(短編集)

MISSING



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MISSING (双葉文庫)
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MISSING (双葉文庫)

2001年10月31日 MISSING (双葉文庫)

「このミステリーがすごい!2000年版」第10位!第16回小説推理新人賞受賞作「眠りの海」を含む処女短編集。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

MISSINGの総合評価:7.71/10点レビュー 68件。Bランク


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全2件 1~2 1/1ページ
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

貴方が今夜泣きたいならこの本を読むことを勧めます

いきなりデビュー作にて2000年版の『このミス』で10位ランクインという快挙を成し遂げた短編集がこの本多孝好氏の『MISSING』。それから約19年を経てようやく読んでみた。

まず本多氏が作家になるきっかけとなった小説推理新人賞を受賞した作品が1編目の「眠りの海」である。
この短編、当時はけっこう話題になった作品だったので興味深々で読んだが、率直に云ってミステリとしての謎は弱い。デビュー作をベテラン作家と比べては悪いが、それでも同じように初期には学園を舞台にした短編も著している東野氏のクオリティに比べれば、真相が透けて見えてしまっている。
しかし本多氏は本書を単なるミステリに留まらせずに最後に一味加えることで幻想小説へと昇華させている。これがこの作品を一段上の高みに押し上げているのだろう。導入部として最も適切な一編だ。

次の「祈灯」は部屋に入ると見知らぬ女性が普通にいたという奇妙な導入部が印象的だ。

続く「蝉の証」は老人ホームが舞台となった作品。老人ホーム『緑樹荘』に入っている祖母から奇妙な依頼をされる。
変則的プライヴェート・アイ小説とでもいうべき好編。
相川老人の許を訪れる孫と思しき、およそ堅気の人物とは思えぬ巨躯で金髪に染めた首にチェーンをぶら下げた男の正体を突き止めるために主人公が捜査で出会う人々から知らされる相川老人の意外な過去。老人ホームでくたばるのを待っているだけと見なされている人たちが生きた道程とは実は波乱に満ちていたのだと気付かさせられていく。確かこれが次作『ALONE TOGETHER』の原点となった作品ではなかったか。
しかし本編にはこの短編集に通底するあるテーマが主人公の口を借りて語られる。それについては後述しよう。
しかしなぜ当時20代の本多氏がこれほどまでに老人ホームに住まう老人達を活写できたのか、それを驚くべきだろう。

ミステリというよりもほろ苦い初恋物という趣のある「瑠璃」は4つ年上のルコと僕の2人の交流を描いたもの。小学校6年生の頃、高校生の頃、そして大学生の頃に僕とルコとのエピソードが綴られる。
この短編では他の作品と違い、ルコがなぜ自殺したかが主人公の中で理論付けられない。その答えが、もしくは手掛かりが残されているルコが遺した手紙の内容についてあえて作者は触れずに物語を閉じる。ある意味、これは作者の中で冒険であったのではないか?また一つここに魅力的な女性を描いた青春小説の傑作が生まれた。

最後の一編「彼の棲む場所」は味わいがガラリと変わった作品だ。
人間の、心の奥底に抱く殺人願望、破壊衝動。そんな昏い情動を実は高校時代から優等生でテレビでクリーンを絵に描いたような有名タレント教授が抱いていたら…。
彼が固執する誰も知らない同級生サトウとは、もう彼の暗黒面に他ならないのは自明の理だろう。そんな読んでいて吐き気の出るような話を聞き手である私が飄々として受け止め、日常に戻るギャップが印象的だ。


MISSING。それは喪失感。
MISSという単語は日本語で云われている「誤り」とか「間違い」という意味は全くなく(日本語のミスはMistakeの省略)、「誰かのことを思って寂しくなる」という意味だ。

