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陰気な私は地球を回さない さんのレビュー一覧
陰気な私は地球を回さないさんのページへレビュー数209件
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読んでいて、直木賞に選ばれそうな作品だなぁと直木賞をよく知りもしないが勝手に思っていた。
途中の描写にストーリーの本筋に関係のないものがあると、その暗示を深く考えてしまうのは私の読書の仕方であるが、この作品もそんなところが非常に多い。単に情景を捉えたものではなくて、確実に主人公の精神とリンクしたものが目立つ。祖父の髭が白くてベッドの白さと重なってよく見えないシーンはとりわけ印象的であった。まだ小学生である子供故に見える景色であったり、捉え方であったりがとても瑞々しく、こういうことってあったなぁと振り返りながら小学生時代を懐かしく思った。 小学生特有の狭い世界というのは十分に表現されていたが、ストーリーも同様に幅のないもので退屈ではあった。ヤドカリ焼いての繰り返し。なんだかとても美しいのだけれど、面白みは薄かった。 |
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私の中でお気に入りの作家となりつつある西澤保彦氏であるが、まだまだ読んでいない作品、シリーズの方が圧倒的に多い。彼の代表作とされている「七回死んだ男」を遂に読むことにした。結論から述べると、今まで読んできた他の作品の方が面白かったという印象だ。
ずっと同じテンポで進むことに飽きてしまったのだろうか。何度も行われる繰り返しと、タイトルからもわかるようにどうせ七回死ぬんでしょ?と先が分かっているので、淡白な読書部分が目立ったしまった。反復ごとに人の態度が大きく変わり、見え隠れする部分があるのは西澤氏らしく闇の部分を丁寧に書いてくれていることはよく伝わってきた。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ドロシー・L・セイヤーズの作品は「毒を食らわば」以来2作品目である。ストーリーは圧倒的につまらなかったが、あっと驚くトリックは良かったのがその作品の感想だった。しかし、「この雲なす証言」はとにかく感想を述べるのが辛い。褒めるべき点が全く見つからないのだ。
とにかく引用文は多くて辟易する。引用文のスーパーセールだ。あくまで大安売りである。それに加えて、結末の後出し感は否めず、それも大した膨らみを感じない平板な展開だった。何も手応えがなかった。まさに雲なす読書だ。 |
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池井戸潤氏の作品といえばいつも展開が読めてしまうが、それでも読まされてしまう。意外性ではなく、なんとも王道のストーリーでも面白い作家だと勝手に思っていた。へぇ、こういうのも書くんだと驚かされた。
まず読んでいて短編集なのかと思わされた。違います、途中でやっとミステリらしさが出てきます。あまりミステリ作家という認識はしていなかったが、本作はミステリとしても一級品だ。 銀行に就職しなくて良かったと思うが、どんな会社もこんな感じだろうと私は思う。明日からも頑張ろうと思わされる一冊。 |
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なぜだろうか、主人公に準ずる人物が盲目である作品に強く惹かれる。乙一氏の「暗いところで待ち合わせ」や伊坂幸太郎氏の「チルドレン」もそうである。
小説において、与えられた文章以外には何もわからず、登場人物の顔さえわからない点では盲目の人と変わらず、少しだけ近づくことができる点に面白さがあるのかもしれない。目が見えないと小説は読めないのに、なんとも皮肉めいている。 本作は、孫の腎臓移植に自分の腎臓が適さず、兄に頼むが検査すら断られることから兄が偽物ではないかと疑うところから始まる。その中で数多くの謎を残し、終盤まで引っ張られワクワクしながら読むことができた。兄は本物なのかどうか、点字を用いて送られてくる差出人不明の手紙、さまざまな人物からの脅迫、無言の恩人などだ。それら全てを矛盾なく最後には説明され、また、伏線の中にヒントを散りばめていたあたりは見事だ。中盤までは面白さが鳴りを潜めていたが、そこから一気に加速する。 1つだけ注文をつけるとしたら、中国名にはふりがなをもっと振ってほしい。おそらく言葉が最初に登場した時のみに振られている。そこで引っかかりリズムの悪さは否めない。 本の最後には膨大な参考文献が並んでいたが、読んでいて勉強になったことがたくさんある。正直、私自身は残留孤児について全くの無知であった。まれに高齢者の方で生まれが満州だという人について耳にすることがあるが、このような過酷な環境であったとは全く知らなかった。 死がこれほど身近なものではない今の生活では当たり前のように暮らしているが、今の人生を大切にしたいと思わされた。自分のことと照らし合わせて読むことができたのが大きかったと思う。というのも余談であるが、私の祖父が戦争を経験し、祖父の弟は戦死しているからである。もし祖父が同じように亡くなっていたら今の自分はいない。そんな運命の巡り合わせを感じずにはいられなかった。 |
