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iisan さんのレビュー一覧
iisanさんのページへ| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.41pt | ||||||||
レビュー数1432件
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2019〜20年に雑誌連載された長編小説。猟奇殺人犯と同姓同名だっただけで社会的に不遇な目に遭わされた者同士で被害者の会を設立し、謂れのない汚名を雪ぐべく活動する、今風の社会派ミステリーである。
幼い少女を滅多刺しにした殺人犯は16歳だったため少年法に護られて名前も顔写真も隠されていた。ところが週刊誌が実名「大山正紀」を報道したことで、それまで平穏に暮らしていた大山政紀たちは様々な騒動に巻き込まれることになった。罵詈雑言、謂れのない誹謗中傷を浴びせられ、就職や進学にも悪影響が及んだ。たまりかねた一人がネットに「大山正紀被害者の会」を立ち上げ、オフ会を開催した。集まったのは様々な属性だが、殺人犯と同姓同名というだけで辛い思いをしてきた人ばかり。話が盛り上がり、現実の大山正紀を探し出そうという結論に達した…。 素人探偵たちがネットを中心に人物を探し出すという展開は、最近よく目にするが、本作は同姓同名をキーワードにネット社会の脆弱さや悪意、不気味さ、無責任を赤裸々らに描いていて、そこが今の時代ならではのサスペンスを感じさせる。正直、嫌悪感を抱くとともに怖いと思わされた。ストーリーは単純だが登場人物が全員・大山正紀なので、混乱するかと思ったがうまく書き分けられている。起承転結、伏線も上手い。 ネットの特性を上手く使ったエンタメ作品であり、どなたにもオススメできる。 |
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デビュー2年後、2016年の書き下ろし長編。実の父が21年前に起きた殺人事件で死刑判決を受けていることを知った大学生が、冤罪の可能性を信じて警察・司法に挑む謎解きミステリーである。
大学生の石黒洋平は母の遺品の写真から、「現職検察官が死刑判決を受けた殺人事件」の犯人・赤嶺信勝が実の父親であることを知り驚愕する。自分の血が汚れていることに苦悩する洋平は一縷の望みを賭け、冤罪を追求する雑誌編集者の夏木涼子を訪ね協力して真相を探り始めた。しかし、赤嶺は頑なに冤罪を否定し続けた。さらに、離婚して別居中の育ての父も余計なことはするなと忠告する…。 日本の警察・司法がいかに冤罪を生み出しやすいかを、著者はこれでもかと指摘する。そして、洋平は真実に近付くほど実の父と育ての父、大切なのは血か絆かで揺れ動く。冤罪をテーマに単純に警察・司法を非難するだけでない、人情と倫理のドラマにしたことで本作は読み応えがある。 我々の思い込みに警鐘を鳴らすミステリーでありながら理屈っぽくないエンタメ作品として、どなたにもオススメしたい。 |
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「被害者支援課」を受けた新シリーズ「総合支援課」の第1作。若い女性刑事が新たな業務に戸惑いながらも奮闘する警察小説である。
加害者家族をも支援するために従来の「支援課」から改組された「総合支援課」に配属された柿谷晶。最初の任務となったのが名門高校生同士の殺人事件で、加害者の父親と弟をケアするために所轄署を訪れると案の定、迷惑がられた。そんなことにはめげない熱血漢の柿谷はぐいぐい捜査に介入し、事件の真相を明らかにしていく…。 加害者家族の支援という、警察というより弁護士的な業務の難しさが読みどころ。さらに被害者、加害者、捜査陣の板挟みになりながら指揮命令系統を無視して突っ走るヒロインの熱さがセールスポイントか。言ってみれば池井戸潤のビジネス小説の警察版である。しかし、このヒロイン、同僚だったらかなりウザい(笑) 池井戸潤のファン、堂場瞬一のファンにオススメする。 |
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2024年のエドガー賞ノミネート作品。日本初登場だが、アメリカではすでに3作が刊行されている人気シリーズの第1作である。
