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盤上の敵
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盤上の敵の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.80pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全44件 21~40 2/3ページ
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猟銃を持って家を占拠した凶悪犯から、妻を 救い出す夫の物語、と表向きは要約できる 本作。 本作にはその凶悪犯の他にも、妻の回想パートにおいて中高生時代の彼女を無惨 に蹂躙し、回復不能なトラウマを刻みつける、兵頭三季という絶対悪が登場します。 「善人」たる夫は、そうした理不尽な暴力から最愛の妻を守る ため、あくまで理にもとづいた冷徹な計略を仕掛けていきます。 本作は、あらゆる約束事を侮蔑し、踏みつけにする「悪」に対し、逆にその約束事が 持つ強みを最大限に利用することで欺瞞を謀り、「悪」を盤上から排除しようとする、 「善人」の物語なのです(白と黒の二種類の駒があるチェスに見立てられていること 自体が、作者の巧妙なミスリードといえましょう)。 夫は、自ら立てた作戦をやりぬき、戦いに勝利を収めますが、そのこと によって、彼ら夫婦の未来の幸福が、保証されるわけではありません。 なぜなら、妻だけでなく夫も、勝利の代償に、 重い十字架を背負うことになったのですから。 その十字架と彼らが今後どのように向き合っていくかによって、 結末の美しい情景の意味がさまざまに変化していくと思います。 | ||||
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この小説は何の罪も無い中年男性がいきなり、山の中で襲われるところから始まる。 その男がどうなったかわからないまま、いきなり、脈絡も無く、古い中国のおとぎばなしが女性によって語られる。 章毎に話しが飛ぶのだが、それが主人公の妻の告白である事が読みすすめていくうちに分ってきて、彼女がかかえたすざましい過去が明らかにされる。 話しとしては面白いし、最後のどんでん返しも良く考えられている。 語り口も工夫はされていて斬新ではある。 「盤上」に例え、チェスの対戦を模して、交互に話しがすすんでいくのだが、すっきりとは書ききれていなくて、あまり没頭できる小説ではなかった。交互に書き進めている間にストーリーが散漫になってしまったのかもしれない。 そして、何よりも解決していない逸話を多数残してしまったり、妙にありえない展開となってしまっている。 作者が手法に頼りすぎた感なきにしもあらず。 | ||||
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緊迫感漂う展開に一気に読みきってしまう。 愛する妻を見えざる敵から救うために夫が取った行動とは?をメインテーマに物語が進んでいくが、最後には思わぬ展開に驚かされる。 ただ、悪意の真相、そしてそれに対する行動の善悪が読者に投げかけられたままのエンディングに少々肩透かしな感じも受ける。 もし自分が主人公だったら・・・やっぱりこういう行動は取らないよなぁ、といま一つ感情移入出来なかったせいだろうか。 作中の語り口や伏線は流石に上手いな、と思わされる。 | ||||
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最初はバラバラに見えた各エピソードが、話の進行とともに徐々に凝縮され焦点を結んで行く過程は見事であり、バリンジャー型の話として出色のものでさすがに北村薫だと思わせる。人に対する「悪意」というテーマの怖さも心に沁みる。 但し、推理小説としてみた場合の筋書はやや安易ではないか。結末まで読み終えて冷静に考えてみると、どう考えても完全犯罪になるとは思えず、いずれ警察の捜査で簡単に発覚しそうである。好みとしては、起こったことを利用して完全犯罪にするという筋書を期待したが、そのような結びつきはない。かえってそういう脆弱さが、物語の余韻を残すという面もあり、それが狙いなのかもしれないが、如何であろうか。 当方には、同じ作者の他の作と比べると、叙述のテクニックの巧さが、やや目だちすぎた印象の作品に感じられた。 | ||||
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完璧なプロット。寒くなるような事情と、トリックのすばらしさ。吸引力が並じゃない。すごい小説です。 | ||||
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一言で言えば、傑作になり損ねた本。北村薫特有のご都合主義には目をつぶるとして、あっと驚くようなトリック、緊迫した展開、人間の悪意への関心。どれをとっても一級品だと思う。 惜しむらくは悪が書き切れていないこと。登場する二人の悪意ある人物。しかし、その悪意の正体は結局のところ不明のままで終わってしまう。あえて人物の内面に踏み込まないことで抽象的・純粋な悪を描こうとしたのかも知れないが、失敗している。 トリック重視なのか、悪を描くこと重視なのか。北村薫は(彼の特質からして当然のことながら)トリックを選んだ。それが残念である。 | ||||
