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夜の終る時
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【この小説が収録されている参考書籍】
夜の終る時の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全11件 1~11 1/1ページ
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昔、(推理小説では)警察小説しか読まないという年配の知人がいた。彼がなぜ警察小説を偏愛していたのかは訊かなかったが、今はそれが分かる気がする。 ひとつは、名探偵がー極端な場合には現場に赴くことさえなくー推理だけで犯人を割り出すことへの不満であろう。警察官という職業の地道な苦労の割に報われないのに比べると、名探偵の論理的なインテリジェンスそれじたいが胡散臭くも感じられよう。それに第一ー本書の[解説]で郷原宏氏も書いている通りーもはや私立探偵の職業的リアリティは風前の灯でもある。また、たとえば横山秀夫の作品にも顕著なように、警察官は犯人を追い詰める以前に警察内部での葛藤が凄まじいことも知られている。そして、本書は「日本で最初に書かれた悪徳警察ものであ」り、郷原氏の「見るところでは、この作品をしのぐ悪徳警察ものはまだ書かれていない」という。 しかし、警察小説のもうひとつの特徴は、聞き込みなどに代表される足を使った捜査の部分は、読者からすれば往々にして退屈でもあることだ。本書もその轍から完全に抜けきれているわけではない。それでも、読む進むうちに徐々に面白さが走り始め、第二部を読み始めるころには、この小説が頗る興味深いものであることを確信している自分に気づくはずだ。 第一部は、犯人を追う側の物語であり、第二部は、犯人自身のモノローグである。こういう構成の小説が他にもあったか、憶い出せないが、この構成が実に巧みだ。なぜなら、犯人を追う側には、どんなに肉薄しようとも、犯人の本当の動機は所詮わかりっこない。それは、供述などでは決して浮かび上がってこない。犯人の心の闇の奥は、こうした一人称小説のモノローグという形でしか叙述できないのではないか。しかも、最初から一人称にするのではななく、第一部で犯人を外側から追いかける物語を読んだうえで本人の独白を聴くという構成が効いているのだ。つまり、一挙に犯人側に感情移入してしまえる、という趣向だ。 そういえば、件の警察小説好きの先輩は、カラオケに行くと、ムード・コーラスものだけを歌っていた。万感の哀切をクールに歌うその姿が今も忘れられない。 | ||||
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昔、(推理小説では)警察小説しか読まないという年配の知人がいた。彼がなぜ警察小説を偏愛していたのかは訊かなかったが、今はそれが分かる気がする。 ひとつは、名探偵がー極端な場合には現場に赴くことさえなくー推理だけで犯人を割り出すことへの不満であろう。警察官という職業の地道な苦労の割に報われないのに比べると、名探偵の論理的なインテリジェンスそれじたいが胡散臭くも感じられよう。それに第一ー本書の[解説]で郷原宏氏も書いている通りーもはや私立探偵の職業的リアリティは風前の灯でもある。また、たとえば横山秀夫氏=原作のドラマに顕著なように(つまり原作は未読)、警察官は犯人を追い詰める以前に警察内部での葛藤が凄まじいことも知られている。そして、本書は「日本で最初に書かれた悪徳警察ものであ」り、郷原氏の「見るところでは、この作品をしのぐ悪徳警察ものはまだ書かれていない」という。 しかし、警察小説のもうひとつの特徴は、聞き込みなどに代表される足を使った捜査の部分は、読者からすれば往々にして退屈でもあることだ。本書もその轍から完全に抜けきれているわけではない。それでも、読む進むうちに徐々に面白さが走り始め、第二部を読み始めるころには、この小説が頗る興味深いものであることを確信している自分に気づくはずだ。 第一部は、犯人を追う側の物語であり、第二部は、犯人自身のモノローグである。こういう構成の小説が他にもあったか、憶い出せないが、この構成が実に巧みだ。なぜなら、犯人を追う側には、どんなに肉薄しようとも、犯人の本当の動機は所詮わかりっこない。それは、供述などでは決して浮かび上がってこない。犯人の心の闇の奥は、こうした一人称小説のモノローグという形でしか叙述できないのではないか。しかも、最初から一人称にするのではななく、第一部で犯人を外側から追いかける物語を読んだうえで本人の独白を聴くという構成が効いているのだ。つまり、一挙に犯人側に感情移入してしまえる、という趣向だ。 そういえば、件の警察小説好きの先輩は、カラオケに行くと、ムード・コーラスものだけを歌っていた。万感の哀切をクールに歌うその姿が今も忘れられない。 | ||||
