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蒸発-ある愛の終わり-
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蒸発-ある愛の終わり-の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.56pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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数ある作品の中でも、1973年日本推理作家協会賞受賞作とのことで、楽しみにしていました。 機内から人が消えるシーンからのスタートで、どのようなトリックかとワクワクしながら読みました。 しかし、主人公には妻や子どもがいるのに、あまりふれていなかったり、2ー3度会っただけの女性が、突然主人公を好きになり、変な行動をしたりと不自然な設定が、多々ありました。殺人のトリックも、シンプルでした。 最後までスムーズに読めたのは、それに上回る、登場人物の情緒の描写が素晴らしく、引き込まれたためです。 | ||||
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つまらない | ||||
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1960年に江戸川乱歩賞候補となり、22歳でデビューされた夏樹静子氏。結婚後しばらく主婦業と子育てに専念されていましたが、1969年に改めてデビューされました。この「蒸発」は長編2作目で、1972年発表の作品です。 まず最初、航空機に搭乗したはずの女性が機内から消えてしまうという出だしに引き込まれます。作品全体の構成の巧みさ、そして列車や航空機など交通機関や時刻表を駆使した犯罪とそのトリック、複雑な人間関係の伏線などにうなりました。とても、本格デビュー後まだ2作目の長編とは思えません。恋愛は物語の重要な要素になっていますが、松本清張ばりの社会派的な雰囲気もあって、なかなか硬派な小説に仕上がっています。 ただ、今から約50年前に書かれた作品という時差はどうしてもついてまわります。他のレビューアさんが書かれていましたが、今となっては印象がよくない”裏日本”という表現や(当時の事情を考えれば、能登半島の田舎で情報の伝達が遅いというのは、実際ありえたことかもしれません)、個人的には、蒸発した人妻の美那子が最後までこだわり、自分を責め続けた心のありようも、今となってはそれほど自己批判しなくてはいけないことか?と感じてしまいました。これは、女性は、母親はこうあるべきであるという当時の倫理観を元にしたものと言えるでしょう。古い作品にはどうしてもこうした時代の感性の違いがマイナスになりがちです。 最近、続けて昔のミステリや小説を再読しましたが、たとえば、60~70年代には、なんでもかんでも体制や大人に反抗し逆らうのがかっこいいことだったようですが、このあたりも理解しがたいことが多いです。この作品に関しても、不倫が徹底的に叩かれる現在では、結婚後に出会ってしまった運命の相手との恋愛を純愛のように描いていることに対して、”不倫は絶対ダメ”派の人たちは憤りをおぼえてしまうかも。そこは、「へえ~、こんな感じだったんだな」と、一歩距離を置いて時代の変化を感じながら鑑賞すると、作品の本質を楽しめるのではないかと思います。 なかなかの力作でした。何十年かぶりの再読でしたが、他の夏樹作品も改めて読んでみたくなりました。 | ||||
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結末がわかるまではドキドキしたけど、推理小説としては、トリックにちょっと無理があるような気がします。動機もそうですが。 | ||||
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1973年 第26回日本推理作家協会賞受賞作。 ベトナムで殉職したとされていた新聞記者 冬木が帰国した。冬木は不倫関係の人妻 美奈子のもとを訪れるが、美奈子は夫と子供を残したまま失踪してしまっていた。美奈子を忘れられない冬木は、美奈子の行方を追う ・・・ 出だしはドロドロ系の愛憎ドラマのごとしである。人妻に恋焦がれる冬木、忽然と姿を消した妻を悲愴な面持ちで探し求める夫 朝倉。様々な負の感情が入り乱れ、とっても湿度が高い。 冬木が美奈子の消息と尋ね歩くうちに、札幌行きの飛行機から乗客が消失する事件や、美奈子の郷里 福岡の会社社長失踪、殺人事件にぶちあたっていく。探索を進めるうち、それぞれの事件と美奈子との関連が浮き彫りになってくるのだが、この入り組んだ状況を筋道たてて紐解いていく過程はさすがである。冒頭がうっとおしいだけに、謎解き要素が加わってくると俄然、面白味が盛り返す。 興味の中心は、美奈子の失踪=蒸発がどのような動機によるものかだ。これは本当に最後の最後でなければわからない。どうして不倫という要素をこの作品に持ち込まなければいけないかが分かる仕組みになっている。軽い驚きとともに、なんともやりきれない気分にさせられたのだがどうだろう。読者によって肌に合う合わないがあるだろうが、女性の情念を描いた作品として良くできていると思う。 飛行機からの人間消失は、さすがに今では許されないトリックだろうね。 | ||||
