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陰気な私は地球を回さない さんのレビュー一覧

陰気な私は地球を回さないさんのページへ

レビュー数209

全209件 81~100 5/11ページ

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No.129: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

なんだか物足りない

5人の男女が目を覚ましたのはとある病院。これがまた「仮面病棟」と全く同じ構図になっていることに、表紙をめくって驚きました。
要所要所に仕掛けられたミステリ的仕掛けは存分に楽しめましたが、作風そのものがチープな印象が拭えません。いきなり病院に閉じ込められて、そこからの展開の不自然さや、あっという間に謎を解決してしまうことはあまりにも簡略し過ぎだと思います。リアル脱出ゲームがどうのこうののくだりは、なんじゃそりゃとたまげてしまいました。スピード感を大事にしているのか、もっと丁寧に書いてほしい部分が多かったのが残念でした。
時限病棟 (実業之日本社文庫)
知念実希人時限病棟 についてのレビュー
No.128: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

私はピエロでした。

一見重そうなあらすじに、暗い物語。しかしその中に見出せる優しさ。それらが合わさることで独特な雰囲気を醸し出していて、かつグイグイ引き込んでくれる魅力的な物語でした。正直、読み始めて中盤までは、「シャドウ」よりも後に刊行された道尾氏の某作品と面影が重なりましたが。

▼以下、ネタバレ感想
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シャドウ (創元推理文庫)
道尾秀介シャドウ についてのレビュー
No.127:
(4pt)

期待はずれ

西澤保彦氏らしくないです。こんな作品も書くんだと驚きました。途中までは作者本人の実体験を基にしているのかと思わされます。

中学高校時代の吹奏楽部のことから、大学時代はもちろん中年に至るまでをあっという間に触れていきます。その中で、中学の同級生の死体発見と、そこで見つかったかつて盗まれた楽器とが絡んできて一体どうなるのか、期待はしましたが正直裏切られました。
ミステリ色はあくまで弱めです。それよりも人間としての自意識や振る舞いについてしっかり書かれた作品だと感じました。
黄金色の祈り (中公文庫)
西澤保彦黄金色の祈り についてのレビュー
No.126: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

ミスマッチ

殺人を犯してしまったことを隠すために目撃情報をでっち上げたら、それにそっくりな人が現れてしまうという物語の入り、なんとも魅力的です。
複数のグループがそれぞれ事件の真相を追い求めていきながら、次第に絡み合ってくるのは爽快感がありましたが、どうも作風と合わないように思います。話の構成がしっかりしていて面白かったんですが、ユーモラスな文体と雰囲気にズレを感じずにはいられませんでした。個人的にはもっとハードボイルドな作風だったら楽しめそうです。消化不良感が否めません。
死の内幕―天藤真推理小説全集〈3〉 (創元推理文庫)
天藤真死の内幕 についてのレビュー
No.125: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

御手洗潔と島田荘司のファンになる

収録されている4つの短編、どれも面白かったです。「疾走する死者」は石岡視点じゃないのが、いつもと違って楽しく読めました。「数字錠」なんかは今後の御手洗潔シリーズの読書にも影響を与えてくれそうで、別の一冊を早く手に取りたく思っています。
でも1番面白かったのは「新・御手洗潔の志」。作品の映像化に対して述べるのかと思いきや、どうやらそこが中心でもない。島田荘司氏が日本について?なかなか言いにくいことを声を大にして言ってくれています。非常に共感しました、と同時に教訓としてこうは自分はならないぞ!と言い聞かせる内容でした。作家としてというより1人の人間としてファンになりそうです。
御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)
島田荘司御手洗潔の挨拶 についてのレビュー
No.124: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

何が悲劇かと言われると

えっ??ここで終わり!?
クイーンの作品はどれも意外な犯人と結末にいつも驚かされるのですが、「Yの悲劇」もまた然りでした。古典作品なので誰よりも先駆けているのに、こんな作品読んだことない!と結末に驚愕しました。言葉を矛盾させると、斬新です。

