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吸血鬼と精神分析
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吸血鬼と精神分析の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.21pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全13件 1~13 1/1ページ
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800ページに及ぶ超観念的推理小説だから、読み終えるのに1カ月もかかってしまった。まあ、よくこんな観念の構築物を考えられるものだと、彼の小説を読むたびに感心する、というか呆れるw 今回は、フロイト派(フロイト回帰派)の精神分析理論を軸に、旧約聖書の「ヨブ記」の意味が延々と語られる。その中で、面白かった点を1つ。 ヤーヴェ神は悪魔にそそのかされて、敬虔な信者であるヨブに理不尽な仕打ちをくりかえす。理不尽な仕打ちを受けても神を信じるのかどうかを試すためだ。 こういう神も、こまったものだが、その中で、神はヨブに「おまえは天地創造の時にどこで何をしていた?」のだと問うシーンがある。神の偉大さを確認させるための会話だ。当たり前だが、天地創造の時には人間であるヨブはまだ誕生していないに決まっている。神もこんなことをするのである。 これが面白かったのは、もちろん人間もこんな振る舞いをするからである。昔、新左翼運度をしていた時に、党派の共闘担当者の会議等に出ると古参のやつがいて、そいつは「君は、67年10.8羽田闘争(山崎君が羽田弁天橋の闘争で死亡した)の時には、どこで何をしていたのかね?」と。もっとすごいのになると、「60年安保の時は、君は何をしていた?」などという。こっちはまだ10.8の時は田舎の中学生だったし、60年安保の時は小学校1年生w こうやって優位性を確保しようとするのだが、人も神も変わらないものだ。 というかマルクスによれば、神とは人間の本質が疎外されたもの、と定義されていたような記憶が・・・。 笠井の矢吹駆シリーズは30年ほどまえに『バイバイエンジェル』『サマーアポカリプス』を読んで以来、ずっと読み続けているが、考えてみると70年代の2年ほどの間にパリを中心としたヨーロッパで起こったいくつもの事件を、彼はこの30年間ずっと書き続けていることになる。それはそれで、すごかったりする。 30歳くらいに書き始め、65歳になっても同じころの20代の登場人物を描き続けているわけだから。 | ||||
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過去にこの製品を読んだが今回外出自粛ということで家でじっくり読もうと思い購入した。本質直感という現象法哲学の手法を使い容疑者を絞っていくこととそれに魔女伝説を絡ませていく展開は面白い。同じ作者の黄昏の館と合わせて読んでもまた違う意味で面白い。 | ||||
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書店にて購入させていただきました。 読了したのは単行本発売当初ですから、7年ぐらい前になるでしょうか。 そのため内容はまったくといっていいほど忘れています。 だから内容以外の周辺をうろうろしようかと思っています。 まず、笠井さんを知ったきっかけですが、たしか父の影響だったと記憶しています。 笠井さんと私の父はほぼ同年齢で、ということは全共闘世代に属しています。 「あの時代に黒木龍思というスゴいヤツがいた、いまはミステリ作家になっているみたいだが」(大意)と父は昔、ぼくに話してくれたんです。 それからすぐ笠井さんの小説を読むこともなく、のんべんだらりと大学生活を続けていたのですが、大学の知り合いにディープなミステリファンがいて、笠井さんの本を勧めてきてくれました。 そこでようやくはじめて笠井さんの本を手にとったわけです。 その後、たまたま父と一緒にいるときにぼくが笠井さんの小説を読んでいたら、父がその本の著者名を見て、「なんだ、黒木龍思じゃないか」と言って、そのときぼくのなかで笠井潔=黒木龍思という等式ができあがったわけです。 さて、前置きが長くなりました。私事ばかりで恐縮です。 本題に入ると、実はこの本は2ヴァージョン持っているんですね。単行本版と、新書版(本書に限らず笠井さんに限って単行本版、新書版、たまに文庫版も買ってしまいます)。 