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iisan さんのレビュー一覧
iisanさんのページへ| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.41pt | ||||||||
レビュー数1414件
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先行して邦訳された3作品がいずれも好評を博し、日本でも日の目を見ることになったコスビーの長編ビュー作。前3作同様、ヴァージニア州を舞台に黒人青年が町の腐敗を暴く「サザン・ノワール」である。
自らの粗暴な行動が原因で保安官事務所を追われ、葬儀社に勤めるネイサンを二人の老婦人が訪ねてきた。彼女たちが属する教会の牧師が自宅で死体で発見され、銃による自殺とされたのだが納得できないので調査してくれという。過去の因縁から気が進まないネイサンだったが、調べを進めると多くの信者を集め隆盛を誇っていた教会には隠された裏の顔があることがわかってきた。その闇は深く大きく、黒人が口を出すことを嫌う保安官事務所や白人社会からの妨害を受けながら、ネイサンは孤独な戦いを貫こうとする…。 これまでの3作の同じく、南部の田舎町の人種差別を通奏低音にキリスト教の頑迷さとも徹底的に戦うストーリーは緊迫感がみなぎっている。さらに容赦ない暴力シーンが重ねられ、全編を通して作者の若さと意気込みが表れている。ところどころに挿入されるジョークやワイズクラックにも硬さが感じられるのはご愛嬌。 コスビー・ファンは必読、現代ノワールのファンにもオススメしたい傑作エンターテイメントである。 |
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一部ではジョルジュ・シムノンの後継者と言われるフランスの作家の2022年の作品。同年のゴンクール賞、ルノードー賞などにノミネートされたというが、位置付けが難しい小説である。折り返しの紹介文には「文芸スリラー」とあり、ネットでは「オフビート・スリラー」、「ひねりのきいたノワール」、「風変わりな推理小説」などと形容されているらしい。
結婚生活に危機を覚えた男が妻との関係修復を目論んでシチリア島にバカンスに出かけたのだが、なぜかやることなすこと悪い方向に転がり、とんでもない結末を迎えるというドタバタ劇。主役の男の言動、心理が謎だらけだが、一緒に行動する妻の方もかなりの変わり者で、二人とも常識はずれである。そこを面白がれるなら高評価になり、そこで波長が合わなければ読んで損をしたとなる。読者を選ぶ作品である。表紙のイラストが本作のテイストをうまく表している。 |
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1985年、著者初期の力作。日本にハードボイルドを定着させた傑作エンターテイメント作である。
ただひたすら友のために体を張って突っ走る、主人公の命懸けの言動がダイナミックでインパクトがある。ヤクザ映画や西部劇に源流を持つ、日本のハードボイルドの姿がくっきり見て取れる。 何も考えずに読書を楽しむことをオススメする。 |
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一ページから十数ページまで長短さまざまな26本を収録した短編集。軽妙なオチのある作品があれば、淡々と事実を綴った(ような)作品もあり、統一したテーマがある訳でもなく読み続けていて落ち着かない。
それぞれの作品が開く扉、覗ける穴は天国への道か、地獄への奈落か。一番感じたのは人生への諦め、諦観だった。 訳者あとがきを先に読む方が理解しやすいかもしれない。 |
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イギリスの人気作家グリフィスの「ハービンダー・カー刑事」シリーズ第3作。ロンドン警視庁に異動したカーが名門校の同窓会で起きた殺人の謎を解く、正統派の犯人探しミステリーである。
有名人が集まったマナーパーク校の同窓会で下院議員のゲイリーが死んでいるのが見つかった。現場に到着したカー警部は部下の刑事部長・キャシーが居ることに驚くが、キャシーも同窓生だったのだ。検視の結果、ゲイリーはドラッグによる死に見せかけた殺人であることが判明。犯人は同窓生だと判断し、カー警部は彼らの濃密な人間関係の中に動機を探すのだが、誰もが怪しく見え捜査は難航する…。 ヒロインのカーはインド系、独身、レズビアンというかなりのマイノリティーで、しかも表面的には穏やかだが内面は激情型の人物。捜査過程で漏らす心の内の本音が面白い。物語は21年前の事件が波及した多重殺人というよくある話だが、犯人探しはかなり難しい。帯の「意外な犯人に驚愕」とのセールストークはオーバーだが、いちばん怪しくない人物が犯人っていうセオリー通りかな。 英国謎解きのお好きな方にオススメする。 |