ストーリーや構成はとっても見事だったんですが、考え方の古臭さや前作ほどドルリー・レーンが魅力に欠けていた点が若干マイナス。

▼以下、ネタバレ感想
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Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫)
エラリー・クイーンYの悲劇 についてのレビュー
No.123:
(5pt)

独特の表現が小気味良い

チャンドラーを初読。チャンドラーが本格推理を批判しているように、本格派には現実感がなく登場人物が生き生きとしていないと言うならば、まさにフィリップ・マーロウは魅力的な人物で生き生きとしているだろう。ハードボイルドというと「固ゆで」ですから口を閉ざした寡黙な人間を私はイメージしていたのですが、とっても剽軽でおしゃべりな印象を受けました。余計なことばっかり言ってるなと。それでも恐怖に立ち向かう強い心の持ち主が格好良かった!

一方で禅問答のような内容は非常にわかりにくい。細かな謎を提示しておいて、それを数ページに渡って引っ張るのでなかなか頭に入って来ない。場面の転換も一気に飛ぶので、行間を補うことが大変でした。似たような悪玉が多くて区別が付きにくいし、何をしているのかさっぱりなことも多々ありました。
とはいえ、シリーズで続くフィリップ・マーロウの作品は他も読んでみたいと思っています。英語を直訳したような翻訳も、チャンドラー独特の表現なのかわかりませんが、味があって軽妙洒脱に感じられました。次回作以降に期待です!
大いなる眠り (創元推理文庫 131-1)
レイモンド・チャンドラー大いなる眠り についてのレビュー
No.122:
(8pt)

テロについて考える一冊

テロが頻繁に起こるようになった日本を描いた本作。序盤は心理描写を通して、テロに対していろんな考え方があるんだと学ばされました。弱者を見捨てている社会に反発を感じて少しだけテロリストに心を寄せながらも、関係のない人を巻き込むことに憤りも感じる。でもその弱者が存在することも仕方がないのかもしれないし、自分には何もできないといった色んな葛藤が存在しました。広い視野や他者の考え方に触れるのが読者の醍醐味だと思っているので、それが良かった点です。それが段々と中盤から終盤にかけて、エンターテイメント色が強くなって行く印象を受けました。そのおかげでまとまりが足りないようにも思いますが、話の面白さは格段と加速して行きます。パズルのピースがはまっていく感覚という表現が相応しい一冊ではないでしょうか。

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私に似た人
貫井徳郎私に似た人 についてのレビュー
No.121:
(7pt)

独特の世界観

裏表紙に書かれている粗筋に惹かれて購入。余計なことを知らされずに読んでしまったほうが、より一層楽しめたのかなと思うとちょっと残念。

個人的には1番のお気に入りは「終の童話」です。村人が石にされてしまうお話です。なんだかファンタジー要素溢れる物語で、こういった作品は今まで読んだことがなかったのですが、意外とのめり込めるものなんだなぁと。しっかりとミステリ要素を含ませつつ、人情味あるストーリーがこの世界観と喧嘩しないのが素晴らしい。

どの作品もも世界観を楽しむのがオススメです。「妖精の学校」なんかは、最後まで読んでも意味がわからない、思わずネット検索しました。それでも楽しめました。思ってた世界観と違う…どれもそんな感想を持ちました。
私たちが星座を盗んだ理由 (講談社ノベルス)
北山猛邦私たちが星座を盗んだ理由 についてのレビュー
No.120:
(6pt)

横浜にて

初めての鯨統一郎作品です。以前横浜に住んでいたのでタイトルに惹かれて手に取ってみました。表紙をめくるとみなとみらいの地図が載っていて懐かしさに購入を決断。なるほど、真面目には事件を解決しないぞ!といったユーモラスな姿勢がうかがえました。お堅く湿っぽい作品とは対極にあるので、たまには気分転換にいい一冊でした。

全8話の連作短編であり、毎回おきまりのパターンで話が進みます。これが癖になりました。よくわからないが横浜の名所に集合し、殺人現場に向かい、そこにはダイイングメッセージが!時にはダイニングメッセージだったり、ダイイングマッサージだったり。意外といっては失礼ですが、ミステリとしてはしっかりした内容だと思います。
みなとみらいで捕まえて (光文社文庫)
鯨統一郎みなとみらいで捕まえて についてのレビュー
No.119:
(6pt)

