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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数681件
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法制度に問題提起する社会派ミステリー。
「死刑制度」という重いテーマを「加害者」「被害者」「執行者」の立場、視点から描いてます。 この作品を読まないと一生知りえなかったような事柄も多く、自分にとってもいい勉強をさせてもらったと思っています。 現在の法制度のいたらぬ点、死刑制度の在り方について考えさせられます。 死刑制度は果たして是か否か。 この作品の一つのテーマにもなっているとは思いますが、作者は一方に肩入れした立場を取る事なく、絶妙なバランスで描いています。 個人的に、更生の余地のない犯罪者を死刑に処する事は、至極当然だとは思っています。 この作品を読んだ後もその考えに変わりはありません。 ですが、そんな単純なものではないのだと思い知らされました。 刑務官が死刑執行をするシーンが、臨場感たっぷりに描かれていました。 これまで刑務官の事など考えた事もなかったし、彼らの苦悩が痛いほど伝わってきて、読んでいていたたまれない気分になりました。 強烈に印象に残りました。 残された人間(家族)の苦悩も、読んでいて辛かった。 人間一人を殺してしまうとはどういう事なのか、心の奥底まで響きました。 ラストは、ハッピーエンドとはいきませんでしたが、みんなが少しずつでも救われた、成長できた、新しい一歩を踏み出せたという感じがして凄く良かった。 お薦めします。 |
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50年以上も前の作品です。
大量の殺人が起こるのですが、今読むと取り立てて驚かされるようなトリックはなく、何れも小技といえる程度のものです。 しかも親切なことに「その時**は**に気付かなかったが、後になって考えてみると**だったのだ」のように、時々「天の声」が伏線の在処を教えてくれたりします。 昨今読者を驚かせる事ばかりを念頭に置き、どこに書いてあったかも思い出せないような些細な伏線を伏線とする作品が多い中、間違いなくフェアな作品です。 ラスト近くにいきなり名探偵が登場してドタバタと一気に伏線を回収していくのですが、張られた数多くの伏線に対して、強く印象に残っているので、混乱する事がありません。 伏線を、読者が納得行くように、分かりやすく、きっちりと回収してきれているという点で、本格推理モノとして高い評価を受けて当然の作品だと思います。 ただ探偵の登場が遅く、余りに名探偵過ぎる上に、人間的な描写も少なかったので、鮎川作品初読の自分は若干戸惑いましたが・・・ そしてこの探偵を引き立てるためなのか、私がこれまで読了した本の中で、警察の無能さは群を抜いています(笑 そして、やはりこれは仕方のない事かも知れませんが、何せ50年以上も前の作品ですので、どうしても古めかしさを感じずにいられませんでした。 特に、男女間の恋愛及び結婚の在り方やそれに対する考え方が現在とは大きく違っています。 これが、犯行の動機へと繋がる訳ですが、現在人には到底理解し難いですね。 あと視点が一定しない事も凄く気になりました。 ころころと変わるため、深い心理描写がなく、表面的なものにとどまり、連続殺人が起こっている割に、現場の緊張感、恐怖感、焦燥感などが伝わってこなかったのが残念です。 ただ、もやもやしたものも残らず、後読感も悪くありません。 テンポもよく非常に読みやすい作品です。 50年前の「本格」作品。 読む価値ありだと思います。 お薦めします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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【ネタバレかも!?】
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読み終わった後、タイトルに大きな意味があった事が分かります。
作中における、第一幕、第二幕なんてのも、「うまい!」と納得させられます。 加害者は、法的に罰せられる事はないですが、心に罰を与えられます。 東野氏は、人間の内面にある醜く、黒い部分または弱い部分にスポットを当てるものが多く、この作品における加害者もそれに該当する人物といえます。 一方被害者は、最愛の人に裏切られながらも最後までその人を庇います。 しかも彼女が抱えていた身体的障害もあり、健気で非常に切ない気分にさせてくれる人物です。 本来深く感情移入できるはずの人物なのですが、この作品ではこの被害者に対する描写が少なく、同情の対象として深く心に残らなくなっています。 もう少し彼女の事を深く掘り下げて書いて欲しかった。 そうしたらこの作品にもっと違った印象を持てたのではないかと思います。 最後の「どんでん返し」にばかり目が行く作品になっており、何か勿体無い気がしました。 当方既読の東野作品で、名作として強烈に感銘を受けた作品に共通するのが「ページ数が多い」という事で、個人的にそういう先入観があります。 この作品は、本来もっと名作となり得た題材に対して「ページ数が少な過ぎる」と感じています。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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綾辻氏初のジュヴナイルを「館シリーズ」にぶつけてきた事にまず「びっくり」です。
ただ、お祖父さんと母親と子供たちの関係や、いじめや虐待など、正直子供に読ませたい内容では無いですね。 暗黒館の殺人を読んだ直後に読んだので余計に「短篇」という印象が拭えません。 おまけに、ジュヴナイル故の「縛り」の影響で、従来の「館シリーズ」が放つ独特の重厚感が感じられません。 島田潔も、シリーズ内における本来の役割を果たしていない訳ですし、これを「館シリーズ」の1つとして数えるのにはやはり若干抵抗があります。 ただ、作品を通して、この作品を支配する独特の雰囲気をもたらしているのは「人形」 本家「人形館の殺人」よりこちらの方がその名に相応しいと思っていたりはします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
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定番とも言える孤島、城に、密室殺人、バラバラ殺人。