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TVディレクターの末永の家に男が立てこもる。人質になった妻の友貴子を救うために彼は一計を案じ、警察にも内密に男と取引を始める。果たして彼は妻を無事救出できるのか…。 人気の「円紫さんと私」シリーズでは、人々が日々抱える、犯罪とも呼べないほど些細な秘めごとを掬い上げてきた北村薫。しかし本作では胸に鋭く差し込むほど痛ましい、れっきとした犯罪を描いています。前書きには「この物語は、心を休めたいという方には、不向きなもの」とあり、普段の北村ワールドを期待して手にした読者は頁を繰るのも苦しく、心に大きなヤケドを負うことになるかもしれません。 副主人公が抱える心の闇の深さを目の当たりにして、読者は口に砂をすり込まれるかのような思いを味わうはずです。その闇には理屈らしい理屈が見当たりません。 この相手を諭すことはかなわず、末永に残された選択は、まさにチェスのごとく相手を徹底的に打ち伏す以外にありません。相手を完膚なきまでに叩きのめすことこそが唯一の目的であるゲーム。そこには容赦のかけらもありません。 これほどの苛烈さを見せる本作は北村薫のこれまでの物語世界とは全く異なるものなのではないか。心をヒリつかせながら読み進める私は、物語が緒についたばかりのところで友紀子が口にする次の言葉を常に思い出していました。 「心があるっていうのは、自分のだけじゃなくて、外の人の気持ちも、想像するためだと思うんです。その筈じゃないか。相手が何されたら嫌かな、とか、そういうことが分かるためじゃないか。それが分かれば、そんなことは出来なくなる。」 想像を絶するほど無残な出来事が引きも切らず人々を襲う時代。そんな時代にあってこの物語は、人類へのかすかな願いを綴っています。 これこそ北村薫が紡いできた物語です。 人間への信頼を捨てない、北村薫らしい物語として、私は本書を読みました。 | ||||
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なぜ彼女はあんなにしつこくつきまとったのでしょうか?彼女の顔つきが気にいらなかったのでしょうか?疑問です。とにかくすごい執念ですね。 | ||||
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なぜ彼女はあんなにしつこくつきまとったのでしょうか? 彼女の顔つきが気にいらなかったのでしょうか? 疑問です。 とにかくすごい執念ですね。 | ||||
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ありがちな言葉ですが、トリックというよりもこんな現状があるということを分かっていてもらいたくなりました。人を(表面的にも、心理的にも)痛めつけることに対して辛さを感じてないような人たちを書くのががこの作者は上手ですが、その面を突出させた作品だと思います。読んで傷付いたという感想を作者に送った人もいたそうです。北村さんを初めて読む際にこの本は適していませんが、避けずに通っておくべき物語。そのときあなたはどんな感想を持つでしょうか… | ||||
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物語は妻を助ける為に動く純一の情景と、妻・友貴子の回想が交互に繰り返して進む。妻を助けるためには、警察を頼ることもできない。警察・犯人の先手を取り、裏をかき・・・。私はチェスをやったことはない。将棋ならば、お遊び程度でやったことがある。先を読み、相手の裏をかく・・・そっくりなもの。だが、これはチェスでなければならい、将棋では駄目だ。そうでなければ、おかしくなってしまう。トリックの鮮やかさ、ストーリーの収束性、見事だと思う。後味は決して良くないが。 | ||||
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純一が帰宅しようとすると、我が家に殺人犯が立てこもっていた。純一は妻を助けるため、殺人犯との取引に応じることにした。心優しい人物を探偵役にした短編が得意な著者の作品の中でも、異色を放つ「本格物」の長編。徹底的に叙述トリック作品である。読後も、物哀しく、殺伐とする殺人事件ものである。メインは純一とその妻・友貴子の独白による章が交互に並ぶ構成。ときおり、二人が過去を振り返ったり、その他のエピソード(というかプロローグか)が挟まれる。関係あるのか、ないのか、それさえもわからぬままに、読み続け、最後に収束していく展開は感動的だ。しかし、相変わらず、この著者の作品は、読み手に作品のバックグラウンドとなる見識を要求する。チェスを知らない私は、各章の見出しの意味など無視して読むしかなかった。チェスのルール、駒の意味をわかっていれば、更に面白く読めただろうと思う。 | ||||
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北村薫作品の中では、この作品は極めて異質な感じがするかもしれません。人が人を傷つけ、破壊する、という行為を読まされることは、読者にとってもとても辛いことだと思います。しかも、過酷な内容に比べて、文体はいつもの北村薫独特のやさしい感じなので尚更に辛かった。この本を読んでから、2年以上立ちますが、未だにその辛さと衝撃が頭を離れず、世の中の不条理なことを目の当たりにするにつけ思い出しては色んなことを自問する日々です。 | ||||