あまりにも異質すぎてわかりにくい

ノルウェーの森に住む女性の目には鍬が刺されて殺害されていた。精神病院に入院している青年エリケは、殺人事件現場で目撃されていた。その後、彼は銀行強盗の人質として捕らわれていることが判明する。このあらすじに惹かれて購入しました。
結論から言うとミステリの色は少し弱い気がします。大きな山場や波がなく、平坦なストーリーです。所々意味がわからず、そのまま説明もなく終わってしまう内容がいくつかあったり、これはなんなんだと。しかしそれを批判するような作品でもないように思います。不気味?不可思議?な雰囲気の作品で、謎を謎のまま残しても味があるというかなんというか。とにかく他の作品にはない雰囲気でした。
わかりにくかったので、この作品の細かい解説とかあったらなぁなんて思ってます。
晴れた日の森に死す (創元推理文庫)
カリン・フォッスム晴れた日の森に死す についてのレビュー
No.118: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

どんでん返し、そしてグロテスク

やっぱり西澤保彦氏の作品は面白い。本格物を得意とする彼の作品は明らかに他の本格作家と異なります。本格物といえば、淡々と進み謎解きにばかり重点を置いて、それ以外を御座なりにしている印象が拭えない物が多いです。けれども、彼の作品は必要十分に登場人物の心情を丁寧に描写してくれているので、作品に対するのめり込みが全然違います。本作も魅力的なキャラクターが際立っていてとても楽しめました。

「彼女が死んだ夜」この設定が奇抜で良かったです。飲み会から帰宅したら、知らない女が倒れている。明日からは待ちに待った海外留学が始まり、警察沙汰になりたくないがために友人に死体を処分させるという始まり。
変化球的な内容で楽しませてくれるのかと思っていたら、まさかの結末。二転三転、いや一体何回驚かされるんだと。真相含め、とにかく意外性に満ちていました。

主人公がアルコール依存気味であったり、女性に滅法弱い不思議な留年生だったりユーモラスな印象もありますが、一方で身近でありふれた世の中の闇の部分も丁寧に描かれています。そういう意味では「グロテスク」な内容だと思います。「男は所詮、女性のことを排泄用の便器くらいにしか考えていない。」こういった科白が出てくることにも衝撃を受けましたが、著者の様々な主張を感じました。そんなに世の中フェア(綺麗)じゃないんだよと。

▼以下、ネタバレ感想
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彼女が死んだ夜 (幻冬舎文庫)
西澤保彦彼女が死んだ夜 についてのレビュー
No.117:
(5pt)

インドア派とは対角に位置する。

まず始めに断っておきたいのが、この作品自体がミステリ作品ではなく、あくまで純文学であり本来の評価が話の面白さによるものであるべきではないということです。自然を見事に描写した美しい文体で情景を豊かに描いており、私自身全く鳥や自然については詳しくないですが、それでも情景がしっかりと浮かびました。
この作品には作者の人柄がよく表れていると思います。短編集として一貫されているのは鳥が出てくること。自然に触れることやその美しさに著者が深い関心を持っていることがわかりました。対して完全にインドアな私としてはあまり興味を持てず、結果としてうわの空になりながら読んでしまいがちでした。

個人的には、第四話の「ホイッパーウィル」が印象に残りました。もと軍人の日系アメリカ人であるケンが警察と共に脱獄囚を追という話。日系であるがゆえに人種差別を受け、インディアンに間違われるといった心情が精緻に描かれています。
ダック・コール (ハヤカワ文庫JA)
稲見一良ダック・コール についてのレビュー
No.116: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

ロマンある一冊

綺麗にまとめられた一冊だと思います。時計館を建築してそこに込められた意味、犯人は時計館をどのように使うのか。この2つで楽しめるところが館シリーズですね。いつも通り楽しく読めたんですが、決定打に欠けたというかシリーズ他作品ほどの満足感は得られませんでした。

