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暗殺のハムレット



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【この小説が収録されている参考書籍】
暗殺のハムレット (ファージングⅡ) (創元推理文庫)

暗殺のハムレットの評価: 4.36/5点 レビュー 11件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.36pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全11件 1~11 1/1ページ
No.11:
(5pt)

構成の妙に感服

三部作一話目の『英雄達の朝』は、面白くはあっても登場人物達の自分本位さが鼻について、ちょっと引いてしまうところもありました。
が、この二話目は、二人の主役の一方であるヴァイオラの、自分本位なまでの役者魂が、物語を展開する原動力になっていて、ぐいぐい引き込まれます。
もう一人の主役カーマイケルと直接顔を合わせるシーンは殆ど無いのに、二人の人生が複雑かつ巧みに絡み合っているように見えて、更にそこにハムレットの生き様まで織り合わさって綾を成す、その構成と語りの上手さには溜め息が出ます。
『ハムレット』をこんな風に〈改変〉してくれるとは、シェイクスピアも草葉の陰でニンマリしているのではないでしょうか?
暗殺のハムレット (ファージングⅡ) (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:暗殺のハムレット (ファージングⅡ) (創元推理文庫)より
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No.10:
(3pt)

テロ組織がちゃち過ぎ

今回はエンタメ性はぐっと増してますが、前作にあったファシズムがひしひしと浸透していくあの雰囲気、心理的描写が希薄になっています。ヒロイン演じるハムレットとヒロイン自身とを重ね合わせる手法には感心しますが、テロ組織のちゃちさには唖然とするしかない。この面子でヨーロッパの覇者ヒトラーの首を取ろうなど冗談でしょう。
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No.9:
(4pt)

歴史はゆっくりと動き、まだ物語は加速せず。

じっくりと読み進めるべき本ですね。相変わらず驚くような出来事も急展開ないですが、着実に英国のファシズムは蔓延しつつあり、暗殺計画の実行で二幕は幕を閉じました。個人的には特別すごくおもしろいわけでもないのですが、なんとなく読んでしまう感じです。カーマイケルの行く末が見届けるため、三巻へ。
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No.8:
(4pt)

もっと読みたいがもう読めないのが魅力の本

このシリーズ、一番盛り上がるところで本が終わる。主人公たちがこれからどうなるのか気になってしょうがないが、一読者に過ぎない自分は、彼らの人生の一場面にすれ違うことしかできないのか。マイナス1点はカーマイケルが若すぎる点。ひとり大活躍するのに20代とは。
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No.7:
(4pt)

「英雄たちの朝」を凌ぐ充実した内容

「ファージング」三部作の第二作。まさに、初作「英雄たちの朝」を引き続く形で綴られている。「英雄たちの朝」の主要メンバー(ファージング・セット)も顔を出すが、その対極にある人々からの視点で眺めている点が本作の特徴である。英国(民主主義国家)が次第にファシズムに染まって行く恐怖及び人種差別、階級社会、同性愛蔑視といった個人の自由を束縛するものへの強い反骨心といったテーマ、そして貴族の娘であるヒロインの一人称と捜査に当たるカーマイケル警部補の言動を主体にした三人称の章が交互に挟まれる構成等は初作と同様である。

これに幾つかの工夫が施してある。まず、全体をヒトラー及び英国首相(初作のマーク)暗殺劇に仕立て上げ、サスペンス(エンターテインメント)性を加味した。更に、ヒロインを舞台女優に設定し、「ハムレット」を演じさせる事によって、「ハムレット」が内包する悲劇性と(マーク等が推進する)英国が迎えつつある悲劇性を重層的に描いた。「ハムレット」の優柔不断性もヒロインの優柔不断性に投影されている。また、「ヘンリー八世」よろしく、ヒロインを六姉妹(中にはヒムラーの妻もいる!)とする事によって、血の繋がりという新たなテーマを設けた。そして、恐らくはIRAを意識した爆弾テロ批判という、これも新たなテーマを設けた。

正義漢カーマイケル警部補(三部作通しての主人公の由)の私生活を深く描いている点も特徴である。警部補自身に纏わる逸話も本作に深みを与えている。「英雄たちの朝」を凌ぐ充実した内容と言って良いのではないか。シリーズ最終作が楽しみである。
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No.6:
(5pt)

だんだん良くなる

「ファージング'T英雄たちの朝」を読んだときは、正直ピンときませんでした。
しかし、ファージング'U暗殺のハムレットを呼んだ後では、「ファージング'Vバッキンガムの光芒」が早く読みたくてたまらなくなりました。
ファシズムの怖さについて、民主主義と自由の価値について、敢えて考えようと思ったことは無いのですが、この本を読んだ後では、考えずにいられません。
そのようなテーマを持ちながら、エンターテイメントとして完全に成立しています。
この本を読むきっかけを与えてくれた、週刊文春のミステリーランキングに感謝しています。
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No.5:
(5pt)

タイトルが凄いですね。劇場での暗殺が題材とわかりますよね?

