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バルタザールの遍歴



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バルタザールの遍歴の評価: 4.19/5点 レビュー 36件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.19pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全36件 21~36 2/2ページ
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No.16:
(5pt)

「バルダザールの遍歴」と邂逅

何といっても遍歴というタイトルである。
作者と作品は違う全く別物というテキスト主義の立場からみても、佐藤亜紀の身辺は小説以上におもしろそう。でも、いろいろあっても、こんなおもしろい小説を書くのだから、佐藤亜紀の周りのスキャンダラスなことは二の次でしょう。100年たったらテキストしか残らない。まずおもしろい。完成度は特筆すべき。読むべし! 読了後、ウィーンに行く機会があり、ベルベデーレ宮殿で思いがけず「3人のマギ:カスパール、メルヒオール、バルダザール」を描いた絵画をみた。暗い部屋に30cm四方くらいの大きさであったろうか。忘れられぬ邂逅。
http://ivanisevic.ti-da.net/
バルタザールの遍歴 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:バルタザールの遍歴 (新潮文庫)より
4101317119
No.15:
(3pt)

期待しすぎた

評判を見るかぎり完璧に面白い小説ということで、書店で手にとって読んでみた。
たしかに、グイグイと引き込まれる。夢中になってページを捲った。
ただ、この作品はサスペンスでもSFでもない。
私のように何か「鮮やかな大仕掛け」を期待して読むと後味の悪さが残る。
どんでん返し、意外な真実、そういうものは無いと思ったほうがいい。
所詮素人の私が理解できる小説ではなかったのが残念。
バルタザールの遍歴 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:バルタザールの遍歴 (新潮文庫)より
4101317119
No.14:
(4pt)

考え抜かれたファンタジー

毀誉褒貶の激しい著者ではあるが、そういった周辺の評判に振り回されるよりは、まずはこのデビュー作を手にとって読んで欲しい。輝かしい才能がここにはある。
ひとつの肉体に2つの精神、という設定がまず素晴らしい。表層を見せることなくいきなり形而上に至れる文学という技法ならではの巧みな設定である。キャラクターの描き分け、物語構成も鮮やかで、どこにも隙がなさ過ぎるのが欠点、としか言えないぐらい完成度が高い。寡作になってしまったが、その後の著作でも決してクオリティは落ちていないのではないだろうか。新作が待たれる。
バルタザールの遍歴 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:バルタザールの遍歴 (新潮文庫)より
4101317119
No.13:
(5pt)

せっかくなので他の人が書いていないことを。

この作品を読んで驚いたことは、(文体の巧みさとかも、まあ、そういうこともあるが)
双子としての価値観が最後までブレなかったことである。
たまたま肉体が一つだったために、人格形成期によくある双生児特有の悩みが、逆のベクトルに向かっているというだけで、
「双子の人格」が大げさでも、現実からの乖離も殆んど無く、とても自然な状態で物語に馴染んでいる。
(はたして作者がこういう意図で執筆したのかどうかは分からないが)
メルヒオールとバルタザールの2人には
相互に独立して対等でありながら、どこか互いが互いでないことによって自己のアイデンティティを保持しているようなところがあり、
正しく一緒に生まれた無二の存在ではあるものの、別に運命的でも宿命的でも何でもなくて、
相互依存や価値観の近似が確かに存在してはいるが、最終的には別人格という所に変わりは無く、
そこには、他の創作作品によく見られるような「兄さん」「弟よ」という
気持ちの悪い兄弟愛も入り込んではいない。
もし現実に精神が肉体からしばしば遊離する人が存在したとき、
この本のファンタジー性とは、単純に肉体が一つしかないという一点のみであり、
私から見れば「双子の人格」は絵にある怪物でも何でもなく、精神の方に異常性は何も還元されない。
(リアリティという意味では他の方々の仰る通りだが)
多分作者はこんな意図は作品に組み込んではいないだろうが、
読みとしてはこんなのも有りじゃあないか、
というくらい面白いことが
とにかく言いたい。
バルタザールの遍歴 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:バルタザールの遍歴 (新潮文庫)より
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No.12:
(5pt)

才能の片鱗

 デビュー作でいきなりこういう作品を書く作家は幸せ者である。普通なら輝かしいキャリアを築いているだろう。直木賞、芥川賞、山本周五郎賞、三島由紀夫賞、野間文芸新人賞、吉川英治文学新人賞のうち一つぐらいはは鼻歌交じりで掠め取っているはずだ。
 しかし、まあ、それは「とある事件」をきっかけにどえらい事になってしまい、それが原因なのかよく判らないが、寡作になってしまう。まあ、それはいい。
 内容に入る。
 下手すると単なる二重人格者を扱っただけ、となるところを「一体の肉体に双子の人格」という設定を生かした上等な歴史小説に仕上げてしまった。上等じゃねえか。これイイゼ。ファンタジーかと問われれば答えに窮するが、まあ、そんなことはどうでもええやないか(笑)。一応、「一体の肉体に双子の人格」という設定が幻想的なんだから。
 読め読め。とっとと読め。
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No.11:
(4pt)

