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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数681件
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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「想像は人を喰らう」
という作中の言葉に示される通り、ちょっとしたボタンの掛け違いが悲劇を生むのですが、現実にも起こりそうな話で怖いです。 第3者の立場から見れば、このような思い込みは、時に間抜けにすら感じるものですが、 血の繋がらない他人を片親に持つ2組の兄妹、兄弟。 ある日突然、自分達と(戸籍上では家族である)他人との仲介役であるはずの存在(血縁関係がある方の親)をなくしてしまう。 また彼らが全て物事の分別に未熟な未成年である事。 ある意味特殊な人間関係が複数存在するという違和感こそありますが、読者に「思い込みも已む無し」と納得させるだけの設定になっています。 タイトルの「雨」に象徴される通り作品を通して非常に暗いです。 視野を狭め判断を誤らせる大雨。 そんな雨が流れを作り、一方の流れがもう一方を巻き込み、どんどん低みへと濁流となって流れていき、止める事ができない。 未熟な精神が生み出してしまった化け物ともいえる濁流に、少年達は為す術もなく追い詰められていきます。 作者が読者を騙すテクニックに優れた作家である事は承知していながらも、読中は重苦しさを感じずにおれません。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
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伊坂さんの作品の中では、珍しく世界観も日常的であり、気楽に読める作品ではないかと思います。
何しろ、主人公達が難しい話を始めようものなら、 「なんてことは、まるでない」 と、話の流れを打ち切ってしまうのですから(笑) 大学生達が繰りなす青春小説としての体裁をとっていますが、タイトルの砂漠に対して大学時代をオアシスと比喩しているように、作者は大学生をただ生暖かく見守っているようには思えません。 大卒社会人と学生さんでは、読後の印象が違うかもしれないですね。 個人的には、大学生にお薦めしたい本です。 今作にも、お馴染みの型破りキャラとして西嶋という男が登場します。 西嶋は「あのね、俺達がその気になればね、砂漠に雪を降らす事だって、余裕でできるんですよ」 と嘘ぶく訳でなく、真剣にそう語る男。 これまでの伊坂作品において、こういう型破りキャラは、読み手にナイスガイという印象を与え、伊坂自身も愛し「こういう奴いたら最高でしょ」的なメッセージを発していたように思います。 確かに彼は、風貌はいまいち冴えないようですが、行動や思考は、滑稽とも思えるが一貫しており、キャンパスNo.1の美人を彼女にし、幾度と無く奇跡を起こして友人の危機を救います。 各所のレビューでも軒並み「最高」との評価が多いようですが、どうなんでしょう。 私は、伊坂さんは彼を「ダメ男」として描いている気がしましたが。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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乃南アサさん初読。
文庫本巻末の「解説」を読むと、「男社会で差別的な扱いを受けながらも頑張る女性」を描いた作品という事になるのでしょうか。 読中はそこまで「反女性蔑視的」ニュアンスは感じなかったのですが、もし「解説」にあるような意図が作者にあるのなら、正直「浅い」と思いました。 この程度のハラスメントなら、男同士の関係、警察組織でなくともでも当然のように存在しますし、ましてや、彼女は男以上の活躍の場を与えられている訳です。 何故その役目を獲得できたのかという十分な描写もありませんし、説得力がないというか・・・ 単に男社会で男勝りの活躍をする(しかも何故そのような活躍ができるのかという苦労や努力、また能力的裏付けに乏しい)女性の格好良さを描いた陳腐な作品に読めてしまいます。 「姫川玲子」の苦悩の方がまだリアリテイがありますよ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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山葉圭史という主人公の名前を見た時「翔んだカップル」を思い出すようなら相当のおっさんでしょう(笑)
連作になっている短篇集で、「幽霊人名救助隊」と同路線の作品かなと思います。 伊坂幸太郎氏の「死神の精度」に似ている、というレビューをよく見かけます。 私も、伊坂さんを意識して描かれたのではないかなぁという印象を少し持ちました。 作品を通して語られる「未来予知」というシュールなテーマも、どことなく伊坂作品に似た印象を与えてしまいます。 実際作者にそういう意図があったのかは定かではありませんが、ただ、読み手に伊坂さんを連想させたら「負け」でしょう。 幾重もの伏線が張られていて・・・といった趣向の作品ではないと思います。 「伊坂と比べると・・・」的な評価をされてしまうのではないかと危惧します。 「似て非なるもの」として読むべきだと思うのですがどうでしょうか。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「僕らは友だちになれるだろうか」
同い歳の父親に出逢えたら友だちになれるかなんて考えた事もなかったけど・・・なれないような気がするなぁ(笑) 主人公と危篤状態の父、主人公とそのひきこもりの息子、そして不思議なワゴンを運転する事故死したはずの父子。 この三組の父子がそれぞれ抱える「後悔」を描いた物語です。 不思議なワゴンに乗り、現在と過去を行き来し後悔をやり直していくのですが、面白いのは、やり直しが現在に反映されないという点です。 現在の自分のターニングポイントとなった地点に降り立ち、それを目の当たりにする事により、何がいけなかったのかを確認します。 現在に戻っても状況に変わりはないのですが、それを打破すべく新しい一歩を踏み出すという、希望の予感に満ちたまとめ方で、非常に爽やかな読後感です。 昔、これに似た設定の映画がありましたが、こちらの方が日本人の感性に合っているように思います。 主人公と妻のくだりも描かれますが、ここが18禁風味で残念。 ここさえなければ、学校の推薦図書にもなりそうな良作です。 惜しい。 |