2022年、ミネソタ州の森の中で、1980年に起きた3人の少女失踪事件の当事者のひとりが生き埋めで殺された。42年も前の事件の被害者が、なぜ今になって殺されたのか? 被害者が42年前の事件の少女が身に付けていたネックレスを持っていたため、未解決事件捜査課が担当することになり、女性刑事・ヴァンがリーダーとなった。思い込みが激しく、ややもすると空回りしがちなヴァンをサポートするのが沈着冷静で辣腕の科学捜査官・ハリーで、二人は危ういバランスを保ちながら徐々に真相に迫っていく…。 何十年も前の事件と現在の事件が絡み合い、元気過ぎる若い女性刑事と冷静なベテラン男性刑事がコンビで活躍するという、既視感たっぷりの物語。ヒロインがイジメに合って警察を辞めたというのが目新しい。しかし、複雑な過去を持つヴァンが現実を写した悪夢を見て、それが解決に直結するというのがなんとも気恥ずかしい。サイコ・ミステリーかと思ったら、ホラー・ファンタジーな物語だった。 時間の無駄とは言わないが、「ジェフリー・ディーヴァー絶賛」には気を付けた方がいい。 |
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スウェーデンの人気ミステリー作家が有名コメディアンと組んだシリーズ作品の第1作。風光明媚な田舎町で起きた殺人事件をストックホルムのエリート捜査官と地元の新人女性警官が解決するバディもの警察ミステリーである。
国家殺人班の敏腕捜査官・ヴィンストンが病気療養を兼ねて、離婚した元妻と暮らす娘の誕生日に招待されスウェーデン南部の田舎町を訪れる。体調不良を回復させるため仕事から離れるように厳命されていたのだが、不動産ブローカーの女性が死体で発見された現場に出会し、捜査に協力することになった。事件を担当するのは地元の駆け出しの女性刑事・トーヴェで、意欲はあるのだが実力が伴わない。必然的にヴィンストンがリードすることになり、トーヴェは面白くない。あれやこれやと衝突しながらも多少は理解し合い、事件の解決に向けて力を合わせていく…。 都会のエリート男と田舎の元気娘という、ありがちなバディ物語。ストーリー展開も分かりやすく、スウェーデンの田舎町の風俗も面白く、サスペンスはないが退屈しないで読める。 バディもの、北欧警察ミステリーのファンなら楽しめること間違いなし。 |
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新競馬シリーズの邦訳第2作(英語版では第8作)。競馬の聖地・ニューマーケットで起きた厩舎火災の調査に派遣された危機管理コンサルタントが、高名な調教師一家の秘密を暴く犯人探しミステリーである。
弁護士で危機管理会社スタッフのハリイはダービーの本命視されていた馬を含む7頭が焼死した火事の原因を調査するために、火事が起きた厩舎に派遣された。厩舎を管理する名調教師と名高いオリヴァー一族に接触すると、家族間に深刻な諍いがあるようだった。程なく、焼け跡から人間の死体も発見され事態は殺人事件へと変わっていった。犠牲になったのは一家の末娘で少女の頃から問題児だったゾーイのものと判明。薬をやっていたゾーイが火を放って自殺したのではとの見方も出てきたが、ハリイは事件の背後に複雑な人間関係があると推察した…。 舞台は競馬の聖地、登場人物は競馬関係者だが物語の骨格は犯人探しミステリーである。主人公の調査の進め方、犯行動機の論理性などは英国ミステリーの伝統を受け継ぎ、安定感がある。ただ、物語の深み、読書の楽しみの面では前作「覚悟」に及ばない。というか、前作が傑作すぎたのかもしれない。 新旧の競馬シリーズの愛読者には絶対のオススメ、本作から手に取る人も従分に楽しめる謎解きミステリーとしてオススメする。 |
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2024〜25年に小説誌に連載された長編ミステリー。全盲女性が被告となった裁判を巡る逆転ドラマである。
