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樅ノ木は残った



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樅ノ木は残ったの評価: 4.36/5点 レビュー 100件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.36pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全100件 81~100 5/5ページ
No.20:
(5pt)

周五郎の、そして歴史小説の最高傑作

 山本周五郎の代表作というと「ながい坂」ということになっていると思うが、作品の完成度、与えられる感銘ということになると、本作の方に軍配が上がるように思われる。 本作は、「伊達騒動」を題材に取った作品であり、主人公の原田甲斐は主家を改易に導きそうになった大悪人である、と一般的には認識されており、事実伊達政宗公の頃から続く名家である原田家は廃絶の憂き目に遭っている。その原田甲斐悪人説を転倒させたのみならず、そこに至るストーリーの作りかた、プロセスの描き方が素晴らしい。 上巻、中巻、下巻のほとんどを読んでいて、いったいどこに「救い」があるのだろう、とずっと疑問に思われるに違いない。徳川家のあまりにも強い権力と陰謀に屈してしまうのではないかと・・。そしてずっと暗雲が垂れ込めていた伊達家にようやく光明が見えてくるのが最後の最後、そして本当に光が差し込むと同時に、その光は原田甲斐そのものを死に追いやってしまう使いでもあったのである。結果的に伊達家は存続するものの、重臣涌谷と甲斐の命は絶たれ、原田家は断絶する。 「家」を守ることとは何なのか。公人としての生き方とは何か。次々と重い問いを突きつけてくる、歴史小説の大傑作である。 隆慶一郎、宮城谷昌光、そして最近では池宮彰一郎など、優れた歴史小説家は輩出しているものの、やはり山本周五郎を第一に挙げたくなるものであり、さらに本作を第一に推すものである。
樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)より
4101134642
No.19:
(4pt)

20代に太宰治病にかかった人は、40代に山本周五郎病に罹る。

文芸評論家の奥野健男さんが、「若い頃、太宰治の文学に感動した人は、必ず中年になり山本周五郎の文学に感銘する。二人は単に物語が面白い文学者ではなく、自分の人生に深くかかわる、自分の人生を決定する力を持っている文学者である。」と書いていた。私も40歳。原田甲斐の自分の宿命に対する静かな諦観がこの小説の魅力。自分の行動が理解されなくてもかまわない。期待してはいけない。ただ、仙台62万石の存続のために自暴自棄に陥ることなく自分の生涯をささげる。このような生き方は苦しい。原田甲斐の子どもたちは切腹になった。それも原田甲斐の真の意図を理解せずにだ。こんなむなしい人生あるだろうか。お家取り潰しの萌芽が出たら、それを火消しすることに人生を尽くす。でも人々は理解してくれない。愚直な生き方。そしてさあ、あなたはどう生きると突きつける。長編だが、一気に読んでしまった。
樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)より
4101134014
No.18:
(4pt)

20代に太宰治病にかかった人は、40代に山本周五郎病に罹る。

文芸評論家の奥野健男さんが、「若い頃、太宰治の文学に感動した人は、必ず中年になり山本周五郎の文学に感銘する。二人は単に物語が面白い文学者ではなく、自分の人生に深くかかわる、自分の人生を決定する力を持っている文学者である。」と書いていた。私も40歳。原田甲斐の自分の宿命に対する静かな諦観がこの小説の魅力。自分の行動が理解されなくてもかまわない。期待してはいけない。ただ、仙台62万石の存続のために自暴自棄に陥ることなく自分の生涯をささげる。このような生き方は苦しい。原田甲斐の子どもたちは切腹になった。それも原田甲斐の真の意図を理解せずにだ。こんなむなしい人生あるだろうか。お家取り潰しの萌芽が出たら、それを火消しすることに人生を尽くす。でも人々は理解してくれない。愚直な生き方。そしてさあ、あなたはどう生きると突きつける。長編だが、一気に読んでしまった。
樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)より
4101134642
No.17:
(4pt)

柿崎六郎兵衛の人生

上巻では、何人もの取り巻きをもち、自分の道場まで持っていた柿崎六郎兵衛。 これが下巻では、乞食まで堕落する。 この格差。 おごれる平家は久しからずということばを想起させる。 その決定的な原因はかつての自分の部下、石川兵庫介に両目を失明させられたこと。 しかし、それは、柿崎がかつて稽古をつけると称して石川の腕を折ったことにある。 この恨み晴らさぬでおくべきかと怨念が石川を修行にかりたて、最終的に親分、柿崎の両目をくりぬくことで目標を達成する。 一人の中間管理職として、心にしみる。 とくいたんぜん、しついたいぜん。
樅ノ木は残った (下巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (下巻) (新潮文庫)より
4101134022
No.16:
(4pt)

これが山本周五郎!

