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土の中の子供
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土の中の子供の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.45pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全47件 21~40 2/3ページ
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他人から見ても"絶望"と呼べる状況にわざと身を置き、その恐怖を底まで体験することに何の意義があるのか? 幼少の体験:生後すぐ親から捨てられ、転々と居候先を替えた主人公。最後に預けられた親戚宅では殴る蹴るの暴行を毎日受け続け、最後は死に至る寸前にまで虐待され、山中に埋められた。親のいない、土の中の子供。 施設生活、登校、生きる意味を見いだせない毎日。それが、恐怖を求め続ける人格を育んだ。 後半、命の危機に遭うことにより、求めていたものは恐怖ではなく、その先の「あるもの」であることが主人公によって自覚される。この辺の描写は見事だ。 個人的には、物語の中盤、初めて自分の意志で積み重ねてきたある行為が、外力によって崩れ落ちる場面が印象に残った。 | ||||
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人の心の内面を描こうというそういう意図が見えすぎていて、狙っている感じがしてしまって、しらけてしまう。 そんな感じを受けるのは私ばかりでしょうか? | ||||
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「掏摸」で中村文則作品と出会い、「何もかも憂鬱な夜に」で救われてから、少しずつ彼の作品を読んでいる。 彼の作品には、他の作品にはない吸引力がある。 「面白い」と思ったり、「素晴らしい」と思ったりする小説はたくさんあるが、「救われる」と思える小説は数少ない。 中村文則作品は、その数少ない救いの小説で、私に生きる力を与えてくれる。 何作品か読んでいくうちに、「そういえば彼は芥川賞を受賞していたんだ」と思い出し、一度受賞作も読んでみようと思い、この作品を手に取った。 「銃」や「遮光」の初期作品の流れの先にあるこの作品は、やはり似たような重い空気に包まれている。 幼少に育ての親から(もしかしたら生みの親からも)暴力を受けて育った主人公は、生きることに精力的ではない。 あえて誰かに殴られたり、転落死しようとしてビルの上から身を乗り出したりして、自分ではどうすることもできない圧倒的な力に身を曝し、 その中で何かが生まれることを期待している。 でも、いったい何を期待しているのかわからない。 ただ、もう無為に生きることに嫌気がさしている。 この息苦しいような毎日の描写には、何か胸に迫るものがある。 この生きづらさの描写は、けっこう私には生々しいものだった。 中村さんのあとがきを読んでいると、彼にとって「小説」は生きる糧なのだと感じる。 そして生きる術でもある。 自分の人生をすべてかけて、小説を書いていこうという想いが伝わってくる。 だからこそ、何かこちらに訴えてくるような強いメッセージ性を感じるのだろう。 この「土の中の子供」にも、強いメッセージ性がある。 読んでて、息詰まるような緊迫感がある。 なぜ自分は生きなければならないのか、なぜ自分は世界から痛みを与えられなければならないのか、 どうすれば生きることに光を見出せるのか、その答えを得ようと必死で模索している。 その問いに終わりはない。 暴力の中で、かけられるべき愛情をかけられない中で、それでも生きる意味はなんなのか、 この主人公は自分の力でなんとか見出そうとしている。 最後に、主人公は死の瀬戸際へとダイブする。 そこから生還した主人公は何かを見出す。 中村作品が見出す希望は、いつも淡い灯火ほどの光だ。 それでも暗闇が深いぶん、その灯火の温度はとても暖かい。 この作品が芥川賞をとったのは、この灯火の暖かさを選考委員の方々が感じとったからかもしれない。 この文庫には、短編「蜘蛛の声」も併録されている。 短編には、また違った味わいがあるが、こちらにも何か生きていることへの切迫感がある。 存在するということへの不安。 世界とバランスを保つことの難しさ。 実存への疑念、そんなものが感じ取られる。 「土の中の子供」でも主人公は幻聴を聴くことになるが、おそらくどちらも自分の奥底から聞こえてきた声であり、 自分という存在への不安から助長されたものなのだろう。 | ||||