中途障害者の社会復帰をサポートする施設で真夜中に施設長・荒瀬が刺殺された現場にいたのは、ナイフを手にした全盲女性・美波だった。美波の供述によると、荒瀬から夜中12時に一人で視聴覚室に来るように言われ、室に入った途端に襲われて思わず突き飛ばしたところ荒瀬が動かなくなったという。しかし、美波の衣類は血塗れでポケットにはナイフが入っていた。荒瀬には職員や入所者にセクハラをしているという噂があり、夜中に呼び出された美波が護身用に携帯したナイフで反逆したという事件の構図を、警察も関係者も描いていた。しかし美波は、絶対にやっていないと訴える。圧倒的に不利な状況の美波を信じた弁護士・竜ヶ崎は事件の構図を逆転すべく四苦八苦するのだが…。 大逆転の仕掛けは、これまで何度も目にしたもので「超絶どんでん返し」という帯の文句は煽り過ぎだが、そこまでの展開がスリリングで面白い。特に、全盲の被告、聴力を失った証言者、失語症の少女が立つ法廷という設定がユニークで効果的。読んで損はなし。 法廷ミステリーのファンならどなたでも楽しめる傑作としてオススメする。 |
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本邦初訳となるイギリス人作家の警察ミステリー。英国ではすでに6作が出ている人気シリーズ「アレックス・キューピディ」シリーズの第5作である。
捜査活動が原因のPTSDと診断され、海辺の観光地・ダンジェネスで休職中の刑事・アレックスは居合わせた同性婚女性の結婚披露パーティーで、花嫁に「人殺し!」と叫びながらを襲おうとした中年女性を阻止した。その女性は花嫁・ティナの元夫の母親で、7年前に行方不明になった息子はティナに殺されたのだと主張していた。同じ日、町では引退した実業家夫婦の惨殺死体が発見された。警察上層部からは「カウンセリングを受け、治療に専念するように」と厳命されていたアレックスだが二つの事件に興味を惹かれ、迷惑がられながら捜査に口出しし始める…。 7年前の失踪と現在の二つの死体の間に、何があるのか? 聞き込みと推理で謎を解く警察(休職中だが)ミステリーの基本に忠実なストーリー、個性的な登場人物、風光明媚な海辺の町が読者を飽きさせない。しかし、ヒロインと周辺人物の人間関係にかなりの重点が置かれている作風なのに、前4作の内容が分からないため、読んでいてもどかしい。アレックスの猪突猛進も共感しにくい。 いかにもな英国警察ミステリーであり、読んで損はないと消極的にオススメする。 |
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もう説明の要もないジョー・ピケット・シリーズの第19作。帯には「ジョーとネイトにシリーズ最大の危機迫る!」とあり、何度目の最大の危機かと思うが(笑)、アクションもサスペンスも期待を裏切らない傑作である。
隣の管区の猟区管理官・ケイトリンから「ドローンで鹿の群れを追いかけて死に至らしめている奴がいる」と連絡を受けたジョーが調査し、ドローンの主を突き止めたのだが、何故かFBIが登場し、調査を止めるよう圧力を掛けられた。同じ頃、ネイトはアリゾナナンバーの車で街にやってきた不審なヒスパニック4人組を目にし、不穏な予感を感じ取った…。 職務への忠誠と倫理に生きる男・ジョーがFBIを相手に一歩も引かず、さらに冷酷非情な暗殺者チームと正面からぶつかるというハードな展開。そこへ三女・ルーシーの高校卒業、ボーイフレンドとの関係、ネイトの結婚とパートナーの妊娠も絡んできてハラハラドキドキ、最後まで飽きさせない。 シリーズの大きな転換点になりそうな幕切れが待っており、ジョー一家のファンは必読! とオススメする。 |
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よくもまあ、これだけ書き続けられるものだと感心する「イブ&ローク」シリーズの第56作。殺人の謎、人身売買組織の摘発をメインに据えたロマンス・ミステリーである。
N.Y.の寂れた街角で13歳の美少女の死体が発見された。一見、強盗のように見えたのだが、イブはそれを偽装と見破る。清純な仕立ての制服、それとは真逆のセクシーな下着、いずれもきわめて高価な特注品のようだった。わずかな手がかりを追うイブの捜査チームと、陰に陽にそれを助けるロークは執念の捜査で未成年の少女たちを飼育する「アカデミー」の存在を発見する。 巧妙に姿を隠す巨大な社会悪を暴く警察という謎解きミステリーの骨格を保ちつつ、窮地に陥ったヒロインが必ず大富豪の王子に助けられるロマンスの王道の展開。これを受容できるか否かで評価は真っ二つになるだろう。 シリーズ愛読者にオススメする。 |