高尚な文体で書かれた漫画である。いい意味で。

第二次世界大戦前のウィーンで貴族として生まれた「私たち」によって語りはじめられる物語。主人公は一つの体を共有する「メルヒオール」と「バルタザール」という双子。シャム双生児でも二重人格でもない。非物質的実体としての二人が物質的実体としての一つの肉体に宿っている。二重人格ではないので二人は会話をしなければお互いの考えが分からないほど独立した存在である。このオリジナリティ溢れるキャラクターによって物語は否が上にも独創的となる。さらにナチスの足音と共に不穏になってゆく社会情勢、没落していく貴族の退廃と耽美を緻密に描くことによって、まるで海外小説の邦訳を読んでいるような気分にさせる。格調高い文体、聞き慣れない外国人名等によって前半は読み進めるのに苦労するだろう。しかし後半に行くに従って物語は躍動的な冒険小説に変貌していく。そして実はこの小説は重厚な衣を纏った漫画であるということに気が付く。格式あるオペラハウスで演じられるモダンなエンターテイメントと同じく、漫画であることは劣ってることを意味しない。楽しく読めることは小説の美徳である。だが度が過ぎたサービス精神が気になる部分もある。例えば後半の重要人物にナチスのSS将校エックハルトとその部下ハンスとグスタフが出てくるが、ちびでハンサムな金髪で残酷だが臆病な親分と力持ちだが間が抜けている子分という図式はハリーポッターで言うところのドラコ・マルフォイに対するクラップとゴイルに同じだ(尤も制作年から考えて真似をしたとすればJ.K.ローリングの方だが)。また退廃的な話の筈なのにむしろ爽やかな気分で読めてしまうのは、リアルな不条理感を欠いたご都合の良いストーリー展開のせいだ。だからこそむしろ第3回日本ファンタジーノベル大賞に相応しい。これは思想や哲学を伝える小説ではない。純粋に楽しむために読むエンターテイメントなのだから。
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No.10:
(5pt)

ファンタジー=貴族性

日本ファンタジーノベル大賞受賞作なのに、ちっともファンタジーらしくない。なるほど主人公はひとつの身体しかない“双子”だし、幽体離脱まがいのことをしては勝手に行動している。けれど、それ自体は何らファンタジックではない。舞台は、ナチスの台頭著しいドイツを横目でにらみ、その騒々しい足音を間近に聞くウィーンから始まる。そこで彼らは貴族の家に生まれ、ただ刹那的にその身分を享受してきた。恋に傷つき酒に溺れ、その間に土地屋敷を取りあげられ、北アフリカの砂漠の町まで落ち延びるという生き様は、何も生み出さないという点でどこまでも貴族的だ。そして恋心を従兄弟に捧げる令嬢、ナチスの美青年将校、気っ風のいいパリジェンヌといったロマンティックな面々が脇をかためる。そのころにはとうに崩壊していたはずの貴族という特権階級と、それを彩るアクセサリーのような人たち。その優美な存在にこそ、この物語のファンタジー性が見えてくるのである。
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No.9:
(5pt)

大人のためのエンターテイメント

ファンタジーという枠組みで捉えて甘くみると大やけどする、見事なまでに完璧な小説です。趣向でいえば、憂鬱といえば「甘美なる」と形容したくなる、没落貴族、ハプスブルグ家と聞くとついうっとりしてしまうといった類の人向け、でしょうか。ストーリーだけでも十分魅力的ですが、歴史的背景が驚く程しっかり描かれています。ある程度の年齢に達し知識(専門的というわけでなくあくまで常識程度の)身につけてしまうと、わざわざ「現在の日本」以外を舞台に設定しておいて俄仕込みのいいかげんなリサーチを元に書いたような小説には、陳腐さを感じて興ざめしてしまいますが、この本は十分なリアルさを感じられます。かといって、ストーリーの運びを邪魔するようなまどろっこしい歴史の説明がある訳ではありません。簡潔な文と勢いある運びでぐんぐん作品世界にハマれます。大人が、物足りなさを感じたり白けたりすることなく、心から楽しめる読みごたえある一冊だと思います。作風を他の日本人作家で例えることは難しいですが、川上弘美あたりとはかなり対極なのは確実かな。漢字が多いとダメ、外国文学アレルギーだ、という人には少しつらいかもしれません。
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No.8:
(5pt)