前作が、殺人の謎を解き明かす物語だったとしたら
本作は、殺人の成否を読者が見守る物語である。

殺害の対象は、悪名高いヒットラーと前作の殺人で英国首相になりおおせたノーマンビー。

歴史を知る我々はヒットラーの行ったユダヤ人迫害の悪行を知っているけれど、
作中ではそれは漏れ伝わるだけで、覆い隠されている。
その中で、暗殺が善であるか否か、暗殺で歴史が変わるのか、
問われてくる点も非常に興味深い。

読者が登場人物の心情に近づけば近づくほど、
「そういう見方もあるのか」「こう展開するのか」と驚かされること請け合いだ。
歴史改変小説であるだけに、読者も最後まで結末がわからない。
次作の展開がどうなるかの想像も踏まえて、楽しみとワクワク感は尽きない。

そして読み終えて、ああ、やはりこの展開しかない、これが最善なんだな、と
納得出来る読後感だった。

英国田舎の貴族の領地、市井の見物客も集まるロンドンの劇場を舞台としてきた本シリーズ、
書名を見る限り、次作はあそこが舞台なのかーと思うと、期待が高まる。

私は、選ばれるだけあって非常に優れた小説だと思う。
シリーズ全体の結末がどう決着するのか、楽しみでならない。
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No.4:
(4pt)

「ヒトラーと英国首相暗殺計画」に関る‘わたし’とカーマイケルの運命

’00年にファンタジー小説で作家デビューした、英国ウェールズ出身でカナダ在住のジョー・ウォルトン女史による、ナチス・ドイツと講和を結んだ英国を舞台にした、歴史改変エンターテインメント3部作の第2弾。’10年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門で3部作まとめて第2位。講談社の文庫情報誌『IN★POCKET』の’10年11月号「2010年文庫翻訳ミステリー・ベスト10」で「総合」第13位、「作家が選んだ」部門第7位にランクインしている。前作『英雄たちの朝』から数週間後。語り手は子爵家に生まれた6人姉妹の3女で、旧弊な家族から家出してラークという芸名の舞台女優になった‘わたし’ことヴァイオラ・ラーキン。彼女が演出家から男女の配役を逆転させた芝居「ハムレット」の主役をオファーされるところから幕を開ける。そんな‘わたし’に、久々に再会したひとつ下の共産主義者の妹がとんでもない難題を押し付ける。一方カーマイケル警部補は、ロンドン郊外のベテラン女優宅で発生した爆弾爆発事件の捜査にロイストン巡査部長を従えてあたる。前作同様、‘わたし’の一人称の章とカーマイケルの三人称の章が交互に展開するのだが、ふたりは“ヒトラーと英国首相暗殺”という恐るべき企みにおいて、実行する側と阻止する側として、ゼロアワーに向けて緊迫感を盛り上げながら密接に交錯する。本書の読みどころは、ひとつは、カーマイケルの警察捜査小説としての面白さ。もうひとつは、舞台女優としてのプロ根性を持つ‘わたし’が、幼いころからの姉妹の絆を大切に思いながらも、アイルランドの爆弾製造専門家デヴリンに惹かれて同棲して、右に左に葛藤し揺れながらも、やがて「ファッショ化する英国」「ユダヤ人差別」に反発するという大義のもと、暗殺実行を決意するまでのプロセスだろう。本書は、それらのプロセスを主軸に据えながら、演劇ミステリーとしての薀蓄、ゲイであるカーマイケルの権力に対する対応と苦悩を織り交ぜて紡がれており、『英雄たちの朝』に続けて読むとその結びつきと一連の流れに対する興味は尽きない。さあ、つぎはいよいよこの一大物語絵巻の完結編『バッキンガムの光芒』である
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No.3:
(5pt)