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妻が夫を金槌で殴殺するという、いかにもミステリーな始まりだが、終わってみればいつもの伊坂幸太郎魔術に惑わされた感じ。
伊坂ファンにならオススメ。 |
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グリーンランドの氷の下にミサイル基地を建設しようとしたアメリカの秘密計画に想を取った、謎解きミステリー。極限の地の氷の下の事件を精神科医が解明していくというユニークな設定だが、物語の基本構成はわかりやすく、専門用語も少なくて読みやすい。
1967年末、米陸軍グリーンランドの秘密基地からの撤退作業が始まったのだが、猛烈な嵐で3人が取り残された。救助が来ないうちに極夜、極寒の基地内で火災が発生、二人が焼死し一人が全身大火傷を負って入院した。N.Y.の精神科医ジャックはCIAの依頼で、入院中の兵士コナーから火災の経緯、二人の死亡状況の聞き取り調査を始めたのだが、コナーはほとんどの質問に覚えていないと繰り返すばかりだった。コナーが何かを隠していると感じたジャックは関係者を訪ね歩き、徹底的に調査しようとした。すると、何者かがジャックの身辺を嗅ぎ回り、調査を妨害し始めた…。 舞台が秘密基地とあってスパイ疑惑やCIAが絡んでくるし、密室での出来事を生存者の言葉と推理だけで解明しようという厄介な事態だが、粘り強く、抜群の行動力で調査を進めるジャックの活躍が圧倒的。さらに、スピーディーに二転三転するストーリー展開、魅力的な個性の脇役たちがどんどんページを進めて行く。そして、最後のひと捻りはミステリー好きならある程度は想像が付くのだが、それでも効果的。 犯人探しの本格謎解きではないが、多くのミステリーファンを満足させる傑作である。 |
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1975年刊行、1978年邦訳出版という古さだし、聞いたことない作家だったので期待しないで読み始めたら、想像を裏切る面白さだった。
品行方正、謹厳実直のイギリス人男性・ブラックネルが移住したアメリカで、妻のパットには秘密に書き続けていたメモを偶然見つけたパットは、その内容に驚愕する。さまざまなストレスに押しつぶされそうになったブラックネルは「殺人によって人格が変えられる」という考えを理論的に確立し、実行し、記録していたのだった。とても本当にあったこととは思えず、夫が空想した物語だと思い込みたいパットはメモを読みながら、当時のあれこれを回想し、「こんな恐ろしいことは絵空事だ」と証明しようとするのだが…。 夫の秘密のメモとそれを読んだ妻の反応という二つの視点からの物語はよくある設定だが、書かれていることが本当かどうかが分からないところにサスペンスがあり、クライマックスに向けてじわじわ恐怖が高まって行く。さらに結末も人間性の複雑さを感じさせて興味深い。 心理サスペンスがお好きな方には絶対のオススメ作である。 |
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「ダブリン警察署殺人捜査課」シリーズで知られるアイルランド人作家の長編第8作で、アメリカ人の元警官を主人公にしたシリーズ外作品。アイルランドのゆったりした自然に囲まれながら、閉鎖的な村に存在する闇と戦わざるを得なくなる巻き込まれ型ミステリーである。
40代半ばにも関わらず行き詰まった人生をやり直すためにシカゴ警察を辞め、アイルランドの片田舎に廃屋を買って移住したカルは家の修繕と田舎暮らしを楽しんでいた。ある日、誰かに監視されていることに気付いたカルが見つけた監視者は10代前半の地元の子供だった。監視するのではなく一緒にやろうと改修作業に誘い、打ち解けるとその子・トレイは失踪した19歳の兄ブレンダンの行方を探してくれと頼み込んできた。田舎暮らしに愛想をつかして都会に出たのだろうと思い、カルはトレイの依頼を断るのだが、執拗に依頼され、さらにトレイの悲惨な環境を知り、何も期待するなと釘を刺してからブレンダンの行方を探る始める。