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時計館の殺人<新装改訂版>(上) (講談社文庫)
綾辻行人時計館の殺人 についてのレビュー
No.115: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)
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凄すぎる、ドルリー・レーン

高濃度のニコチンが付着した針の刺さったコルク球に触れて被害者は亡くなるという斬新な手法で事件は始まり、そして第2・第3の事件が起こる。電車の中や船の上で殺人は起こるので、正確な時間や諸条件から容疑者を絞ることができる。まさに本格派の楽しみが詰まった作品でした。
正直、ドルリー・レーンの頭の回転には全く着いていけませんでしたが、推理を呼んでなるほど!と思うことがいくつもありました。キャラクターのかっこよさが際立っていました。

▼以下、ネタバレ感想
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Xの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫)
エラリー・クイーンXの悲劇 についてのレビュー
No.114: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

バラバラのようでバラバラでない。

西澤保彦氏のデビュー作であり、匠千暁らキャラクターが初登場の作品である。時系列で言うと次作以降は学生時代に戻るようです(本作は社会人であったり、大学生であったり)。次作以降が楽しみです。

9つから成る話はどれもバラバラ殺人に関するもの。よくこんなに思いつくなぁ、デビュー作でこんなにもバラバラ殺人ばかり書かなくても、と驚きを隠せません。特に最初の物語の真相については驚嘆しました。合理的理由を明確にしてくれます。
ともあれ、1つ1つの話を伏線にしてしまうあたりが凄まじいです。その伏線が面白いんですが、それが「解体諸因」の一部分に過ぎないとは。
解体諸因 (講談社文庫)
西澤保彦解体諸因 についてのレビュー
No.113: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

館シリーズの異端

今回はクローズドサークルじゃないのかと、その新鮮さを楽しみに思って読み始めました。実際、今作品は全く別物と考えても良いでしょう。シリーズのファンからすると納得いかない人が多いのも頷けます。ともあれ私は好きでした。おどろおどろしい雰囲気を醸し出した文章もさることながら、過去に何かを抱えていることをちらつかされ、これは一体何なんだ!?と興味を煽られました。

▼以下、ネタバレ感想
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人形館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫 あ 52-21)
綾辻行人人形館の殺人 についてのレビュー
No.112: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

なぜ満足できなかったのか

読んでいるときは確かに面白く、ストーリーにのめり込みました。だけれども、結末を読んでからは喪失感が漂っています。いろんな伏線を張り巡らせながら事件を複雑にしてあり、何がどうなっているのかハテナマークだらけだったのが、ポンとこれが結末ですと与えられたら最後何も思うことはない、そんな作品でした。
バスカヴィル家の犬 (創元推理文庫)
No.111: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

人情物として読みたい

天藤真氏の長編デビュー作である「陽気な容疑者たち」。倒叙作品かと勘違いしていましたが全く違いました。
この作品は被害者の悪党っぷりを描くことに情熱を注いでいるので、被害者の辰造に殺人の動機を持つ可能性のある人々に感情移入させられました。
非道な人物描写もありながらも、天藤作品らしいユーモア溢れる軽やかさも兼ね備えていました。

本格ミステリの作品であると著者自身が明言している作品でもありますが、問題の屋敷がイメージしにくい。トリックもあまり現実的でないようにも思います。
本格派というよりは、人情物では一級の作品であり、そのように楽しむのがオススメです。

▼以下、ネタバレ感想
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陽気な容疑者たち―天藤真推理小説全集〈2〉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
天藤真陽気な容疑者たち についてのレビュー
No.110:
(6pt)

掏摸というタイトルでは柔らかすぎる

掏摸を生業とする主人公が、腐れ縁から裏社会に加担させられる様子を描いた作品です。タイトルからは社会で落ちぶれた人間が必死に生きる姿を描いてでもいるのかと想像しましたが、もっと遥かに暗い話でした。ただなんともいいところで終わってしまい、これからどうなるの?と続きが気になりました。200ページ弱と短く、書ききっていないところは読者各々で補完して読めば良いのでしょうが、あれは何だったの??ともやもやすることが多々ある終わり方でスッキリとしなく、後味は悪いです。
掏摸
中村文則掏摸 についてのレビュー