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1964年 第17回日本推理作家協会賞受賞作 ヤクザ組織 赤座組との癒着を疑われている徳持刑事が失踪した。徳持刑事の幼なじみで、恐喝の容疑者 赤座組幹部 関口が、逮捕寸前の忽然と姿を消して間もなくのことだ。同僚の刑事たちは、関口、そして徳持刑事の行方を追う。やがて、ホテルで徳持刑事の扼殺死体が発見され ・・・ 本作品は二部構成で、一部は捜査活動に専心する刑事達を描き、二部は犯人の視点から事件の顛末を明示するようになっている。 一部で捜査の折々に語られる刑事たちの悲哀。刑事という職業を選択したがゆえに負ってしまった人生の苦難が切々と表現されている。この鬱勃とした描写が、二部で明かされる犯人の動機に深い影をおとしているのだ。 徳持刑事の死は、悪行の果てなのか。捜査が進むにつれ、徳持刑事への疑いが濃厚になっていく。 本作品はいわゆる暗黒小説である。横山秀夫さんに先駆けたかのような、刑事の生きざまを掘り下げた警察小説でもある。真犯人が吐露する切羽詰まった苦悩の日々。絶望という言葉がふさわしい幕の閉じ方は、読了後もしばし、重苦しい余韻を残す。 犯人探しだけに終始していない構成の妙が効いている作品である。 | ||||
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1964年 第17回日本推理作家協会賞受賞作 ヤクザ組織 赤座組との癒着を疑われている徳持刑事が失踪した。徳持刑事の幼なじみで、恐喝の容疑者 赤座組幹部 関口が、逮捕寸前の忽然と姿を消して間もなくのことだ。同僚の刑事たちは、関口、そして徳持刑事の行方を追う。やがて、ホテルで徳持刑事の扼殺死体が発見され ・・・ 本作品は二部構成で、一部は捜査活動に専心する刑事達を描き、二部は犯人の視点から事件の顛末を明示するようになっている。 一部で捜査の折々に語られる刑事たちの悲哀。刑事という職業を選択したがゆえに負ってしまった人生の苦難が切々と表現されている。この鬱勃とした描写が、二部で明かされる犯人の動機に深い影をおとしているのだ。 徳持刑事の死は、悪行の果てなのか。捜査が進むにつれ、徳持刑事への疑いが濃厚になっていく。 本作品はいわゆる暗黒小説である。横山秀夫さんに先駆けたかのような、刑事の生きざまを掘り下げた警察小説でもある。真犯人が吐露する切羽詰まった苦悩の日々。絶望という言葉がふさわしい幕の閉じ方は、読了後もしばし、重苦しい余韻を残す。 犯人探しだけに終始していない構成の妙が効いている作品である。 | ||||
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1963年発表。第17回日本推理作家協会賞受賞作。 ハヤカワミステリや東京創元社のクライムクラブで紹介されていた当時の海外ミステリの最先端の水準に堂々と挑み、多様な傑作群を生み出した昭和三十年代の結城昌治の凄さはどれほど評価しても足りない程だ。 本書は犯人当ての本格推理の前半、暗い陥穽に落ちて行く悪徳警官を描く後半という二部により描かれる意欲作。 凝った構成が趣向倒れになることなく、翻訳ミステリの濃厚な影響を受けた洗練性と日本人らしい陰翳深き情緒が無理なく一体化され、そして何より常に清新な挑戦を試みた作者の志の高さに感動する名作。 | ||||
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ミステリーファンを自認し、高村薫、原リョウにぞっこんでありながら 結城昌治の名も、作品も知らなかったことを恥じ入るばかりです。 <夜の終る時>はまさに秀逸としかいえない作品です。 二部構成になっており、特に二部はもう圧巻という言葉しか でてきません。 解説を書かれた郷原宏氏の言葉に尽きる作品です <こういう作者の精魂がこもった中身の濃い作品を、手軽な文庫本で読める 現代の読者の幸福を思わずにはいられない。> | ||||