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中編を1本含む短篇集という事で、ある程度は仕方のない事だと思うが、
やはり、舞台となる閉鎖された村や家に受け継がれる言い伝え等、事件の背景となるものであるとか、歪な人間関係を描き切れていない様に思う。 このシリーズの場合、非現実的とすら思える事象を現実的な解釈に結びつけ回収する訳で、そこに強引だったり、腑に落ちない点が多くなるのもある程度やむを得ない。 そんな足りない部分を補って余りあるのが、作品が織りなす禍々しい雰囲気だと思っているので、やはりこのシリーズは舞台設定こそが命。 翼をもぎ取られた・・・という印象が拭えない。 なら表題作の中編は、それなりに読めるのかというと決してそうではなかった。 その約3分の1を要して、「こっくりさん」と「密室の分類」に纏わる蘊蓄が語られる。 「こっくりさん」はまだいいとして、三津田氏の作品で長々と「密室講義」は読みたくなかったなぁ。 冗長感が半端なかったが、それ以上に違和感ありありだった。 また、短編3作では見られなかった、言耶の一人ツッコミ一人ボケ推理がまた・・・これは中長編でのお約束なのだろうか。 思うのだが、全部自分で推理して否定してまた推理して・・・だから彼の推理には、テンポがない、切れがないのではないだろうか。 名探偵でない事は自覚しているようだが・・・ シリーズを通してワトソン役に抜擢させても違和感のない登場人物が何人かいるのに何故配置しないのだろう。 不思議でならない。 |
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途中まで、ジュブナイル青春小説という印象を持ちながら読み進めたのですが、なんのなんの。
上下巻合わせて千頁超えのかなりの長編小説であり、中だるみするかと思ってすらいたが、なんのなんの。 気がついたら、この世界観にどっぷり浸かっていた、そんな感じでした。 主要登場人物が8人と多目。 彼らは、優等生であり受験を控えた高校3年生という事もあり個性的とまでは言えませんが、それぞれに背負わなければならない過去や悩みを抱えています。 忘れていた誰かの事を思い出す度に一人ずつ消えていくのですが、そこに無慈悲さはありません。 自分の番を迎えた時、彼らは自身の悔やむべき過去や内面の弱さと対峙します。 この時、彼らは主人公なのです。 作者は全ての各登場人物をとても大事に丁寧に描いていますね。 作品の構成上、次に消えてしまうのは彼(彼女)だなと分かってしまうのですが、何か寂しい気持ちになって読んでいたのが印象的です。 これだけ多くの登場人物に感情移入できた作品も珍しい。 正直、ミステリだという事も忘れて没頭していました。 ミステリの部分も、仮想現実の世界という非現実的な前提こそあるものの、そこにさえ納得できれば、数多く散りばめられた伏線もその回収の方法もお見事。 何より、中後半までの流れから、これだけ読後感のよい作品にまとめあげているのはさすがです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「F」から始まるS&Mシリーズの最終章。
「Insider」に対する「Outsider」、名作「F」と対になると考えて良い作品。 800頁超えの長編、そしてあの真賀田四季が再登場するとなれば、読み手のこの作品に対するハードルも必然的に上がってしまう。 そんな期待感満載の作品だったが、個人的には、それに応えてくれるものではなかった。 正直、この作品に対する不満は結構ある。 しかし、このシリーズを評価順に並べろと言われると間違いなく「F」の次に置くだろう。 自分でも不思議でならないが、巷の書評サイトで言われる通り、これがまさに「真賀田四季効果」なのかと思う。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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教師のサイコパスものです。
主人公であるサイコパス蓮実が、学校を舞台に大量殺戮を行うのですが、彼にとってこれが初犯ではありません。 これまでに、学生時代の親友、恩師、両親といった、最も親しくあるべき人達を殺してきています。 とんでもない殺人鬼です。 蓮実はIQが異常に高いという事もありますが、苦悩する場面というのが殆ど無く、決断が速いです。 物語に中だるみする箇所もなく、次から次へと矢継ぎ早にという表現がぴったりで、読み手も休む間がありません。 上巻・下巻に分かれる結構な長編作品ですが、意外と一気に読めてしまうのはそのためだと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「政治への無関心に対する警告」、もっと巨視的に言うと「流されず自分の考えで判断する事の大切さ」がテーマかと思います。
不景気だったり失業率が過去最高を記録したりと不安だらけで先行きの見えない社会情勢を打破するべく登場したカリスマ政治家・犬飼。 ムッソリーニに比喩される彼の元、大衆は一斉に同じベクトルを示し大きな流れを生み出す。 超能力を有する兄弟が、そんな状況に不安、疑問を感じ、立ち向かっていくという物語。 その超能力ですが、それを武器に、破茶目茶に大暴れする訳ではなく、兄が「他人に自分の意図通りの事を話させる腹話術」、弟が「10分の1以下の確率勝負に必ず勝利する」という、巨大な流れに対し一個人が何ができるのかと考えた時に如何にもショボイのですが、これが何とも伊坂氏らしい。 持っている能力も違うが、同じ方向を向きながらも、兄が「考える人」、弟が「考えない人」と、取り組み方が正反対なのも面白い。 また、安藤に相反する考えの持ち主として、ドゥーチェという店のマスターを登場させているが、二人の会話を通して数多くの伊坂語録を登場させます。 中々読み応えがあります。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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