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バルタザールの遍歴
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バルタザールの遍歴の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.19pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全36件 1~20 1/2ページ
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デビュー作とは思えないほど洗練された文体で、ずっと読んでいたいほどだった。 主人公はハプスブルクの青年貴族メルヒオールとバルタザール。実はこの二人はひとつの肉体を共有している。 二重人格者なのか、イマジナリーフレンド保持者なのか、よくわからないが、私のなかにも複数の人格があるので、親近感が持てた。メルヒオールがバルタザールに話しかけるのと同じように、私も別人格に話しかけるし、会話のキャッチボールをする。 メルヒオールとバルタザールの話し方が違うのと同じように、私が人格交代しているときの喋り方は、主人格のときとは違う。説教好きでキツい別人格や、私に寄り添う優しい別人格など、様々である。 でも、私が別の人格とセットで喋ることはない。別人格と会話することはあるが。 メルヒオールとバルタザールは、二人同時に喋ることがあるらしく、その時の話し方は、メルヒオール単体の喋り方とも、バルタザール単体の喋り方とも違うらしい。二人のことはよくわからない。会ったこともないし。というか会えない。 そんなメルヒオールとバルタザールが、物語の中で、恋に破れ、酒に溺れ、ウィーンから北アフリカに流れ、ナチスと乱闘を繰り広げたり、砂漠に置いてけぼりにされたり、新しい恋をしたりなど、様々な冒険をするのだ。 よくこんな話が書けるものだ、大いに楽しめた。 * それにしても、佐藤さんに毛嫌いされている文芸評論家の岡和田晃さんは、佐藤さんの文体をめちゃくちゃ真似ているな、と感じた。 私は彼にうざ絡みをして絶縁された側なのだが、彼が私に対して言い放ったキツい言葉の数々が、『バルタザールの遍歴』にそのまま載っていて、ギクッとした。 彼は佐藤さんが本当に好きなんだな、岡和田さんが自分の無神経な言動故に佐藤さんに嫌われても、まだまだ好きなんだな、と思い、岡和田さんを可愛いと思った。 しかしかく言う私も、岡和田さんにいつまでも執着して、絶縁された後にもかかわらず、彼に手紙やメールなどを出してしまっているので、同じ穴のムジナである。 なにはともあれ、書いてくださりありがとうございました。 | ||||
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主人公の設定とそれに関する小さな事件以外は、アル中の放浪記であって、心が躍る展開は無く、ぎりぎり読みきった感じ。 | ||||
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ハプスブルク家の傍系子孫貴族、ヴィスコフスキ・エネスコ家の当主が主人公の物語。 エネスコ家は代々カスパール・メルヒオール・バルタザールの3つ、何れかのファーストネームを名付ける事が語られ、父カスパールは、主人公の双子2人に何故か1つのファーストネームしか授けなかった事で不都合が生じたように語られる。 この説明で筆者は頭が混乱した。 どうやら周りの人間には一人に見えているのに、双子なのか?それが名前を一つしか付けなかった事により生じた不都合なのか? 単純に、主人公が双子ではなく多重人格なのだろうか? それとも双子なのに名前が一つしか無いので周りの人間には一人として認識されている不思議な現象なのか? 主人公の状況の詳細が語られない状況なので、頭の中の???が解決されないまま話が進んでいく。 時代は第一次世界大戦と第二次世界大戦の狭間の時代の欧州。 アドルフ・ヒトラー率いるナチスがドイツに暗い影を落とし始めた頃です。 貴族制度が崩壊して、主人公の家も没落貴族として時代に取り残される様子が語られ、そんな中でも、欧州各地での人との交流、一族との交流、また父の若い後妻(義母)との不義などが語られるが、ここまでは筆者の読書力が拙いからだと思われるが、他のレビュアーさんが高評価している作者の純文学のような文体、と言うのが自分には合わないのだろうか?