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ミステリーファンを自認し、高村薫、原リョウにぞっこんでありながら 結城昌治の名も、作品も知らなかったことを恥じ入るばかりです。 <夜の終る時>はまさに秀逸としかいえない作品です。 二部構成になっており、特に二部はもう圧巻という言葉しか でてきません。 解説を書かれた郷原宏氏の言葉に尽きる作品です <こういう作者の精魂がこもった中身の濃い作品を、手軽な文庫本で読める 現代の読者の幸福を思わずにはいられない。> | ||||
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結城昌治氏の心がけている小説作法は、「むだなことは書かないし、読者にもむだな時間はつぶさせない」とのこと。ハードボイルド小説読みの読者なら当たり前のことですが、それを実践した氏の小説は特筆ものです。この「夜の終る時」にもそれが濃くあらわれ文庫250ページあまりですが、読み終えたとき、何らかの感慨を読み手にもたらしてくれます。内容は現代警察小説からみればいささか古めかしいですが、それは時代を割り引いて読めば知らぬ間に氏の世界に引き込まれてしまいます。文体がいいのでしょう。いまの書き手でこの内容での小説を書けば、おそらく五割増しのページ数になるでしょう。もっとディテールを書き込まないと作者が心配になるからです。 少なくともわが国の悪徳警官ものをおさがしならぜひ一読を。 追伸、ラストのせりふはすばらしい。 「さ、署へ帰るんだ。みんなが待っている。」 | ||||
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結城昌治氏の心がけている小説作法は、「むだなことは書かないし、読者にもむだな時間はつぶさせない」とのこと。ハードボイルド小説読みの読者なら当たり前のことですが、それを実践した氏の小説は特筆ものです。この「夜の終る時」にもそれが濃くあらわれ文庫250ページあまりですが、読み終えたとき、何らかの感慨を読み手にもたらしてくれます。内容は現代警察小説からみればいささか古めかしいですが、それは時代を割り引いて読めば知らぬ間に氏の世界に引き込まれてしまいます。文体がいいのでしょう。いまの書き手でこの内容での小説を書けば、おそらく五割増しのページ数になるでしょう。もっとディテールを書き込まないと作者が心配になるからです。 少なくともわが国の悪徳警官ものをおさがしならぜひ一読を。 追伸、ラストのせりふはすばらしい。 「さ、署へ帰るんだ。みんなが待っている。」 | ||||
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結城昌治の日本推理作家協会賞受賞作「夜の終わる時」。本書は単なるミステリの範疇を超えて、良質な「物語」である。2部構成となっているのも成功している。読んでいるうちに物語の中に身を置き、本当にドギマギしてきた。おすすめです。この頃のミステリは「日本のミステリの礎を創るんだ」という意気込みが凄く著作からあふれている。作者の志がすごく反映されているのであろう。未読の皆さん、昭和30年代後半からのミステリ作品に触れてみてはいかがでしょうか。(本作は昭和38年発表)全然古臭くありません。 | ||||
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結城昌治の日本推理作家協会賞受賞作「夜の終わる時」。 本書は単なるミステリの範疇を超えて、良質な「物語」である。2部構成となっているのも成功している。読んでいるうちに物語の中に身を置き、本当にドギマギしてきた。おすすめです。 この頃のミステリは「日本のミステリの礎を創るんだ」という意気込みが凄く著作からあふれている。作者の志がすごく反映されているのであろう。未読の皆さん、昭和30年代後半からのミステリ作品に触れてみてはいかがでしょうか。(本作は昭和38年発表)全然古臭くありません。 | ||||
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