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妻の浮気に嫉妬して、夜中に1人暮らしの女性宅に侵入してレイプを繰り返す主人公。被害女性が復讐を決意するという話。細かく区切られた章ごとに、視点となる人物が変わりながらテンポよく進んで行くのは自分好みだったら。御都合主義ではあるが。
一方で、ここが本作での楽しみだと思うが、登場人物に寄り添うことができなかった。特に主人公である川辺の心情が理解できなかった。妻の浮気から強姦にどう結びつくのか、甚だ疑問である。「緑の毒」というタイトルながら、川辺があまりに可哀相すぎて、コメディに感じてしまう部分もあった。 もう少し毒々しさがあっても良かったが、ストーリーは充分面白かった。 |
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読んでみてつまらないことはなかった、というより普通に面白く読めた。古代エジプトとタイタニック沈没のストーリーがどのような意味を持つのか、どのように絡んでくるのか、ワクワクさせられたのと、それ自体が十分に読み物として面白かった。
残念なのはミステリの部分。ピラミッドがどのような構造なのか全く頭に浮かばなかった。もっと日本語の選び方があるだろうにとも思ってしまった。全く伝わってこない。 事件の決着としては、なるほど幻想的な内容をしっかりと論理的に説明できているのは島田氏らしく素晴らしいが、今作ばかりは針小棒大に感じてしまった。それだけ夢とロマンの詰まった一冊としては、世界観を否定はできないが。 |
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1970年、当時20歳だった学生たちが人を轢き殺してしまう。そこから10年毎に4人は集まる、といった内容。こういった時間が一気に何年単位で飛ぶ話は好きである。だが読んでいってこういうのを読みたかった訳じゃない…と悪い意味で裏切られた。全然思っていた趣向の話と違った。
最後の終わり方は良かったが、そのほかはアッサリとしていた。 |
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4重交換殺人の決起から始まり、倒叙作品かと思いきや事件の詳細を必ずしも描くわけではなく、法月親子の視点からがあくまで中心で大部分を占めている。各部が非対称の形式であるが故に、飽きが来ることなく最後まで読み切ることができた。
作品の印象としては頭の体操といったイメージだ。しっかりと頭を使って読めば、ごく自然と真相に近付ける。あまり類を見ない内容でとても新鮮だった。全体的に御都合主義なのがマイナスポイント。レールの上を走らされたような設定だ。法月綸太郎の推理含め上手くいきすぎているため、作られた話であることを強く意識させられてしまい、深く物語に浸ることはできなかった。 しかしながら、トランプを使った設定、各章の始まりに引用した文章、本書のタイトル、全てが非常に粋に感じた。 |
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どの作品も一捻りある、良い意味で癖のある作品だった。さすがは歌野晶午、「葉桜の季節に君を想うということ」を読んでわかってはいたが、他の作家とは発想が全く別のベクトルにあるようだ。
今作は全体的にライトな内容だと思う。彼が凝らした技を見破ることもそれほど難しくない。それでも最後には、してやられたと思わず笑みを漏らしてしまう。特に「生存者、一名」の締めくくり方は良かった。正直、どの作品もストーリーとして無理があるところも否めないが、それを許してしまうは文章表現や展開は見事だった。 |
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こんなに楽しい読書は久しぶりだった。SFだが読んでいて置いてけぼりに全くならない。すぐに設定に溶け込めて、後は文庫で1000ページ弱、一息に読むだけである。こういったジャンルの作品は、どうしても穴がありツッコミたくなる隙のある作品もよくみられるが、最初から最後まで矛盾をよく抑えた作品だったように思う。それだけストーリーに浸りやすかった。