と感じた。 正直、内容が頭に入って来なくて読むのが苦痛に感じていました。 振り返って、もうちょっと自分なりに読むのが苦痛だった原因を考えたところ、多分、主人公の双子が置かれている特殊な状況があるからだと思いますが、主人公が内証?内省?を語ったり、二人の考えの違いを語ったりと、とにかく心の中の語りが多い。 また純文学的に物事の説明をされるのが、状況把握を難解にしているように感じました。 それらが多すぎて、双子の周りで起こっている出来事が頭に入って来ないような印象を受けて、ただただ文章を読んでいる感じでした。 この頃までは、もう読むのを止めて脱落しようか?と思っていたのですが、私はファンタジーノベル大賞(正確には第一回受賞作の後宮小説)が好きなので、その受賞作であるこの作品も最後までは読もうと思いました。 それが、この双子の不思議な状況が、特殊な体質だからと言うことが語られ、段々と二人の特殊な状況が真相が解って来た辺りで面白く成ってきます。 そして、この特殊な体質は、父からの遺伝かも?という事が匂わされた辺りで、文体も気にならなくなってきて(内面を語る場面も少なくなってきた気がします)、双子が周りで起こる出来事に巻き込まれて行き、次はどうなるの?次はどうなるの?と、続きが気になり引き込まれて行きます。 私は上記しましたが、ファンタジーノベル大賞が好きで購入しました。 「バルタザールの遍歴」という西洋を思わせるタイトルにファンタジー的な要素を感じてタイトル買いでしたが、内容としては、一般的なイメージのファンタジーではなく、ジャンルで言うとサスペンス小説だと思います。 途中から、これはサスペンス小説だと認識できてからは、どこへ向かうか解らない暗闇の中から、進む道を示されたようで面白くなりました。 難解だと思って頭から煙を出しながら読んでいた部分に伏線が巡らされていたり、膝を叩いて得心できたりしたのも良かったです。 | ||||
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1906年、残照のオーストリア帝国の首都ウィーンの公爵家に生まれた双子バルタザールとメルヒオール。義母との恋に破れた二人は酒に溺れ、台頭するナチスに追われるように転落していく。だが、流れ着いたチュニジアの港町では思いも寄らない冒険が待ち受けていた。 | ||||
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"頭が二つある人間の絵だった。私たちの未来の称号に対して字義通りに敬意を表するつもりなのだろう、二つの頭はそれぞれ冠を頂いていて、童話に出て来る邪悪な巨人のようだった。"1991年に日本ファンタジー大賞を受賞した本書は、世界文学と日本文学の良さが混在するような独特な魅力に溢れている。 個人的にも【一つの肉体を共有する双子】という設定や演劇的展開自体には、おそらく悪童日記の影響をかなり受けているのだろうな。と感じつつも。悪童日記ともまた違って【日本人という旅人的視点で】ナチスが台頭するウィーンを舞台にした没落貴族の描写それ自体には、著者の若い女性らしい丁寧さとやわらかさを魅力的に感じました。 そして【基本的に本人たちは泥酔しているだけ】なのに、後半はまさかの勧善懲悪的なスピードアップした展開になるのは多少びっくりしつつも、これはこれで物語的に楽しくて"あり"だと思いました。(うん。かのハプスブルク家DNAなら壁抜けくらいは。楽勝かな。。) 悪童日記好きな誰か、あるいはヨーロッパを舞台にした頽廃、享楽物語が好きな誰かにオススメ。 | ||||
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デビュー時から特徴的な名文は変わらない。登場人物の底意地の悪さも。 ただ、Kindle版の誤植の多さはどうにかならないか… | ||||
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私は教養がないのでどう楽しめばよいのかわかりませんでした。 しかし文章を声に出して読むといいかんじで、今度誰かに読み聞かせをしようと思います | ||||