ブレンダンの関係者に話を聞いて回ると、誰もが家出したのだろうと言う。しかし、カルがブレンダンの行方を探していることが村人に知れると、陰に陽に警告を受けるようになった…。 物語の主軸はアイルランドの片田舎に強固に存在する排他的で変化を恐れる闇の掟であり、そこに中年の危機に陥ったアメリカ人男の心の挫折と地元の子供とのぎこちない交流の変化が重ねられ、なかなか奥行きが深いヒューマン・ドラマである。単なる子供の成長物語ではないところが魅力と言える。 ノン・シリーズ作品なので、本作だけで十分の楽しめる。人間を見つめるミステリーがお好きな方にオススメする。 |
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韓国で大ヒットしドラマ化もされた、ちょっとユーモラスな誘拐ミステリー。間抜けな誘拐犯と天才少女の被害者が絶妙の掛け合いで飽きさせない傑作である。
一人娘がいるのにも関わらず多額の借金と娘を置いて妻・ヘウンが失踪し、家も仕事も失ったミョンジュンは山の中の見捨てられたバラックを棲家にしていた。追い討ちをかけるように幼い娘・ヒエに白血病が見つかり入院したのだが入院費が払えないためコソコソ隠れるようにして見舞いに行く貧窮状態だった。そんなとき、元妻・ヘウンから誘拐して身代金を奪うことを持ちかけられた。お人好しでヘウンに頭が上がらないミョンジュンはヒエを助けたい一心で、その提案に乗ってしまう…。 完璧なはずの誘拐計画は、ミョンジョンがターゲットの豪邸の前で車ではねた少女が誘拐する予定のロヒだったことでいきなり狂ってしまう。慌てたミョンジョンはロヒを自宅に連れて帰るのだが、ロヒは事故で記憶を失っており、ミョンジョンはとっさに自分は父親だと言ってしまった。ロヒが記憶を取り戻さないうちに金を奪いたいミョンジョンが何度電話しても誰も応答しない。焦ったミョンジョンがロヒの家を訪れると、そこから夫婦二人の死体が運び出されるところだった。果たして誘拐は成功し、身代金を受け取れるのか? ドジで間抜けなミョンジョンと天才少女・ロヒのキャラクターが抜群で、身代金目当ての誘拐なのにかなり笑える。さらに事件の社会的背景、動機などもよく考え抜かれていてミステリーとしても楽しめる。 文句なしのオススメだ。 |
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2011年に発覚した尼崎連続殺人事件に想を得たクライム・フィクション。事件を起こした者、巻き込まれた者、捜査した者という複数視点から全貌を解明する構成だが、時系列が入り乱れるので最初はやや分かりにくい。
事件の細部の描写は丁寧で巻き込まれた者たちの理性が壊れる様やリンチの場面は読んでいて胸苦しくなる。しかしノン・フィクションではないのだから、もっと心理的な追究があれば良かった。これまでの著者の作品に比べるとワクワク、ドキドキが無いまま終わってしまった。 ミステリー、サスペンスとして読むには物足りない。 |
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ディーヴァーが法執行官出身のマルドナードとコンビを組んだ新シリーズの第一弾。連邦捜査官の妹が襲われた事件を発端に連続殺人が発生し、大学教授でサイバー犯罪対策の専門家と捜査官が衝突しながらも真相を解明するバディ・サスペンスである。
国土安全保障捜査局の捜査官・カーメンの妹・セリーナが襲撃され、かろうじて逃げたものの助けに駆け付けた男性が重傷を負った。地元警察の反応の鈍さに苛立ったカーメンは捜査の管轄を無視して行動するのだが、犯人が残した携帯電話のファイルは暗号化されており容易に開くことができなかった。そこでカーメンは過去の因縁がある大学教授で敏腕ハッカーのジェイクに暗号解除を依頼した。気が進まないジェイクだったが暗号解除に成功し、事件がセリーナを狙ったもので、しかも前日に起きた男性殺害との連続殺人であることを発見する。しかも、ファイルの暗号化にはジェイクの仇敵のサイバー犯罪者が関わっていることにも気付いた…。 連続殺人犯を追う本筋だが、犯人が腕に蜘蛛のタトゥーがあるデニソンという男性であることは早々と明かされる。そこからはデニソンと、カーメン&ジェイクのコンビの知恵比べが中心になり、さらにデニソンの黒幕の存在も絡んできて、ストーリーは二転、三転する。まあ、いつものディーヴァーらしくどんでん返しがたっぷり、意表を突く仕掛けもたっぷり。ただ最後に真相が明らかになると動機の貧弱さに肩透かしをくらう。 リンカーン&アメリアのコンビニは及ばないものの、楽しめるバディ・サスペンスとしてオススメする。 |