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2005年に刊行された、著者お得意の銀行員物語。いつも通りの勧善懲悪、ハッピーエンドで終わる銀行内部の闘いは予定調和と言えばそれまでだが読みやすく、読後感も爽快なので、どなたにもオススメできる。
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日本デビューの前作「ぼくの家族はみんな誰かを殺してる」が好評だったオーストラリア人作家の第二作。本作もまた、登場人物全員が怪しい謎解きミステリーである。
まぐれ当たりの処女作が売れただけの駆け出し作家であるアーネストが、なぜかオーストラリア推理作家協会の50周年記念イベントに招待され、ガールフレンドのジュリエットと参加することになった。旅は豪華な大陸縦断列車の貸切車両で、著名な作家たちと一緒だという。あわよくば、書き始められなくて焦っている新作へのヒントが得られるのでは、ひょっとして推薦文まで貰えるかと期待し、さらにジュリエットにプロポーズするチャンスと張り切ったアーネストだったが、早々に作家の一人が殺害され、またもや探偵役を果たすことになる。作家というクセのある人物揃いで、誰もが被害者を殺害する動機があり、素人探偵には雲を掴むような状態に陥った。そこに、第二の殺人まで発生し・・・。 前作の雪に閉ざされたリゾートから今回はオーストラリア大陸を縦断する長距離列車「ザ・ガン」の三泊四日の旅に舞台を移した犯人探し物語。信頼できる語り手が謎解きに必要な要素は全部並べ立てるフーダニットの王道に、タイムリミット要素が加味されたところが作者の腕の見せどころ。フェアプレーのための解説が少し煩わしいが、それも読者への挑戦を楽しんでいる故だろう。 謎解き、犯人探しマニアにオススメする。 |
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猪苗代湖で開催される音楽とアートのイベントのパンフに、毎年連載された短編を集めた連作短編集。著者が好きな音楽と絡めて、ちょっとふんわりした人情噺とお得意のスパイ話をミックスしたファンタジー作品である。
こちらの世界とあちらの世界を行き来する扉の出現が伊坂ワールドといえばそうなのだろうが、いまいち乗り切れなかった。 |
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1984から85年まで、一年に渡って継続されたイギリスの炭鉱ストライキを真正面から取り上げたノワール・フィクション。独特の文体で読みづらいことこの上ないが、読み通せばサッチャリズムと新自由主義の残酷さが身体感覚で分かる力強い作品である。
サッチャー政権の炭鉱閉鎖政策に反対し、全国炭鉱労働者組合が始めたストライキは全国的な支持を集めたのだが、警察ばかりか軍隊まで動員した暴力的弾圧、卑劣な労働者分断作戦により徐々に弱体化し、炭鉱労働者側の敗北に終わった。その一部始終を労組、政権の主要人物を中心に時系列で解いていくストーリーはさながらシェイクスピア劇のごとくドラマチックである。特に政権の裏仕事を担う「ユダヤ人」の暗躍、ストに参加した末端労働者の苦悩は鬼気迫るものがある。 サッチャーを崇拝する高市政権がいかに危険か、これを読めば納得できるだろう。オススメだ。 |
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「村野ミロ」シリーズの第5作。40歳を目前に、これまでのしがらみばかりか自分の命までも断ち切ろうとするミロの激しい生き方が爆発するノワール・サスペンスである。
本気で愛し、それでも裏切りを許せず刑務所送りにした成瀬は10年の刑に服していた。成瀬の心に自分はどう刻まれているのか、それを知るためにひたすら出所を待っていたのだが、成瀬は獄中で自殺していた。さらに義父・村野善三が、それを知りながらミロには黙っていたことが判明した。この裏切りに激怒したミロは探偵を辞め、新宿を引き払い、善三を殺すために小樽へと向かう…。 40歳になっても一向に大人になれないミロの熱さが凄まじい。義父・善三の死を招いたことで善三の内妻や旧友のヤクザに追われ、行き場を失ったミロは韓国に逃亡し、そこでもヤクザに追われる身になる。八方塞がりをどう突破するか、型破りな戦術が激しい摩擦を引き起こし、ミロはさらに過激に、さらに遠くへ行こうとする。そして最後、ミロの人生に大きなターニングポイントが訪れる。ひょっとするとシリーズの頂点になりそうな力作だ。 シリーズ愛読者には絶賛してオススメする。 |
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ネロ・ウルフ・シリーズの中でも「アーノルド・ゼック三部作」と呼ばれる三部作の第一作。
