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災厄の紳士
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災厄の紳士の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
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原著は1971年でずいぶんと時間がたっておりますがたいへんスリリングな展開のお話で、最近の作品とも遜色ないと感じました。とくに中盤である登場人物の妻が出てくるところなど読んでてニンマリしてしまいました。出版社の社風なのかどこか地味な扱いのようにも思われますが、これが素晴らしいので、同じ著者の別の作品を読み続けています。 | ||||
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前半は倒叙サスペンス風の展開を見せるものの、後半になるとフーダニット を主眼としたパズラーに転じるという、トリッキーな構成が採られている本作。 じつはその構成自体が、読者に先入観を植え付ける作者の巧妙なミスディレクション であり、いかにも胡散臭いレッド・へリングの言動と相まって、読者の意識が犯人に 向かないようなつくりとなっています。 また、視点の切り替えも、特筆すべきポイントでしょう。三人称多視点によって多角的に 事件が描かれているのですが、犯人にたいする視点人物の偏見をミスディレクションと することによって読者の先入観を補強し、犯人に疑いを抱き難くしているのが秀逸です。 フーダニットに関しても、いくつか手がかり が用意されており、十分フェアな仕上がり。 とくに“指紋が拭き取られていた車のハンドル” にもとづく犯人特定のロジックが鮮やかでした。 | ||||
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「2010 本格ミステリベスト10 第1位」 という帯広告を見て、購入しましたが、その結果は…。 ジゴロの青年、ネヴィル・リチャードソンは、 パリのメトロで、偶然を装って、著名な作家の娘、 アルマ・ヴァランスと知り合いになります。 ネヴィルの行動の背後には、謎の人物がいる模様で、 この人物が誰なのか、興味をそそられるところです。 その後、ネヴィルとアルマは急接近し、 結婚を前提に付き合うようになります。 遂にアルマは自宅にネヴィルを招き、 父親を紹介しますが、 ここで、「ある事件」が発生し…、という物語展開です。 さて、この「ある事件」なのですが、 まずここで期待とちょっと違っていました。 というのも、少しも意外な物語展開ではないのです。 推理小説ならよくあるようなストーリーでした。 さらに物語は、アルマの姉のサラが探偵役となり展開していきます。 やがてネヴィルの背後の謎の人物の正体が明らかになるのですが、 これが何とも意外性のあまり感じられない人物で…。 そしてラスト。 当然のごとく発生した「ある事件」の真犯人が明らかになりますが、 何ということでしょう、 この部分も私には少しも意外には感じられませんでした。 現代のミステリでフーダニットを追求することは 困難だと私は考えていますが、 巻末の解説には、この著者がいかに フーダニットのミステリが巧い作家であるかを 強調しているものですから、 期待して読んだのですが、 どこが意外な犯人なんだろうというのが正直なところ。 奥付をみると、4版でそこそこ売れている作品なのですが、 私にはどうしても平均的な出来のミステリにしか思えませんでした。 期待していた分、★は少なく、2つとさせていただきます。 | ||||