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考えさせられるテーマを含んだ小説である。 人間の存在とは何か。自分(人間)は何処から来て、何処へ行こうとしているのか。 裸で生を受けた人間はどのように生きていけばいいのか。 何故、他者に頼らざるを得ないのか。人間の実存を問うた作品である。 現在、タクシー運転手をしている主人公の私は、実父母を知らず、養父母から施設に移され 成長してきた。アルコール中毒者に近い、白湯子という同棲者がいる。 幼児期に受けた「土の中に埋められる」という暴行。暴走族から半殺しの目に合う暴行。 タクシー強盗から受けた暴行。 「落ちていく」という意識。階上から缶、小生物、タバコ等々を落下させることによる不安、後悔と快楽。 自分までが落下(飛降り自殺)寸前までいく行為。 暴行を受けたり、落下していく「死」への恐怖や不安のなかでしか「実存」を感じられない自分。 かたや、白湯子と月の光に感動しながらする会話に「生」の安らぎ、癒しを感じる「実存」 両極端な「生」を感じる世界を行き来しながら、恐怖や不安を克服し、『死に至る病』から強い意志で 生還していく姿を意識の流れとして描いている。 「落下」していく描写が多数あるが、夏目漱石の『夢十夜』第七話の意識に通じる。自分の出生が実存の 不安になっている原因として、同じく漱石作品にある「父母未生以前面目如何」に重なる。 また、嘔吐の意識が繰り返しあるが、サルトルの『嘔吐』、『実存主義とは何か』を彷彿させる。 いろいろなテーマが織込まれ、人間とは何か、即興で芝居をせざるを得ない人生、自分で決めて いかなければならない生き方等 じっくり読む価値のある内容である。 | ||||
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つい最近、「何もかも憂鬱な夜に」「銃」と読んで、中村文則さんの大ファンになり、こちらを読みました。本当にすごい作家です。たしかに内容は「暗い」のかもしれません。それゆえに、苦手な人もいると思いますが、私はこの描写力はその「暗さ」を「暗さ」のまま表したのではなく、菩薩的なまなざしでその「暗さ」の中にうごめく音を何一つとりこぼさずに観ながら書いたような文章で、読んでいて、哀しみとも慈愛ともつかない深い感情をゆさぶられました。物語の終わりが最高です。「死」を待ち望む者の中で姿なくくすぶっていた圧倒的な生への希求の力が爆発します。この世界の肯定です。読んでいる人の中で闇が昇華され、癒される物語でもあります。素晴らしい小説であり、小説の素晴らしさを教えてくれました。芥川賞受賞作だと知らなくても、大好きになったと思います。書店で買い込んできた中村さんの小説を、これから楽しみに読みます。私よりも若い方のようなので、きっとこれからもずっと読めると思うと、とても嬉しいです。 | ||||
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銃よりは読みやすかった。あいかわらず主人公は離人症っぽく過去をひきずるところがあるがそれでもなんとか生きていることが書けていたと思う。最後は少し希望のある終わりからをしていたのもよかったと思う。 | ||||
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不思議な題名で、興味を持ち、読んで行くうちに引き込まれる 内容でした。 | ||||
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筋としては、虐待をうけた人間がトラウマを克服していく物語ではある。しかし、その読み方ではつまらない。読むべきは違うところにあると感じた。 暴力に自らを晒す衝動がトラウマ克服の手立てであるとは主人公は気づいていない。しかし気づいているなにものかが存在している。主人公の表の意識はその存在を妨げない。意識は死への危険を承知している。それでも、意識外の何物かが命じることに従う。自我やアイデンティティのあずかり知らぬことだ。彼の認識は「私は無機質な世界の一部」ととらえ、「死んだとしても、大したことではない」と言わせる。しかし彼は「無機質」ではない。彼は、有機物であり、生命であり、身体である。彼の身体は彼の認識を超える。そのかすかであるが絶対的な呼び声に彼は従わされる。死をかけた試み(ただし意識的な試みではない)は成功し、彼は救われる。それでいい。その彼が暴力を恐れながら自ら暴力を希求する内部の存在に乗っ取られる有様はとても読みごたえがある。人間は自らを動かすものを知らないのだ。それは人間の唯一の味方なのに。「自分に自分が合わさっていく」感覚を覚えた彼は、世界が驚くほど優しいことに気づく。この小説はそれだけを書いている。他の登場人物の描き方が紋切型なのはどうでもよい、とまでは言えないので、星ひとつ引いて4つとしました。 | ||||
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主人公が屋上からタバコを落とし、その吸い殻の行方をじっとみつめるシーンが印象的。 この作品は、人間の生まれ持った孤独という普遍的な問題を描いているように感じました。 主人公が土の中から最後には顔を出して生きようとする場面で、希望がみえてきました。 | ||||
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暴力、自虐、憂鬱、疲労、絶望、暗闇…。冒頭から延々と続く陰鬱な静けさとその繰り返しに、気持ちは重くやや退屈な印象も持ちましたが、暴力的な支配による忌むべき運命や存在に対し叫び声を挙げる8章は、激しく感情が揺すぶられる名場面で、物語は大きく動き出します。同時収録の「蜘蛛の声」もキリリとした名著です。 | ||||