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完全密室と化した航空機のなかから忽然と消失するひとりの女...。何と言ってもこの導入部のインパクトが最高!また、最後に明かされる からくりの仕組みにも満足のため息。。 作者の夏樹静子さんは、基本的に新しいネタがないんならミステリーは書かない方が良いと語っている通り、常に新しくて多彩な着想を 展開し続けていますが、その精神は初期傑作の本作でも堂々と存在している。トリックも良い。良いけど、それ以上に人間ドラマが良い。 人間なんちゃらなんて書くとうそ臭くなるが、結局はこの人は男と女を描くのが上手すぎる。両方あってこその人間。時代背景が変われど この瑞々しい男女の精神性は古臭くならないのが凄い。確乎とした主張がある。それが余韻に繋がる。やりきれないのに美しい。この感覚を 掘り下げさせたらミステリー界随一だ。あとやっぱり、この人の精密部品を組み立てるが如くのプログラミングも驚き。そーゆうとこは なにより男っぽく、情感の豊かさは女の如く。その要素はこの一作において顕著。男女の出逢いが奇跡を生む。また悲劇を生ずるの。。 | ||||
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新装版で読みやすいです。 このような大きめ活字の文庫本がもっともっと出回ることを、高齢社会の一員として歓迎します。(けっこう活字の読みやすさは、購買意欲を左右します) さて、本作は、ものすごく手が込んでいるので、途中、何度も見返しながら、読み進まないと、筋が混乱しそうになる。 しかし、それとは別に、毎度ながら、男女の微妙な愛の交流と葛藤を書かせたら、これだけ表現できるミステリー作家は、今もいないだろう。 またこれも、余計なことかもしれないが、「勉」少年の行く末が案じられてしまうのだー。 | ||||
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冒頭、上空の旅客機から人が忽然と消失する事件 から始まります。 1980年代初期の夏樹静子の大作です。後年の数々の傑作と 比べるとプロットや文章表現にやや古臭さがありますが、 でも、今読んでも、隠れた人間関係、不倫、トリック、謎の失踪、 列車トリック、連続殺人など、イベントは盛りだくさん過ぎる ほど盛り込んでいて、娯楽小説であると同時に、本格推理劇と なっていて、女流作家とは思えないほど冷徹かつ論理的な作風 で舌を巻きます。 言い回しや所作表現やトリックにはさすがに時代を感じさせますが、 けれども、そういう瑣末なことは本筋に影響しないほど、本書は よくできた長編推理劇となっています。 結構、最後まで一気に読み通してしまう、作家の筆致、筆力は さすがと思わせます。 | ||||
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協会賞受賞作。飛行中のジェット機からの人間消失という大トリックと男女の恋愛模様を融合させて描いた点が評価されたのだろう。女性らしい木目細やかな筆致は感じられるが、出来栄えには大いに不満が残る。 まず、人間消失が冒頭で描かれるが、こういう方法しかあり得ないと想像した通りの結果が最後で披露されるのでガッカリする。その上、その方法はセコイのだ。ヒロインが消失トリックを用いる必然性が薄いのも興味を殺ぐ。狂言回し役でヒロインの愛人役の記者が福岡に飛んでからの事件展開は凡庸で、事件の真犯人も意外性が無い。 致命的なのは、ヒロインと記者に対する人物描写が甘いため、二人の恋愛の様子が具体的に読者に伝わらず、感情移入ができない点である。副題に「ある愛の終わり」とあるが、どんな愛か分からないのである。そして、記者の生還が新聞発表されたのが6/10。ヒロインが失踪トリックを用いたのが6/20。辻褄が合わない。この間、ヒロインは裏日本に潜んでいたので、記者の生還を知らなかったと説明しているが、これは裏日本に住んでいる方への侮辱発言であろう。 本作はミステリのトリックと恋愛模様を融合させるという意欲的な試みをしながら、どちらも中途半端になってしまった凡作。 | ||||
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