本書に収録された5編に共通するのはまさしくこの「誰かのことを思って寂しくなる」、即ち喪失感だ。

そしてこの喪失感ほど残酷なものはない、という作者の主張が行間から見えるほどここにはある特殊な思いが全編に共通して流れている。

それは3編目の「蝉の証」の中で主人公が考える次のことだ。

「欺き、騙され、そうまでして人は自分が生きた証をこの世界に留めずにはいられないものだろうか」

まさしくそうだろう。喪失感という心に与える巨大な負のエネルギーが却って残された人々の心に存在感を浮かび上がらせる。

あの時確かに君はいたのだ、と。

この喪失感について作者は3編目の「蝉の証」で答えを出したかのように、死の間際に取った人間の不可解な行動の意味を探る趣向から、喪失感そのものにスポットを当てて書いているように思える。4編目の「瑠璃」は失った憧れの従姉のお姉さん、5編目の「彼の棲む場所」ではちょっと変わった喪失感だ。

そう、本書の中で異色なのが最後の「彼の棲む場所」。今までの短編が人を失うことの喪失感―恋人、妹、娘、堕胎した赤子、事故の被害者、憧れの年上の女性―を扱っているのに対し、この作品では「人を殺す機会」を失ったことを惜しむ心の暗部を語っている。他の4編が感傷的なのに対し、この作品だけが実に欲望的だ。

また本書の特徴として収録作全てが一人称叙述で書かれ、主人公が全て「僕」と匿名であることが挙げられる。このことで読者は物語の世界に自分を重ね合わせることが出来、したがって主人公が抱く喪失感が密接に感じられるようになっている。

しかしこの本多孝好という作家の人間を描く力、落ち着いた筆致には正直恐れ入った。これがデビュー作だというのだから驚きだ。語り口や時折挟まれるユーモア交じりの比喩など、無理を感じさせなくほどよくストーリーに溶け合っている。

特に感服するのは各編に収められたエピソードの上手さ。
老人の貯金を当てにして、嘘をついて手に入れたお金で旅行に行ったがために、その老人は一文無しになり老人ホームを出ざるを得なくなり、挙句の果てに講演で野垂れ死に同然に死んでしまった話や終業式の日に無免許で買い換えたばかりの新車を運転してすぐにボコボコにし、プールで泳いで遊んだこと。野球部のエース争いに敗れ、マネージャーを任された部員がわざと煙草を吸って甲子園予選出場停止になったことがきっかけでクラスから爪弾きにされ、自殺にいたった話、などなど。
どれもがボタンを掛け違えたことで誰の人生にも起こってもおかしくないような話だ。これらが物語に実に有機的に関わって傷みを伴う結末に深みを与えている。

案外「○○年版『このミス』第×位の傑作」という惹句は当てにならないものが多いが、本書はその数少ない中の例外であった。
特に大切な誰かや守っていた何かをなくした時に読むとこの作品を読んで去来する感慨は殊更だろう。ちょっと泣きたい夜にお勧めの一冊だ。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:
(6pt)

MISSINGの感想

タイトルが「ミッシング」なので、ミッシングリングが何かあるのかと思ったのだが、なんもなかった。そういう意味のタイトルではなかったようです。
ミステリ要素に少し欠けてますかね

アンコウ
BKBVHN0W
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No.66:
(1pt)

KINDLE版のワンクリック決済はワンクリック詐欺!!

kindle版をワンクリックで決済できてしまう、ワンクリック詐欺みたいなことはやめてください。
MISSING (双葉文庫)Amazon書評・レビュー:MISSING (双葉文庫)より
4575508039
No.65:
(5pt)

小説が好きになったきっかけの本です

いつ読んでもみずみずしい作品の数々。いちばん初めのカバーが特に好きでした。
MISSING (双葉文庫)Amazon書評・レビュー:MISSING (双葉文庫)より
4575508039
No.64:
(5pt)

ならば、さっさと歩き出そう。

ピリッと来るのが唐辛子、ツンと来るのがワサビ。同じ辛さなのに、日本語とは奥が深い表現世界だと思う。
半額のシールが貼られたマグロのお刺身。家で切って食べようとするとワサビを切らしていた事に気が付く。銭形警部の出てこないルパン三世のような喪失感。子供のころは嫌っていたのに、今になってみればワサビの無い刺身は未完成だ。