それぐらいなぜかはわからないですけど笠井潔さんに思いいれがあるんですよね。新作が発表されるとすぐに買ってしまう。手に持った感触等が異なるからヴァージョン違いも買ってしまう。なんでだろう。 まさにこうした「反復強迫」に対して、あるいは笠井さんへの「欲望」に対して精神分析が威力を発揮するんでしょうね(精神分析についても素人ですので間違い等あったときはご寛恕願います)。 そう、本書は題名にあるとおりに「精神分析」が関わってきます。名前は変えてありますが、精神分析界ではフロイトに継ぐ有名人のジャック・ラカンもラカンの弟子(?)のジュリア・クリステヴァも登場します。もちろん主人公の矢吹駆も。 本書の参考文献を見ると結構な数の(定評のある)精神分析関連の本が挙げられていますから、日常から離れてミステリを楽しく読んだあとに副産物として精神分析についての知識(輪郭)が身につくのではないでしょうか。 内容は忘れましたしネタバレになるので書けませんし、書きませんが、最近わかってきたことは、この矢吹駆シリーズは、「笠井潔さんや笠井さんの同時代人の精神史を描く」ことを目的にしてるのではあるまいか、ということです(ミステリ門外漢の勝手な臆測です)。 だからいつも哲学者や思想家をフィーチャーして、本筋と関係なさそうな(?)哲学談義をさせたり、最後には結局現象学学徒(?)の矢吹駆が勝利したりするのかなぁ、と思っています。 それにしても、父を見ていても他の方を見ていても思いますが全共闘世代というのはやっぱりなにかしらひとつの性向を共有している気がします。 最後に。 とりあえずこの廉価版の新書サイズなら買ってみて損はないとぼくは思います(文庫本だと上下巻になっていて購入総額は新書サイズの本書のほうが安いです)。ハマる人はハマります。特にアカデミックでペダンティックな感じの小説が読みたいけれど、純文学は嫌だという人は是非。 | ||||
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哲学探偵とでも呼べる<矢吹駆>を主人公にしたシリーズも、本作品で、6作目。 第4作の「哲学者の密室」や第5作の「オイディプス症候群」ほどではないにしても、紙の本で約800頁の分量がありますから、このシリーズのお気に入りでないと、読み通すのが、ちょっと辛いかもしれません。 また、作中で、殺人事件の推理と並行して、哲学的論争が行われるのは、このシリーズの定番。 今回は、ジャック・ラカンの思想を基本に構成されています。 もっとも、私は、ラカンの著者に触れたことはないのですが、他のレビュワーさんの書きぶりからすると、かなりラカンの思想を取り入れているようなので、ラカン好きかつミステリ好きなら、相当に楽しめる作品なのではないでしょうか。 さて、本作品の内容を紹介すると、それは、ズバリ「吸血鬼と精神分析」です。 そう、題名そのものなのですが、表層的な部分だけでなく、作品内容の核心部分も、このふたつの単語が重要な要素になっています。 そもそも、連続して起こる殺人が、毎週週末に、血を抜かれて殺された死体が発見されるというもので、まさに、吸血鬼が起こしたかのような事件。 これに対して、「精神分析」がどう関わり合うのか、それは、本作品を実際に読んで、その内容の深さを実感してください。 それにしても、こうした猟奇的な殺人事件の真相を突き止めようとした時に、「事件の本質」は、「血を失った肉」にあるのか、「肉から失われた血」にあるのか、という思案でアプローチするところは、このシリーズならではのものでしょう。 その論の展開は、とても複雑で、難解な部分も多く含まれています。 でも、ミステリ的な「意外な真相」はきちんと用意されていますので、どうしても「哲学的」部分が苦手なら、そこは斜め読みしても、事件の真相が理解できない、なんてことにはならないので、ご安心を。 これだけの長さになると、読了した時の充足感は大きなものがあります。 そこで、次回作にも期待──なのですが、この著者は、加筆訂正に時間をかけるタイプらしく、本作品も前作から、9年もかかっているのです。 2015年2月現在、雑誌連載は終了しているものの、単行本未刊のものが2作もあり、一体、いつ刊行されるのか── ただじっと待ち続けるしかありません…。 | ||||