大人のためのエンターテイメント

ファンタジーという枠組みで捉えて甘くみると大やけどする、見事なまでに完璧な小説です。趣向でいえば、憂鬱といえば「甘美なる」と形容したくなる、没落貴族、ハプスブルグ家と聞くとついうっとりしてしまうといった類の人向け、でしょうか。ストーリーだけでも十分魅力的ですが、歴史的背景が驚く程しっかり描かれています。ある程度の年齢に達し知識(専門的というわけでなくあくまで常識程度の)身につけてしまうと、わざわざ「現在の日本」以外を舞台に設定しておいて俄仕込みのいいかげんなリサーチを元に書いたような小説には、陳腐さを感じて興ざめしてしまいますが、この本はきちんとリアルさを感じられます。かといって、ストーリーの運びを邪魔するようなまどろっこしい歴史の説明がある訳ではありません。簡潔な文と勢いある運びでぐんぐん作品世界にハマれます。大人が、物足りなさを感じたり白けたりすることなく、心から楽しめる読みごたえある一冊だと思います。作風を他の日本人作家で例えることは難しいですが、川上弘美あたりとはかなり対極なのは確実かな。漢字が多いとダメ、外国文学アレルギーだ、という人には少しつらいかもしれません。
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No.7:
(4pt)

技巧を楽しむ小説

 最近の日本の小説には読者がストーリー自体よりもそれを語る技巧や構成の妙や歴史的薀蓄を楽しむものが増えている気がします。『バルタザールの遍歴』はその代表格の一つでしょう。 エンターテイメントの一つのあり方としては分かりますし、その意味ではとても完成度の高い作品だと思います。ただ、「文学」とか「芸術」という観点からするとやや冗長の感は免れません。これは好みの問題と言ってしまえばそれまでですが、『フーコーの振り子』を読んで「へえ、良く調べたね。それで?」と思うような読者にはお薦めできません。 個人的には、ボルヘスやイーガンや内田百間の短編に見られる簡潔さと暗示の深さ、ディックやドストエフスキーやトーマス・マンの小説にみられるような情念と思想のせめぎ合いと彼らの偏執的なまでの使命感こそ、「文学的感動」の源泉だと思っています。なので、残念ながら最高点は上げられません。
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4101317119
No.6:
(4pt)

少女こそ読むべき本

もしあなたが芥川や太宰を読んで「素敵」と思うような少女なら、読むべきでしょう。あるいは澁龍や三島や乱歩の「妖しさ」にどうしようもなく惹かれてしまうような少女だとしたら、あなたはこの本を読まねばならないでしょう。華麗ではあるが耽美でなく、洗練されているが繊細すぎない文体と物語は、単なる趣味としての西洋ぶりとは一線を画しており、初作とは思えない作者の教養や才能を感じさせます。それは時に読み手を打ちのめすが、一度読み終えてしまえばそれは新たな悦びの発見だったと思えるのではないでしょうか。因みに男性は安易に触れると怪我をします。が、足穂を読んで「素敵」と思えちゃう人なら大丈夫なはずです、たぶん。
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No.5:
(4pt)

「欧州近代。退廃のピカレスク・ロマン」ってことで

キャラクター造形、基本設定、筋の運び。すべてに渡って、正統的冒険小説作法に貫かれている。しかし、そこに加えられた筆者ならではの薫り高い文体と筋にあらわれない裏設定の緻密さ(それを「世界観」と呼んでもいい)によって、ハリウッドなんぞ太刀打ちできない「近代ヨーロッパ」が召還される。オーケー。完璧だ(「評論はいいから、小説書いてよ」という筆者への期待を込めて星4つ)。
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No.4:
(5pt)

ただ堪能しつくすべき

とにかく味わいの濃い、1行たりとも無駄に読み過ごせない小説です。「ファンタジーノベル大賞」という肩書きは多分忘れた方がいいです。ただ読む、そしてうっとりして下さい。「完璧」の意味がわかるでしょう。どんな誉め言葉で語っても無駄と思えるほどの、作者の力量。電車の中などではなく、自宅やリゾートでじっくりと腰を据えて堪能すべき作品です。
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No.3:
(5pt)

モノスゴイ小説!現代に生きる本読み人必読です。

小説の好きな人、本の好きな人、しばし現実を忘れて虚構の世界に遊びたい人、全ての人がこの作品を読む価値あり!です。とにかくこんなに濃密で破綻のない完璧な小説世界を、こんなに若い日本女性が描いた、それだけでスゴイ。1つの体に2つの人格が存在する、ウィーンの没落貴族の男性が主人公。1行の無駄もない、かといって簡素な文体なのではなく、なにげない1行も全て後々に重要な意味を持ってくる、洗練と皮肉と濃厚と、とてつもない味わいのある小説です。
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4101317119
No.2:
(5pt)

デビュー作とは思えないです

ストーリーは奇抜で、最後まで楽しませてくれる。 キャラクター造詣も奇矯で奥深い。でもなぜか引き込まれる何かを持っている。 私の求めているエンターテイメントを備えている作品です。 知識量も半端じゃない。私の歴史好きを十二分に満足させるできです。
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4101317119
No.1:
(4pt)

弱者の深い思い遣り

一つの肉体を共有する双子の魂の物語。貴族に生まれたこの主人公は、弱い。流転しながら酒浸りの生活を送り、人生を切り開こうとする強い意志を持たない。しかしそれだけに、二人の互いを深く思い遣る心情が、読んでいてとても良く伝わってくる。
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