でもワサビの辛さを表現するとき、もっとスッとする表現は無いものだろうか。口の中で齧ると喉の奥から鼻に向かって刺激と辛味と香りが絶妙なバランスを保ちながら通り抜ける。これを一言で表すと「ツンとくる」なんだかもったいないし、子供たちにも伝わりにくいだろう。

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僕は手のひらを握り締めた。そこにある一本の線が、本当にその人の運命を決めてくれ
るというのなら、僕は今これから神を崇拝したっていい。
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本多孝好さんの繊細でどこか切ない描写は、その世界に一瞬でタイムワープさせる。特に、切ない恋愛小説で出てくる心境や環境の表現は、映画館の巨大スクリーンをたった一人で鑑賞しているような自分だけの世界観に浸ることが出来る。

病室の窓が開いてカーテンがなびく、著者のフィルターを通せばそれは、風の重さや季節の表情、空気の匂いで語られる。意識と無意識の間の感情すらも言葉にしてしまう。個人的にはシンプルな描写が好きなのだが、その言葉選びにはにやけてしまう。

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夏場にはカップルに占領される土手にも、まだ涼しい風の吹くこの季節には誰もいなかった。靴底が砂利をする音と川の流れる音だけが聞こえた。川面が向かいの家の灯を映していた。
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「MISSING」には5つの短編が収められている。生徒と教師の恋、無理心中、自殺、死んだ妹になった姉、結婚詐欺、不倫などの重たいテーマで、「死」について描かれる。
生きる者の心に半永久的な何かを残そうと死にゆく執念が、なぜか愛おしく、爽快感さえ覚えてしまう。晴れることの無い罪悪感と一緒にこれからを生きる人と、それぞれの事情があって死にゆく人。それなのに、どちらにも共感し、どちらにも同情してしまうのは何故だろうか。

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「じゃ、さっさと出かけよう。夏は待ってくれないよ」
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残された人が背負う荷物。その中身について正解かを判断するのは出来ないけれど、どちらにも事情があって、都合がある。背負ったモノの正体とこれから歩む道筋。どう繋いでいくかは、生き残った僕たちにしか選べない。それでも、生きていた間に徳を積んだ利子か何かで、生きる者の背中か足元かを照らして欲しいと願うのは、弱さと言うのだろうか。答えは出ずとも次の死は待ってくれない、ならば、さっさと歩き出そう。
MISSING (双葉文庫)Amazon書評・レビュー:MISSING (双葉文庫)より
4575508039
No.63:
(3pt)

買いかもしれませんが・・・。

勤務していていた女子高の司書の先生から30数年前に勧められて買ったのを今の今までの積ん読で、もはや積んですらいなかったものをコロナ禍の断捨離で見つけて読みました。
内容については題名の通りに登場人物が近しい人を失った人であったり、近しい人を失ったと語る人であったりと、つまり喪失の物語を集めた短編集ですが、身近な人や、身近な人の身近な人の多くが少なからず亡くなった、還暦を目前に控えた現在では、おそらく若い頃に読んだのであれば得られたであろう感興が何割も削がれている感じがしました。
MISSING (双葉文庫)Amazon書評・レビュー:MISSING (双葉文庫)より
4575508039
No.62:
(4pt)

「死」と向き合う短編小説集

心中、自殺、殺人?、末期癌など、死と向き合っている人や、
死を選んだ人の心情について、本人ではなく他者が思いを巡らせ
る短編小説集だった。
 推測なので、本人の心情がその通りだったのかは分からないが、
表面的ではなく、心の奥底にまで入り込んで推察しているのが
よかった(切なかった)。
MISSING (双葉文庫)Amazon書評・レビュー:MISSING (双葉文庫)より
4575508039



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