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ニコラス刑事 さんのレビュー一覧
ニコラス刑事さんのページへレビュー数324件
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バンデミックが主題のストーリーで、この系統はそれならばどれほどリアリティが出せるかが勝負でしよう。
その辺のところは良く描けていると思います。次にどれほど魅力的な主人公を創造できるか、そしてどのように活躍させるかが大事だと思います。陸上自衛隊の三佐を主人公に感染学者、昆虫学者などが主な登場人物ですが、残念ながらある程度読書量を誇る人にはどれも画一的に見えます。政府の対応や高官、総理などもお約束どうり無能ぶりをさらけ出し右往左往する様子しか見せません。この辺はよくあるパターンで新鮮味がありません。 次にどのように終息させるがが大事ですが、この辺もまぁ及第点と云えましょう。やたら難しい言葉の羅列と漢字の多いページばかりですがそれほど読みづらくはありません。「ジェノサイド」的な内容と思ってしまう人もいるかも知れませんが、むしろ西村寿行のパニック小説的な雰囲気と内容に感じました。かなり文献をあたって勉強したようでけっこうキッチリ書かれていると思います。 面白かったか、否か。好みの問題でしょうが私にはイマイチで斜め読みしました。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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ミステリ作家でない人の作品で楽しめたのは、この「ロートレック荘事件」と坂口安吾の「不連続殺人事件」ぐらいかな。専門家以外の人のアイデアがとても秀逸というのも皮肉なことだけれど、これは普通に騙されるよね。山荘に着く10ページまでの会話を読むと何の違和感もないし。ただ、閉鎖空間であり部外者を除外されるとなると動機さえ読めればおのずと犯人は限定される。そんな単純な事件ではあるが、そうはならないのが仕掛けと証言者の存在と記述の妙であるわけで、
今読んでもうーんと納得しながら唸ってしまう上手さがある。ひとつのネタのパイオニアとすれば古典として語り継がれる栄誉は当然であり、時を経ても読まれ続けられるのもしごく自然なことである。未読の人はぜひ読んでみるべき一冊と云えます。 |
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いろいろなピースがひとつになると何が起きていたかハッキリと解る。それまでが謎めいていて非日常の世界になる。ハルカにとって弟のサトルの予言めいた話は町の民話にあるタマナヒメの物語と重なり次第に新しい町の隠された部分に興味を抱く。導入部分から読者を引っ張る作者の巧さでつい読み耽ってしまう。いろいろな謎が答えを出すまでのハルカとサトルの生活を描いたところもすんなりと胸の内に入り二人の行動を親しみを持った眼でみてしまう。おどろおどろしたミステリではないもののこんな物語も米澤穂信らしく好感の持てる内容で楽しく読み終えることが出来た。コージーミステリーであるが面白い物語になっている。母親の最後の方の現実的な態度も甘くない世の中を示すスパイスの役割なんでしょう。
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じっくりと彼、チャールズが犯行に至る動機や方法を模索する様子を描き、死体が発見されたあとも尚彼の視点で捜査を見守る彼の心の内の恐れや、あるいは楽観的な気分になる心情などきめ細かく描写してある。
ロンドン警視庁のフレンチ警部も登場するが、最後の最後に関係者が集まった席で彼に注目した理由や第二の事件が起きた背景、そして論理的にかれの犯行のすべてを暴き出していく過程を披露するに留まっている。 とにかく1934年の作品とは思えないきっちりとした内容で、法廷のシーンなども検事側と弁護側の論理的な傍証の検証を繰り広げる様は読み応えがある。思わず無罪を勝ち取り真犯人は別に居るのか?などと思ってしまった。犯人にとって捜査圏外に居ようとする思惑、行動が捜査側から見れば逆に注目する理由になるという皮肉な現象も確かにそのとうりで、このあたりもキッチリと書き込んでいるクロフツの筆の確かさに感動すら覚える。倒叙小説の古典的名作は今読んでも本当に読み応えのある一冊であった。 |
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横浜在住の現在大学生が書いたミステリーで、鮎川哲也賞受賞作。