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面白いんですが。 二作品入っていて、両方とも面白いです。 特に表題作は、子供の頃のトラウマを非常にうまく描けていると思います。 そう言う意味では芥川賞らしい芥川賞。 時事ネタ、と言うことになるんでしょうけど、面白いと思います。 作者が伝えたいことは、ある程度理解できた気がします。 ただ、暗い。 徹底的に暗い。 なんて言うのかなぁ、申し訳ないけど僕にはこう言う経験はないし、こう言う経験をする気もさせる気もないです。 だからなんて言うのかなぁ・・・・・ もうこの人の小説はいいかなぁ、と思います。 読んでて疲れる。 内容星五つ。印象星一つ。 でも星は四つにします。 いい小説だと思います。 もう読まないけど(爆)。 | ||||
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本書は芥川賞受賞作品の「土の中の子供」と「蜘蛛の声」の2作品を収録している 土の中の子供は親族に虐待されその後に施設に預けられタクシー運転手で生計をたてる主人公・・・ その主人公は不感症で生きることをあきらめた彼女と同棲をしている 主人公が最終的に前に進みだそうとする過程を物語にしている・・・ 最後にはなんとなく生きることへ勇気が貰えそうな そんな作品です | ||||
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終始重たい雰囲気が立ち込める、暗闇にのしかかられているような気分になる小説でした。描写の行い方、ストーリーの展開、これらは非常に一貫しており、終わり方もそれに即したものだったと思います。「銃」と同様、強い一貫性を感じました。 しかし、モチーフ(虐待の過去)に対して、内容が乏しいように感じてしまいました。きっと、それは作者自身も自覚していることなのでしょうか? 本文には似たような言い回しが何度も使われており、読んでいる最中に「なんだろう、この繰り返しは?もしかしたら、作者はモチーフを完全に表現することをわざと放棄しているのではないか?」そんな気にすらなりました。 そして、読み終えた後には、モチーフの表現を諦めた向こうにある「深い沈黙」のようなものを感じました。 「あのような体験をしたものは、全てを明確に人に伝わる形では語らないし、それに取り組む者(作者)もまた、その全てを語ることはない。だから、内容が薄いだの軽いだの言う筋合いはない。」 そんな、沈黙の奥にある作者の声のようなものを感じました。 | ||||
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虐待の過去を持つタクシードライバーの「私」が、自己破壊衝動のような喧嘩沙汰をおこすところから物語は始まる。所々フラッシュバックするかのように、過去の幻影が挿入されるので、心的外傷を抱えた不幸な男のありきたりなドラマの展開を予想した。窓の外から缶コーヒを落として、その潰れる様に自己を同化するあたりの陰々滅々とした暗い欲求。外とのつながりをできるだけ排除し、心の傷から愛の行為を不毛にしてしまう女性 白湯子とのみ寄り添うような生活。作者の筆力が高いだけに、正直、ゲンナリしてしまう。 「私」がヤマネさんに借金を求めようとしたときに起こる白日夢は印象的だ。庇護を受けようとすることが罪であるかのような強い負の意識を感じさせる。 本作品は凡百のトラウマ話しと違うことは読み進めていくうちに分かってくる。「私」がタクシー強盗に命を奪われる寸前の脱出行。真の死に向き合ったとき、「私」は再生の手掛かりをつかんでいくのだ。27年の「私」の人生で、自身を滅するごとき行動は、過去を乗り越えるための通過儀礼として存在していたのだろう。 本書のラスト、「私」を虐待し、捨てていった親との再会を拒絶した「僕は、土の中から生まれたんですよ」という言葉を、私は、自身の過去を自身で清算したことの決意表明と受けとめた。 解せないのは、白湯子との関係かな。庇護を受けることの罪を心の内に抱えているのであれば、はたして、人を庇護しようとするだろうか。彼女とのふれ合いが、「私」の再生のための一助となっているのであれば、このあたりを掘り下げて欲しかった。 | ||||
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「土の中の子供」(中村文則)読了。ここで語られている主人公の魂の叫びを私は共有することができなかった。私にとってそれは想像力の埒外にあってまるでパウル・クレーの絵の中の魚のように強烈な寓話性の中にしか存在し得ない「何か」である。(自分でも何を言っているのか判らないが。)(笑) むしろ私は併録の「蜘蛛の声」に共振してしまった。自分を取り囲む日常から抜け出して身を潜めているときの安らかな感覚が妙にリアルに肌に馴染むんだな。大丈夫か?俺。 とは言いつつも、私の貧弱な想像力はさておき、表題作の「土の中の子供」が持つ力強さは否定できないのである。 | ||||