不老不死手術を受けてから100年間を生存可能とする100年法、それを過ぎた人々は安楽死を受け入れなければならない。自分が実際100年目に突入したらどう感じるか、もしかしたら死から逃げ出すかもしれない。自分をストーリーにはめ込んで読むと面白い。その中でいろんな人の感情や策略が混ざり合ったストーリーは、ボリュームがありつつ纏まりがある。ところどころ脇道に寄っているようで、全く寄っていない。 また、登場人物が1人ひとり色濃く描かれている。個性が立っていて、必要十分な駒が出揃っているように感じた。ちなみにどうでもいいが、戸毛幾多郎には嫌気がした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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相変わらず難解で読みにくかった。しかし前作とは違う翻訳者のを取ったからなのか、私自身がチャンドラーに少し慣れたのか、前作よりはスラスラと読むことができた。ストーリとしてもこちらの方が好みだった。
決着があまりにスムースだったのが残念に思う。今作はあらゆる登場人物がマーロウに対して異常なまでの協力をしている。簡単にことが運ぶので、緊張感の欠如はあった。銃を撃ったことはないようだし。 この世界観に少しずつハマってきたようだ。独特で冷ややかなユーモアは癖になる。主人公であるフィリップ・マーロウが特別なのではなく、脇役も彼と同じような口の聞き方をする。皆が皆そうなのでツッコミたくなるが、これはもうチャンドラーの世界に誘われたのだろう。 |
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来日中のアメリカ副大統領が日本人夫妻を殺害してしまう。その事実を隠蔽するために、現場をアメリカ大使館別館としアメリカ領土とする。アパートの出入りにそこを通らなければならない住民は、パスポートが必要な生活を強いられる。なんとも突拍子も無い設定が魅力的であった。
この物語を面白くしている一つの要因がリズムの良さだろう。アパートの住人やその関係者等々、複数の視点が目まぐるしく入れ替わり、スピーディな展開が繰り広げられる。また一冊を通して、文章一文ごとに改行をするといった独特な書式がそのリズムを助長していた。その奇抜な絵面とストーリー設定が見事にマッチしていたようにも思う。ストーリーの意外性も十分にあり、非常に面白く読むことができた。 唯一のマイナスポイントはディテールの弱さである。どうも雑な印象は拭えない。伏線を異様に張り巡らす割には、それをうまく活かしているようには感じられなかった。これは、アメリカの公務員の仕事っぷりが雑すぎて、結果としてストーリーを雑にしたのではないだろうか。 全体的に、序盤はユーモラスな作品かと思ったが、段々と少し重たくなってくる。良くも悪くも裏切られたかな。 |
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正直読んでいて辛かった。何かが起こるわけでもなく、延々と4人の推理合戦が続くだけである。何も起きないからワクワクはしないし、与えられた情報が少なすぎるので推理も推理として納得できなかった。推理云々ではなく一冊の本としてもう少し起伏のある展開が欲しかった。
それでも4人のキャラクターが丁寧に描かれていて、シリーズを通して読んでおきたい自分にとっては次に繋がる一冊かもしれない。以後のシリーズに期待です。 |
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探偵が活躍する小説はあまり好みではない。人工物という機械的な印象が拭えず、どうも薄っぺらく感じてしまう。それでも壮大な仕掛けがあるのではないかと期待して読んでしまうので、自分でも不思議である。しかし、この一冊は内容結末共に特に面白みもなかった。ほとんど緻密なまでの描写によって全く話が進まない。その割には捻りを感じない終わりにがっかり。
この手の小説にありがちだが、探偵とその助手が手記を書く形式など、またかと思うようなオリジナリティの欠如はその形式ばった印象に拍車をかける。主人公御一行が他の作家のキャラクターと混同してしまい、ほとんど印象に残らないのも残念だ。また他の小説を批判しつつ、あたかも読者に語りかけるようにこの一冊は現実のものなんだと訴えかけてくることには辟易する。 以上の点を悪い意味でしっかり抑えていて、内容にも弱さを感じずにはいられない本作は、全く楽しみを見出せませんでした。この作家とは相性が悪いのかも… |
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