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日本ファンタジーノベル大賞をとった小説である。すごく珍妙な出だしで、これはもしかして損切りするのかもしれない、と危ぶんだが、結果としては満足のいく読書タイムであった。決してグイグイ引っ張るタイプではないが、なぜか惹きつけられて読み進めてしまう感じ。 主人公は、一人ぶんの身体にメルヒオールとバルタザールという二人の精神が宿った貴族の子。これは二重人格ではなく、二人で対等に会話するという不思議な状態である。そんな主人公(たち?)の、じわじわと転げ落ちていく人生模様を、決して悲劇的にならずに、かといってギャグ小説にもならず、主人公の回想録(主にメルヒオールが語るが、時どきバルタザールのツッコミが入る)という形式でユーモラスに描いている。 この作家は初めて読んだが、他のも買って読んでみようと思うくらい面白かった。 | ||||
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嵌りました。 翻訳物では、この言葉の選び方、遊び方はできないと思います。 主人公のグダグダさ加減と、いい男ぶりが目に浮かびます。 ヨーロッパの香りと不思議さを堪能しました。 ストーリーと文章も楽しめて、なんと贅沢な1冊でしょう。 | ||||
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暇つぶしという理由以外に積極的に小説なんぞを 読むにたる理由がもしあるとすれば、 ごくまれにこういう楽しみを与えてくれる作品に 出会えるからなんだ。こう断言してみたい。 米原万里の「オリガ・モリソヴナの反語法」や 山尾悠子が好きならおすすめです。 | ||||
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面白かった。 読みたいと思いながらなぜか未読だったのだが、こういう話だとも思ってなかった。 とても特殊な「双子」の話で、まず設定が強烈なのだがそれだけじゃない。 種明かしともなるような、「父のからだ」のエピソード。最初は ん? と思ったのだが、後になってわかったときの爽快さ。 ちょこっと前のヨーロッパという舞台もとても鮮やかだし、後半の地もまた愉しい。 バルタザール氏にとっては相当ハードな土地ともなるが、彼の不運をうっかり愉しまされてしまった。 読後10年経っても絶対に忘れない小説なのは 間違いない。 | ||||
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レビューの評価が高く賞も取っているようですが、私には合いませんでした。文体も世界観も。好きな人は好きなんでしょうか。こんなに絶賛されるのが不思議です。 | ||||
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かなりの肩透かし。期待しすぎましたね。はっきり申し上げて、こんなに肩が凝った本は初めてです。文章力はあると思いますよ。ただ、あの解りにくさで答え丸出し又は意味不明な描写を見せつけられても、へ? としか思いません。まして、人間性がいまひとつ。前半を読んでいる時は、後半で上手く纏まる、と期待していましたが、結局後半は訳がわからなくて……。変に凝りすぎている。とにかく、私には合わなかった。 | ||||
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絶妙なネーミングセンスが非常に好み。シニカルかつ洒落た台詞まわしも素晴らしい。洗練されながらも重厚感ある文章で読みごたえがあり、女性それも20代の作家が書いたものと知りその才能に脱帽。読み終えてからこういうものが読みたかったと気づいた。この作品に出会えて感謝する。ただし読みやすさを重視するならお薦めは出来ない。〜追記〜お酒が飲みたくなります。 | ||||
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この作家のエッセイを読んで、ずいぶんえらそうな人だと思った。その毒舌に興味をそそられる形で買って読んでみた。 ちょっと退嬰的で暗いけど、読者を引きつける表現力も構成力もある。巧い。賞を取ったのもこれなら分かる。 文句をつけるとすれば、小説全体から湧き上がってくる力というか芸術性というかがもう一押し欲しいところだ。だがそんな文句をつけても仕方ないだろう。 ノスタルジアを感じさせる娯楽なのだと思う。 読んで何か問題が解決したりする小説ではないのだろう。もっとも、文学から来る解放感なぞだいたい一時のことだ。敵が死んだところで、主人公が別世界を目指すところで、解放はないのだ。徐々に衰微し、死に向かうなかで、わずかでも渋くても人生の実感を味わう。そういう一種のハードボイルドな感じの味わえる作品だと思う。 | ||||