ラジオ番組の放送中にゲスト出演していた競馬新聞発行者が絶命する事件が世間を騒がせていた。金欠に陥っていたウルフは自分から売り込み、調査を引き受ける。という犯人探しが主軸で、乏しい証拠にウルフと助手のアーチーが四苦八苦していると、さらに別の殺人事件の存在が分かり、ウルフは同一犯によるものと推理する…。 物語の展開がスローだし、挿入されるエピソードもシリーズ愛読者なら楽しめるのだろうが、ネロ・ウルフが初めての自分には少しも面白さが感じられなかった。最終的にはウルフと死命を決することになる宿敵・ゼックが数カ所、短時間の電話でしか登場しないのも拍子抜け。評価は6.5かな。 シリーズ愛読者、古典的ミステリーマニアにオススメする。 |
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2022年にN.Y.Timesのベストセラーリスト1位に輝き、すでに映画化されているという話題作。十年間の刑務所生活から仮釈放で出てきたミリーがやっと見つけたハウスメイドの仕事だったが、豪邸に暮らすその家族はどこかおかしかった。そしてミリーが一家の秘密を知ったとき…という不気味なミステリー・サスペンスである。
雇い主のニーナは情緒不安定なサイコパス? 一人娘のセシリアは手に負えないわがまま娘、そんな二人に挟まれながら主人のアンドリューは家族思いで穏やか、理想的な夫・父親だった。アンドリューがなぜ、こんな家庭に暮らせるのか? ミリーは徐々に一家の秘密に触れ、思いもよらぬ家族関係に驚愕する…。 第一部はミリー視点での一家の暮らしぶりが描かれ、ニーナやセシリアの滅茶苦茶な振る舞いに苦笑、嘆息するばかりでやや退屈。しかし、ニーナ視点で語られる第二部になると全てが逆転する、とんでもない関係が明らかになり、一気にサスペンスが盛り上がる。この構成の妙は素晴らしい。 舞台は一家の周辺に限られているし、主要登場人物は五人だけなのでどんでん返しにも読み筋を見失うことがない。翻訳ミステリーが苦手という方にもオススメしたい傑作エンタメである |
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弁護士出身の米国若手作家の本邦初訳(おそらく)。焦げた料理、血まみれの靴を残して実家から姿を消した母を探すうちに母にも、父にも隠された一面があることを知った娘が真相を探り出す親娘の物語である。
大学生のクレオが母に呼び出されて実家に帰ると、そこに母の姿はなく、レンジでは鍋が焦げつき、血まみれの靴の片方、割れたグラスの破片が残されていた。潔癖で几帳面な母には考えられない事態にクレオは事件を疑い、母の勤務する弁護士事務所を訪ねて事情を探ろうとする。映画制作者の父とは円満で仕事面でも敏腕弁護士として活躍していた母だったが、調べるうちに母が語っていなかったことや嘘が判明し、父と母の関係も離婚寸前であることが分かってきた。一方、クレオも干渉が過ぎる母に対する反発から母には言えない秘密を抱えていたのだった…。 オープニングは典型的なワイダニット、フーダニットだが、親娘それぞれの秘密や嘘が徐々に露わになり吸ったもんだの挙句、最後は親娘の和解へと流れて行く。薬害訴訟、SNSの弊害、壊れやすい夫婦関係など途中に挟まれるエピソードが多過ぎて、物語の本筋に集中しきれないところはあるものの、エンディングまで上手に繋げているので読後感は悪くない。 謎解きというより現代の親子関係のねじれを垣間見るファミリー・ストーリーとして読むことをオススメする。 |
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デビュー作ながらイギリスで大ヒットし、映像化が進められているという犯罪スリラー。夢遊病、記憶喪失者の犯罪は裁けるのかをテーマにしながら犯人探しミステリーでもある。
友人二人が刺殺された現場で、ナイフを手にしたまま昏睡状態で発見されたアンナ。以後、容疑者でありながら四年間も眠り続けるアンナを裁判にかけたい英国政府は、犯罪心理学者のベンにアンナを覚醒させることを依頼する。ベンはこれまでに無い手法でアンナを覚醒させたのだが、アンナが目覚めると事件の様相は激しく変化し、事件捜査はますます混迷を深めていった…。 最後の最後に黒幕が判明し、全体像が分かるのだが、それまでのストーリー展開は逆転、逆転の連続で何が何だか・・・。ついていくのに骨が折れた。 謎解きミステリーではあるが、この事件の真相を解明できるのは作者しかいないだろう。むしろノワール・サスペンスとして読むことをオススメする。 |
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「村野ミロ」シリーズの第6作。前作「ダーク」から20年以上の時を経て還暦を迎えたミロが最後に愛した男や仇敵たちと、断ち切れないしがらみに終焉をもたらそうとするノワール・サスペンスである。
愛する男・ジンホが服役したことに加え、命に代えても守りたい一人息子を育てるために沖縄に移住したミロ。過去の全ての縁を切り、ひたすら子どもの安全を守って生きてきたのだが、還暦を迎える頃、刑期を終えたジンホが出所することになり、一緒に暮らすことを夢見て、その準備に勤しんでいた。健康な青年に成長したハルオは医学生でほぼ自立して生きられるだろうと安心していたのだが、突然、ハルオが刑務所のジンホに面会したことから、かつての仇敵たちに身元がバレ、親子二人の身辺に危険が迫ってきた…。 20年以上が過ぎ、ミロも還暦だというのに、やっぱりミロはミロ。生き抜くためにはどんな戦いにも怯まない。その壮絶な生き様を何の躊躇もなく描いていく桐野節も絶好調。読み始めるとあっという間にミロの世界に引き込まれて行く。女性が主人公のハードボイルドは、やはり桐野夏生が第一人者だと再認識した。 シリーズ愛読者には文句なしのオススメ。ハードボイル・ファンにも必読とオススメする。 |