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たしかに悲しい話なのですが、わたしは好きです。悲しくとも、話の主眼は正義にあったので、読後感もすっきりとしていました。 一方では妻を人質に取られた夫の決死の攻防戦が描かれ、並列して妻の過去にまつわる物語が語られます。 その妻なんですが、彼女は穿った視点をもっており、人間社会にある不公平、ジェンダーの偏重、普遍的な暴力などを巧みに指摘しながら自らの過去を語るのです。文体も美しく幻想的で、わたしは夢の中にいるような心地でぐいぐいとその世界に引き込まれていきました。ラストの大逆転は素直に驚かされました。さして無理な感もないと思います。 そして、読み終わって後しばらく経ってから、タイトルの仕掛けに気付かされました。 | ||||
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「凄い」私が読んで一番感じたのはソレだった。レビューの通り、この本は「妻が殺人犯に人質にされてしまった」という物である。妻の身を案じる夫は妻を救う事が出来るのか…!?夫(旦那か?)がどのような行動に出るのか、是非読んでもらいたいと思う。ソレと同時進行で進むのが、妻の昔の回想だ。妻は、決して幸せとは言えない人生を生きてきた。読んでて苦しくなる様な、そんな思いを体感した。そして…現代の夫の「妻救出劇」と、妻の「昔の苦い思い出」がひとつになったとき、物語は予想もしていない結末を迎えるのだ。無駄のない登場人物、計算された、鮮やかなまでのその文章。この本はお勧めだ。 | ||||
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とにかく面白かった。一部心に重くのしかかるシーンもあるけれど、あっと驚く展開にニヤリ。盤“上”の敵というのがギミックか。ところがこの作品どうやら最も「北村薫らしからぬ作風」らしい。続けて「ターン」を読んだけれど評価はちょっと落ちる。(ファンの方ご免) | ||||
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この世に絶対的な『悪』が存在するのでしょうか。バカの壁ではありませんが、話せば分かるというのは、やはり幻想なのでしょうか。では、その絶対開くに対峙した時に、自分だったらどうすべきなのでしょう。それを考えると、登場人物のとった行動が止むを得ないと思うと同時に、でもやっぱり。。。と思う、両方の考えに揺れる自分がいます。北村氏の作品では、マイナーとも言える作品かもしれませんが、他の一見柔らかな雰囲気の作品でも、同様な厳しさは根底に流れていると感じていましたので、このような作品の出現にも驚きはしませんでしたが、正直そのあまりの厳しさになかなか手に取る事が出来ずに、それでも棄てる事も出来ず、いつかもう一度きちんと読もうと、本棚に眠っています。」 | ||||
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この世に絶対的な『悪』が存在するのでしょうか。バカの壁ではありませんが、話せば分かるというのは、やはり幻想なのでしょうか。では、その絶対開くに対峙した時に、自分だったらどうすべきなのでしょう。それを考えると、登場人物のとった行動が止むを得ないと思うと同時に、でもやっぱり。。。と思う、両方の考えに揺れる自分がいます。北村氏の作品では、マイナーとも言える作品かもしれませんが、他の一見柔らかな雰囲気の作品でも、同様な厳しさは根底に流れていると感じていましたので、このような作品の出現にも驚きはしませんでしたが、正直そのあまりの厳しさになかなか手に取る事が出来ずに、それでも棄てる事も出来ず、いつかもう一度きちんと読もうと、本棚に眠っています。」 | ||||
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物語は単純なように見える。家で妻を人質にして、殺人犯がたてこもっている。夫は警察に頼らないで妻を奪還できないか、考え出す。そこまでが序盤戦だ。主な登場人物は、黒のキング(殺人犯)白のキング(夫)白のクィーン(妻)しかいないように見える。物語の構成で、何故か妻の昔の回想がはいってくる。たぶんこれがミソなのだろう。しかしいちばん大きな謎である。これがなぜチェスの形を借りて語らなければならなかった物語なのかを、恥ずかしながら私は読後二日ぐらいしてやっと気がついた。「なるほど後味の悪い物語だ」と遅まきながら呟いた。 | ||||
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北村作品はどれも優しい人たちばかりが登場したハートウォーミングな作品、に見えて、「悪人」に対して潔癖なまでに厳しいところがあります。殺人犯でもあたたかに包み込む一方で、ちょっとした、犯罪とも言えないような犯罪に対して、登場人物が心の底からの嫌悪感を表したり、と言ったような。この作品は、そんな、これまで冷たい視線で突き放されてきた悪意がどの登場人物にも見え隠れする、他の北村作品とは違ったテイストの作品です。が、いつものような優しい光景もそこかしこに挿入されています。北村さんの他の作品を読む時とはちょっと違った心持ちで読めば、しっかりと楽しめる作品だと思います。 | ||||
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