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1991年度の日本ファンタジーノベル大賞受賞作。 大分前の作品だけど、決して古くさくない。 ちょっと不思議な小説。耽美的でもあるけど、ちょっと抑制されている感じもあるけど、後半の展開はスリリング。ナチとかの歴史的背景もうまく使われてる。 | ||||
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これはもう、すごい。 講談社とのバトルとかかなりニヒルな人なんだろうと思うけど、 知識のオンパレードといい、筆の運びといい、なんだろう、絢爛豪華?重厚長大? とにかく鳥肌が立った。 宮城谷昌光氏の中国王朝ものにもやられた感だったけれど、この洗練、瀟洒、軽妙、退廃・・なんだなんだこのカンジ? もう一回この本を読んだ記憶をなくして、最初から読みたい! | ||||
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この本が出た年の暮れ、ことし最後の本は何にするかと考えながら書店をふらふらしていて、何となく装丁が気に入り買って帰った。読んで仰天、まさに1年を締めくくるにふさわしい運命の出会い的な作品だった。挟まっていた解説書に、選考委員が翻訳ではないかと疑ったと書いてあったのを覚えている。男女の関係が描かれていないのが不満だとも書かれていたが、そんなもん、この作品には要らんわい。当時のヨーロッパの退廃的な雰囲気、世界最後の本当の貴族様が描かれていて、以来、私にとって佐藤亜紀は特別な作家となった。 | ||||
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「ひとつの体を共有する双子の華麗なる遍歴」とストーリーを聞いてパリの貴族の家に生まれたシャム双生児の話だと思ってたんですが違いました。でも例の浴槽ドボンまで「バルタザールの正体って実は人面瘡?」と疑ってた馬鹿な私。 この物語はメルヒオールの手記という形で幕を開けるのだが、作中に挿入されるバルタザールの反論というか突っ込みというか、それがとてもいい味出していて面白い。 メルヒオールの言い分に「そうじゃない」「誤解だ」「なんてことだ、まだあの時の事を根に持ってるのか?」と合いの手を入れるバルタザール、なんたって同じ体を共有してるからその気になればむりやり手を乗っ取って訂正を挟む事が出来る。 げに便利な二人羽織り漫才にくすっと笑ってしまう。 とても流麗で端正な文体なのだが、本書の魅力はそのエスプリとユーモアにあると思う。 兄弟がシュトルツに注ぐ意地悪な視線、女にふられてやけくそになった挙句の放蕩三昧の日々、初めて駱駝に乗ったときの公爵にあるまじきはしゃぎっぷり、金髪のエックハルトの愛すべき小悪党ぶり…… 文体の格調高さにもかかわらず、それらの描写が非常にツボを得ていて小気味いい。 「ぺぺと名前までつけていたのに!」と駱駝の誘拐を本気で口惜しがるさまに噴き出さずにいられようか。いや、無理。 そんなに難しく考えなくても一度このユーモアがツボに入ればすらすら読めるので心配なし。 続編とかでないかなあ。 坂道を転がり落ちるような凋落の一途さえいっそ清清しい二人のそれからが読みたい。 | ||||
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何と濃密な物語。 舞台設定と主人公の設定だけでも勝ったも同然だというのに、それを勝ち誇る事もせず、軽快な筆致で軽やかに書いているのが凄い。 この内容なら、幾らでもその事を描写と説明に頁が膨らんでしまうところを、そっけないぐらい説明を少なく、 さらに後の展開をさらっと書くので、否が応でも先の展開が気になってしまう。 そのくせ、実際にその事を描写する段では、前に描写した事については触れないという始末。 しれっと伏線を回収する手際といい、これがデビュー作とは恐れ入ります。 最後の方に、ある人物による一人語りで、一気に説明してしまうのはちと気になったものの、それはまあご愛敬。 物語を上手くまとめて、余韻を残した終わり方で締める手際もお見事。 読書好きにこそ、オススメの一冊です。 | ||||
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