けっこう本格との評判なので興味津々で読んでみたが納得した。事件そのものはシンプル。体育館で一人の男子学生が刺殺される。人の眼や扉が閉められていたりして現場は密室だった。遺留品といえるのか併設されたトイレに一本の傘があった。これだけで推理をすすめ犯人に迫るアニメオタクの名探偵。傘一本で展開するロジック。圧巻の展開で堂々と警察の捜査をリードするその面白さ。つまらないタイトルと思っていたが有名作品のパロディとはね。論理がすべて、その先にあるのが真実。そこだけを追求したストーリー展開であるが、それが嫌味にならずけっこう読ませる筆力で面白おかしく進む構成もよく出来ている。次作が楽しみであり真価を問われることになるでしょう。 |
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落語に興味がない人でも楽しめる落語をモチーフにした本格ミステリーです。見立て殺人を解くカギが村を閉鎖状況にした大雨とは凝っています。普通の思考では思いもよらないことですが、名探偵の思考回路は違うんですね。ミステリーのアイテムがてんこ盛りのストーリーで中々楽しめます。ありきたりのミステリーに食傷気味でしたらお口直しに一読をおススメします。
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客観的にみると主人公の秀一は、人、つまり他人とのコミニュケーションの取り方が下手な少年で自分の判断だけで相手を決めつける幼さがある少年と云える。悲劇の元はここにあるわけで、口論になっても良いからもっと相手にぶつかっていれば違った話になっていたであろうと思う。そんな純粋とも云える多感な年代の彼が選んだ道はおぞましい相手を強制終了させること。練りに練った完全犯罪への犯行も意外なところから綻び始める。きっちりと秀一の抱える問題を描写して彼の動きを追っていく展開だけれど、最後まで読んで残るのは
虚しさだけで他人との関わりをできるだけ避け自分の殻に閉じこもる人間の陥りやすい悲劇を描きたかったのかと思った。ミステリーとしては物足りないストーリーでもある。 |
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前作に続いての樋口真由が探偵となり推理の冴えを見せるストーリー。本を手にとってちょっと驚いた。思いのほか厚い。二作目だから、それ程こねくり回したストーリーの物ではなくて、軽めの謎を用意した中篇を何となく想像していた。しかし、思っていた物とはまるで違っていた。けっこう本格で作者のリキが入っているのがヒシヒシと伝わる。映像製作について詳しい様子だけれど、そういったスキルが有る人なのか。好ましいのは「セリフ」のやり取り。こういったセンスは好きだ。波長が合うと云うか読んでいて楽しい。結局、寸断された場所を舞台にした犯人さがしとなるストーリーで、真由と渉と秋帆との関係も可笑しくて気を揉ませて、この後どうなっていくのだろうと期待させる。次があるならぜひ読みたい、そう思う内容で楽しめました。結局、樋口真由。このキャラクターがすべて。
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物語が始まって262ページに読者への挑戦状がある。そして、謎解き篇が終わるのが344ページ。つまり82ページを費やして謎解きをする複雑怪奇な事件と云える。とてもじゃないが見抜けなかった。緻密なプロットと伏線のさりげなさで真相に目が向かず迷いに迷った。依井貴弘 いい・きゅう とも読ませたいらしい。E・Qつまりエラリー・クイーンに通じるしゃれのようである。本格ファンにはおススメの一冊です。ぜひ貴方も挑戦してみてください。本の中の名探偵に勝てるかどうか・・・。
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米澤穂信の「古典部シリーズ」や、その他の青春ミステリーのジャンルの中で良くあるパターンの主役とか設定自体はありきたりだ。しかし、物語を読ませるその著者のスタンスや思考が他とは一線を画している。
ミステリーとしてのアイテムなども意外なものを使い、話の奥も深いので読み応えがある。軽いチヤラチャラした青春ミステリーと思ってはいけない。二話目の「クロスキューブ」などは手が込んでいて、云ってみれば人情話しなのだけれどアプローチと切り口の上手さに素直に感激する。文章も簡潔にして的確で非情に読み易い。やはり他の作家に無いものを持っている人で、つまりはそれが個性なんだろう。私にとってはそれは好ましい個性なのでこの後も楽しみな作家だ。 |
