境地

ここに寄せられた短編群は最早推理小説とかいう括りを超越して何か悟りきった感がある。一種別の意味で一筋縄でいかないといったような。
「ダッキーニ抄」は御伽噺だが、その他についてもほとんどそのようなテイストを秘めている。
特に表題作の「夢の密室」はどういう必然性があるのか、全く思いもつかないのだ。これは「雨女」の時にも感じたことで何処となく後期の星新一の作風を想起させる。
う~ん、この雰囲気がツボにはまるか、まだ判らない。
夢の密室 (光文社文庫)
泡坂妻夫夢の密室 についてのレビュー