最後の数十ページまではよくある本格物ミステリーです。 私がこの作品を読んだのは、ミステリーを読み出して初期の頃でして、当時この手のトリックに全く免疫がなかったため、最初読み終えた時には何が何だかさっぱり分からず、まさに「はぁ?」状態で、ネタバレサイトのお世話になった後は、暫く「怒り笑い」が止まりませんでした。 しかし、更にえげつない同系のトリックを使った作品に数多く出会うにつれ、現在では評価が変わっています。 限りなくアンフェアに近いんだけど、まぎれもなくフェアですね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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某所のレビューを見ても、3・11以前と以後では評価がかなり違いますね。
この作品が書かれたのは今から10年以上前です。 作品中で、「軽水炉の建屋のプール内の使用済燃料が弱点だ」と指摘されています。 東野氏は理系出身とはいえ、専門分野という訳ではないでしょう。 大量の取材、調査に基づいての執筆だったと思いますが、だとしたら、有識者の間でその弱点は、10年以上も前から既知の事実として存在していた事になります。 福島はその弱点をモロに突かれた事になりますが、東野氏の先見の明というより、弱点を弱点のまま改善できていなかったという事に驚きました。 今後も「100%の安全」を期待するのは難しいのだろうと感じました。 また、あれ程の切迫した状況に陥っても、「原発を停止する」と判断できない政府の対応から、原発に頼らざるを得ない現状そして原発の必要性を思い知らされた感じです。 安全性を主張する(せざるを得ない?)政府、煽るマスコミ、反対するごく一部の国民、そして無関心な大多数の国民。 皆それぞれ無責任な部分はあるとは言え、この中に「悪人」はいないと思う。 今作のテロリストにしても悪人だとは思えない。 問題があるとしたら、他人事のように思っている「無関心な大多数の国民」だとは思う。 私もその中にカテゴライズされるが、じゃあどうすればいいのかが分からない。 「搭乗券を買った覚えはないかもしれないが、日本国民は原発という飛行機にもう乗ってしまっている」 全くその通りだと思うが、どの立場の人間の主張もある意味正しく1つの正解を見い出す事ができない。 色々考えさせられた作品です。 |
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中年詐欺師二人、女スリと何もしないその姉、そしてマジシャンを廃業した姉の彼氏。
前半は、そんな面々の共同生活が描かれます。 各々辛い過去を抱えていますが、暗さはなく、人間性もあり、詐欺を生業とする彼らの活躍に感情移入出来てしまいます。 ただ最後の「作戦」決行の時点で、既に全体の3分の2程度過ぎており、キャラクタ紹介にしては長すぎる、「これではまるで家族ものではないか」とすら思ったのですが、読み終えた時点で色々思い返してみると、何気なく交わされていたちょっとした会話にも、何か登場人物それぞれの人間味や暖かさが感じられます。 非常に効果的な描写になっている事に気づきました。 「カラスの親指」というタイトルからは、ノワールな印象を受けますが、全く違う。 そのタイトルに込められた思いに胸が熱くなります。 最後の最後に「どんでん返し」があります。 読者だけでなく主人公すら騙されてしまうのですが、嫌な思いなど微塵も感じません、清々しい気分です。 これまで読了した作品の中で、後読感は群をを抜いて最高です。 こんなハッピーエンド見た事ありません。 お勧めです。 |
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冒頭から、ある青年が記憶喪失である事に気付く場面という、急激な立ち上がりで始まるこの作品だが、その後の展開がやけにスロー。
ある少女と出会い、その少女との暮らしに没入していく主人公。 その描写が余りにも長々と続くので、さすがに冗長さすら感じたのだが、最期まで読めば、この二人のドラマを描き切る事に納得、感動さえ覚えた。 御手洗潔最初の事件、この作品には最後「サプライズ」「大どんでん返し」があるのだ。 ある意味ご都合主義的とも取れる設定、強引な展開など、その「サプライズ」の前に全て吹き飛ぶのである。 そして友と認めた男のために、騎士よろしくバイクで疾走する御手洗の優しさ、かっこ良さにしびれ、感動するのである。 御手洗潔シリーズを語る上では「絶対に」欠かせない作品である。 「占星術殺人事件」よりもこちらの方が好きだというファンが多いのも頷ける。 私は「占星術殺人事件」「斜め屋敷の犯罪」の次にこの作品を読んだ。 これは幸運な事である。 |
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「動機なんて他人に説明できて、理解してもらえるくらいなら、人を殺したりしない。そうではありませんか?」
作中における犀川の言葉だが、犯人の動機について「分かる訳がない」とのたまっている。 後書きを読むと、このS&Mシリーズは、動機を明確にしないミステリーであるらしい。 これまでの3作では、そうは感じなかったが、確かにこの作品からはそんな印象を持つ事が出来た。 犯人の思考はかなり特殊であり、まさにタイトルの如く「詩的」で「私的」だ。 犯人がこの連続殺人を行った動機は、犯人が自身の中だけに持つある意味「妄想」ともいえるもので、こんな「妄想」は読者にはとうてい追従できない。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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いわゆる「新本格」と呼ばれる流れの草分け島田荘司氏のデビュー作にして、氏をもってしても「超えられない壁」と評する名作中の名作。
という事で手に取りました。 島田氏の作品で最初に読んだのがこの作品でした。 多くの方が言われていますが、私も、冒頭に配されている手記が何とも読みづらく途中挫折しそうになりました。 「名作」という前知識がなければ、その段階で投げ出していたかも知れません。 「奇跡の1行」で鮮烈なデビューを飾った綾辻氏に対し、その師である島田氏のデビュー作は、猟奇的でありながら緻密に計算された犯行トリックが秀逸な事は勿論のこと、御手洗、石岡のコンビもまさにホームズ、ワトソン、しかも本家に劣らないキャラ設定がされており魅力的、そしてそのワトソンが読者を大混乱させて、作品に奥行きを与えている。 いきなりの完成度の高い作品かと思います。 デビュー作の冒頭に、あんなリーダビリティの低い手記をもってこれるというのも凄いです。 別格。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
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