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最初は、矢吹駆シリーズのレビューを書けることが何よ りうれしかったのです。何しろ、前作『オイディプス症候群』 から9年ぶりの新作なのですから。でも読み終わった時の 満腹感は、これまでのシリーズ作ほどではなかったような 気がします。 本作の時期は明確にされていませんが、前作の時期か ら数ケ月後の設定のようなので1978年前後なのでしょ う。まず、わたしの中ではこの時代が既に陳旧化してしま った、いやそれ以前にわたし自身が年を取ってしまったこ とがあると思います。そのためか、矢吹とイリイチの対決も イマイチ必然性を感じられなくなりました。ホロコーストの根 源に迫った『哲学者の密室』、思えばあれが本シリーズ(あ るいはわたし自身)のピークだったのかもしれません。 ちょっとだけ内容にふれると、ラカンの精神分析をフェミニ スト的視点から相対化してくれたのは小気味よかったです。 一方、題名にある吸血鬼と精神分析の対位は、最後まで 少し分かりにくいところがありました。 続編を準備中(『図書新聞』No3046 斎藤環氏との対談) のようです。その際は、とりあえずもう少し中身を絞り込み コンパクトにして、右肩下がりの体力となったわたしが読む のを楽にしてください。 | ||||
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「バイバイエンジェル」以来の笠井潔ファンですが、正直ある時期以降は文章も小説の内容も荒み方が酷すぎて、ファンを名乗るのに勇気が要るような状態でした。元々美文の人だったのに(少なくとも小説は)、何かもう瓦礫のような文章になってしまって、内容もコテコテで、もうこの人は物書きとしては駄目なのかなぁ、よほどアルコール依存が酷いのか…と勝手に推測していました。が、これで見事復活!! とみて間違いないのでは!? 久々に他人に自信をもって勧められる小説になっています。カケルシリーズは何作か溜まっているようですし、早く出版してください。 | ||||
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待望の矢吹シリーズ読了!読む程に頁をむくる速度が早くなるが、でも早く読み終えるももったいないという、至福の矛盾!!この感覚を待っていたのよー! | ||||
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長らく待った最新作。相変わらず長い。くどい。そして面白い。 いろんな要素が絡み合う複雑な事件ですが、ポイントを整理しながら物語がすすむので混乱せずに楽しめます。その分長くなってしまいますが。マイナス1にしたのは犯人候補が次第にいなくなるのと、ナディアの推理が当たるはずがない(笑)ので、犯人が絞れてしまうこと、ラストの意外性が今ひとつでした。 | ||||
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前作、『オイディプス症候群』から大分待たされたけど、矢吹駆シリーズの最新刊。今回は、その前作の事件からしばらくたって起きた吸血鬼事件を主人公、ナディア・モガールと矢吹駆が追う。相変わらず分厚い一冊。 待ったかいがあってとても楽しめました。このシリーズ、最初に読んだのが高校生の頃だから、もう25年、30年近く読み続けているけど、もう待たされるのは慣れっこ。何年か一度、分厚くて読み応えるのあるのを読ませてくれれば、もうファンとしては満足なんだけど、今回も大満足。 ジャック・ラカンをモデルにした精神分析家や東欧に伝わるヨーロッパ伝説、ルーマニアのチャウセスクの話、キリスト教の話と、自分好みのテーマが満載だった。ただ、それぞれが、以前の作品に取り上げられていたテーマに比べるとちょっと薄いというか浅い気がする。惜しいなぁ。また、前半部分の展開の緩さと後半の謎解き部分の展開の性急さがどうもちぐはぐな感じ。 とはいっても、さすが笠井潔、うまくまとめてる。あぁ、やっぱり自分はこのシリーズが好きなんだなぁ。もう、次の作品が読みたくなってきた。それとも、新作が出るまで暫く掛かるだろうから、また第1作から読みなおしてみるかな。 | ||||