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ロンドン警視庁ウォーウィック刑事(現在は警視)シリーズの第6作。1996年のロンドンを舞台にウォーウィック警視が大英帝国王冠を巡って宿敵・マイルズとギリギリの戦いを繰り広げる警察ミステリーである。
ウォーウィックの証言によって服役させられたことを恨んでいる詐欺師・マイルズの元に、ウォーウィックはもちろん同僚のロス、上司のホークの三人をまとめて辞職に追い込む作戦があるという電話があった。それは国会の開催を宣言する際に女王が戴冠する大英帝国王冠を奪うという大胆不敵なもの。通常は警備堅固なロンドン塔に保管されている王冠が、その日は宮殿に移送され、ウォーウィックたち王室警護本部が警備を担当する。もし王冠が奪われれば、ロンドン警視庁王室警護本部の関係者の首がとぶのは間違いないと確信したマイルズは周到な計画を立て、実行する…。 当然のことながら最後には警察が勝利するのだが悪党たちの計画立案、実行のプロセスも、受け身に立たされた警察の必至の捜査も迫力満点。サイド・ストーリーである名画のすり替え作戦も面白く、お約束の物語展開でも十分に楽しめる。アーチャー83歳時の作品だが、そのストーリー・テラーの才能はいささかも衰えていない。 シリーズ愛読者以外でも文句なしに楽しめる傑作としてオススメする。 |
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先行して邦訳された3作品がいずれも好評を博し、日本でも日の目を見ることになったコスビーの長編ビュー作。前3作同様、ヴァージニア州を舞台に黒人青年が町の腐敗を暴く「サザン・ノワール」である。
自らの粗暴な行動が原因で保安官事務所を追われ、葬儀社に勤めるネイサンを二人の老婦人が訪ねてきた。彼女たちが属する教会の牧師が自宅で死体で発見され、銃による自殺とされたのだが納得できないので調査してくれという。過去の因縁から気が進まないネイサンだったが、調べを進めると多くの信者を集め隆盛を誇っていた教会には隠された裏の顔があることがわかってきた。その闇は深く大きく、黒人が口を出すことを嫌う保安官事務所や白人社会からの妨害を受けながら、ネイサンは孤独な戦いを貫こうとする…。 これまでの3作の同じく、南部の田舎町の人種差別を通奏低音にキリスト教の頑迷さとも徹底的に戦うストーリーは緊迫感がみなぎっている。さらに容赦ない暴力シーンが重ねられ、全編を通して作者の若さと意気込みが表れている。ところどころに挿入されるジョークやワイズクラックにも硬さが感じられるのはご愛嬌。 コスビー・ファンは必読、現代ノワールのファンにもオススメしたい傑作エンターテイメントである。 |
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一部ではジョルジュ・シムノンの後継者と言われるフランスの作家の2022年の作品。同年のゴンクール賞、ルノードー賞などにノミネートされたというが、位置付けが難しい小説である。折り返しの紹介文には「文芸スリラー」とあり、ネットでは「オフビート・スリラー」、「ひねりのきいたノワール」、「風変わりな推理小説」などと形容されているらしい。
結婚生活に危機を覚えた男が妻との関係修復を目論んでシチリア島にバカンスに出かけたのだが、なぜかやることなすこと悪い方向に転がり、とんでもない結末を迎えるというドタバタ劇。主役の男の言動、心理が謎だらけだが、一緒に行動する妻の方もかなりの変わり者で、二人とも常識はずれである。そこを面白がれるなら高評価になり、そこで波長が合わなければ読んで損をしたとなる。読者を選ぶ作品である。表紙のイラストが本作のテイストをうまく表している。 |
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