周五郎を敬愛する読者は多い。
(ある程度以上の年齢の男性がやはり多いようではあるが)
時代小説や歴史物が好きなので、周五郎は避けては通れないところだ。
以前『樅の木は残った』を読んでものすごく感動した、もっと若い頃に周五郎に出会っていればよかった、と思った―と語っている方がいた。
わたしは中学生のとき、『鼓くらべ』を読んでものすごく感動したので、この方の言う"若い頃"に周五郎の神髄に触れることはできて幸運だったかもしれない。この作品は、一般には悪役とされていた原田甲斐にスポットを当て、通説とはまるで反対の甲斐像を描きあげる、という荒業にチャレンジしている。
こうした試みにつき物の強引さを、ほとんど感じないところに、まずは「さすが…」と感心した。
作者は勿論そこのところに細心の注意を払っていて、あくまで"史実"に忠実であることにこだわる。まさしく職人芸である。その、作者自身の職人魂に心打たれた。
樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)より
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No.15:
(4pt)

これが山本周五郎!

周五郎を敬愛する読者は多い。(ある程度以上の年齢の男性がやはり多いようではあるが)時代小説や歴史物が好きなので、周五郎は避けては通れないところだ。以前『樅の木は残った』を読んでものすごく感動した、もっと若い頃に周五郎に出会っていればよかった、と思った―と語っている方がいた。わたしは中学生のとき、『鼓くらべ』を読んでものすごく感動したので、この方の言う"若い頃"に周五郎の神髄に触れることはできて幸運だったかもしれない。この作品は、一般には悪役とされていた原田甲斐にスポットを当て、通説とはまるで反対の甲斐像を描きあげる、という荒業にチャレンジしている。こうした試みにつき物の強引さを、ほとんど感じないところに、まずは「さすが…」と感心した。作者は勿論そこのところに細心の注意を払っていて、あくまで"史実"に忠実であることにこだわる。まさしく職人芸である。その、作者自身の職人魂に心打たれた。
樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)より
4101134642
No.14:
(4pt)

否応なしに涙。

印象的な冒頭から、舞台は江戸に仙台にと縦横に飛び読者を伊達騒動の只中に放り込む、山本周五郎の圧倒的筆力。 だが文章はあくまで平明で分かりやすい。 まるで時代劇のように映像がまざまざと浮かんでくるのはさすがである。 下巻ではいよいよクライマックスを迎え、完結する。 読み終わる頃には、原田甲斐=悪役説など忘れている?―勿論、真相などわかりっこない、歴史的事実の裏で本当は何が起こったのか…? だが間違いなく、人間の姿がここにはあり、涙をこぼさずにはいられなかった。
樅ノ木は残った (下巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (下巻) (新潮文庫)より
4101134022
No.13:
(5pt)

真相は?

実際にあった「伊達騒動」をモチーフにしたこの作品は山本周五郎の代表作である。
 主人公である原田甲斐は史実から言うと、伊達兵部の腹心であり、「悪人」と言うことになっている。しかし、この作品中では伊達六十二万石を守った「善人」ということになっている。真相は分からないが、僕は「善人」である原田甲斐に深く打たれた。一人で生きていくつらさというものをかみ締めて、ただ伊達藩のために生きる姿は、まさに侍である。今の世界にはこういう人間が必要なのではないだろうか?
 この小説のひとつのテーマは「一人で生きる」と言うことだと思う。身を崩した伊東七十朗にしても、里見十左衛門にしても、その崩れた理由は「一人で生きていく」にはあまりにもつらかったのではないだろうか?そのアンチテーゼとしての新八とおみやの話はあまりに見事に生きている。
 そして、所々ではさまれる「断章」は話を引き締めると共に、「悪」そのものの暗黒を巧く引き出している。見事な作品です。
樅ノ木は残った (下巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (下巻) (新潮文庫)より
4101134022
No.12:
(5pt)

いまだに新しい

 なぜ山本周五郎の作品は新しさを失わないんだろう?物語は江戸時代初期の「伊達騒動」を題材にしているのにもかかわらず、その登場人物には深く感動を与えられるし、共感も得られる。 それは山本周五郎と言う人が人間の深い真実と言うものを感覚的に捕らえていたからなのではないだろうか? 「一人で生きる」ということを自分に課せられた使命のために厳しく自身を戒める主人公の原田甲斐は現代においても尊敬できる人物である。その生き方に深い感動を感じずにはいられない。 そして、唯一心を通わせた宇乃、そして自然(くびじろ、鯉、樅の木)にはその存在が極めて大きい。ことにラストは圧巻である。故郷から移植した樅の木はたった一本でその地に根を張っている。甲斐は自らをそこに投影し、宇乃にそれを託したのではないだろうか?原田甲斐の悲しさと強さが強く出ていて素晴らしい締めくくりとなっています。 この作品は登場人物が多かったり、江戸時代の役職名などが重要になってきたりして、なかなか読みづらいところもあるだろうけど、傑作であることは間違いようがありません。
樅ノ木は残った (中) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (中) (新潮文庫)より
4101134650
No.11:
(5pt)