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死体の手に握られていたカフスボタン。覚えのない事態に殺した中条夏子は混乱する。倒叙小説だけれど一味違った展開で読ませるミステリーだ。夏子の視点でストーリーが始まり、死体発見の後はディスカッションから論理的な考察により事件の犯人を考えるメンバーの様子と、夏子の心情をモノローグで読ませ事態の収拾を図ろうとする各人の思惑が描かれる。肝心なのはカフスボタンだ。何故そんなものを姫乃が握っていた。理解できない夏子はさりげなく会話をリードしてカフスボタンの謎を解き明かそうとする。用心しなければいけないのはゲストの碓氷優佳だ。彼女の考えが読めない。気を付けながら夏子は場をリードして混乱させる。明かりの点いていたロッジ。時間のあいまいさ。大丈夫、逃げ切れる。夏子はそう考えていた。
しかし、ポケットから出てきたもの。殺人者と殺された者。その構図が大きく変わるラストまで一気読みでした。石持 浅海、楽しませてくれる作家だ。 |
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好きな作家です。ですからポイントは若干高めです。相手との心理的な駆け引き。こういった描写はこの作家の得意とするところなんでしよう。友人宅で丁度子供の誕生パーティを始めようとしていた中に主人公が着いたところから始まります。彼は殺人を犯しました。手土産はカバンの中にあります。ここから相手との心理戦が始まります。つまり、友人は急な仕事のため書斎にこもってしまった。友人の妻と友人の妹、そして社長でもある友人についている秘書。この三人と何気ない世間話から誕生パーティの仲間入りをしていると、彼の不在がだんだんと気になりだします。何故顔を出さないのか。主人公にも事情があります。手土産は時間に対して融通が利きません。日を改めて訪問する訳にはいかないのです。何気ない会話からフト不審を覚えます。彼は意図を隠して様子を探り出す事にします。彼、石持浅海はこういった描写が秀逸でページを捲る手が止まりません。考えすぎだろう、何故そう思う、と読んでいても事態は彼の云う方に流れていきます。面白いです。駆け引きと心理戦。こういった地味な内容でも充分読むものを惹き付けて離しません。本当の最後のサプライズには賛否両論でしょうが私は気にしません。だって面白かったのですから。「探偵スルース」と云う映画がありました。あの映画はたった二人しか登場しません。全篇二人の心理戦を描いたものですが、この本も似たような感じでとても楽しく読み終えました。
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初めて読む作家。とあるところでこの本の存在を知った。面白そうな予感がした。その感は確かだった。
純粋な謎解き小説だ。読み終えた今、これに類似したトリックのものを過去に読んだことがあるかどうか考えたが思い至らない。論証で犯人を指摘する、その論証で偽の犯人も真犯人も指摘できるとは驚いた。ただ、個人的には最後の最後でアノことが出てきたのには少し残念に思う。だけどそれも伏線はちゃんとあり納得させられる。それがこの作品を低くみせるとかそんなことは一切無い。パズルが好き。本格が好きと云う人はぜひ読んでみて欲しい。山荘で起きる連続殺人。手垢のついたシチュエーションもこんなやり方があったとは。 作者に拍手と脱帽です。そう、「星降り山荘の殺人」以来の感動です。 追記 私の好きな作家である泡坂 妻夫の弟子とか、これだけでも嬉しい。 |
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乱歩賞で好きなものは「アルキメデスは手を汚さない」。「透明な季節」。「ぼくらの時代」。「焦茶色のパステル」。「浅草エノケン一座の嵐」。「顔に降りかかる雨」。そして「テロリストのパラソル」。
これは皇居に侵入して550年の歴史を持つ盆栽を盗み出す、そんな突飛なアイデアをもとにした作品だが。 文章は女性とは意識させないしっかりした書き方で、会話や場面の状況などを描写して読むものを引き込んでいく確かさはある。 でも、イマイチ話の持っていき方が強引と云うか、もと彼女の金銭面の窮状を救うといった心情などが書き込み不足気味で彼の行動心理などにあまり共感できない。子供のことなどにしてもそんな感じで何故そうするのかといったところが、こちらには上手く伝わっていない。人物造形は可もなく不可もなしと云ったところで魅力的な人物といえば医師の瀬尾貴弘ぐらいか。主人公にはどうにも感情移入しずらくて醒めた目で読み進んだ。単行本の値段が税別で1500円。商品として妥当な値段かどうか。ミステリー色も薄く乱歩賞と云う冠が無ければ読むのを敬遠していたことだろう。 |