今年の一押し

 最近流行のサンデル教授白熱教室風に言えば、「数万人の命を救うために約数名に死んでもらうのは是か非か?」とか「‘正義’実現のためだったら殺人も許されるか?」となるでしょうか。このテーマを抱えながら、息もつかせぬ面白さで物語は進みます。早々手元に確保した未読の完結編『バッキンガムの光芒』の赤い帯には‘怒涛の完結編!’と大活字が踊ってますが、第二部『暗殺のハムレット』後半から早くも‘怒涛の展開’で興奮を覚えました。
 小説の形式は第一部と同じですが、1人称で回想するヒロインは、貴族令嬢から反対を押し切って女優になった30代前半の女性に変わります。(勝手にケイト・ブランシェット風の容姿を思い浮かべてました。)
 1949年6月末〜7月初め、ヒトラー初訪英に際し、英独友好を世界にアピールするため英首相ノーマンビーとヒトラーは揃ってシドンズ劇場での『ハムレット』、コヴェント・ガーデンでのワーグナーのオペラ『パルジファル』、ウィンブルドンでの親善試合観戦に臨むことになり、独裁者2人を一度に片付けられる千載一遇のチャンスと、暗殺が計画されます。
 最近の映画『イングロリアス・バスターズ』も思い起こしましたが、カバーの絵のような絢爛かつ重厚な劇場内部の雰囲気や、読者の私達まで共に観劇している気分にさせられる素晴らしい演出・演技の『ハムレット』から、『ゴッドファーザー 第三部』のパレルモのオペラ劇場で繰り広げられるクライマックスが思い出されてなりませんでした。
 この『ハムレット』で主人公ハムレットに抜擢されたのが前述のヒロインで、あれよあれよと言う間に嵌められ暗殺加担から逃れられなくなり、毎日芝居の稽古をする傍ら、ハムレットの如く苦悩します。
 一方で、第一部から登場のカーマイケル警部補は、不満がありながらも組織人として任務を忠実に遂行し、その結果、個人として心の底で願っていた本音と逆の事に手を貸してしまった愚かさに気付き、今後は職務に忠実なフリをして裏をかこうと決意します。命じられるまま何となく歯車の一部になってしまうのはありがちですし、「どーせ独裁者を殺しても直ぐ次の独裁者が出て来るだけ」と言い訳して何もしないのが大多数の中で、まだ彼は良心的で勇敢な方で、完結編ではきっとヒーローとして活躍するのかなぁ。
 自分がヒトラー暗殺可能な立場にいたらどうしたか、暗殺計画を察知したら見て見ぬ振りをしたか、密かに応援したか、密告したか、――To be or not to be ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。きっと多くの読者にとってそうでしょう。
 ☆が5つまでしか付けられないのが残念です。
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No.2:
(5pt)

今年度翻訳ミステリのベストに挙げたい

ナチスドイツが勝利し、そのナチと和解した英国を舞台にした歴史改変本格推理小説の第2弾。このファージングシリーズは、まだ第三巻を読んではいないが、今年度の翻訳ミステリ、あるいは翻訳SFのベストに挙げてもいい内容だと思う。
今回は第1作で、苦い結末を味わった主人公のカーマイクル警部補が、テロリストたちによるヒトラー暗殺の企てを追う。
その企てが成功するか否かは、ネタバレになるので書かないが、捜査を行うカーマイケル側とテロに巻き込まれる女優側の視点を交互に切り替えながら、とてもスリリングな展開になっている。きっと映像化しても面白いだろう。
また、前作では存在だけはほのめかされていたカーマイケルの私生活のパートナー、ジャックも登場し、よりカーマイケル中心の物語になってきた。(でもジャックのオネエ言葉は違和感があるな。同性愛者であっても、必ずしも女性言葉を使うとは思わないんだけど。原文でもそうなのかな?)
今回の結末も詳しくは書けないが、カーマイケルにとってはまたしても苦い結末。しかし、前回と違って、彼は置かれた状況に屈することなく、むしろ、その状況を利用し、ファシズムと戦おうとする。
前作でも思ったが、著者は単なるサスペンスものとしてこの小説を書いてはいない。ファシズムに染まった英国の政治、国民生活がどのようになるのか、そして、それを防ごうとする人々がどのような試みを行うのかといった、シミュレーションとしても読むことができる。
待ちきれず、次作も早速読み始めた。
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No.1:
(4pt)

傑作の予感

前もって言っときますが、このクオリティで三部作終わったら、改変ものの傑作に数えられるよなぁ。
まさに改変が始まろうとするところで終わった前作に続き、2巻は現在進行中の改変。登場人物のほとんどはもちろんその恐怖に気づかず、その先には悪夢の世界しかないことをわかっているのは観測者(読者)のみ。
だけど、その恐ろしさっていうのは、普遍的なんだよね。今現在、政府が導く先に何があるのか考えて、行動を起こそうとする人間なんてほとんどいないでしょう。
それに抗おうとする人々の運命を描いたのがこの作品。
それが正しいにせよ、間違っているにせよ、結果がすべて歴史となってしまうさまを目撃できるのが醍醐味。
あとがきにもあったけど、あらすじだけだと某映画に似ていて、主人公のヴァイオラは脳内補完で完全にメラニー・ロランですよ(笑)
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