こういう大人になれるだろうか

とにかく、3巻の長編である。腹一杯になるのは必然。読み終わってう~むとなるのも当然。しかしながら、この上巻は1.登場人物おおすぎ、(兵部の用人と甲斐の家老が同じ「隼人」だったり)2.事情入り組みすぎ、3.話も行ったり来たりしすぎ(特に断章とかね)で3巻のなかでは一番読み疲れすることも付け加えておきたい。そこを読みこなしてやっと2巻目以降、あがが的に手放せなくなるのである....それにしても原田甲斐という人は本当はどっちの人だったのだろう?伊達騒動自体が当時から不可解なものだったようでもあるが、当時は封建社会であって、伊達家を守ろうがつぶそうが庶民的には同じであり、今の政治家のように直接の被害感も利益巻もない。その分無責任に悪人伝説/善人浪漫も巷間に溢れたのであろう....閑話休題。いずれにしても周五郎の描く原田甲斐には強烈なリアリテイがあり、こういう人がいた、という手応えがある。それだけで十分であろう。ワタクシも一年ほど中間管理職を経験したことがあるが、生のままの自分と役割と、これほどきっちりと(本当に命がけで)見せつけられるとどうしょうもなく、アー、というしかない。
樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)より
4101134014
No.10:
(5pt)

こういう大人になれるだろうか

とにかく、3巻の長編である。腹一杯になるのは必然。読み終わってう~むとなるのも当然。しかしながら、この上巻は1.登場人物おおすぎ、(兵部の用人と甲斐の家老が同じ「隼人」だったり)2.事情入り組みすぎ、3.話も行ったり来たりしすぎ(特に断章とかね)で3巻のなかでは一番読み疲れすることも付け加えておきたい。そこを読みこなしてやっと2巻目以降、あがが的に手放せなくなるのである....それにしても原田甲斐という人は本当はどっちの人だったのだろう?伊達騒動自体が当時から不可解なものだったようでもあるが、当時は封建社会であって、伊達家を守ろうがつぶそうが庶民的には同じであり、今の政治家のように直接の被害感も利益巻もない。その分無責任に悪人伝説/善人浪漫も巷間に溢れたのであろう....閑話休題。いずれにしても周五郎の描く原田甲斐には強烈なリアリテイがあり、こういう人がいた、という手応えがある。それだけで十分であろう。ワタクシも一年ほど中間管理職を経験したことがあるが、生のままの自分と役割と、これほどきっちりと(本当に命がけで)見せつけられるとどうしょうもなく、アー、というしかない。
樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)より
4101134642
No.9:
(5pt)

トーホクの自然描写がたまらない

全体の話は他の巻に譲るとして、この巻で最初にうならされるところは、原田甲斐がひなびた温泉宿に一泊後(盲目の芸人との問答も深い)7年ぶりに涌谷様を訪れて先方の息子の兵庫に案内されながら周囲の風景にうならされるところ。7年ぶりの再会である。考えてみれば交通の不便な江戸時代、人と人が会って別れるというのは本当に一生に一度、最後の面会になるかもしれない一期一会だったのだろうな~。こういう感慨を描かせるには現代人は便利に狎れすぎているゆえに、周五郎の時代、昭和三十年代の人ならではのリアリティのある感慨が感じられた。思えば、あの青べかの後日談での「長」との再会といい、(こちらでは「蒸気河岸の先生」である周五郎を「長」は覚えていないのだが)周五郎という作家は再会のシーンのスライスオブライフをぐっと浮き彫りにしてくれるところがある。...本編とあまり関係のない話ですね
樅ノ木は残った (下巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (下巻) (新潮文庫)より
4101134022
No.8:
(5pt)

永遠の名著

この本は素晴らしい一度読んで読み足らず、時を置いて又読み返したりしている。
原田甲斐のような人間になりたいとも思った。
現在は皆無だが、自分の子供の時代はこういう大人も居た。
愛読書にするには一番の名著だと思う。
樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)より
4101134014
No.7:
(5pt)

永遠の名著

この本は素晴らしい一度読んで読み足らず、時を置いて又読み返したりしている。原田甲斐のような人間になりたいとも思った。現在は皆無だが、自分の子供の時代はこういう大人も居た。愛読書にするには一番の名著だと思う。
樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)より
4101134642
No.6:
(5pt)