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作者の作品は「ウォリス家の殺人」、「悪魔はすぐそこに」と読んだが、本作はそれらと異なり軽いサスペンス・タッチで始まる。ジゴロのネヴィルがかつての流行作家で富豪ヴァランスの娘アルマに近づく冒頭。これが"共犯者"の計画である事が示唆される。続いて、ヴァランス家を中心とする登場人物の紹介。ヴァランスが現在、世捨て人化している原因に対する考え得る唯一の理由に(共犯者以外は)気付いていないのは不自然だろう。特に、聡明な筈のアルマの姉サラまでもが。う〜ん、ここまで読んだだけで、共犯者足り得る人物は唯一人と推測出来てしまう。パズラーを得意とするなら人物配置にもっと配慮すべきであろう。 そして、ネヴィルが婚約者としてヴァランス家に現われるが、早速、仮面を剥いでヴァランスから1万$を脅し取る。ここから、サラの視点で物語が語られる。サラは頭脳明晰かつ冷静沈着な探偵役でもあるのだ。そして、ネヴィルが失踪し、数日後死体となって発見される。サラは奮闘し、父の過去の秘密を探るが想定通り。ここで、(私が推測した)共犯者がネヴィル殺しの犯人だったら流石に曲がない。捻りがある筈だが、動機が見えない...。 結末で明かされる真相を"意外な犯人"と呼ぶのであろうか ? 物的証拠が弱い上に、動機が強引過ぎる。こんな動機で二人の男を死に追いやる人間がいるのだろうか ? どのタイミングで犯行計画を練ったのかもハッキリしない。犯行が周囲の人間に気付かれないのも不自然。本物のパズルのように、単に犯人役に当て嵌めただけのような気がする。前半の軽いサスペンス・タッチから、後半のパズラーへと構成の妙はあるものの、動機、人物配置と書き込み、伏線の張り方など不充分なものを感じた。 | ||||
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前半のジゴロが目的を遂げられるかという倒叙小説風の物語と、後半のオーソドックスな犯人宛ミステリの二つの物語が楽しめます。 二つの物語といっても、前/後半の物語は密接に係わっており、特に後半部分の謎解きは多くの読者が思うであろう犯人当てに、さらにもう一段の謎解きを加えることで更なるサプライズを提供してくれます。 このような複雑な構成を支えるのは、作者の人物描写の繊細さだと思います。ある人の性格をA であると描写しても、作者はある人の性格がA であることを示したいのではなく、Aであると思う評価者の見方から、評価者の心理を暗示するという技法をとっているようです。これだけならややこしくなりそうですが、その描写を多視点で行うことで最大公約数としての人物像が浮かび上がる仕組みになっています。 このように凝ったつくりでありながら、読者の存在を忘れず、エンターテイメントとしての読みやすさを提供することが出来る作者(と翻訳者)の力量に脱帽します。 | ||||
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イギリスのミステリー黄金時代が去った1960年代にデビューし玄人好みの複雑なパズル・ミステリーを多く著した本格派の巨匠ディヴァインの邦訳七冊目となる第十長編の紹介です。ミステリーというジャンルは如何に読み手を巧く騙すかの手腕が問われる厳しく難しい面があって、また同じ傾向を続けるとすぐに飽きられますから、本当に長年に渡ってファンから支持され続けるのは至難の技だと思います。創元推理文庫で2年続けて紹介された「悪魔はすぐそこに」と「ウォリス家の殺人」はどちらも真に素晴らしい傑作でした。本作は前2作に比べて少し衰えが見えた残念な出来でしたが、どんなに偉大な作家といえども十割を打つ事は不可能ですので、次回紹介作での復活と挽回に期待しましょう。 怠惰な美青年ネヴィルはプロのジゴロで、今回大作家の父に恋人との仲を引き裂かれて傷心の美人令嬢アルマを標的に選んで近づく。実は彼には隠れた共犯者がいて周到な計画通りに事態は進むのだが、ネヴィルにとって最後に思わぬ災厄が待ち構えていた。 本書の面白さは、序盤から詐欺師ネヴィルの視点で語られる物語が一転し中盤でまさかの意外な被害者が判明した時の驚きでしょう。ここから騙された令嬢アルマの姉サラが主役に変わり、地元警察のボグ警部が進める捜査とは別に殺人事件の謎を追います。本書の欠点は背景事情が明らかになるにつれ真相の可能性の範囲が極端に狭まってしまう事で、残念ながら完全に先の予想がついてこういう風にはならないで欲しいと思った通りに終わってしまいました。フーダニット派の著者は最初から平凡な結末にはならないだろうと憶測される点からも不利ですが、それでも著者の実力を信じて残された未訳の6冊に期待したいです。尚、本書は不幸な男女の仲という暗いテーマに全編が覆われてはいますが、暗さを強調せずに仄かなユーモアとペーソスを漂わせる所が著者の愛すべき持ち味だと思います。 | ||||
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