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米国では一定の評価を受けているが、日本ではパッとしないマイクル・コリータ(A.ジョリー主演の「モンタナの目撃者」の原作者)の久しぶりの邦訳。カナダ国境に接する寂れた小さな島で起きた大量殺人とその背景にある社会不安を描いたハードボイルド・サスペンスである。
小型ボートに乗っていたイズレルが漂流する大型クルーザーに乗り込むと、船内は血まみれで7人の男が惨殺されていた。第一発見者になったイズレルは15年前に父親を殺害し、15年の刑を終えたばかりという過去があったため犯人視される。同じ頃、隣の島では父親から虐待されている12歳のライマンが密かに隠れ家にしていた廃屋で、大きな傷を負った若い女性を見つけた。女性は手斧を持ち、ライマンに気を許そうとしなかったが、ライマンは食べ物や薬を届けて心を開かせようとする。そんなライマンの行動を怪しんだ父親が、ある日、息子の嘘に気が付いた。イズレル、ライマン、傷付いた女性の3人それぞれが陥った苦境が明らかになるにつれ、犯行の裏にある醜悪な構造が暴かれて行く…。 落ち着いた語り口で凄惨な物語が繰り広げられる、緊張感のあるサスペンス。三人三様のハードボイルドな生き方が感動を誘う。ストーリーが進むごとに新たな衝撃が登場するので、何も前知識なしで読むことをオススメする。 |
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著者お得意の警察ミステリーと思って読み始め、中盤から終盤までは1930年代、満州国建国前の中国大連を舞台にした連続殺人事件捜査を楽しんでいたのだが、終盤になって一気にオカルト、怪奇ミステリーになっていた。
佐々木譲ファンであっても評価が分かれると思うが、これはこれで面白かった。 |
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イギリスの売れっ子脚本家の小説デビュー作。都会に疲れた女性刑事が自分を立て直すために田舎に帰り、地元警察の一員として事件捜査に活躍する警察ミステリーである。
英国南西部の牧歌的な村で、裸で椅子に縛り付けられ、頭に鹿の角を付けられた死体が発見された。被害者は愛想が良くて人気者のジムという村のパブの店主。被害者と死体の異様さに誰もが驚いたこの難事件を捜査するのはリバプールから家族ぐるみで戻ってきた女性刑事のニコラで、転職時に聞かされていたのとは大違いのオフィス、人員、予算不足に悩みながら我武者羅に真相究明に突き進んで行く。それを助けるのがあまり期待されてなかった部下と、思いがけない証言者という、いわばお約束の物語構成だが、話の展開が早く、人物のキャラが明確なので最後まで飽きることがない。死体の猟奇的な姿とは裏腹に物語全体が柔らかい雰囲気なのは、代々住み続ける村人の気質や風光明媚な村が舞台だからだろう。また、ニコラを中心とした家族の愛情と葛藤というヒューマン・ドラマの側面も面白い。殺人の動機や謎解きに多少甘さがあるが、欠点と呼ぶほどではない。 読みやすく楽しめる警察ミステリーとして、どなたにもオススメできる。 |
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今、フランスで一番売れているというミュッソの2022年の作品。コロナ禍の混乱に乗じて謀られた殺人を、被害者の17歳の娘と元警視の珍コンビが調査・解明するバディ・ミステリーである。
持病の心臓発作で緊急搬送され入院中の元パリ警視庁警視・マティアスの病室に現れた17歳の医学部生・ルイーズ。患者の慰問のためにボランティアで演奏活動をしていると言いながら、マティアスに「元ダンサーだった母・ステラの死を調査してもらいたい」と依頼してきた。気乗りしないマティアスだったが、ルイーズから渡された資料を読むうちに、事故か自殺で処理されたステラの死に不可解な点があることに気付き、生来の刑事魂を刺激された…。 17歳の女子医学生と持病を抱える退職刑事の異色コンビが衝突しながら協力して事件の謎を解くバディもので、利発な少女と頑固な刑事という定型的パターンで物語は進むのだが、途中で犯人視点のエピソードが加わり、そこからは一気読みの展開になる。ミュッソ作品にしては構成がシンプルで主要人物のキャラも立っているため読みやすい。文庫で300ページを切る短さも良い。 あまり深く考えずにミステリーを楽しみたい方にオススメする。 |
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