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ものすごい表現力。土の中に生き埋めされるとき、めちゃくちゃに殴られるとき、虐待されるとき、ガードレールに自ら車で衝突するとき。 こんな作家見たことない。いや読んだことない。しかも文章が読みやすくて心地よい。芥川賞作家の中でもセンスを感じる。好きになってしまいそうだ、この作家の表現力。 扱ってるテーマはユニーク。こんなシーン、題材における、こんな被害者側の精神的なサディステックなまでのマゾヒズム的境地心地をリアルに上手く、そして沁みるようにストレートに表現した作家が今までにいただろうか? テクニックではなく、なにか天性のセンスを感じた。 ここに、一緒に収められてる作品「蜘蛛の声」も、短いが、その世界はキュートですばらしい。 | ||||
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以前、大病をしたことがあるが、人生観が変わるなんてことは別になかった。しかし気がついたらそれまで思わなかったことを時折思うようになった。 それは「”生きる”って死ぬまでは生きることなんだなぁ...」ということ。何アホ言ってるのか?と思うだろうが、正直そう思ったのである。 偏差値世代の自分はどこかで人生には目標が必要であり、その目標達成のためにあると思っていたのだろう。しかしニンゲンは別に何かを為すために生まれて来た訳でなく、 生まれたからには死ぬまでは生きてるし、生きたいと思うものだなぁ、と改めて感じたわけである。 この小説をを読んでそんなことを思い出した。 主人公は決して前向きな生きる意欲をもってる訳じゃないし、精神状態はかなり危ない感じである。 でもぎりぎりに「生きてる」だけに「生」をより強く感じるのだ。 とはいえ「生きる勇気」をもらいたいと考えてる人には決して本書をお勧めはしない。 これは芥川賞作品だというが、常々、「名物にうまいものなし」「芥川賞におもろいモンなし」と思っていたが、これは今まで読んだ芥川賞の中で1番印象に残る。 | ||||
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確かに暗いのは否めない。 他の人のレビューにもあるように、ヒロインの性癖や主人公の自分で自分を追い込む 思考は単純かもしれません。 ただこの作家の持つ、とことん掘り下げた表現には感嘆しました。 とにかく惹きこまれる。ぐいぐいと読み手を魅了する文章はお見事!! 暴力の中にある倫理を見せ付けられた。こんないい作品はなかなかない。 探そうとしても、滅多にお目にかかれない。 読み終わった後にも、翌日にも胸に残る感動が気持ちいいです。 ずっと手もとに置いておきたい1冊です。 | ||||
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他のかたのレビューを見てみると、わりと辛口の感想が多くて正直驚いた。 最近は、読んだ後に何も残らない、読後感のさっぱりしたものが人気になり、洗練された……というか簡素な文章が小説によく使われていると思う。そのせいか、ストーリーの以外性や奇をてらった表現方法ばかりが目立ち、描写表現が大幅にカットされている場合が多いような気がする。 しかし、この作家は一切の手抜きなしで、主人公が感じるモノを正確に、緻密に言葉に表そうと努力している。言葉に言い表し難い感覚や心情、極めて主観的なものの見え方などを上手く(丁寧に)言葉に表現している。 そのため、読んでいる側が本の中の世界に入っていき易いし、主人公にシンクロできた。筆力があり、読んでいて感動した。 この小説の書き方が純文学っぽくてとっつきにくいとか、古いとか思う人がいるようだけど(好みによるんだろうけど)言葉だけで世界をつくる作家は、言葉でどこまで世界を表現できるかという、この努力がなにより大切だし、必要不可欠だと私は思っている。 なんとなく、梅崎春夫に雰囲気が似ている気がした。 この人が書く長編小説をぜひ読みたい。今後に期待します…!!! | ||||
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芥川賞という事で読んでみました。 最初は文章が冗長でありわかりにくく、暗いだけでおもしろみが感じられませんでしたが、中盤にかけての展開から夢中で読んでしまいました。幼少の頃の抑えられていた感情が徐々に吹き出してくるシーンや、幻聴でめまいを起こすシーンは暗いだけでなく、引き込まれる怪しい魅力があると思います。私自身がネガティブ思考なのもありますが、主人公の暗い物の考え方には共感できます。最後の「私は土の中から生まれたんですよ」という台詞には、グッと来ました。 プロットも回想があって、それで終わりという訳ではなく、またひと山用意してあるのはなかなかです。収録されているもう一遍の方も、嫌疑と憂鬱さが幾重にも重なって自分の正体を見失ってしまうという構成は秀逸だと思います。個人的には文章にも癖が無く、もう一遍の方が私は気に入りました。 ただ、人物設定が薄っぺらく、人間味が感じられないようなキャラクターもちらほら。前述した文章の件と併せて☆一つマイナスです。しかし、某ホームページのように登場人物に関するネーミングセンスで、著者の才能を測ると言うのは納得がいきませんね。 興味があれば読んでみるのをお勧めします。徒に楽しさやわかりやすさだけを追いかけている現代文学の風潮には珍しい作品かと思います。 | ||||
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