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矢吹駆シリーズの最新作。 笠井潔のファンなら、それも矢吹駆シリーズのファンなら十分満足できるでしょう。 私も、矢吹駆ものは全て読んでいます。 それなのに星4つ? 少し疲れたかな、という感想。 長いですねえ・・・そこがいいといえなくもないんですが・・・ 精神分析についての薀蓄、よく調べたなと思います。でも、冷めた目で眺めれば、この推理小説に本質的な要素ではない。 本筋はむしろ単純、それに、多分禁じ手も使っている。結末も無理かな・・・狂気(の一種)で片付くんなら、動機についての議論も要らないんだし・・・ 悪口を書いていますが、次作が出れば買って読みますよ、もちろん。 ****(適当に言葉を入れてください)についての薀蓄が本質的でないということなど、大半の推理小説に当てはまる。非難することではない。 ただ、本筋の部分が今までの作品よりは弱いかなと感じました。 舞台はパリ。前作「オイディプス症候群」の事件の暫く後。ルーマニアからの亡命高官が殺される。その時後ろ姿が目撃された目撃された女性とそっくりなのが、同じくルーマニアから亡命した元体操選手。 続いて、週末ごとに首筋から全身の血を抜かれた女性の死体。その体操選手も被害者か・・・ キリスト教をめぐる議論と精神分析をめぐる議論・・・ キリスト教の論議は少し浅いかな・・・ まあ、くたびれながらも、楽しめはしました。 | ||||
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前作発売からずいぶん月日が経っていますが、新刊がようやく見れてよかったです。 相変わらず論理合戦の方に重点を入れていますが、それがこのシリーズの特徴なので良いと思っています。 今回はやっと駆とニコライがちょろっと会話をしたようですし、熾天使の夏の伏線(?)を一応回収しているようでしたのでそれだけでもかなり話は進んだと思っています。 しかし、やはりまだまだ宿敵との決着まで時間がかかるんだなぁと感じられました。 次回作も楽しみにしようと思っています。 | ||||
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長い、長すぎる。 笠井潔作品の読後感は、京極夏彦作品のときとよく似ている。 つまり、読了の達成感、というやつだ。 そして、読了した自分を褒めてやりたくなる。 そのくらい、ストーリーとは直接関係のない描写が多い。 本書の内容なら、この半分くらいでいいんじゃないかな。 精神分析をめぐる話の大半は、このストーリーに不可欠というわけじゃないんだから。 ただし、比較的早いうちからカケルが登場するのはイイ。 「オイディプス〜」後の事件ということで、ナディアがトラウマを負っているのは、キチンとストーリーに絡んでいるし、その深みを増すことにもなっている。 登場人物の名前が少々分かりにくいのはマイナスだけれども、それもまた笠井ミステリらしい。 ミステリとしては、まあ、こんなもんかな、って感じだな。 もともと笠井ミステリは、ミステリとしての複雑さよりも論理の精緻さが売りだし。 ただし、全作もそうだったが、精緻さを追求しすぎて、それがストーリーの流れを悪くしているのはもったいない。 まあ、それが笠井ミステリの売りでもあるんだけれどもね。 | ||||
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矢吹駆シリーズ、今回のテーマは精神分析=ラカンです。ラカンはジャック・シャブロルという名前で出てきます。描写されるその風貌や思想の内容、経歴、家族構成まで本物とそっくりで、無理に偽名にしなくてもそのままラカンでいいじゃないかとさえ思ったくらいです。 全体的に非常に濃厚な内容で分量も多く、推理小説ファンにとって十分に満足できる内容だと思います。犯人探しやトリック暴きについては、少々複雑でペダンチックな印象を受けますが、それがそもそもこのシリーズの特徴ですので難点とは思いませんでした。 紹介されるラカン思想の解釈は、その批判の部分も含めて極めて穏当なもので、逆にいえばとりわけの卓見もありません。しかし精神分析的思考に吸血鬼的思考を対置し、さらにそれによって導き出される思想構造の全体に批判を加える、というアイデアには脱帽しました。 作品の雰囲気ですが、傑作「哲学者の密室」のようなスケール感こそありませんが、哀愁と憂鬱とに満ちた独特のムードにたっぷり酔えます。私はどこか懐かしい「昭和のパリ」にタイムスリップしたような、不思議な気分になりました。 一読して疑問に思ったことがあります。ふつうラカン思想のル・レエルは「現実界」と訳されています。しかし作中ではあえて「物質界」となっています。ここだけ変更することにさほどの意味は感じられません。まあそれはそれでいいのですが、カケルの台詞で定訳の「現実界」となっている箇所があり、統一がとれていません。また細かいことですが、792頁の「不穏」は「不安」の誤植ではないでしょうか。 | ||||
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