3巻があっという間に・・・

続きを読みたくてウズウズ・・・・・・3巻があっという間でした。
登場人物たちの強い思いがじんじん伝わってきて、電車の中で読みふけりながら、なんど目を赤くしたことか。主人公の原田甲斐が全面的に正しいとは思わないけれど、易きに屈せず黙々と信念を貫きとおす原田に心を打たれずにはいられません。なぜ原田はそこまで貫けるのか、と。なぜ自分はそうなれないのか、と。
NHKの「プロジェクトX」でぼろぼろ涙した人は、山本周五郎でも涙をこらえきれないこと請け合いです。
樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)より
4101134014
No.5:
(5pt)

3巻があっという間に・・・

続きを読みたくてウズウズ・・・・・・3巻があっという間でした。登場人物たちの強い思いがじんじん伝わってきて、電車の中で読みふけりながら、なんど目を赤くしたことか。主人公の原田甲斐が全面的に正しいとは思わないけれど、易きに屈せず黙々と信念を貫きとおす原田に心を打たれずにはいられません。なぜ原田はそこまで貫けるのか、と。なぜ自分はそうなれないのか、と。NHKの「プロジェクトX」でぼろぼろ涙した人は、山本周五郎でも涙をこらえきれないこと請け合いです。
樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)より
4101134642
No.4:
(5pt)

すごいな、山本周五郎。

時代小説といえば、司馬遼太郎のしか読んだことがなかった。随筆のような筆致で行間にたっぷり芳香を含んだような司馬遼の文章も大好きだが、山本周五郎の骨太の筆致というかがっしりした構成も魅力的。登場人物がみんな印象的な役割を演じつつクライマックスに収斂していくところなんて完全に徹夜覚悟。伊達六十万石を割ろうと次々に仕掛けられる策謀に立ちはだかる原田甲斐。たぶん史書には「伊達兵部と伊達安芸の政争」としか記されない事件を、裏返し、つむぎ直して重厚かつ壮大な物語を作り上げている。お腹にたまる小説です。
樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)より
4101134014
No.3:
(5pt)

すごいな、山本周五郎。

時代小説といえば、司馬遼太郎のしか読んだことがなかった。随筆のような筆致で行間にたっぷり芳香を含んだような司馬遼の文章も大好きだが、山本周五郎の骨太の筆致というかがっしりした構成も魅力的。登場人物がみんな印象的な役割を演じつつクライマックスに収斂していくところなんて完全に徹夜覚悟。伊達六十万石を割ろうと次々に仕掛けられる策謀に立ちはだかる原田甲斐。たぶん史書には「伊達兵部と伊達安芸の政争」としか記されない事件を、裏返し、つむぎ直して重厚かつ壮大な物語を作り上げている。お腹にたまる小説です。
樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)より
4101134642
No.2:
(5pt)

生きるということ

山本周五郎の長編では最も好きな作品です。周五郎は、原田甲斐に一方では共感しながらも、一方では突き放して描いています。原田甲斐は伊達62万石を守るために孤独な戦いをし、死んでいくのですが、そのこと自体に一体何の意味があるのか?という問いを、彼自身ずっと持ち続けながら、自分の生き方を貫いていくしかない。そういった生きることの困難さ、尊さ、悲しさ、そして醜さこそ、周五郎が描きたかったことだと思われます。この小説を、「忠義を尽くした武士の美談」であるかのように単純化したがる人(某財界団体の会長など)がいますが、それは誤りだと思います。事実、彼は多くの人が死んで行くのを見殺しにせざるをえなかったし、最終的には彼が逆臣の汚名を着たせいで、彼の一族は根絶やしに近い処罰を受けています。それは人の道として正しいのか間違っているのか?おそらく両方の側面があるのでしょう。周五郎は、甲斐に過度に感情移入することなく、あくまで淡々と綴っています。その語り口が冷徹で、この秀逸な人間ドラマを際立たせています。
樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (上巻) (新潮文庫)より
4101134014
No.1:
(4pt)

重いテーマです

山本周五郎はもっとたくさんの人に読んでもらいたいと常々思っていますが、この作品は他の短編集とは違いかなり重たい内容です。いわゆる「お家大事、藩大事、わたくしごとは二の次三の次」というもので、現代人から言わせると「何でそこまでやらなくちゃいけないの?」という内容です。英雄豪傑ものとは正反対の、逃れ場の無い現実の世界を浮き彫りにした様な作品です。しかし本当に強い男というのは、自分の思い通りに生き華々しく死んでいった者よりも、この作品の主人公の様に、言いたい放題やりたい放題がしたくても出来ない辛さに立ち向かった者の方ではないでしょうか。自分の趣味の時間にわざわざこんな重いテーマを読む必要はありませんが、この現実から目をそらしてはいけません。カッコ良すぎる英雄小説に飽きた時には、たまにはこういう作品も読んでみては如何でしょうか。
樅ノ木は残った (下巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:樅ノ木は残った (下巻) (新潮文庫)より
4101134022

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