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あまり好きではない領域の世界を舞台にしたミステリーだった。特殊な舞台設定だけれどストーリーはシンプルだ。つまり、誰が領主を殺したか。自然に守られた小ソロンの島。つまり嵐の山荘と同じ舞台となる。魔法も何もロジックで犯人を探し当てていく過程が極シンプルで、その間に世界とその時に生きる人々の様子や生活ぶりなどがデーン人との戦いをクライマックスに描かれている。悪く言えば誰の本を読んでいるのかさっぱり解からない没個性の文章。まとまってはいるが内容から観ると少し長過ぎるとも感じる。周到な伏線もキチンと回収する術を心得ているがラストのサプライズはあまり効果が無い。好みの問題でしょうが私には少々退屈でした。斜め読みした箇所もあったほどです。
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うーん、タイトルから面白そうな予感を持って読み始めたが、全体的にもラストの意外性もイマイチって感じだった。特殊な環境を構築するデボラ・シウォード博士の言葉も説得力が無いように感じられる。部分的な記憶を失くしている少年マモルは、他の仲間たちと自分たちの居る施設≒学校についてあれこれと推理を巡らせるが、そう謎めいた雰囲気も無く少々退屈だ。それは最後への伏線であるからで本格的な謎解きの様相を呈していないせいだろう。起きる殺人もそう不可思議な状況ではなく読んでいてワクワク感もない。途中言葉や表現などにオイオイと思ったが、それはそれで周到な計算だったわけだ。だがしかし西澤流のレトリックは不発だったと云う印象だけれど、他のレビューにあるように仮にアノ作品を読まずにこっちを先に読んでいたら、それはそれで違った感想になったと思う。そういったところでは少し残念な気もする。
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ホンのちょっとした心の歪み、わずかな隙間に浮かんだ邪な思い。そのために平凡な人間が、平凡な日常が少しずつ狂いだしていく。誰でも考えるであろう自己弁護的な都合の良い安直な考え。まるでそれがもっとも自然であるかのような錯覚。大丈夫うまくいくさと自分自身を納得させる根拠のない自信。こうしてハンク・ミッチェルは後戻りの出来ない深みにはまり込んでいく。静かで怖いストーリー。海外小説と意識しない訳の良さもあってスタートから物語の世界にスッポリと入り込んでいく。いったい誰がこの件の主役なのか?サラか?ジェイコブなのか?ルーなのか?ズルズルと事態が悪くなっていくのはいったい誰の所為なのか。人間の欲望が本性が周囲の関係を壊していく。誰も知らない440万ドル。悪人になろうと思って悪事を働くものはいない・・・。そう、ハンク・ミッチェルは善良で平凡な男だったのだ・・・その日まで。
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【ネタバレかも!?】
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Confidence Game 略してコン・ゲーム。有名な話ですが、通信販売の詐欺広告です。「いま輪ゴムの需要が多く供給が追いつかないほどです。あなたも簡単な道具で輪ゴムを作ってみませんか。当社の輪ゴム製造機を六ヶ月十ドルであなたに預けます。原材料も一緒です。出来上がった輪ゴムは当社が高値で買い取ります。」広告に釣られて十ドル送ると、ハサミと自転車の古チューブ一本が送られてきたそうです。製造法はハサミで幅0・五ミリに切り刻むこと。と説明文が付いていたそうです。
この様な松田道弘氏の解説も楽しいこの本は1980年新潮社から単行本で出版された。プロローグのショートストーリーが枕としてエピローグのサゲに繫がるという洒落たスタイルで、テレビ局をクビになったディレクター。タレントに逃げられた弱小プロダクションの経営者。いまひとつ何かが足りないタレント志望の男。中々芽が出ない放送作家志望の三十路手前の女。それぞれ訳ありの四人が出会って必要に迫られ車椅子の老コン・マンの知恵を借りてコン・ゲームを仕掛ける。目標は二億円。さて、その結果は・・・。テレビ界の楽屋話や裏事情などがユーモアたっぷりに描かれて、俳優や歌手が実名で出てきたりと笑わせる。アノ手この手のトリックと騙しの仕掛けが面白く、騙される地方の名士といった人間のとぼけた欲も滑稽だ。 明るくユーモアに溢れたコン・ゲーム小説として貴重な一冊である。 |
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